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「いい親」が子どもをダメにする

家族力 「いい親」が子どもをダメにする 何をもって「いい親」とするかによるが、センセーショナルなサブタイトルにもかかわらず、著者の言い分はかなり同意できた。

 はやりの育児法を鵜呑みにして、子どもとトモダチになろうとする親がいる。そもそも育児書なんか読み漁ってないで、周囲(特に自分の両親)に相談しなさい、と主張する。著者はかなりのご年配であることを念頭に読むといいかも。

 最初に強く頷いた箇所はここ↓

 全ての基本は夫婦の関係。(理想的には)夫婦が互いに信頼しあい、愛し合っている家庭であることが、子育ての最初の一歩。もちろん事情により片親の場合もあるが、それではダメということではない。「理想的には」を頭につけたのはそのため

 「子どもへのまなざし」[参照]で知ったが、子どもを家庭の中心に据えて、両親が子どもに寄りかかっている、いびつな関係がある。

 それは、子どものことを一生懸命に考えすぎた母親が陥る罠だそうな。わが身を犠牲にすることが、あるべき子育てだという観念に囚われて、結婚生活そのものを犠牲にした結果、子どもの巣立ち同時に人生の意味を見失う ―― 「空の巣症候群」という。子どもが巣立った直後の離婚率が高いのも頷ける。

 次に強く頷いた箇所はここ↓一歩間違えると「地雷」だけれど、このテーマはわたしも嫁さんと何度も話し合った。

 両親共に外で働くことを決意し、子どもを保育所へ入れることによって、家族の力は弱まる。親も子も無用なストレスにさらされることになる。共働きの理由にお金が挙げられるが、正当な理由でなくなりつつある。というのも、妻の収入のほとんどは、世帯にかかる課税率の上昇(妻の収入を加えることによって、世帯の課税区分が上階層へランクアップする)、保育費、医療費、被服費、交通費、そして食費の増加(共働きの家庭では、夫婦のどちらかいっぽうしか働いていない家庭に比べて、外食の機会がかなり多くなる)によって、ほとんど消えていく

 共働きによる収入増と、それにともなう精神的・肉体的な負担を天秤にかける。「共働きなら収入は倍」なんて甘いこと考えていたのは、もう何年前になるだろうか。世帯への課税率の上昇はまさに「ランクアップ」というべきで、思わず目を見張る毟りよう。国は違えども現実は一緒ってことか。

 さらに激しく頷いたのは、ここ↓「しつけ」についてお悩みの方は、ぜひ第2章を読むべし。

 しつけとは何か。流行の子育て法を推進する人が書いた本を読みすぎた親たちは、しつけの成功の鍵は、適切な手立てを選んでうまく使えるかどうか──つまり、しつけとは技術であると思い込んでおり、犬猫のブリーディングと同様の「テクニック」でもってうまくいくものだと考えている

 しつけの最初の一歩は、トイレトレーニングだったり、食卓での振る舞いだったりするため、畜生のしつけと子どものしつけを同一視する親が出てくる。本書はもう少し成長した幼児~児童に対し、「自分の感情をコントロールする」「礼儀正しく振舞う」「出されたものは文句をいわずに食べる」ことを、どうやって身に付けさせるかが書いてある。読めば、「うまくしつけができなくて困っている」「どうやってしつけてよいか分からない」といった悩みそのものが本質的に誤っていることが分かる。

 さらに続けて、しつけの上手な親の例を挙げている。今から数年間、わたしは以下をくり返し読んで忘れないようにしないと。

 子どもをコントロールしようとしたら、必ず失敗する。そもそも、子どもを思い通りにすることなんて不可能なことだから。しつけの上手な親は、子どもをコントロールすることはせず、自分にできること、すなわち子どもとの関係をコントロールしようとする

 子どもは物事の必要性と自分の欲求を混同しやすいため、子どもに何が必要で何が必要でないかは、親が決める。親は子どもにとって必要なものを、子どもが望んでいるかどうかに関係なく、すべて提供し、いっぽうで、子どもがどんなに必要だと主張しても、親の判断に合わなければ、わずかしか提供しない。子どもとの関係をコントロールするために親が決めることは、次のようなこと
  • 親が子どものために何をし、何をしないか。たとえば、子どもの宿題のうち、どんなことなら手伝い、どの程度まで手伝うか
  • 物質的な面で、子どもに何を与え、何を与えないか。つまり、子どもの生活水準を決定するということ。それは必ずしも親の生活水準と同じである必要はない
  • 家の中で、子どもが従うべき規則。たとえば、何時に就寝し、夕食に何を食べるか、どんなお手伝いをするかなど
  • 子どもが悪いことをしときに、どんな罰をどのように与えるか

 最後に。著者に言わせると、わたしもしばしば、子育ての目的を忘れてしまう親の一人らしい。子育ての本当の目的は、子どもを大人に育て上げることだ。わたし自身、自分育てだとか共育とかヌルいことを言っていたことがあった。しかし、ゴールを忘れてはいけない。わが子がこの社会で生きていけるよう、ちゃんとした大人として独立して生きていけるようにすることが、わたしの親としての役目なんだねッ。

