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IT失敗学の研究

 2つの意味でたいへんタメになった。ひとつめは、破綻プロジェクト事例集として。ふたつめは、「くれない君」の言い訳の反面教師として。

「動かないコンピュータ」と不条理プロジェクト

 日経コンピュータの「動かないコンピュータ」なら比較的単純なストーリーだ。さまざまな要因で初期の目的を達成できなかったプロジェクトだからだ。予期しない不具合や無謀な計画が原因なのだが、通常これらは事態を収拾するための「火消し」が続き、なんらかのエンディングがある。『IT失敗学の研究』は違う。曰く「最初から動かす気がなかったし、動くはずもなかった」「どうみても計画に合理性がなかった」「危ない危ないと思っているうちに破局を迎えた」…といった不条理プロジェクト集だからだ。

 したがって、「動かないコンピュータ」というエンディングすら迎えない。どう見ても不可能なのに、予算がつくからとムリに存続させるプロジェクトや、検収・納品→動かしてみて大問題→責任者ケツまくり脱兎といったプロジェクトなど、より生々しい例が沢山載っている(Σが最たるものだが、残念なことに入ってなかった)。

破綻プロジェクトの事例集

 本書は30ものプロジェクト破綻例を、以下の3つの観点から切りこんでいる。

    1. 無責任なユーザー経営者
    2. 頼りなき情報システム部
    3. 実力不足のベンダー

 なるほど、本書によると、プロジェクト破綻原因は、ユーザー、(ユーザーの)情報システム部、ベンダーと3者に分類できるらしい。例えば「ユーザー」が原因の破綻プロジェクトには、こんなのがある。

  • ユーザーが無責任な行政だった例。選挙のスローガンとして「ITによる行政の効率化」を掲げたが、いざ当選したら、単に職員へのPC配布にとどまった。税金でベンダーが肥え太っただけ。「効率化」について議会で追及されたら「IT環境の整備」として目的がすり替えられた…
  • 情報システム部が情けない例。通信コストを下げるためにシステム更改をしたいのだが、元のシステムの通信方式の見積もりの甘さが露呈して、責任問題となってしまうため、言い出せないでいる事例
  • 現場の声を無視し、ユーザーの言うとおりに作ったら、非効率コスト増となることは目に見えているのだが、ベンダーとしては儲かるので、良心はちょっと傍へどいてもらって受注する、という事例
  • レガシー更改プロジェクトで、テストまでトントン拍子に行ったけど、準正常系ルート(exception 扱いしない例外ルート)がゴソっと抜けていて、要求仕様すら挙がっていなくて、「聞いてないよ!」と叫ぶ(でも随意契約なのでケツまくれない)事例←これは本当に痛いが、沢山見かける

 あらあらまあまあ沢山ある。勉強になったぞ。例えば、役所相手のプロジェクトは、「隠し仕様」「3年でメンバー交代」などで、役所プレミアムを受注額に上乗せしておくべきだとか、サンクコスト(sunk cost)は文字通り、埋没した原価であって、サルベージそのものがムダな運用コストを積み上げることになる。だから過去の投資を盾に存続にこだわる連中にはサンクコストを「見える化」してやりゃいいとか…貴重な気づきが得られた。

「くれない君」の逆襲

 しかしだ、読んでいるうちに次第に不快になってきた。いや、破綻プロジェクトを見せ付けられたからではない。行間に潜む「書き手」の言い訳が鼻についたからだ。もう一度、本書の切り口を見てみよう。

    1. 無責任なユーザー経営者
    2. 頼りなき情報システム部
    3. 実力不足のベンダー

 この3者のどこにも、無能なPM、無責任な営業、ダメSEが入っていないことを注意しておきたい。なぜなら、本書を書いた人が相当するからだ。確かに「PMにもっとコミュニケーションスキルがあれば」だとか「SEが感情的になりすぎて」といった言い訳がましい記述は出てくるが、経営者やベンダーを無能呼ばわりしているワリには、PMやSEは「優秀な」連中しか出てこない。本当か?

