子どもに「タバコ」を教える
5年前のわたしは、楽しくタバコを吸っていた。紙巻・パイプの両刀使い、喫煙ルームで仕事するヘビーなスモーカーだった。酒とオンナはやめられても、こればっかりはやめられない、世界で最も楽しい(ホッとする、安心できる、至福の)時間は、タバコに火をつける瞬間だと信じてた。
そんなわたしに、ある人が訊ねた。「じゃ、あなたの子が大きくなったら、タバコを教えるんだね。その味わいと素晴らしさを伝えるんだ。そして、あなたの子も喜んで一緒に吸うようになるに違いない」
その人の名はアレン・カー、「禁煙セラピー」でこの問いを投げかけられ、禁煙(というか卒煙)のきっかけとなった。以来、タバコとは縁のない人生を送っている。それはそれでメデタシメデタシなのだが、この話が終わったわけではない。
そう、子どもに「タバコ」を教えておかないと。メディアや環境から刷り込まれる前に、ちゃんと教えておかないと。そのヒントは同著者の「子どもにゼッタイ吸わせない禁煙セラピー」にある。
学校では、「タバコ」とは何であるかを教えない。タバコの害を説き、真ッ黒な肺を見せるだけ。それじゃ半分だ。好奇心が湧いて「ボクはそうならない」と思ってオシマイ。あたかも、交通事故現場の写真と一緒。陰鬱な気分になるだけで、どうすれば回避・予防できるかは分からない。家から一歩も出ることなしに、関連する一切を遮断して生きていくつもりならそれでもいいが、そういうわけにもいくまい。だから、タバコの本質を伝えないと。
タバコの本質は、合法的な麻薬だ。タバコなしの自分には何かが欠けていることを常に感じさせ、タバコを身につけていないと、パニックに陥る。タバコを吸うのはタバコが楽しいからではなく、心の中の不安感や渇望感が一時的に満たされるため。そして、その不安感や渇望感は、さっき吸ったタバコが作り出したもの。
喫煙とは、頭を壁に打ち付けて、それをやめたときのホッとした気持ちを楽しむ行為と一緒。タバコがリラックスさせるのは薬物の禁断症状が緩和されるからホッしているに過ぎない。タバコがストレスを和らげているのではない。一回前に吸ったタバコのニコチンがストレスを引き起こしているんだ。
この事実を理解してもらうために、たっぷりタバコを吸わせる必要なんて無い。悪友たちに勧められ、好奇心もあって、最初の一本に火を点けたことを思い出そう。今でもハッキリと覚えている。マイルドセブンだった、冬の日だった。そのとき自分がどう感じていたか、そして今、どんなに後悔しているか、子どもに語ってみよう。
タバコが合法的な麻薬である限り、スモーカーはこれからも生産されていく。彼らの立場を配慮しつつ、自身が罠にハマらないように付き合っていく必要がある。わたしは脱出できたが、わが子は最初からかからないようにしたい。
「ノンスモーカーの子なら、絶対タバコを吸わない」なんて希望的観測に過ぎない。子どもがタバコを吸うようになるか否かは、今のわたしに懸かっているんだ …なんて気合を入れていたら、嫁さんの一言で済んだ。歩きタバコの人を指して
「あれは毒を吸っているの、煙を吸い込んじゃダメよ」
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コメント
嫁GJ!
投稿: | 2006.06.16 15:33