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「打ちのめされるようなすごい本」に打ちのめされる

PMP試験実践問題 打ちのめされるようなスゴ本。米原万里が遺した書評集。濃くて厚い時間を過ごすことができた。びっしりと付せんが貼られた「あとで読む本」は、読んだらここでも紹介しよう。

 何がスゴいかというと、彼女の読みっぷり。平均7冊/日のペースを20年も続けている無類の本好き、読書好き。書評委員という立場もあり、出版社からの献本もあるだろうが、「面白い本」を見つけてくる嗅覚がスゴい。ハズレの無さは驚異的といってもいいほど。

 そうして見つけてきた「すごい本」たちの紹介っぷりも、またスゴい。時には辛辣に批評し、あるいは手放しで誉めちぎる。そのヒートアップダウンが面白い。熱くなってしつこく「読め読め」とぐいぐい迫られているような気分になる。

 そんでもって、うまいんだ、殺し文句が。例えばこう、

 高野和明著「13階段」を寝しなに読み始めたのがまずかった。一行目から謎解きとスリルの罠に絡め取られて、とにかく途中でおっぽり出せない。最終行まで緊張の糸は弛まず、最後は立て続けにどんでん返しを喰らう

 スコリャーチン著の「きみの出番だ」── ご忠告申し上げるが、一度読み出したら読み終えるまで寝食などどうでもよくなる。本国で「詩人の悲劇を俗悪な推理小説にした」と非難されただけあって、謎がさらに謎を呼ぶ展開に巻き込まれたら最後、地震になったって震度五ぐらいまでなら読み続けることだろう

 斎藤美奈子著「趣味は読書。」── 友人に電話をかけまくり、可笑しいところを読んで聞かせようとするのだが、発声器官が笑い魔に乗っ取られていてちゃんと読めない。「いいわよ、自分で読むから」と切られてしまう

 本の紹介だけではない。時事ネタと書評をシンクロさせており、あわせて自論も展開するやり方は、谷沢永一「紙つぶて」をホーフツとさせられる。毒舌よりも、辛辣な表現のすき間に、著者への「思いやり」が見えている分、「すごい本」の方が、スゴ本だとしみじみ思う。

 このblogで書評じみたエントリを続けているが、これだけのレベルの本を読み、かつ、紹介しつづけるのは、並大抵のことじゃない。よくまあこのペースでインプット→アウトプットできているなぁ、と打ちのめされる。

 もちろん、「打ちのめされるようなすごい本」も紹介されている。小説家がシャッポを脱いで、「もうこれが出たなら、私が書くことなんて、ありません」と断筆宣言するほどの大傑作ということ。該当の章にある、打ちのめされるようなすごい小説とは、トマス・H・クックの「夜の記憶」だと知って、なあんだ、と思った(いや、いい小説だと思うんだけどね、たぶん)。

 しかしだ、これはこれでスゴいんだけど、こいつを凄いというならば、これなんてもっと… と紹介される小説が、さらにスゴい(らしい)── その小説はp.89に紹介されているので、ご自分の目で確かめて欲しい(そのうちここでもレビューするね)。

 読めば読むほど、こう、思わず「おれも読みてええええぇぇっ」と本屋に駆け込みたくなるような、本読み魂に火をつけられる思いをする。猟奇モノは×、ほぼ文系、ITは×の著者とは趣味を異にするにもかかわらず、好きな本を読んでのたうちまわっている様子には、ずばり"嫉妬"(いい本読んでるね)をリアル感じる、亡くなった方なのに

 同時に、グっと胸に詰まるのが、ガン関連の本の書評。「私が10人いれば、すべての療法を試してみるのに」「万が一、私に体力気力が戻ったなら」といった語句のすきまに、あせりのようなものが読み取れているうちに、ブツっと途切れる。2006.5.18の週刊文春掲載で終わる。人生は、時間を積み重ねて、カウントアップしていくものだけれど、ガンは、分かったときから、カウントダウンが始まるものであることが、よく分かる。そう、打ちのめされるほどに。

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「PMP試験実践問題」はアラ探ししながら読むのが正しい

PMP試験実践問題 現在のところ、PMBOK3版に対応する問題集は、コレしかない。したがってPMP合格を目指す方は必然的にこれを一度は考慮するワケなのだが、かくいうわたしもその一人だった。

 わたしは、全問キチンと解いて→解説を熟読して→PMBOKガイドでおさらいをしたので、レビューする資格があるだろう。本書をほとんど解かずに/読まずに/確認せずに「A+」を付ける人が多すぎる。

 結論は、これしかないので、仕方がない。それでも出題者のアラ探しは、自分の勉強になる。以下、説明する。

■ PMP試験問題の傾向と対策

 4時間で200問、四者択一といったところはご存知として、「○○でないものは?」「最後に取るべき手段は?」といった誤っているものを選ぶもの、正しい組み合わせを選ぶもの、最も適切な(ふさわしい)ものを選ぶもの、と様々なバリエーションがある。

 それでも、設問のバリエーションごとに「よく扱われる話題」が確かに存在する。例えばこうだ。

  • 正解を択一:計算問題
  • 「最も適切なもの」を選ばせる:PMI イズム(特にフレームワークとプロフェッショナル責任)
  • 「○○であるもの」または「○○でないもの」を選ばせる:インプット、アウトプット、ツールと技法、プロセス名
  • 組み合わせを選ばせる:箇条書きになっているもの(プロジェクト憲章に含まれるものはどれか)

 でもって、文中に埋もれているが、複数の項目が並んでいるものが狙われやすい(例:コンフリクトの原因は、資源、優先順位、個人のスタイル、これに何かを加えると四択になる)。その結果、「もし出題するならこのあたり」の目星をつけることができる。

■ 「PMP試験実践問題」の特徴

 本書もこれを踏襲し、各プロセス単位にバランスよく問題を収集している。どんな形式の問題が出るのか、どこがポイントなのかを押さえながら出題しているので、一部の人がこれを「バイブル」と称するのも分かる。

 さらに、知識体系の目次順ではなく、プロセスの順番に学習を進めるための対応表(p.9)があるのが良い。仕事のPDCAサイクルに添った形で、「立上げ」→「計画」→「実行」→「監視とコントロール」→「終結」の順番で、勉強も進めるべきだという主張は、全くその通りだと思う。

 しかし、実際に自分で解き→答え合わせをし→解説を熟読し→該当箇所をPMBOKやネットでおさらいするプロセスをしていくうちに、気づく。

■ これはひどい

 まちがい、それも致命的な誤りが、ぼつぼつとあるぞ。例えば、

 本書p.55問題1「スコープ変更管理プロセスのインプットにふくまれないものはどれか?」

  A.実績報告書
  B.プロジェクトスコープ記述書
  C.プロジェクトスコープマネジメント計画書
  D.ワークブレークダウンストラクチャー

 とあるが、正解はBだそうな。PMBOKのp.120を見よ、「全て含まれる」が正しい。

 本書p.209問題8「Web構築プロジェクトの進捗が遅れており、本番稼働日は間に合いそうも無い。協議の結果、本番稼働日を遅らせることとし、メンバーを特に急がせることはしなかった。どのリスク対応策をとったのか?」

  A.回避
  B.転嫁
  C.軽減
  D.受容

 とあるが、D.(何もせず、計画を変更してないので、受容)と言っている←これはウソ、「本番稼働日」を遅らせているじゃないか。PMBOKのp.261にしっかり書いてある。

 リスク回避とは、プロジェクトの目標にリスクの影響が及ばないように、スケジュールの延長やスコープの縮小など、達成が危ぶまれる目標を緩和するために、プロジェクトマネジメント計画の変更を行うことである

 要するに、カットオーバーを間に合わせるために、機能の段階的リリ-スをするとか、逆にフルパッケージとして出荷させるために出荷時期を後倒しにしたりすることを、回避というわけ。出題者はチカラいっぱい間違っている。自分のノリで答えると失敗する好例。

 理解の誤りだけでない。つまらないケアレスミスも散見される。

 p.211問13 の正解に「共用」があるが「共有」が正しいしぞ!
 p.221問題4は、PMBOKのp.88-89読めよ!基本中のキホンだろっ
 p.232問1の解説「正解な気がする」ってふざけてるッ(しかも正解ではないッ)

 はぁはぁ

 はぁはぁ

 はぁはぁ

 ―― というわけで、「PMP試験実践問題集」は、出題者の誤認識や勉強不足をアラ探ししながら読み込むのが、正しい使い方。わたしがよくやる「問題集を解く→誤答したものを丸ごと覚える」やり方は、とても危険なので、注意。しかし、この問題集のおかげで、無味乾燥になりがちなPMBOKガイドを舐めるように読むようになったことは、素直に喜ぶべきだろう。

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PMP試験対策【まとめ】

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キャラの羞恥プレイを愉しむラノベ「ミッションスクール」

ミッションスクール たまにはライトなやつを。ナンセンスラノベ? とでも言えばいいのか。たくさん笑わせてもらった… いや、お笑いモノではないのだが。

 めっちゃくちゃな展開の学園ラブコメと言えばいいのか(何気にエロあり)。お約束&お約束の破壊度はついていけねぇ、スラップスティックという形容が可愛く見える。ラノベっぽい表紙に惹かれて読むと激怒するかも→ラノベ読みの方。

