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最後の喫煙者

最後の喫煙者 出だしがイカしてる。ワシづかみにされた。

 国会議事堂の頂にすわりこみ、周囲をとびまわる自衛隊ヘリからの催涙弾攻撃に悩まされながら、おれはここを先途と最期の煙草を喫いまくる。さっき同志のひとりであった画家の日下部さんが、はるか地上へころがり落ちていったため、ついにおれが世界最後の喫煙者となってしまった。地上からのサーチライトで夜空を背景に照らし出されたおれの姿は、蠅の如きヘリからのテレビ・カメラで全国に中継されている筈だ。残る煙草はあと三箱。これを喫い終わらぬうちは死んでも死にきれない。二本、三本と同時に口にくわえて喫い続けたため、頭がぼんやりとし、眼がくらみはじめていた。地上への転落もすでに時間の問題であろう。

 カッコよく "The Last Smoker" とすれば映画のように見えるかも。じっさい、「世にも妙な物語」でドラマ化されている。嫌煙運動がバッシングを突き抜けてしまった姿が描かれているが、ベタ過ぎてカリカチュアに見えない。じゅうぶんありうる近未来を見せられているような気分になってくる。

 ええ、かく言うわたしは、うまいぐあいに禁煙というか卒煙に成功しておりマス。やめ方は「子どもにタバコを教える」あたりで書いたが、スモーカー現役のときは、そりゃもう完全中毒だった。

 だからこそ、身につまされるようで共感も忠告もできる。「禁煙ファシズム」なる語にはアンビバレンスな感情がわいてくる。スモーカーバッシングの行き過ぎを不安視する感情と、喫煙という暴力を糾弾したくなる感情の、二つに挟まれる。

 本書では、この禁煙ファシズムの究極の形が描かれている。喫煙者差別が極限まで推し進められた最終形体で、喫煙者は必読やね。スモーカー時代にコレ読んでたら、鼻で笑って新しい一本に火をつけてただろうが、タバコをやめて何年も経ったいま読むと、現実味あふれる予言の書に見える。

 喫煙者を人でなしのように見なして、人でないなら何ヤっても許されると思考停止して、日本人お得意の付和雷同的総攻撃をかける。ターゲットが『喫煙者』だから黒い笑いができようが、対象をハヤリ言葉に代えてみるとシャレにならなくなる。曰く『いじめっ子』、『インサイダー』、そして『○○○○教信者』… さすがのツツイ先生もここまでは書けないだろうなぁ、というか、ここからはモノガタリではなくなってくるね。

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コメント

つ「堕地獄仏法」
詳しくはこちらをどーぞ。
http://www.geocities.jp/nada123jp/film.book.6.html

最近はおとなしくなったけど、アレもソレ同様カルトですから。

投稿: 行きずり | 2006.12.14 19:35

>> 行きずり さん

おお、知りませんでした、ありがとうございます
…ちゃんと書いてたんですね

投稿: Dain | 2006.12.15 22:51

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