 … ここで、その最終目的を忘れてしまった親に育てられて成人したブーメランキッズの話題にしてもいいけれど、今宵はここまでにしとうございます。

  • 子育ての基本原則その一 ――子ども第一ではなく家族第一(何が一番かをはっきりさせる)
  • 子育ての基本原則その二 ――しつけに必要なのは、罰ではなくコミュニケーション。信頼関係を結ぶことではなくリーダーシップ
  • 子育ての基本原則その三 ――子育てとは人を大切にする心を育てること。自尊心を育てることではない
  • 子育ての基本原則その四 ――大切なのは礼儀を教えること。技術を習得させることではない
  • 子育ての基本原則その五 ――大切なのは責任感を育てること。よい成績をとらせることではない
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コメント

良い内容でした。

>信頼関係を結ぶことではなくリーダーシップ
個人的にはここが新しい発見。
信頼関係ではなく、リーダーシップ。
いまだに完全に理解できてない自分がいますが、
心に残るフレーズ。もうちょっと反芻しよう。

個人的に子育てで気をつけてるのは、
「自分が楽しいかどうか。」
ということです。

例えば子供に「本をもっと読みなさい」と声をかけるよりも、
自分が誰より「本を楽しそうによんでいること」が何より重要だと
おもってます。
「英語をしなさい」「礼節をわきまえなさい」などとは言いません。
自分たちが「英語を楽しく話し」「礼儀正しく」を楽しく表現していることを何より大切にしてますね。

なので個人的には、仕事を楽しいと思えるなら、
共働きをすればいいし、子育てのほうが楽しいなら
そうすればいいとおもってたりします。

笑顔でいられる時間が1秒でも多いのなら、
きっとうまく行く気がします。
というかそう信じています。

なにか考えさせられるエントリーでした。

ありがとうございます。

投稿: maraki | 2006.10.21 20:22

>> maraki さん

  > 個人的に子育てで気をつけてるのは、
  > 「自分が楽しいかどうか。」
  > ということです

 ご指摘の通りだと思います。「自分が楽しいか」は、親業に限らず仕事にも通じますね。そうなるように工夫をすることが Lifehack の本質ですね。

 わたしの言葉遣いや所作を上手にマネする子どもを見て、ガクゼンとしたことがあります。「子どもは親の言うことは聞かないがマネすることは抜群に上手い」といいます。maraki さんの例で言うならば、子どもは、「親が楽しそうに本を読んでいる」ことを見て、本を読む楽しさを知るようになるのでしょう。

 だから、子育ての最終目的が「子どもを大人にすること」なのであれば、親であるわたし自身が、まず第一にマネされても恥ずかしくない「りっぱな大人」を見せないと… と思っています。その上で仕事を、生活を、人生を愉しんでいる姿を見てもらえれば最高ですね。

投稿: Dain | 2006.10.21 22:30

単身赴任から戻って1ヶ月。私にも家族にも前より笑顔が増えました。一緒に居れる時って今しかないから、少しくらい収入が減って(贅沢できくて)自分のプライベートを犠牲(かな?)にしても良いと思えます。
それにしても 目的を明確にする事は大事ですね。仕事でもプライベートでもそうですが、のめり込むあまり、思い入れるあまりに本来の目的を忘れて突っ走ってしまうものです。オークションで目的のモノを安く買うつもりが、競争に勝つ、あいつにゃ負けねーと壺にハマっていくのが私の何時ものパターン。お前が大人になれって...orz

投稿: 鉛のZEP | 2006.10.28 16:02

>> 鉛のZEP さん

 > 目的を明確にする事は大事ですね。仕事でもプライベートでもそうですが、
 > のめり込むあまり、思い入れるあまりに本来の目的を忘れて突っ走って
 > しまうものです

その通りだと思います。子育ての場合、本書にある一文

 「子育ての本当の目的は、子どもを大人に育て上げることだ」

に蒙を開かされました。いままでのわたしは何をやっていたんだという気持ちになりました。自分の子どもを大人にするための仕事であり生活であるんだなー、と思います。

投稿: Dain | 2006.10.29 00:12

子も親になると、自分がされた”子を思うあまりの親の暴走”を頭で理解できるようになり、ありがたく思えたりしますよね。そんなに俺のことを...と思える事も多々あります。
理論だけでは無いのです。
とは言え、暴走の度が過ぎると人的に壊れたり死んでしまったりしますから、こういう書を読んで振り返り戒めるのも必要かと。
>いままでのわたしは何をやっていたんだ
の解を出すのは未来のDainさんのご子息でしょうね。きっと型通りでない、ちゃんとした解を導き出しますよ。
ではでは(。・_・。)ノ

投稿: 鉛のZEP | 2006.10.29 22:12

>> 鉛のZEP さん

 自分の行いを振り返るためにも、こうした本を手にすることは良いことだと思っています。もちろん鵜呑みにしないよう気をつけていますが、参考+軌道修正になります。親行をするようになってから、自分の親の苦労+ありがたみが分かるようになりました。おそらく、自分の子も同じなんでしょうね…

投稿: Dain | 2006.10.29 23:16

チャチャで申し訳ありません。

>蒙を開かされました。

蒙を【啓】く

が正しいです。

投稿: | 2006.11.04 00:24

>> 名無しさん

 ありがとうございます、まさにケイモウの「啓」ですね

投稿: Dain | 2006.11.04 22:56

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受信: 2006.10.21 19:45

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