 優秀なPM・SEが投入されたにもかかわらず、プロジェクトは破綻した。理由は? 理由を書く人は、当然自分に責が及ばないように書く。あるいは予めヒューマンファクターを挙げ、自己の能力不足へ疑いが及ばぬように書く。○○しなかった経営陣が悪い、△△すべきだったベンダーが悪い、□□してくれなかった情報システム部が悪い…へへっ、わたしにはよく聞こえるよ、ボクは悪くないんだ!○○してくれなかったからんだ!ボクのせいじゃないんだモン!という叫びが。

 そういう連中が書いた記事なんだなー、と行間読みながらニヤニヤ。どうしてそんなことが分かるかって? そりゃ、叫んだことあるからに決まってるでしょー

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コンピュータの名著100冊

 仕事でコード書いてた頃の話。

 机上に「本」というメディアは無かった。プログラミングといえばお手本のコピペ&手直しで仕上げてた。だから、せいぜい入門書やリファレンスといった辞書的なやつだけで、3年もすれば「古い」と引き出しの中へ。

 だから、いつまでたっても上手なのは「お作法」だけ。あたりまえだ。仕様を実装したコードに「似た」コードやパターンを探し出す→コピペがプログラマの仕事だと思ってたから。ネットの情報が「全て」であって、「考える」とは、「いかにお手本に合わせるか」だったから。

 プログラマというよりも、むしろ「コーダー」。その辺は「プログラマになれなかったわたし」[参照]に書いた。

 ここでは、「コンピュータの名著・古典100冊」の既読リストで恥さらし。いかにちゃんとした本を読んでいないかがよっく分かる、なさけない。

 本書はプログラミングに限らず、ソフトウェアエンジニアとしての liberal arts に相当する書籍を紹介している。時間を経て価値が残る「古典」もある。全部オススメというわけにはいかない(なんせ初めて知った本も沢山ある)。しかし、IT業界で働くあなたの足腰を鍛えてくれる良書がたくさん見つかることは請け合う。

 ITだWebだと浮かれ騒ぐのは世間サマだけにしておこう。表層がいかに変わろうとも、コンピュータの原理は変わっていない。Webがどんなに進化しようとも、コミュニケーションの根っこは変わらない。現場の本質は変わらないのだ。変わることに浮ついて、根っこまで流されないように自戒を込めて。


    ■歴史

  1. 計算機の歴史 パスカルからノイマンまで(ゴールドスタイン)
  2. 誰がコンピュータを発明したか(アリス・R・バークス/アーサー・W・バークス)
  3. ワークステーション原典(Association for Computing Machinery)
  4. UNIXの1/4世紀(ピーター・H・サリュース)
  5. インターネットの起源(ケイティ・ハフナー/マシュー・ライアン)
  6. コンピュータ史(小田徹)
  7. 計算機屋かく戦えり(遠藤 諭)
  8. パソコン創世記(富田倫生)
  9. 情報の歴史 象形文字から人工知能まで(松岡正剛/編集工学研究所)

     全滅。ぜんぶ未読。コンピュータの起源だの歴史だの知ったって、目の前のコードには役に立たない。だからこの分野は全くチェックしていなかった。インターネットの起源が軍事用だなんてトリビアネタでしょうに、と考えていた。研究材料かトリビアか、あるいは「そんな時代もあったね」といつか笑って語り合うためか。