 あと下品。いたいけな女子高生にイヤがる言葉を無理矢理言わせる奴が下品(←めっちゃワロタ)。その台詞に反応する周囲も下品。エロマンガ並のお約束も下品。それを期待し→大満足してるわたしも下品。

 さらに男キャラがムラカミハルキ。「何故僕?」と煩悶するとこや、美少女にモテる具合、夢と虚構の見せ方がハルキをホーフツとさせる。ハルキファンは激怒するかも(あるいは、気づかないかも)。

 ―― さっきから誉めているんだけど、自分で読んでもそう取れないのはなぜだろう。紹介文はこんなカンジ…

 「下痢のため一刻も早く排便したいのです」―謎の符牒とともに教室から姿を消した聖メヒラス学園一の美少女・山岸香織は、MI6の潜入工作員だった──華麗なる諜報戦を描く表題作ほか、ホラー、ファンタジイ、アメコミ、純愛ロマンという5つのジャンルフィクションの定型による規格外の学園ラヴストーリー

 美少女が眉根にシワよせて、下腹を押さえながら「センセイ、トイレに行ってもいいですか?」と滑舌よく発言させるラノベはこれだけ!かつ、女子高生にもっと恥ずかしいことを大声で言わせているラノベは、これしかないんじゃ…

 キャラクターの羞恥プレイを愉しむラノベなのかも。

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PMP受験報告

 合格した。長かった…準備も試験も。以降、受験当日のレポート。「PMPってなに?」という方は[ここ]あたりをどうぞ。受験を意識している方は、[PMP受験対策]をどうぞ。

■試験会場へ

 わざわざセンター試験にあわせた受験日(1/20)にする。やっぱ女子高生と肩並べて試験に行くのが通ってもの。

 ところが、わたしの行き先はテンプル大学。ウンベルト・エーコ作品のテンプル騎士団しか知らないわたしはガクブル状態で白金高輪駅3番出口を目指す。

 出たとこのローソンでKitKatとゼリー飲料を購入。「受験生はKitKat」基本なり。ゼリー飲料は、途中でハラが空くに違いないと踏んだから。

 テンションを上げるために鳥の唄を聴く。舞台は夏なのに、冬っぽい曲調だと思うのはわたしだけか?

 歩くこと10分、日本生命南麻布ビルに到着。テンプル大学は、そのビル内にあるインターナショナルスクールだった[参考]

 午後の受験(13:00)にもかかわらず、到着したのは11:30、「どうするべ」と思案していると、受付のお姐さんが「午後の受付は12:00から、よろしければ2階にカフェテリアがありますよ」とのこと。

 カフェテリアで最後の仕上げ。

■試験開始まで

 12:10ごろ再度受付へ。免許証とクレジットカードを見せて、本人の認証。手荷物はロッカーに預ける(携帯も)。PC受験のチュートリアルペーパーを読まされる。試験用のPCでも読めるのだが、英語だけなので、こうした便宜が図られているようだ。

 しつこいほど赤字でかかれているのは、「ENDボタンを押すな」ってこと。押すといきなり終了→採点で、やり直しはないよ、ということだ。いままで何人の犠牲者が終了の意志も無いのにENDを押してしまったのだろうか…

 試験室の入口で、再度本人認証。PC画面でわたしの情報を示し、「あなたご本人で間違いないですね」と念を押される。さらに、チェックインと称して入室時刻とサインを求められる。

 試験室へ持ち込めるのは、以下の4点のみ。「会場は寒いぞ」と聞かされていたので、了承を得てセーターをひざ掛けとして持ち込む。

  • メモ用紙(受付で渡される)
  • 鉛筆(受付で渡される)
  • 電卓(受付で渡される)
  • 身分証(わたしの場合、免許証とクレジットカード)

■試験開始

 試験室はブースで区切られており、PCが据え置かれている。ネット喫茶みたい。防音用のヘッドホン? があったが、使わなかった。

 やっぱりウルサイ。マウスのカチカチ音だけかなー、と思っていたら、別の試験も行われていた。記述式? のようで、キーボードのガチャガチャ音が鳴り響く。

 チュートリアルが英語なのはいいとして、試験を始めるためには、チュートリアルを終わらせる「ENDボタン」を押さなければならないのは、ちょいと勇気が要った。あれほど「ENDは押すな」と脅されていたからね。

 試験は4時間で200問。全て、4つの選択肢から1つのみを選ばせる。画面の構成はこんなカンジ…

  • 上部に、わたしの名前が表示されている
  • 左上に、いまの問題番号が表示される(1 of 200)
  • 右上に、経過時間がカウントダウンで表示されている
  • 中央に、問題と選択肢(英文)、問題の右上にJAPANESEボタンがある
  • 下部に、操作ボタンが並んでいる

操作ボタンは、こんなカンジ…

  • JAPANESEボタンを押す:問題文と選択肢のアヤシイ日本語訳がウィンドウで表示され、CLOSEボタンを押すとウィンドウが閉じる。ウィンドウの選択肢を選ぶことはできない
  • PREVIOUSボタンを押す:一つ前の問題へ戻る
  • NEXTボタンを押す:次の問題へ進む
  • MARKボタンを押す:ボタンの色が青→赤へ変わり、ボタン名がMARKEDに
  • REVIEW:問題の一覧が表示される

REVIEWボタンを押した後の一覧画面は、こんなカンジ…

  • マークされたもの、未回答、回答済みが一覧で表示される
  • 最初の問題、選んだ問題、マークされた問題へジャンプすることができる
  • この画面にENDボタンがある

あれこれやってて気づいたこと

  • 日本語ウィンドウを表示中に、英文の選択肢を選択できる
  • 日本語ウィンドウを表示中に、NEXTなどの操作ボタンが押せる(日本語ウィンドウは自動で閉じる)
  • 日本語ウィンドウのサイズ変更は、可能
  • マウスホイールは使えた
  • VB+Winアプリでつくってある(みたいだ)
  • 試験の管理、試験結果のみをサーバで扱っている(みたいだ)
  • つまり、問題はごっそりとPCのハードディスクにある(みたいだ)
  • USBやCD-ROMドライブはシーリングされていなかった。OSはWin2000、カーネルは呼べそうなのでハック可能だろうが、後ろと前から監視カメラでずーっと見られている

 もちろん殊勝に受けましたとも、ええ。

■試験問題について

 だれもが準備する、インプット/アウトプット/ツールと技法、計算問題、用語については、ちゃんと出る。勉強したら得点になる。

 むしろ、「○○のとき、どうする?」という、いわゆるPMI イズムを問うものにてこずった。これは覚えるものではなく、PMBOKを何度も読んでないと正答できない。あるときは人的資源のあのへんから、またあるときは、フレームワークのあたりから、という感じで思い出しながら選んだ。自分のプロジェクト経験から回答しようとすると、×

 主語が明示されていないときは、PMとしてどう判断するか、と読み替えたが、主語がCEOの場合や、エグゼクティブマネージャーだった場合の「判断」もあって困った。経営陣なら別の選択肢になるだろうから。めんどうくさいので、全部PMとして判断した選択肢を選ぶ。

 用語について:PMBOKの巻末の用語・略語集も重要。付録はオマケだと思っていたが、用語集だけに出てくる用語もあるので要注意。

 難度について:常識問題(賄賂ダメ)とか、簡単な問題(○○のインプットは?)と、ひっかけ問題、PMIイズムの判断に悩む問題… がごちゃまぜに来るので困った。言い方を変えると、バランスよく出てきた、とも。日本人がつくった試験問題(易→難の順、あるいは、穴埋め→並べ替え→文章問題)に慣れているわたしには、「この問題はどのレベルだろう?」と最初に自分に問う必要があった。

 計算問題は出たら取れるまでにしておく。あいまいな選択肢はないから。

  • CV、CPI、PV、SPIは基本(計算式の頭はEVで始まる、と覚えておくとマル)
  • EAC、ETCは、CPIが1なのか1以外なのかに注目(これまでのコスト効率を考慮しなくてもいい1なのか、あるいは適用するのか)
  • ネットワークパス数(メンバーが○人追加された場合、とか)
  • クリティカルパスの期間(AOAもAONも両方計算できるように、リードやラグがからんでも計算できるように)
  • BCR(Benefit Cost Ratio)が1.5=100円の投資に150円のpayback
  • 3点見積りは加重平均するのか、しないのか(PMBOK2000まで加重平均してた)
  • EMVはデシジョンツリーを自分で書いて計算できる
  • PTA(Point of Total Assumption)={(上限支払金額-目標コスト-目標利益)÷発注者側の共有率} + 目標コスト
  • FPIF(定額インセンティブフィー)で、納入者に支払われる金額を求める場合、計算式は=実コスト+目標利益+{(目標コスト-実コスト)×共有率} なんだけど、"定額"インセンティブなところがポイント。この金額を上回る価格が最終価格の場合は、最終価格しか支払われない

