火事になる前に読んでおきたい「火事場プロジェクトの法則」
問題プロジェクト・失敗プロジェクト・デスマプロジェクト ── 呼び名は沢山あれど、振り返ったとき、ああすればよかった、こうすればよかったという反省や後悔(?)は、これまた沢山ある。
「あの営業連中のコトバを鵜呑みにしなければ…」
「新技術に手を出す範囲を限定しておけばよかった」
「もっと顧客に張り付いて仕様を搾り出しておくべきだった」
「なんであのとき、SOSをださなかったのか!なんで問題を放置したんだ!」
…
過去のプロジェクトを眺めたとき、問題点はいくらでも出てくる。おそらく携わった人の数だけ出てくるだろう。
それにもかかわらず、これから出くわしたとき、どうすればよいかは、分からない。なぜなら、どんな問題に遭遇するか分からないから。プロジェクトが特殊性、一時性をもつように、それにまつわる問題も同様に、特殊性をもつ。したがって、その解決策は、常にその問題専用の解法でしかない ──
── これは、本当だろうか?
確かに、プロセス、方式、メンバー、リソース、ビジネス環境によって問題の原因は違って見えるかもしれない。しかし、実際にシステム開発プロジェクトが破綻するとき、どこかで見たような/聞いたような/読んだようなスメルを放つのはなぜだろうか? それは、プロジェクトで顕在化する問題は人に因るからだ。
システムは人がつくるもの。だから、システム開発の問題は、人の問題。これは、デマルコ著「デッドライン」[参照]で気づかされたが、本書ではもっと体系立てて、4つの切り口で捉えている。
・バードビュー(鳥瞰・俯瞰)
・コミュニケーション(情報と意思の伝達)
・エモーション(相手を思いやる気持ち)
・フィードバック(後悔でなく反省)
この4つの視点から、プロジェクト失敗の症状と原因を見通している。ともすると、どれかに拘泥しがちだが、バランスよく配分されている。この視点を使えば、PMだけでなく、誰でもプロジェクトのヘルスチェックができ、症状の裏側にある本当の原因を探ることができる。
さらに、「人の問題」とした瞬間、誰か(安請合営業、無理難題顧客、無能上司、技術馬鹿)を悪者にしてしまえば済む、という落とし穴が待っている。しかし、本書では「誰か」を探して非難するよりも、まず自分ができることは何か? を問いかける。この姿勢は見習いたい、というか見習うべき(→わたし)。
デスマ対策を謳った書籍は多かれど、開発現場の視点からここまで明快に解き明かした本はないだろう。失敗プロジェクトから「脱出」したり、「間違いだらけ」と論評したりする本は、それなりに参考になるものの、「ボクのせいじゃないモン」という言い訳がこうばしい。その一方で、本書からは「人の問題」≒「それは自分の問題かもしれない」と謙虚に向き合おうとしている。
プロジェクトが火に包まれるとき、本どころではない。寝る時間どころか、うんこしている時間すらないんだぜ!だから、そうなる前に読んでおきたい。仕事に追い詰められると、正気が保てなくなる。「おまえのバグだゴルア!」と殴りあうこともある(わたしじゃないよ!)、あるいは、「わびるならそこで死んでみろ!」と顧客に罵倒されることもある(わたしじゃないよ!)。悪臭にまみれて殺伐とした中、くじけそうなとき、本書は心の支えになってくれるかもしれない。根性論は禁物なんだけど、再読することで勇気がわいてくるかも。
… というわけで、いまのうちに読むのが吉。

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