     しかし、これからどっちへ向かうかは、どういう経緯で今に至るかの演繹だから、俯瞰的に状況を把握するため役立つ…のか、分からない。

     仮に、「コンピュータ史」という分野があるのだとしたら、それは、コンピュータを分解して→「ハードウェア」「ソフトウェア」の両面から起源と変遷をたぐるものになるだろう。そんな視座なら上記のリストは妥当かもしれないが、あまりにも学問的。むしろビジネスの視座を取り込んだ「ソフトウェア企業の競争戦略」から見たソフトウェア企業の歴史の方が興味深い[参照]。本書は、ビジネス競争戦略の観点からコンピュータ企業をリサーチした集大成。「日本のプログラマの品質は世界最高の水準以上にも関わらず『良いものを作れば売れる』主義を信奉するあまり、ビジネスの本質から離れてしまっている」が強烈なり。

    ■人物・企業

  10. マイクロコンピュータの誕生 わが青春の4004(嶋 正利)
  11. IBMの息子 トーマス・J・ワトソン・ジュニア自伝(トーマス・J・ワトソン・ジュニア)
  12. 未来をつくった人々 ゼロックス・パロアルト研究所とコンピュータエイジの黎明(マイケル・ヒルツィック)
  13. ブルーマジック : IBMニューマシン開発チームの奇跡(ジェイムズ・クポスキー/テッド・レオンシス)
  14. マッキントッシュ物語 僕らを変えたコンピュータ(スティーブン・レヴィー)
  15. アラン・ケイ(アラン・C. ケイ)
  16. 実録!天才プログラマー(スーザン・メイヤーズ)
  17. マイクロソフト ソフトウェア帝国誕生の奇跡(ダニエル・イクビア/スーザン・L・ネッパー)
  18. インサイドインテル(ティム・ジャクソン)
  19. スーパーコンピュータを創った男 世界最速のマシンに賭けたシーモア・クレイの生涯(チャールズ・J.マーレイ)
  20. フリーソフトウェアと自由な社会(リチャード・S・ストールマン)
  21. それがぼくには楽しかったから(リーナス・トーバルズ)

     これも全滅。「ビル・ゲイツ未来を語る」じゃダメ? 時代や技術と人がシンクロして、その技術の代名詞としてのみ記憶に残っている。「闘うプログラマー」でWindows-NTを開発したデビッド・カトラーがスゴいアツい。

    ■ドキュメンタリー

  22. コンピュータ犯罪(ドン・パーカー)
  23. 暗号化 プライバシーを救った反乱者たち(スティーブン・レヴィー)
  24. メディアの興亡(杉山隆男)
  25. ハッカーズ(スティーブン・レヴィー)
  26. ハッカーズ大辞典(エリック・S・レイモンド)
  27. カッコウはコンピュータに卵を産む(クリフォード・ストール)
  28. 欺術 史上最強のハッカーが明かす禁断の技法(ケビン・ミトニック/ウィリアム・サイモン)

     「コンピュータ犯罪」にソソられる。それも一般の愉快犯からのクラッキングではなく、インサイダーの方。マスゴミが嬉しそうに垂れ流す「コンピュータ犯罪」は稚拙なものばかり。(わたしなら、もっと「ちゃんと」やるのに)スゴ腕のプログラマがマジメに取り組んだなら、痕すら残さないから、真の意味で完全犯罪なんだろーなー…とぼんより考えたり(もちろんわたしましませんぞ、良い子だから)。

     「欺術」は読みたいリストにある。コンピュータやネットワークの脆弱性を狙った、いわゆる「正攻法」のクラッキングではなく、ソーシャルエンジニアリングのクックブックとして読みたい。ハードウェア・ハッキングからショルダーハッキングまで、「非」正攻法はどういったものがあるか、非常に興味あり。以前のエントリをもっと深堀りできそう。

      悪のプログラマ[参照]
      悪のプログラマ―――もっと冴えたやりかた[参照]

    ■思想

  29. ゲーデル、エッシャー、バッハ(ダグラス・R・ホフスタッター)
  30. 心の社会(マーヴィン・ミンスキー)
  31. コンピュータには何ができないか 哲学的人工知能批判(ヒューバート・L.・ドレイファス)
  32. 思考する機械コンピュータ(ダニエル・ヒリス)
  33. メディア論(マーシャル・マクルーハン)
  34. ビーイング・デジタル(ニコラス・ネグロポンテ)
  35. 生きのびるためのデザイン(ヴィクター・パパネック)
  36. 誰のためのデザイン?(ドナルド・A・ノーマン)