PMP試験実践問題 できるだけ沢山解いて、「感覚」のようなものを身に付けておくといいかも。PMP試験実践問題は日本語のPMP問題集としてバイブル扱いされている強力なやつだけど、明らかな誤答もあるので、鵜呑みにしないように(答え合わせの際、アラ探しするぐらいが丁度いい)。

 4択のテクニックが日本の「慣習」とまるで違うので、要注意。たとえば、次の4択の場合、日本人が解こうとすると、どうしても「最大公約数」な選択肢(この場合は、1.or2.)を選ぼうとする。

  1. 相沢、月宮、倉田、沢渡
  2. 相沢、天野、月宮、倉田
  3. 相沢、水瀬、美坂、北川
  4. どれでもない

 ところが、答えは3.という場合がある。あるいは4.のようなメタな選択肢である「上記以外」「上記全て」「情報が足りない」といったものが出てくる。要はどれもイーブン、ということで、「迷ったら最大公約数」は鬼門。

■試験の経過

 足元だけが冷えたので、ひざ掛けは正解。途中2回休憩をいれて、トイレ&栄養補給。集中力を持続させることがポイント。

 退室する際、チェックアウトと称して退出時刻とサインを求められる。その間も試験は続行され、カウントダウンは続いていることに注意。

 3時間でひととおり解きおえる。見直しをしようかな、と最初に戻るが面倒くさくなってENDボタンを押す。ロクに見ていなかったが、「本当に終わる?y/n」メッセージウィンドウが出てたような気が。

 採点中は真っ白な画面でPCがカリカリいっている。システム屋としては心臓に悪い(いまPCがハングアップしたらパーだな)。

 突然PMI ロゴとなにやら英文が出てくる→Congratulations で始まっているので、合格だと合点して、退室。ファンファーレを期待していたのだが。

 退室時に、受付の姐さんが試験結果のペーパーを渡す。「Pass」と小さく書いてあり、正答率が載っている。ビルを出たところでガッツポーズをし、帰りは夏影を聴きながらクールダウン。

―― というわけで、長いこと懸案となっていた「PMP合格」をついに果たすことができた。嬉しさ半分、「PDUどないしょ」という気分が半分といったところ。

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PMP試験対策【まとめ】


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子供に「どうして勉強しなきゃいけないの?」ときかれたら、何と答えるか?

 元ネタよりも、結城さんの回答[参考]に動かされて書く。なぜなら、この回答は、自分の子がいるかどうかによって変わってくるから。そして、実際にわが子からこの質問をぶつけられたことがあるから。

 もしも、わたしが親でなかったら、「どこかの生意気な中学生の質問」として受け止め、韜晦するか洒落っ気の効いた「回答」をひねり出すだろう。相手が「わかった気」になってくれればしめたもの。

 あるいは質問者の年齢に応じて、開高健/デカルト/ガルシア・マルケスを引いて、それぞれ「悩んだら"風に訊け"」「350年前の名答」「二次方程式の解法を自力で編み出した人」といった説教臭い話をして煙たがられるかもしれない。

 しかし、わたしは父親であり、わが子は「小生意気」にすらなっていない無垢な目で問うてきたのよ、「どうして勉強するの?」ってね。

 汗ったね。

 そのときわたしは、PMBOKガイドを前に呻吟してたので、子どもにとっては「べんきょうしてる」と見えたんだろう。だから、「オトナになっても勉強するのは、どうして?」と読み替えた。そしてこう答えた ――

 ―― パパの仕事は、みんなで一緒に大きなものを作りあげることなんだけど、なかなか上手くできなくってね。みんな頑張っているんだけど、途中で勝手なことを言い出す人や、頼んだ仕事が間に合わない人、材料が足りなくなったりとか、いろんなことが起きるの。

 ―― そこで上手くいくやりかたを探してるの。もちろんパパも自分で考えて試してきたんだけど、昔、誰かが同じ事で悩んだことがあるなら、それが参考になるかなー、と思っているわけ。

 ―― もちろん、そのままマネはできない。だって、同じモノを同じ人で作るわけじゃないから。それでも役に立つんだ。「こうするといいよ」だけでなく「こうしちゃダメだよ」も書いてあるから。

 先人の知恵を「まねび」、わが身で実践せよ、ということを伝えたかったのだが、いかんせんヘタクソなわたしの説明のおかげで、子どもの頭に「?」が並んでいる。

 嫁さんが後をひきとり、「毒キノコ」のたとえで伝えてくれる。曰く、

  「どくキノコがどうして"どく"か分かるのは、食べてお腹をこわした人がいるから」
  「その人に教えてもらえば、あなたが食べなくてもいいでしょ」
  「その人が本を書けば、あなたが読めばわかるでしょ」

  「パパはね、どれが"どく"なのか、教えてもらってるの」

 いやいや、PMBOKガイドにベニテンクダケのことは書いてないと思うぞ …それでも納得顔の子ども、嫁さんに感謝。

 そうした文献を吸収するために、読み書き計算ができるようになれとか、ガッコは解答のある問題に取り組むが、会社は正解なんてない課題がくるんだよ、とか、いかにも親父らしいことを言いたくなる、

…が、飲み込む。思い返すと、「勉強しろ」なんて言われたことがなかったっけ。「好きなことを一生懸命やれ」とはしつこく言われてたが。

 この言葉を、今度は、自分の子に向かって言えるのだろうか?

 「どこかの生意気なガキ」にはいくらでも言えることが、自分の子どもになると、とたんに保守的になるのは、世の習い? 親のサガ? あるいは、わたしが臆病なのか?

 子を持つ身にとってみれば、冒頭の質問は、むしろ自分が試されている気分になる

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劇薬小説「闇の子供たち」

闇の子供たち あのcyclolith さんのオススメ[参照]なので、用心しぃしぃ読む。以前うかうかと読んで、トンでもない目に遭ったからね[劇薬度No.1]。で、「闇の子供たち」、途中まではうわー、ひえーとか言いながら読んでたけれど、ステレオタイプ・キャラクターが青年の主張をする後半に失速。ルポルタージュネタを誇張して小説の型に流し込んでいるので、書き手の底が割れてしまった。この方、小説家としてはアレですな。

 それでも劇薬指数は高い。読みどころはこのへん↓

  1. 8歳で売られた少女→売春宿→HIV感染→AIDS発症→ゴミ捨場に棄てられる→故郷へ→両親困惑&村八分→監禁&放置プレイ→蟻にたかられる(まだ生きている)→父親がガソリンかけて焼殺
  2. ドイツ夫婦が少年を買いにくる→お目当ての子はホルモン剤の打ちすぎ→全身から血を噴出して死亡→男衒「仕方ない、他の奴をあてがっておけ」→ドイツ夫婦「いやぁ、この子もカワイイね」とお持ち帰り
  3. 日本人母「息子の心臓病のドナーを待ってられない」→ブローカー「4,000万でいかがっすか」→とあるNGO「生きた子から心臓を移植することになるッ」→日本人母「ウチの息子に死ねというのですかッ」

 前半が凄まじく、とりあえず嫁さんには読ませられネェな、とオモタ。最近読んだ「赤ちゃんの値段」や「ベビービジネス」で華麗にスルーされている闇市場が、たとえフィクションの形でも、ありありと描かれているのがマル。ごいっしょに、劇薬No.1の「ペドファイル」とセットはいかがっすかぁ(amazon)―― って、普通人は止めたほうが吉。

 ただ後半、中学生の論理を振り回すNGO職員やマスゴミが出てくるが、いくらなんでも立派な大人がこんな貧相な発想はしないだろう→著者の経験値の限界をそこに見た。児童売春と臓器売買は「勇午」あたりで採りあげてくれないかなー、と微かに期待。

 ああ、でもこの世界、ちゃんと取材したら明らかに危ないな、とシロートでも分かる。こんどこそ殺されるだろう > 勇午(の中の人)

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赤ちゃん売ります「ベビービジネス」そこに市場がある限り

  • 健康なグアテマラの子 $25,000
  • 代理母との契約 $59,000
  • 一流の卵子 $50,000



  • あなたの赤ちゃん priceless


お金で買えない価値が有る―― はずじゃなかったのか。


ベビービジネス 「ベビービジネス」における著者の主張はこうだ ――「赤ちゃん市場はそこにある。まず第一に、その事実に目を向けろ。次に、市場であるにもかかわらず野放し状態となっていることを理解せよ。最後に、この市場は、市場として歪んだ状態であるからして、政府の規制が必要であることに気づけ」―― そいつを裏付けるための事実を徹底的に報告してくれる。
  • 遺伝的に劣位な胚を除外する生殖補助サービス
  • 「あなたに似た人」をカタログ販売する、国際養子縁組業者
  • キャリアを優先し、妊娠可能時期を逃した人が、大金で代理母を求める
  • 肌・目・髪の色や遺伝特質を予めセットアップされた、「デザイナーベビー
  • 不妊治療に失敗→養子縁組でゲット(不妊治療+養子縁組の相互補完)
  • 難病の我が子の治療に必要な髄液のため、生物学的に同じ「子」をつくる
  • フランシス・フクヤマが描いた人類の二つの亜種、gene rich と gene poor

