子どもに絵本以外を与えてみる:「地球家族」
ひらがな・カタカナが読めるようになって嬉しい。読み聞かせせずとも勝手に読んでくれるのでありがたい。しかし、いつまでも「ぐりとぐら」と「ウルトラマンメビウス」では能がないので、ふつう読まないような本を与えてみる。
…とはいうものの、字よりも絵・写真がメインで、何らかのテーマ・メッセージが強力なやつが面白かろう。今回与えたのはコレ→「地球家族――世界30か国のふつうの暮らし」
何が楽しいかというと、以下のテーマで「ふつうの暮らし」を撮ったところ↓
「申し訳ありませんが、家の中の物を全部、家の前に出して写真を撮らせてください」
目を疑うが、ホントに全部出している。極限までモノが無い家もあれば、モノだらけでカオスな家もある(どこの国かは言わずと知れている)。あるいは、モノじゃなく家畜も一緒に写っている家もある。
もちろん【家の中】の写真もあり、撮影者が泊り込んで写しだした生々しい生活模様もある。しかし、これらは壁やドアに阻まれて部分的に切り取られた断面でしかない。これを全部【家の外】に運び出して一枚の写真とすることで、その国で「ふつうの生活」をするために必要なモノが全部見えてくる。
しかも、さまざまな国の「ふつうの生活」を一枚の写真を通して見ることで、「ふつう」の違いがハッキリと見えてくる。あたりまえなんだが、「ふつうってのは国による」単純な事実に気づく。"国"に語弊があるなら"地域"と言い換えてもいい、自分が過ごしているこの場所は「ふつう」じゃないんだーと気づくかなーと期待しながら与える。
結果、かなり好奇心が刺激されたようだ。写真集といえばクジラや救急車やウルトラマンの奴しか見たことがないから、興味深く見てくれる。こまかいキャプションは飛ばして惹かれる写真だけを見て話し合う。
「茶色い人(黒人)がたくさんいるー」
「(我が家には)ウシがいない」
「これは何? →スーパーファミコン」
原題"Material World"(物質世界)の名の通り、モノが溢れる先進国と、鍋釜ぐらいしかない途上国との暮らしが鮮やかに対比される。実をいうと、この撮影プロジェクトの始まりは、日本のウキタさん一家だという。
(p.55 : September 2006 Foresight より)
この写真家は、「ふつうの家の食材を見せてもらう」企画でも出している。こいつも面白そう→「地球の食卓――世界24か国の家族のごはん」:世界24か国30家族の食卓を取材、1週間分の食材600食と共にポートレイトに収めた、現代の「食」の世界地図を描く壮大なプロジェクトだそうな。いわゆる先進国になればなるほど、生鮮食品がなくなり、パッケージ『商品』が食卓にならぶ光景なんじゃぁないかと。子どもそっちのけでわたしが没頭しそうだな。食卓における「豊かさ」とは? ――食材の多様性/生鮮食品の割合/『パッケージ商品』の割合で測れるのか?―― といったテーマで考え込むような予感。
今まで与えた「絵本以外の本」
ビルやジャンボジェットなど、デカいモノが大好きな子どもに、ふだん目にしない大深度地下の巨大構造物・設備の写真集を見せる。
特殊な目的をもった設備を見ていると、モノの塊ではなく、巨大生物のように見えてくるから不思議だ。場所柄なのか、ライトの具合がおどろおどろしくって良い。子どもは目をギラギラさせて見入っている(魅入っている)。
テレビからも路上からも「死」が注意深く取り除かれている現在に違和感を抱いて子どもに読み聞かせる。
「死」ってーのは、もっと身近なものだよ、なんたって、キミは他の生きものの「死」を食べて生きているんだから――なんてメッセージを込めて読み聞かせる。最後の写真にわたしがビビる。
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コメント
地球家族を子どもと楽しくみました。
私の書いたものの中に、こちらの記事で「地球家族」を
知ったとリンクさせていただきました。
ありがとうございました。
投稿: ture | 2006.09.18 10:06
> ture さま
ありがとうございます。
「地球家族」は子どもに与えるつもりで親が読みふけってしまうという本ですね。続編の「世界20か国の女性の暮らし」は、男性のわたしにはけっこう衝撃的でした。いわゆる男女格差ではなく、女女格差は地域性にハッキリ依拠していることが分かります。
投稿: Dain | 2006.09.18 21:48