     [東大教官がすすめる100冊]でリストを作ったが、ここにも「ゲーデル、エッシャー、バッハ(10位)と誰のためのデザイン?」(93位)が出てくる。コンピュータを思想的な面からとらえるには外せない書なんだろう。非常に挑戦的な題の「コンピュータには何ができないか」はぜひ読みたい。

     「ゲーデル、エッシャー、バッハ」は、いわゆる reflexive(再帰)および自己言及がテーマ。

     ゲーデルの不完全性定理、チューリングの定理、人工知能の研究が渾然一体と結び付けられているとのこと。エッシャーのだまし絵やバッハのフーガはこれらをつなぐメタファーとして位置付けられている。分かったようなフリして書いてるが、手にとって眺めたことぐらいしかなく、読んでも頭に入っていない。何度も味読して自分で噛み噛みしなけりゃ「読んだ」ことにならないだろう。これ読んで面白がる人は、いわゆる「頭がいい人」、知性的な人なんだろうなぁ…

     「誰のためのデザイン?」は、ぐっと敷居が低くなってユーザーインタフェースの本。ようやく既読本が。

     誰だって心当たりがるに違いない→「引いて開けるドアを押してしまったり、押して開けるドアを引いてしまったり、横に滑って開くドアに正面から突っ込んでいってしまったり」 ←これらは普通の人の「うっかり」なのだろうか? ドアなら突き指やデコのコブで済むが、電話機だと? コンロなら? 人間による「操作ミス」でくくられてしまうが、本当にそれが原因なのだろうか? という疑問に真正面から取り組んでいる。

     これが類書より頭一つ抜きん出ているのは、コンピュータのGUIや標識の記号論に限定していないところだろう。「動作や機能の本質は、その形態に表れる(のが良いインタフェース)」を、ドアノブからパソコンまで、徹底的に追求している。認知科学者のデザイン論として、あるいはアフォ-ダンスの実論として読める。

     「コンピュータには何ができないか」は、人工知能研究の可能性と限界を、哲学的な根本問題にまで遡って論究した、反AI論の古典。

     世の中の、それこそありとあらゆる事象は批判にさらされているにもかかわらず、コンピュータについてはあまり聞かない。やれやれドンドン、「できること=やれること=やってもいいこと」の三段論がまかり通っていて、ストップをかけている(かけようとしている)人は見当たらない。あ、「ネット有害論」のような限定化されたやつじゃなく、もっと哲学的な視点からの批判のことよ。本書がこれに相当するのじゃないかと期待。ちなみに、「コンピュータには何ができないか」とは、「コンピュータは何ができないのか」(能力)のことではなく、「コンピュータがしていいことと、してはいけないことがあるのか? あるならその境界は何か?」(許可)のことだと勝手に読み替えている。

    ■数学/アルゴリズム

  37. コンピュータの数学(グラハム/クヌース/パタシュニック)
  38. いかにして問題をとくか (G・ポリヤ)
  39. アルゴリズムの設計と解析(A.V.エイホ)
  40. アルゴリズムとデータ構造(ニクラウス・ヴィルト)
  41. データ構造とアルゴリズム(大野義夫)

     これも全滅。これは、わたしが「コーダー」だったことをハッキリと明らかにしている。かっちょいい言い方をしてもいいなら、仕様をコードに書き写すのがコーダー、仕様から最適なアルゴリズムを創りだすのがプログラマ、になるのか。

     「いかにして問題をとくか」は原書が1940年、翻訳が1954年出版と、どえらく古いモノ。問題解決の本質はテクノロジーがいかに進もうと、変わっていないことを確認するために、読むべ。宣伝文句は、「問題を解く態度とその喜びを説いた不朽の古典的名著」とのこと。amazonレビューアーによると、マイクロソフトの新入社員は本書を必ず読むことになっているそうな。