 上に示した現状と未来は、嫌悪感をもよおすかもしれない。赤ちゃんを作る試みは道徳的なジレンマの最も激しい深いところにふれるため、政府を始めとして、マスゴミ連中も実情を看過するか、単なる学術研究の規制として扱ってきたからだ(韓国のクローン胚研究成果の改ざんは記憶に新しいが、学術研究にとどまる。いっぽう子宮を失った娘のために50代の母が代理出産した日本の例は、決して、研究ではない)。

 そうではなく、ビジネスとしてここまで育っていることを知って、嫌悪というよりも素直にビックリした。例えば、アメリカの市場規模は、以下の数字から推し量ることができるだろう(2001~2003年のリサーチデータ、本書より引用)。

  • 体外受精41,000人
  • 提供卵子から生まれた子ども6,000人
  • 代理母によって生まれた子ども600人
  • 海外養子縁組21,616人

 金に糸目をつけず、子を切実に求める需要がある限り、そして、それを供給できる医療技術やサービスがある限り、市場は成立する。テクノロジーの恩恵は医療のみならず、国際養子縁組にも波及する(ひとつの例として、RainbowKidsがある。あなたにピッタリの子どもをネットで簡単検索。養子一覧を見てるさっきからイロイロな意味で涙がとまらない)。

 確かに法で縛る国もある。しかし、市場にとってみれば、それは「規制の厳しいところとゆるいところがある」ことに過ぎない。子どもが欲しくても得られない人は、規制の無い国や州へ「旅行」をするだけだ。法外な料金のかかる旅行から帰ってくるとき、「親」になっているという寸法だ。

 人として、親として、子どもを経済的なモノと見なすことはできない。子どもはお金ではなく、愛の賜物であり、どんな市場の影響も及ばないところにある、文字通り priceless なものだ―― そういう主張は、ここ30年ほどの間に、生殖医療の発達によって支えられてきた赤ちゃん市場の現実に圧倒されるだろう。

 止められない流れとなっていることが、こわい。既成事実は、わたしの想像よりもずっと先にあった。亡くした子どもの代わりにつくられた、生物学的に同一の赤ちゃんをのことをレプリカントと呼ぶのはやめてくれ、と思った。

赤ちゃんの値段 日本の実情は、「赤ちゃんの値段」で知ったつもりでいるが、日本はまだまだ遅れてるなぁ、と安心するやら不安になるやら。「赤ちゃんの値段」によると、かつては韓国、今は中国が輸出大国だそうな。棄児といって、身元が完全に分からない子どもが人気で、大きくなっても実親を探そうとしないからだという。

 "Do Androids Dream of Electric Sheep?"や"Never Let Me Go"は、Science Non Fiction になろうとしているのか。あるいは、マイクル・クライトン御大や、ロビン・クック大先生のご登場といったところだが、事実は小説を大きく引き離して、もう見えないところまで行ってしまっている。

 だけど、どっちへ向かおうとしてるんだ?

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志村、後ろ後ろ!「ロウフィールド館の惨劇」

Roufirudo
 「読後感サイアクの小説を教えてください」でオススメいただいた「ロウフィールド館の惨劇」を読む。

 このテの小説を紹介するとき気を使うのが、ネタバレ。肝心なトコを明かさないように、かつ、興味を持っていただくように書いているが、本書はその心配が一切いらない。

 なぜなら、冒頭で全てを明かしているから。

 最初の2ページで殺人の動機、殺害方法、犠牲者、共犯者を記している。思わず「刑事コロンボ」を思い出す。こんなにバラしちゃってもいいのかしらん、という心配をよそに、作者は自信満々だ。ちなみに、こう始まっている。

ユーニス・パーチマンがカヴァディル一家を殺したのは、読み書きが出来なかったためである

 では、分かってしまって面白くないのかというと、全く違う。むしろ、なぜ「読み書きができない」ことが一家惨殺になるのかを問いかけながら、ひきずり込まれるように読む。

 わたしの「問いかけ」が分かるのか、作者は節々で応えてくれる。上手いんだ、これが。「もし、○○だったなら、惨劇は起こらずにすんだであろう」なんて思わせぶりな書き方をしてくる。

 この思わせぶり、トマス・H・クックを思い出す方なんていらっしゃるかと。しかし、クックは、種明かしをファイナルストライクのお楽しみにとっておく作家なので、フラストレーションが違うね。

 さらに、一家を皆殺しにする家政婦、ユーニスがすごい。外見は冷たいオールドミス、中身は怪物。人倫を解さないのはモンスターたる所以なんだけど、その出来上がり方が違和感なく読めてしまう(←読後怖いと思ったのは、ここ)。

 このキャラ、「ミザリー」で"足なえ"を実行したアニーや、「黒い家」で○○をビニール袋で持ってきた幸子を思い出すね… 心の基本的な何かを最初から持ち合わせていないような…

 倒叙ものの傑作だな、と思いなつつ、ラストの惨劇に向かってまっしぐらに読み進んでいく―― が、ちょっと待て。「その後」があるぞ―― でもって、惨劇後の方が興味深い。彼女が警部にチョコレートケーキを振舞った直後の場面なんて、焼き付くように"見えた"。

 …というわけで、美味しく読ませていただきやした。「読後感サイアク」なのは、彼女のキャラと救いようの無いラストを指していたんでしょうな。

 劇薬小説ベスト5を読める方なら、無問題。楽しんで(?)読めるナリ。

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イマドキのアフィリエイト

アフィリエイトの神様が教える儲けの鉄則50 amazonが読めというので「アフィリエイトの神様が教える儲けの鉄則50」を読んでみる。おもしろい… いや、本の中身というよりも、著者の性格が ── 「内容なんてどうでもよく、とにかく儲ける」ことに徹せられており、ある意味いさぎよい。

 本書では、「アフィリエイトで儲ける」あらゆるノウハウが惜しげもなく紹介されている。コンテンツを自力で創るor集めることができるならば、あとは丸ごとマネするだけで、儲かるサイトを作ることができるだろう。

 アフィリで成功するために求められているものは、才能や技術ではなく、「誰にでもできることを、誰にもできないくらい継続する力」だという。ビジネス全般にも同じことがいえるのではないかと。

 以降、儲けやすい広告、ネタ集めの方法、アクセス増の基本技から必殺技が「鉄則」として書かれている。

 例えば、「テレビや新聞を用いて、ネットの「外」からテーマを探せ」とか、「本屋には需要のあるテーマが集まっている」といったアドバイスはありがち。だが、キーワードアドバイスツールや、キーワード出現頻度解析を用いたアクセス増のやり方は、全く知らなかった。やる/やらないは別として、知っておいて損はないだろう。

 専門用語を極力避けてはいるが、やっていることはビジネス戦略そのもの。AIDMA、SWOT、80:20の法則を「アフィリエイト」に適用して、非常に分かりやすく解説している。解説ではなくて、自身で実践してきた成果が報告されている。「3,000万稼いだ」と豪語するとおり、10万/day の Page View を叩き出している(p.159の画像)。

 読み手はこれをそのままマネすることもできるし、それでも効果はあるだろう。しかし、既に知れ渡っているノウハウではなく、著者の「考え方」そのものを習得することで、今度は自らの手で「儲けの鉄則」を編み出すことができる。あとは、あなた次第というわけ。「儲ける」Onlyに入っている魂というか、熱気というか、毒気に当たっておいで→[ここ]

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美しい小説「インディアナ、インディアナ」

インディアナ、インディアナ 美しい小説を読んだ、大切な人に読んでほしいと思う一冊。

 これは、一葉の写真を眺めるような感覚。最初はぼやけてたり、一部しか目に入ってこなかったりしているが、ゆっくり視線を動かすうちに焦点が合ってきて、全体像が見えてくる。最初は巧妙に三人称が隠されており、名称と会話だけで関係性を、会話と独白だけで出来事を、読み手が紡ぎ上げていかなければならない。

 この、だんだんとはっきりしていく感覚が、気持ちいい。

 これは、主人公の喪失感を味わう小説。こなごなに砕け散った記憶の断片を拾い上げては、ためすがめつ眺めて、ため息とともにそっと置く。主人公の強い思いが向いている先が、ぽっかりとしており、それが分からない最初のうちは不安になるほど。

 この、とりかえしのつかないものを思う感覚が、心地いい
 (それが何であるかを忘れてしまっていたとしても)。

 小説が、どこかに連れて行かれる感覚を楽しむのなら、こいつぁ、まちがいなくオススメ。作者に手をとられて世界に入り込む。大半は回想と手紙に埋め尽くされているが、だんだんと奥深く入っていって、物語の全像が見える頃、傍らを見ると作者はいなくなっている。

 この、連れて行かれた先で取り残される感覚が、気持ちいい。

 かりにわたしが高校生で、片思いの相手が「読書好き」なら、バレンタインに試金石として贈ってみたい。この本が好きな女の子なら、きっと惚れる。あー、でも、わたしの嫁さんにはオススメできないなぁ、ハッキリした筋の話が好きだから。

