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プロマネ必読!「アポロ13」

アポロ13 「アート・オブ・プロジェクトマネジメント」で強くオススメされてたので読む ―― これはスゴい。ドキュメンタリーとして夢中になって読めるだけでなく、プロジェクトが危機に陥ったときの「べき/ベからず集」しても、ものすごく有効な一冊なり。

 どうしようもない状況、限られた時間、非常に高いリスク、疑わしい解決策…プロジェクトがパニックに瀕したとき、優れたプロジェクトマネージャは何を考え、どう行動するかを知ることができる。本書を通じて学んだ危機管理マネジメントは、次のとおり。

  • プロジェクトが危機的状況のとき、あらゆる手段を使って、自分の感情をコントロールせよ。感情は事実をゆがめ、判断を誤らせ、解決への手段の一つ一つに邪魔をする
  • 「危機」は、すぐに数字にならない。必ずタイムラグが発生している。だから、危険な数値が今出ているということは、既に危機的状況に突入している、ということだ
  • 問題に対処するとき、絶対に忘れてはいけないのは、「いつメンバーを休ませるか」だ。不眠不休はミスにつながり、宇宙でのミスは、死につながる。たとえ宇宙にいかなくても、問題対処の時点で、メンバーは疲弊しているはず
  • 『訓練を通じて彼が身に付けた第一の経験則によれば、飛行機の墜落原因を推定するのに最もいい方法は、墜落機の残骸を直接に目で見ることである』

 一番刺さったのが、「なにかおかしなことが起きた」担当である、ミッション評価室。incident からcritical まで、プロジェクトの進行中には「何かおかしなこと」が発生する。それを解析し、原因を特定し、説明できるようにする専用の担当がいること。

 もちろんプロジェクトの行末を左右するような重大な「おかしなこと」なら、主要メンバーがよってたかってやっつけるだろう。わたしが「感動」したのは、

  a. 不具合の原因を解析し、特定する (ミッション評価室)
  b. 不具合によるプロジェクトへの影響を最小限にする (飛行実施責任者)
  c. 上2つをコントロールし、次の手を決める (主席飛行実施責任者)

 これらに専用のチームを割当てて、役割が集中しないよう、かつ、情報が共有されるようにしているところ。

 もちろんトラブル回避のために原因究明は必要な場合もあるが、原因究明に熱中するあまり、ミッション達成の目的を見失うほうがもっとまずい。原因探索にリソースをかけるあまり、すべきことが放っておかれるおそれがある。

 あるいは、不具合の回避に注力するあまり、トラブル再発・二次災害を招くことがある。原因を特定せずに、対症療法的な対策ばかりだと、いつまでたっても火は消えない。

 同一の不具合を起因としているが、「原因究明」と「影響回避」は、目的がそれぞれ異なっている。

 バグであれ、設計・仕様上のものであれ、重大な不具合が見つかると、「原因究明」「影響回避」、さらには顧客・上長への説明を、同一人物にまかせてはいないだろうか? 彼/彼女が「一番分かっているから」という理由で、その人に委ねては、いないだろうか? これは、わたし自身そーいう目に遭ってきたから分かる。上の3つは、互いに影響しあうため、一人にするにはムリがある。

 プロジェクトが危機的状況に陥り、大きなプレッシャーの中、限られた時間の中でバランスよく判断できるはずがない。たまたま詳しいから・デキるからという理由で、たった一人に全部を任せてしまう。「スーパーマン」ともてはやしても、いずれ限界がくる。これはまずい。

 本書にでてくる宇宙飛行士や管制官のボスは、確かにスゴい能力や権限をもっている。しかし、危機に瀕して全部自分でやろうとせず、それぞれの担当に任せ、その仕事が充分にこなせた後、最終判断を行っている(組織上そういう仕組みになっている) ―― これが、あるべき姿なんだろうなー

 おまえの開発プロジェクトとアポロ計画を一緒にすな!なんてツッコミは当然としても、これは深く心に刻んでおこう。

 アポロ13号は危機的状況を脱し、地球への帰還を果たしているため、結末がどうなるかは、知っている(著者がその宇宙飛行士だし)。それでもラストは胸が一杯になった。ええ、もちろん、涙もろいのは合点承知なんだけど、最後に必ず感動できるスゴ本としてオススメする。

 さて、映画も観てみるとしよう…


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受信: 2007.01.11 21:17

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