     プログラミング現役の頃に読んでおけばよかったと思っているのが、「アルゴリズムとデータ構造」。プログラミング学習の王道にして必読書、だそうな。名著100冊にある紹介文が耳に痛いが引用する。

    プログラマ的能力のない人間が書いたプログラムは、「だいたい正しく動く」が、非効率だったり、特殊な状況で誤動作するものだったりする。場当たり的なコードがツギハギで入っており、「アルゴリズムとデータ構造を整理して考えろ」と諭されても直るものではない。これは現場での試行錯誤で簡単に身につく能力ではないのである。

     締め切りに追われて場当たり的なコードをコピペしてきたのは、わたし。痛い。「誰もそんなこと言ってくれなかった」なんて青いイイワケをするつもりはないが、少なくとも本書に出会っていたらと反省しきり。テクニックではないプログラミングにまともに取り組むつもりなら読んでおけ、というほぼ完璧な名著とのこと。いっぽう、ある程度経験を積んだプログラマには「データ構造とアルゴリズム」が良いとされている。

    ■コンピュータサイエンス

  42. やさしいコンピュータ科学(アラン・W・バイアーマン)
  43. サイバネティックス 動物と機械における制御と通信(ノーバート・ウィーナー)
  44. 自己増殖オートマトンの理論(J.フォン・ノイマン)
  45. 情報と符号の理論(宮川 洋/原島 博/今井 秀樹)
  46. コンピュータと認知を理解する(テリー・ウィノグラード)
  47. 認識と学習(安西祐一郎)
  48. 自然言語処理(長尾 真編)
  49. エージェントアプローチ(スチュワート・ラッセル/ピーター・ノーヴィグ)

     これも全滅。記号学や認知論、言語処理といった、体系的にコンピュータサイエンスに取り組むなら、必ずたどりつくラインナップ。見方を変えると、上記のリストを起点として掘り下げていってもいいのかも。ただ、実利を求める立場からすると、なんだかガクモン的なにおいがする。現場にまみれる前にやっておけ、というやつなのかも。

     「やさしいコンピュータ科学」は、米国大学で最初にコンピュータ全般を学ぶ講義の教科書とのこと。特に難しい数学があるわけでなし、情報科学や情報工学に興味がある高校・大学生に向いているそうな。使用言語はPASCAL。即効性はないかもしれないけれど、わたしたちがノイマン型から脱却しない限り、いつまでも「読める」テキストであるにちがいない。

    ■アーキテクチャ/OS

  50. わが友 石頭計算機(安野光雅)
  51. コンピュータ・アーキテクチャ 設計・実現・評価の定量的アプローチ(デイビッド・A. パターソン/ジョン・L. ヘネシー)
  52. コンピュータの構成と設計 ハードウエアとソフトウエアのインタフェース(ジョン・L. ヘネシー/デイビッド・A.・パターソン)
  53. コンピュータグラフィックス 理論と実践(ジェームス・D・フォーリーほか)
  54. TRONを創る(坂村 健)
  55. OSの基礎と応用 設計から実装―DOSから分散OS Amoebaまで(アンドリュー・S・タネンバウム)
  56. MINIXオペレーティング・システム(アンドリュー・S・タネンバウム)
  57. UNIX原典 AT&Tベル研のUNIX開発者自身によるUNIX公式解説書(AT&T Bell研究所 編)
  58. UNIX4.3BSDの設計と実装(サミュエル・J・リーファー/ジョン・S・クオーターマン/マイケル・J・カレルズ/マーシャル・K・マクシック)
  59. Lions' Commentary on UNIX(ジョン・ライオンズ)