 ―― さて、本書はいい小説なので、いつものようにストーリーに触れずにレビューしたぞ。柴田元幸氏が「これだ」と惚れ込み、ポール・オースター氏が「ずば抜けた才能」と絶賛した小説だというが、食指が動いた方は 言 葉 ど お り に 受け取ること(すれッからしの本読みにウケがいい、という意味なのでご注意)。

 同じ理由で、いつもの「スゴい本」をお探しの方にも、オススメしない。あるいは、カズオイシグロ「わたしを離さないで」が好きな方なら、愉しめるかも。

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プロマネ必読!「アポロ13」

アポロ13 「アート・オブ・プロジェクトマネジメント」で強くオススメされてたので読む ―― これはスゴい。ドキュメンタリーとして夢中になって読めるだけでなく、プロジェクトが危機に陥ったときの「べき/ベからず集」しても、ものすごく有効な一冊なり。

 どうしようもない状況、限られた時間、非常に高いリスク、疑わしい解決策…プロジェクトがパニックに瀕したとき、優れたプロジェクトマネージャは何を考え、どう行動するかを知ることができる。本書を通じて学んだ危機管理マネジメントは、次のとおり。

  • プロジェクトが危機的状況のとき、あらゆる手段を使って、自分の感情をコントロールせよ。感情は事実をゆがめ、判断を誤らせ、解決への手段の一つ一つに邪魔をする
  • 「危機」は、すぐに数字にならない。必ずタイムラグが発生している。だから、危険な数値が今出ているということは、既に危機的状況に突入している、ということだ
  • 問題に対処するとき、絶対に忘れてはいけないのは、「いつメンバーを休ませるか」だ。不眠不休はミスにつながり、宇宙でのミスは、死につながる。たとえ宇宙にいかなくても、問題対処の時点で、メンバーは疲弊しているはず
  • 『訓練を通じて彼が身に付けた第一の経験則によれば、飛行機の墜落原因を推定するのに最もいい方法は、墜落機の残骸を直接に目で見ることである』

 一番刺さったのが、「なにかおかしなことが起きた」担当である、ミッション評価室。incident からcritical まで、プロジェクトの進行中には「何かおかしなこと」が発生する。それを解析し、原因を特定し、説明できるようにする専用の担当がいること。

 もちろんプロジェクトの行末を左右するような重大な「おかしなこと」なら、主要メンバーがよってたかってやっつけるだろう。わたしが「感動」したのは、

  a. 不具合の原因を解析し、特定する (ミッション評価室)
  b. 不具合によるプロジェクトへの影響を最小限にする (飛行実施責任者)
  c. 上2つをコントロールし、次の手を決める (主席飛行実施責任者)

 これらに専用のチームを割当てて、役割が集中しないよう、かつ、情報が共有されるようにしているところ。

 もちろんトラブル回避のために原因究明は必要な場合もあるが、原因究明に熱中するあまり、ミッション達成の目的を見失うほうがもっとまずい。原因探索にリソースをかけるあまり、すべきことが放っておかれるおそれがある。

 あるいは、不具合の回避に注力するあまり、トラブル再発・二次災害を招くことがある。原因を特定せずに、対症療法的な対策ばかりだと、いつまでたっても火は消えない。

 同一の不具合を起因としているが、「原因究明」と「影響回避」は、目的がそれぞれ異なっている。

 バグであれ、設計・仕様上のものであれ、重大な不具合が見つかると、「原因究明」「影響回避」、さらには顧客・上長への説明を、同一人物にまかせてはいないだろうか? 彼/彼女が「一番分かっているから」という理由で、その人に委ねては、いないだろうか? これは、わたし自身そーいう目に遭ってきたから分かる。上の3つは、互いに影響しあうため、一人にするにはムリがある。

 プロジェクトが危機的状況に陥り、大きなプレッシャーの中、限られた時間の中でバランスよく判断できるはずがない。たまたま詳しいから・デキるからという理由で、たった一人に全部を任せてしまう。「スーパーマン」ともてはやしても、いずれ限界がくる。これはまずい。

 本書にでてくる宇宙飛行士や管制官のボスは、確かにスゴい能力や権限をもっている。しかし、危機に瀕して全部自分でやろうとせず、それぞれの担当に任せ、その仕事が充分にこなせた後、最終判断を行っている(組織上そういう仕組みになっている) ―― これが、あるべき姿なんだろうなー

 おまえの開発プロジェクトとアポロ計画を一緒にすな!なんてツッコミは当然としても、これは深く心に刻んでおこう。

 アポロ13号は危機的状況を脱し、地球への帰還を果たしているため、結末がどうなるかは、知っている(著者がその宇宙飛行士だし)。それでもラストは胸が一杯になった。ええ、もちろん、涙もろいのは合点承知なんだけど、最後に必ず感動できるスゴ本としてオススメする。

 さて、映画も観てみるとしよう…


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必ず笑えるマンガ2006

 ごめんね、新年明けから暗い本や怖いマンガばかり紹介して。おわびに、必ず笑えるマンガ、名付けて「必笑マンガ」をご紹介 ―― とはいっても、わたしの趣味に走ってるワケなんだが… 「黒い笑い」「エロい笑い」は避けて、明るい笑い(あははーっ by 倉田佐祐理)を追求してみよう。

 以下、昨年読んだ中で、破顔指数の高いマンガを3つ、どうぞ。

よつばと!よつばと!(あずまきよひこ)

 読み手を幸福にしてくれるマンガ。楽しい、マンガ読むのがこんなに楽しいなんて―― なんてことのない「日常」がこんなに愉快なものだなんて。読むたびにニコニコできる珍しい作品。「読むと元気になるマンガ」は週刊モーニングの宣伝文句だけど、これは、「読むとニコニコになるマンガ」やね。

 元気少女よつばへの視線の暖かさが感じ取れる。彼女の天真爛漫っぷりが引き起こす騒動に、文字どおりハラ抱えて笑う。そのうち、帯のキャッチコピー「いつでも今日が、いちばん楽しい日」が、思いのほか胸をつかんでくる。再読してて気づいたのだけど、物語の視点は、「よつば」でも「父ちゃん」でもない。じゃぁ、作者かというと、そうにも見えない(物語の"動かし手"が感じ取れないので)。この感覚、わたしだけかなぁ… 名うてのマンガ読みたちのレビューを漁ってみますか。

きせかえユカちゃんきせかえユカちゃん(東村アキコ)

 少女マンガなんだが、オトナが(三十路のオッサンが)読んでも笑える。むしろ、大人のための少女漫画だろう。Cookieに連載されてるので、りぼん層の女の子向けかなーと思いきや、あにはからんや、かつて「りぼん」や「なかよし」を読み漁り、今では娘を持つママ向けのマンガなり。小学生ぐらいの娘と一緒に読んでますーなんてママがいるんじゃぁないかと。

 このユカちゃんの純真&アホ&破天荒ぶりが笑える。フツーの日常へトンデモキャラクターを放り込んで、そのかき回しっぷりを楽しむマンガは多々あれど、これは、かき回されるオトナたちから漏れ出るアホさかげんが面白い。「台風の目」ユカちゃんの求心力に、「フツーの大人たち」が同化していく過程が面白い。

ニニンがシノブ伝ニニンがシノブ伝(古賀亮一)

 ひと仕事(?)終えた後にちょろっと読むのに丁度いい「ゲノム」「新ゲノム」の古賀亮一センセイが、成人誌外で出したので、ずっと気にしてた。しかしながら心配無用、古賀節が全開しており、必ず笑える ―― あ、ただし、ケロロ同様、人を選ぶかも。

 ドジで天然ボケな見習い忍者シノブは、まさにお約束キャラ。美少女子高校生との百合展開も見逃せないし、オタク的予備知識を要する会話も愉しい。下ネタ、モテ論、ハイテンションギャグの笑える三拍子がそろってる。不思議なことに、読むと腹いっぱい笑えるんだけれど、読み終わるとスッキリと何も残っていない。考えずに笑えるマンガなり。

 電撃が二つエントリされたのはご愛嬌。必笑マンガ2006の候補として、「ムーたち」(榎本俊二)は不条理を楽しむマンガなので除外。「さよなら絶望先生」(久米田康治)は、実は未読だったりする(楽しみ~)。最後に:ほら、この3つを見て、いまアナタの頭に浮かんだマンガ…それはきっと、「わたしが知らない必笑マンガ」なので、ぜひご教授くださいませ

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赤ちゃんの値段

赤ちゃんの値段 「ごめんなさい、本当にごめんなさい」──望まない妊娠の果てに売られていく子どもたち。日本→外国の話。日本人の赤ちゃんの相場は200~500万円とのこと。無料で譲っている「産院」もあれば、暗にマージンを要求する「業者」も確かに存在する。

 「赤ちゃんの値段」をキーワードとしたルポルタージュで、養子縁組の話に限定されていない。ebay で「今月産まれる赤ちゃん売ります」に1,200万の値がついたことも書いてあるし、望まれない妊娠をヤミ堕胎(自由診療)で荒稼ぎしていた産院が、中絶胎児を一般ごみとして捨てていて、産廃処理法違反の話もあった。

