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子どもに死を教える4冊目

 テレビからは、注意深く「死」が除かれている。

 高速道路で居眠り運転した結果の映像には、車の残骸(よくて黒染み)しか残らない。ボウケンジャーは不死身だし、ツインストリームスプラッシュの直撃を受けても浄化(還元?)されるだけ。

 おかげでわが子が見かける「死」は昆虫の死骸か、道端のペチャンコな轢死体ぐらい。こないだ家族みんなで参列した葬式ぐらいかね、ちゃんとした死体を見たのは。今も昔も同じ密度で存在するにもかかわらず、「死」が見当たらない。子どもに死を教える最高の現場は葬式だな、などと言ったら不謹慎だが、そうめったにあるものでもなし。

 ガッコのベンキョも大事かもしれんが、誰もが必ず死ぬことを、そして自分も例外ではないことを受け止め、その上で「よく」生きていくことを考えてほしーなー、などと企む馬鹿親は、子どもに死を教える本などを探しては読み聞かせる。

 その選りすぐりが、「子どもに死を教える三冊」。どれもメッセージ性が高く、究極のところは次の一文を伝えることを目的としている。

あんたまだ生きてるでしょ だから、しっかり生きて、それから死になさい

 そうじゃないんだ、わが子は幼い。他者の死をどう受け止めるか、自己の死へどう向かっていくか、といったものではなく、そもそも死とはどういうものなのか、を理解してもらいたい。良い本はないかなーと探していたら、あった。

死を食べる 写真絵本とでもいうのだろうか。例えば、車にはねられたキタキツネの死骸。それを2時間おきに自動シャッターで撮った連続写真。冷たくなったキツネの体からダニが離れ→ハエが卵を産みつけ→ウジがわく。肉食の昆虫(スズメバチとか)もやってくる。音と匂いは伝わらないが、腐臭の中の饗宴。食い尽くされた後は、土に還る。

 勇気の人差し指ごっこ(ただし犬の腐乱死骸)で遊んだことがあるので、臭いに辟易している著者のコメントに微笑む。たしかにひどい臭いだろう。しかしそれは、他の生きものを呼ぶためなのかも、と思ったり。

 グリーナウェイ監督「ZOO」か、乙一著の「ZOO」を観たか読んだ? あれはフィクションで屍体だったけれど、こいつはリアルで動物だ。面白いのは、どれも

 1. まず目玉
 2. 次に頭(脳みそ)と内臓(はらわた)
 3. 最後になって、筋肉・腱・骨

 ――の順に食べられること。あたりまえだって? 傷みやすい(=腐りやすい)ところから早めに食べるのは基本だって? そうだね。そんな写真ばかり続く。あ、人間のやつは無いから安心して。そんな写真をずっと眺めていると、次のことに気づくかもしれない。

 生きているものが死ぬと、こうなる
 生きものは、死を見つけて、食べる
 生きものは、死を食べることで、生きている

 できすぎかね、「死を理解することで生きる原因を見いだす」をまさに地で行く展開と思ってしまうのは。誉めすぎかも。それでもラストの○○の写真にはまいった。まさにそうキタか――!! とズシンと腹にきた。うん、確かに↑のメッセージを伝えるにはこのラストでなきゃ。

 …気味悪がっている嫁さんをヨソに、子どもに読み聞かせる。屍(しかばね)を忌み嫌う刷りこみがされてないので、意外と素直に受け止めてくれる。

 ちなみに、オトナには特殊清掃「戦う男たち」をオススメする、かなり強く。

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コメント

古くから、九相図・九相詩なんてのもありますね。
ttp://www2.library.tohoku.ac.jp/kano/05-000959/05-000959.html

投稿: 通りすがり | 2006.08.16 13:13

>> 通りすがり さん

 おお、「九相図」というのですか。見たことはあったけれど、名前を知りませんでした。ありがとうございます、おかげで色々調べることができました。夢野久作「ドグラ・マグラ」に出てくるとありますが、既読なのに覚えていない…

投稿: Dain | 2006.08.17 00:46

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