 赤ちゃん市場において、最大の輸出国は中国であることは、一人っ子政策の[B面]を想像すれば予想がついていたが、最大の輸入国は、やっぱりというかなんというかアメリカだった。中華女児→American Girl ちうわけね。

 翻って日本。あっせん業者の言い分だと「子どもの幸せ」のためだそうな。養子となるのは十代の性交での「望まない妊娠」を主とし、産みの親やその周囲には「出産の事実そのものを忘れ去りたい」願望があり、生まれた子をできるだけ遠ざけたい心理が働く。家族の血のつながりを重視する日本社会は養子への理解が乏しい。結果、国内での養子縁組では子どもの肩身が狭い思いをする→だから、国境を越えた養子縁組にすべきだ、と正当性を主張する。

 かくして赤ちゃんは海を渡る。もちろんチャイポルや臓器売買の隠れ蓑にされることもあるが、(幸か不幸か)日本人の赤ちゃんは高値で取引されており、「材料」としては扱われていないようだ。

 以下に引用する一文の結末がエピローグにある。ロサンゼルス郊外の夫婦にもらわれていったキャロリンの話だ。日本での名前は、「ヨウコ」。


   娘は、養子縁組の記録にある実の母の住所にあてて二度、手紙を書いた。

      ヨウコです。長年の間、一度でいいから、
      お母さんがどんな方か会って
      お話をしてみたいと思っていました。
      お母さんのことをもっとよく知りたい。
      連絡をください。

   返事は来なかった。


 この手紙の、さらにその後の話がエピローグの末尾にある。
 酒場でそれを読んでマジ泣きした。

 この赤ちゃん市場、「ベビービジネス」といってもいいぐらいだなぁと思っていたら、まさに同名のルポがあった→「ベビー・ビジネス 生命を売買する新市場の実態」 次はこれかの。

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PMP試験対策 2.3.6 「計画」でやっていること(品質、コミュニケーション、人的資源)

 ここでは、「計画」でやっていることを説明する。

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■「計画」でやっていること(品質)Keikaku

 品質は鬼門。PMI にとっての「品質」は、一般的なソレと違うので要注意。そして、かなり厳密に適用しようとする。

 品質とは、本来備わっている特性がまとまって要求事項を満たす度合い。あるべきものが、ちゃんと備わっていること、とでも言い換えればいいだろか。「あるべき」は「暗黙のニーズ」「明示された仕様」のいずれかの形はとるかもしれないが、要求が満たされている=品質を満足しているといえる。

 さらに、要求を満足するだけでなく、使用適合性(fitness for use)も必要だという。要は客の言うとおり作っても使えなきゃ意味ないよ、ということ。

 それだけではない。品質マネジメントでは、成果物マネジメントだけでなく、プロジェクトのマネジメントまで目配りしなければならない。つまり、「良いものを作れば品質はOK」ではなく、そのプロジェクトのマネジメントそのものも「良く」することが重要だという。製品不良率が小さいだけでなく、手戻りが少ないことも大切。

 その結果、「そのプロジェクト」だけで品質マネジメントを成し遂げるのは困難と言うよりも、ムリ。母体組織による継続的な改善活動が必要。また、後に出てくる「品質コスト」、特に予防と評価への投資は、母体組織で負担することになる。プロジェクトは有期的だからね。

 実行や監視・コントロールプロセスに先行して説明するが、品質の3本柱はコレ↓

  • 品質計画(計画):そのプロジェクトの品質規格を採用し、どう満たすかを決める
  • 品質保証(実行):品質を満足するために、やるべきことをちゃんと実行する
  • 品質管理(監視・コントロール):決めた品質規格に適合しているか判断し、不満足なパフォーマンス要因を取り除く方法を見つける

8.1 品質計画

 どの品質規格がそのプロジェクトに関連するかを特定し、どうやってその規格を満足させるかを決める。品質は、計画・設計・作りこみによって達成されるものであり、検査によってではないことがポイント。品質コスト(適合/不適合コスト)、品質マネジメント(デミング、ジュラン、クロスビー)、品質ベースラインは押さえておく。

■「計画」でやっていること(コミュニケーション)

 よく間違える。PMBOK読んでも「あたりまえ」のコトしか書いていないにもかかわらず、不正解多し。送ったメール=読んだものだと判断するのではなく、重要なら到達確認をするように、「あたりまえ」なことがあってもいちいち確認しながら再読するべ。

10.1 コミュニケーション計画

 ステークホルダーの情報に対するニーズを特定する。つまり、誰が、いつ、どのような情報を必要とし、その情報は、誰が、いつ、どのように提供するかを決定する。プロジェクト成功の要因はコミュニケーションと言われるワリには実践されていないのが現実。実際、「優れたPMは勤務時間の90%をコミュニケーションに使う」というが、デスクにふんぞり返ったままじゃ、先が思いやられますな…

 残念ながら現場では、PMI の真逆を行っている。うんこミュニケーション(うんこ+コミュニケーション)の実践例なら沢山あるぞ。

  • メールを送った=読んだものと判断する:呼べば聞こえるのにメールばかりしこたま送りつけてくる。酷いのになると、「先日送ったあの件はどうなってますか?」(←本文ママ)と訊いてくる
  • ノイズ入れまくり:ひょっとして意図を伝えたくないのかしらん、と勘ぐりたくなる。結論なしで「やったこと」だけをダラダラ書く。んなもんメーリングリストで流すな!
  • こそあど言葉乱用:「あの件」「それについては…」で会話を成立させている。「ほら、アレだよアレ、わっかんないかなー」って、オレはオマエの番人じゃねぇ!
  • 略すな!:略すということは、省略前の言葉を『お互いが』知っていることが前提。「TBを作りました」って何? Trackbackか? まさか、TeraByteなの? トロンボーン? Three quarterBacks か、テルビウムか、ブラウザのThunderbird か? ――結局テーブルを略したそうな―― その理由がイカしてる「TBの方が短くてカッコいいから」

 コミュニケーションマネジメント計画書のアウトプットの中でも、「エスカレーションプロセス」に着目したい。よくある「体制図」は自組織の体制しか書いていないが、一工夫の余地あり。その隣に、顧客の体制図も記述するわけだ。名前が決まっていなければ空欄でもOK。そいつを顧客へ提示するわけだ。「これこれの情報レベルは、この担当が扱いますよ」というメッセージが伝わるはず。で、下位レベルでは解決できない問題は、マネジメントチェーンを通じて上へ持ち上げていくことが視覚化されるわけだ。このレベルを取り違えると、とんでもない悲劇か、全くの時間の浪費か、その両方になる。

■「計画」でやっていること(人的資源)

 「人」も資源と一緒で、必要な時期に適切な人材を、必要な分だけ投入しなければならない。足りなきゃ持ってくるし、スキル不足ならトレーニングが必要(ってことはそのための期間もカネも必要)、いきなり投入しても馴染むのに時間がかかるし、他の足を引っ張るかもしれない。パフォーマンスが上がらないかもしれない。デマルコの傑作「デッドライン」には、その本質がこう書いてある。

   ・適切な人材を雇用する
   ・その人材を適所にあてはめる
   ・人びとの士気を保つ
   ・チームの結束を強め、維持する

   (それ以外のことは全部管理ごっこ)

 確かにその通りなんだけど、必要条件じゃぁないかと。他の要素ばかり目が行って、プロジェクトを実際に動かす「人」を疎かにしないように、という戒めとして読もう。

9.1 人的資源計画

 要員マネジメント計画書を作成する。要員マネジメント計画書には、チームメンバーの調達方法、調達時期、プロジェクトからの離任基準、トレーニングのニーズと特定、報奨の計画、法令・規則への配慮、安全上の課題、組織の要員マネジメント計画への影響が記載されている。

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PMP試験対策【まとめ】


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PMP試験対策 2.3.5 「計画」でやっていること(リスク)

 ここでは、「計画」でやっていることを説明する。

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■「計画」でやっていること(リスク)Keikaku

 「リスク」とは一般に、好ましくないことを指すが、PMBOKでは好機もリスクと定義している。プロジェクトの目標にプラスやマイナスの影響を与える不確実な事象・状態のことを、リスクと呼んでいる。

 リスクは二種類ある。「既知のリスク」と「未知のリスク」で、それぞれ、

  • 既知のリスク:識別・分析済みのリスクで、対応計画を立てることができる
  • 未知のリスク:予測不可。マネジメント・コンティンジェンシー予備を割当てて対処する

とある。重要なのは、「事前に分かっているリスク」は、「何らかの準備をする」か「何も準備せず、監視する」のどちらかになるだけで、その違いは優先度による、ということ。「優先度が高いにもかかわらず、分かっているのに何もしなかった」ことは、決してしない、ということ。また、「このリスク登録簿にないリスクが発生したら、このお金を使う」という予算が、別に割当てられていること(←マネジメント・コンティンジェンシー予備)も重要。

 リスクマネジメントは、一定のフローでまわされる。まず、リスクの識別でブレーンストーミングやSWOT、デルファイ法により、リスクが識別され、定性的リスク分析において、発生確率や影響度を出して、優先すべきリスクとそうでないリスクが分けられる。その後、コストや時間がかかるが、定量的リスク分析において、期待金額やデシジョンツリー分析により、リスクが定量化される。つまり、この対策をした場合のプラスマイナスの金額レベルまで分析される。定量化された優先リスクは、リスク対応計画において、リスクへの対応策が割当てられる。残ったリスクやリスク対応策により発生するリスク(二次リスク)は、低優先度リスクとともに、定例会議の議題に載せられ、監視対象となる。

 あったりまえのことながら、リスクは計画プロセスで全て明らかになるものではない。実行段階でリスクが発見されることもあれば、リスクが現実に発生してしまうこともある。PMI はプロジェクト初期段階でリスクマネジメントを始めることが重要だと説くが、プロジェクト全体で一貫してリスクに取り組む必要があるとも言っている。それぞれ次のように対処させている。

  • 未知のリスクが発見された:リスク分析からのサイクルを回し、影響度・リスク対策とともに報告する
  • 未知のリスクが現実に発生した:迂回策を取り、問題を回避する[p.355:PMBOK]

11.1 リスクマネジメント計画

 リスクマネジメントをどのように取り組み、処理するべきかを決める。プロジェクトを計画する初期の段階で完了すべき。リスクを構造化した体系であるリスク区分、リスクマネジメント方法論、リスク発生確率と影響度の定義などが決められる。

11.2 リスク識別

 どのリスクがプロジェクトに影響するかを見極め、リスクの特徴を文書化する。できるだけ数多くのプロジェクト関係者―― できれば全員―― がリスク識別に参加することが望ましい。1回こっきりで終わらず、プロジェクトライフサイクルを通じて繰り返し行われる。ブレーンストーミン、デルファイ法、SWOT分析、図解の技法(特性要因図、フローチャート、インフルエンスダイアグラム)を押さえておく。

11.3 定性的リスク分析

 発生確率や影響度から見て、リスクの優先順位付けを行う。つまり、何らかの対策を打っておく必要があるリスクと、放っておいて監視だけするリスクとに分け、さらに準備するべきリスクの重要度を決める。さらに、コスト・スケジュール・スコープ・品質といったプロジェクト制約条件に対するリスク許容度も査定する

11.4 定量的リスク分析

 定性的リスク分析で高優先順位のリスクに対し、数値による等級付けを行う。要は、発生確率と影響度をカネに換算する。定性→定量の順に行うが、一度にする場合もある。ユーティリティ理論、期待金額価値分析(EMV:Expected Monetary Value)、デシジョンツリー分析[p.258:PMBOK]、モンテカルロ法によるシミュレーションを押さえておく。

11.5 リスク対応計画

 プロジェクトの目標に対する好機を活用・共有・強化し、脅威を回避・転嫁・軽減するための選択肢を立案し、処置を決定する。好機・脅威の両方に共通する戦略として、受容があるが、実現したら対処する(受動的受容)と、コンティンジェンシー予備を設定しておく(能動的受容)の2種類ある。各リスク対策の責任者(リスク・オーナー)を任命し、リスクの兆候→具体的行動が取れるようにする。その結果、対応策を講じた後も残る「残存リスク」と、対応策をしたがために発生する「二次リスク」が、低優先リスクとともに監視対象に組み込まれる。

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PMP試験対策【まとめ】

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ローマ人の物語VI「パクス・ロマーナ」の読みどころ

 暗殺されたカエサルの「次」のオクタヴィアヌスの話。巨人と比較されるのは仕方ないにせよ、塩婆の視点にかなりバイアスがかかってるように見えるのはわたしの目がゆがんでるからだろう。

■皇帝の陰謀説

 塩野氏からすると、オクタヴィアヌスは「共和政」の解体を『巧妙』に『周到』に『根気』強く推し進めた人物として評されている。彼の打つ施策の一つ一つが、まるではかりごとのような書き方で読まされていると、何か陰謀めいた話にしたいのかしらんと思えてくる。

 例えば、カエサルとオクタヴィアヌスの政治感覚を誉めるくだりがある。

 それでカエサルは、四つの有力な部族に、全ガリア部族間でも指導的な地位を与えた。(中略) カエサルを一度は追いつめたヴェルチンジェトリックスの属すオーヴェルニュでさえも受けたこの待遇ぐらい、カエサルの合理性と政治感覚の冴えを示すものはない。

 カエサル萌えの塩婆だから、これぐらいは普通だ。次に、オクタヴィアヌスの場合。

 そして、何よりもオクタヴィアヌスの政治感覚に目を見張らされるのは、アウグストゥスという尊称の選択である。これも、贈られる側の彼が、周到に考えて選んだ名称であったと確信する。

 なんだか含みのあるいい方だが、後段でその理由を明らかにしている。

 古代のローマではアウグストゥス(Augustus)とは単に、神聖で崇敬されてしかるべきものや場所を意味する言葉でしかなく、武力や権力を想像させる意味はまったくなかった。(中略) しかし、元老院が満場一致で贈ると決めた「アウグストゥス」という尊称だが、実は、元老院議員たちが思っていたほどは権力とは無縁でなかったのだ。

 要は、裏では権力を集中させようと画策しているが、表ではそんなそぶりを見せず(むしろ権力を放棄して)権威だけを得ようとした、と述べている。で、オクタヴィアヌスの言葉「わたしは、権威では他の人々の上にあったが、権力では同僚であった者を越えることはなかった」にケチをつける。この間6ページ。もってまわった言い回しにウンザリさせられる。「パクス・ロマーナ」の巻はずっとこの調子なので、ここでイヤになる読者もいるかと。

■死んだカエサルの歳を数える

 そこで読みどころはこれ→「塩婆がカエサルを誉めてアウグストゥスにケチをつける書き方」に着目ー。歴史上の巨人カエサルと比較するのは気の毒だが、それこそ塩婆は嬉々として書いている。だから、どのページを開いても出てくる仮定文・前提つき条件文にいちいちツッコミを入れながら読んでみよう。

  • 「もしカエサルだったなら~」(頻出)
  • 「カエサルの場合、…だったろう。だが現実は…」(頻出)
  • 「カエサルならば何をどうやろうとも民衆は納得したろうが、アウグストゥスは慎重に進めざるをえなかったのである」
  • 「だがもしカエサルが暗殺されず、パルティア問題の解決が紀元前四四年に実現していたとしたらどうであったろう。極寒の地での流刑生活は十年で終わっていたのである。十年後なら、一万のほとんどは連れ帰れたかもしれない」

■いい歳して結婚もせず独りもんは、『独身税』を払え

 それでは読みどころは塩野「萌え」史観だけかというと、そうではない。15巻で紹介される、「ユリウス婚姻法」が面白かった。少子化対策の法律で、「それなりの年齢になったら、結婚して子どもをつくれ」という意図の元、独身者は税制面での不利が生じていたそうな。

 特に女性は、『独身税』といってもいいぐらいの不利があったらしい。子を産み育てることは国家への奉仕であったため、その義務を果たさないのであれば、私有財産の保護を受ける資格なしと、ということ。上野千鶴子氏あたりにコレを吹っかけて「塩野vs上野バトルトーク」なんて企画は面白そうだが、出版界の面々はそんな度胸というか恐ろしいアイディアは浮かばないだろうなぁ…

 また、ローマ人の死生観についての言及も興味深かった。多神教なトコは親近感を抱いていたが、ローマ人は、「人間」と言うところを「死すべき者」と言い換えていると知って、より親しみがわいた。墓所は街道ぞいに建てるところに、その気質が表れている。墓碑の文章も興味深いものが多く、ローマ人の死生観がにじみ出ている。

  • 「おお、そこを通り過ぎて行くあなた、ここで一休みしていかないか。なに、休みたくない? と言ったって、いずれはあなたもここに入る身ですよ」
  • 「幸運の女神は、すべての人にすべてを約束する。と言って、約束が守られたためしはない。だから、一日一日を生きることだ、一時間一時間を生きることだ、何ごとも永遠でない生者の世界では」
  • 「これよ読む人に告ぐ。健康で人を愛して生きよ、あなたがここに入るまでのすべての日々を」

 最後に。「パクス・ロマーナ」の14~16巻で述べられる、彼女のアウグストゥス観は以下に要約されている。2000年前の人に大きなお世話だよ、と思った方は読むとゲンナリするかも。

 アウグストゥスという人は、政治心理学では極めつきの達人と思うが、なぜか個人の心の動きには無神経な人だった。古代の美的基準では、カエサルに比べれば圧倒的に美男だったが、女にモテたかどうかということになると、さしてモテなかったのではないかと思ったりする。女の感性とて馬鹿にしたものではなく、女とは権力にも美貌にもそう簡単には騙されないものなのだ。

 こんな塩野氏の萌えっぷりにアてられたい人は、ぜひ読むべし。

ローマ人の物語14ローマ人の物語15ローマ人の物語16

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決してひとりでは読まないでください「わたしの人形は良い人形」

Watashino_1 こ れ は 怖 い 。夜読むとオシッコにいけなくなると注意され、「まさかぁ、三十路のオッサンに言うことかよ」などとブツブツ言いながら読んだ ―― で、結論:夜読むと、一人でオシッコにいけなくなるので、注意。

 人並み以上にホラー耐性はあるつもり。角川よりもハヤカワ、ハヤカワよりも創元の方が、「より怖い」と言えるぐらいは読んできた。小説だけでなく、マンガ、映画、グロから霊まで悪食な分、いろいろ楽しめる体質となっている。

 そんなわたしが、ここまで怖い思いをさせられるとは… !

 グロなし、血なし、残虐なし、絵がリアルというわけでもなし。それでも心臓が冷たくなる恐怖にワシ掴みにされる。暖房の効いた部屋でぬくぬくと読んでいるにもかかわらず、自分の吐く息が真っ白になっていくような感覚。

 ジワジワ、ジワジワと首をしめられ、さあッってときにはズバーンと「出る」。この感覚は、「墓地を見おろす家」(小池真理子)や、「たたり」(シャーリイ・ジャクソン)に近い。ホラーは女性の作品のほうが怖いという法則に気づく。

 救いようの無い展開、巧妙な伏線(全て読者に恐怖を与えることを目的としている)、ページをめくりたくなくなる瞬間。半泣きになりながら、嫁さんが同じ部屋にいてよかったと激しく密かに感謝する。

 いちばん怖かったのが「汐の声」。最大級の怖い賛辞を贈ろう、「決して一人では読まないでください」とね。

 「わたしの人形は良い人形」は、yuripop さんの「ゆりとトラウマンガ」[参照]から教えていただいたのだが、良い趣味です、素晴らしいです→ゆりさん。それから、弟の言うことは本当なので注意して→「ジャック・ケッチャムには気をつけろ」

 で、あとはスズキトモユさんのいいつけを守って、山岸涼子作品を渉猟するつもり。
冬こそ、ホラー。しかも、血の凍るやつを。

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ゲームで子育て(どうぶつの森)

 さいきん、「ゲーム脳」のデンパ(電波/伝播)が弱まっているので悲しい。

 トンデモ学会のセンセイたちは、もっと強硬に自論を展開して、世間を騒がせるべきなのに、なんだか萎縮しているようだ。「水からの伝言」や「脳内革命→破産」ネタに負けないよう、頑張ってもらいたい。

 そんなセンセイたちへの燃料として、わたしの子どもなんて、格好の事例になるだろう。親が子どもにゲームを与えているのだから。だいたいパパからして「炎のコマ」をやろうとして捻挫したことあるし (^^

 テレビとゲームは通過儀礼。逃げようたってそうはいかない。むしろ、ゲームとの付き合いをコントロールできるようにしておく必要がある。この単純な事実に目を背けようとする親にとって、「ゲーム脳」は格好の免罪符となっている。そんな親たちにとって、子どもの脳に良いゲームをご紹介。今までは、「ポケモン」や「まちがい探し」をオススメしてきたが、今回はコレ↓

おいでよどうぶつの森 スゴい… 何がスゴいかと言うと、子どもがスンナリ入れたこと。タッチペンによる直感的なインタフェースと、完全マニュアルレスなところ。何が目的なのかすら知らずに、いきなり遊べているのがスゴい。

 いや、ちゃんと「目的」らしきものは、あるにはある。住宅ローンを返済するとか、トモダチをつくって文通するとか、化石の標本を完成させるとか、バラエティ豊かな「目的」が沢山ある。ありすぎるぐらいある。

 自由度の高いゲームなら「ルナティックドーン」や「太閤立志伝」あたりが有名だろうが、それでも「そのシナリオをクリアする」という縛りがある。本作品はそうした縛りはなく、好きな「目的」に向かってコツコツとプレイし、仲間のどうぶつたちとのコミュニケーションを楽しむ。さらに、新しい発見を求めて森を散策する―― その世界にいることそのものを楽しむゲーム

 子どもにやらせてイチバン驚いたのが、タッチペン。操作方法を一切教えていなかったにもかかわらず、タッチペンでドアを開けてしまった。「どうして分かったの?」と訊いたら、「ドアはノックして開けるでしょ、だから、(ペンで)トントンってしたの」だそうな。「ドアの前+Aボタン」思考に凝り固まったパパにはできない発想なり。

 アクションやパズルゲームのような、制限時間や勝ち負けがないところも気に入っているようだ。世界をまるごともらって、やりたいことをやりたいようにプレイできる。「その世界で何をするのか?」を試行錯誤で探っていく過程こそが、このゲームの醍醐味なんだろうなぁ…

 "Hasta la vista,baby"と呟いてゾンビの頭をショットガンで吹っ飛ばしたり、あるいは「わたしもお姉ちゃんみたいに、して」と言わせたりするゲームが大好きなわたしにはモノ足りないけれど、のんびりと世界を味わうロハス(?)ゲームとして傑作だと思う。

 ポイントは「ゲームが悪いのではなく、プレイをコントロールしないことがマズい」こと。どんな本を子どもに読ませるか、どんなテレビ番組を見せるのかを、親や教師がコントロールしたりするように、ゲームもそうありたいものですな。そして、コントロールするだけでなく、一緒に楽しめるような関係(親=子のみならず、親=ゲームも)にしていきたいものですな。

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あなたのマンションが廃墟になる日

あなたのマンションが廃墟になる日 巷を騒がせている耐震偽装設計は決してヒトゴトではないのだが、『犯人』は特定されており、司法での決着を待つ状況に至っている。

 わたしはあまのじゃくなので、むしろ4年後に直面する問題をいま知っておきたい。なぜなら、問題が深刻化するころは、『犯人』はとうに去っており、引き継いだ当事者は被害者ヅラをすること必至だからだ。永住するつもりで購入したマンションが、ローン完済時に住めなくなる可能性に警鐘を鳴らす「あなたのマンションが廃墟になる日」は、非常に参考になった。

 総務省の調査では住宅のサイクル年数は30年(木造は26年)だそうな。国土交通省が2002年に公表した事例では「老朽化」で再建されたマンションの平均築後年数は37年となっている。これに比べて、欧米の住宅サイクル年数は、

 イギリス141年
 アメリカ103年
 フランス86年
 ドイツ79年

 なぜ日本の鉄筋コンクリートマンションは30年少々で壊されてしまうのか? この素朴な疑問から出発し、著者は、老朽マンションの建て替えの厳しい現場、震災復興の過重な負担に粉砕されたコミュニティを取材する。

 取材と深堀りの中で、30年周期でスクラップ&ビルドを繰り返さなければならない「日本的メカニズム」を探し当てる。

 それは、田中角栄の日本列島改造論から始まった土地神話に依存しており、「地価は常に上がり続ける」「景気は常に右肩上がりである」という一時代前の発想を根拠としている。つまり、容量率を上げて建て替え、新しく増えた住戸を販売して再建費を捻出するという手法で、住民の世代交代の時期、政府の景気対策と一致した周期を取っている

 また、著者は、住宅サイクルの短さを文化の違い、すなわち「石の文化」と「木と紙の文化」になぞらえる説明にも、欧州の建築史をあげて反論している。さらに、高温多湿な気候風土の違いからのマンション短命説に対しても、コンクリートの寿命に影響があるのは寒暖差であり、北欧の方が負担が大きい、と反論しており、いちいち説得力がある。

 むしろ、思想の視点に立つなら、「住」をストックとみている欧米と、商品としてしか見れない日本の違いだという。マンションは、そもそも30年で寿命が果てる建物ではない。壊さねば儲からない業界の論理に左右され、まだ居住可能な老朽棟が、経済優先、利権優先のリクツにより、30年でトドメを刺してきたのだという。そのメカニズムが明らかにされず、30年寿命という言葉だけが独り歩きして、老朽化に悩ませるマンションが強引に建て替えられれば、悲劇の連鎖を生む。

 たとえば、近年、3万人を超える自殺者が経済的に追い込まれた最大の要因「住宅ローン」…

  生きているうちに返さなければならない
   │
   └→返せなくなったら、生きられない
       │
       └→返せなくなった
           │
           └→死ねばよい

 確かに、バブル最盛期にローンを組んでしまったセンパイは、「死ねばローンがチャラになる」契約の話をするとき目が光る。ローン完済しても、建物が老朽化しておりとても住めないと考えている。

 では、どうすればよいのか? 本書は問題提起だけにとどまっているのかというと、違う。

  • リファイン建築に代表される老朽建築の蘇生法
  • リースホールドという地価に依存しない土地利用法
  • 土地ではなく、家が資産価値を生んでいる無暖房住宅や外断熱

といった、アカルイミライへのトリガーになりそうな「点」も紹介している。実践者はあまりにも少ない&遠いが、具体名を挙げているので、自分からアクセスできる。本気で考えている人には非常に参考になるだろう。

 戦後、コンクリートで造られたマンションや団地のうち27万戸が、「スクラップ&ビルド」のサイクルとされてきた、「築後30年」圏内に、いままさに入った。2011年にはその数が100万戸に達するという。日本的メカニズムの限界が「団地のスラム化」といった現象としてマスゴミに取り上げられる日は、そう遠くない。

 いまから4年後だ

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