     これも全滅。わたしは何をやってきたのだろう、ぢっとキーボードを見る。大学でキチンと情報処理科目を選択した奴が読む「教科書」だよ、とうそぶきたい。アーキテクチャのオーバービューなら、「コンピュータはなぜ動くのか」と「プログラムはなぜ動くのか」を押さえておけばよいのではないかと(てか、その奥の良本を知らない)。

    ■コンパイラ/言語

  60. コンパイラ・原理・技法・ツール(A・V・エイホ/R・セシィ/J・D・ウルマン)
  61. コンパイラの構成と最適化(中田育男)
  62. プログラミング言語C(ブライアン・W・カーニハン/デニス・M・リッチー)
  63. COMMON LISP(ガイ・L・Jr・スティール)
  64. はじめて読むマシン語(村瀬康治)
  65. プログラミング言語Java (ケン・アーノルド/デビッド・ホームズ/ジェームズ・ゴスリン)
  66. プログラミングPerl(ラリー・ウォール/ジョン・オーワント/トム・クリティアンセン)
  67. プログラミング言語C++(B・ストラウストラップ)
  68. Effective C++(スコット・メイヤーズ)
  69. オブジェクト指向スクリプト言語Ruby(まつもとゆきひろ、石塚圭樹)

     ようやっとK&R本が。「プログラミング言語C」大先輩、中先輩、小先輩と、あらゆる先輩からオススメされて読んだが、結局「良さ」が分からずじまい。amazonレビューで的を射たコメントがある→Cプログラマーが「C言語を使える人」と「C言語を理解している人」に分けられるなら、この本は後者に属する。Cで読み書きできることと、Cを「理解することは別物。コーダーとプログラマの差はここで分かる本なんだと、(今になって)理解できる。

    ■プログラミング

  70. 計算機プログラムの構造と解釈(ジェラルド・J・サスマン/ジュリー・サスマン/ハロルド・アベルソン)
  71. プログラミング作法(ブライアン・W・カーニハン/ロブ・パイク)
  72. UNIXプログラミング環境(ブライアン・W・カーニハン/ロブ・パイク)
  73. 構造化プログラミング(エドガー・W・ダイクストラ/C・A・R・ホーア/O・J・ダール)
  74. プログラミング原論 いかにしてプログラムをつくるか(エドガー・W・ダイクストラ)
  75. 文芸的プログラミング(ドナルド・E・クヌース)
  76. 準数値算法/算術演算(The Art of Programmingシリーズ)(ドナルド・E・クヌース)
  77. TEXブック コンピュータによる組版システム(ドナルド・E・クヌース)
  78. UNIXネットワークプログラミング (W・リチャード・スティーブンス)
  79. 珠玉のプログラミング(ジョン・ベントレー)
  80. プログラミングWindows(チャールズ・ペゾルド)
  81. デザインパターン改訂版(エリック・ガンマ/ラルフ・ジョンソン/リチャード・ヘルム/ジョン・ブリシディーズ)
  82. 詳説正規表現(ジェフリーE・F・フリードル)
  83. CJKV日中韓越情報処理 (ケン・ランディ)
  84. Java言語で学ぶデザインパターン入門(結城 浩)
  85. 憂鬱なプログラマのためのオブジェクト指向開発講座(Tucker!)
  86. XMLとJavaによるWebアプリケーション開発(丸山 宏/浦本直彦/アンディ・クラーク/田村健人/村田 真)
  87. C言語による最新アルゴリズム事典(奥村晴彦)

     いくつか既読が出てくるけれど、本当に読んでおくべき「プログラミング作法」「The Art of Programming」は未読。なんとも中途半端。

     「デザインパターン」は読んだが頭が追いつかない。読んだ、じゃなくて眺めた、だね。分かったツモリ君になるのもシャクに触るので、分からねぇと触れてまわってたら結城さんの「Java言語で学ぶデザインパターン入門」をオススメされる。これは分かった!「パターン解説→コード→発展」と読むのではなく、いきなりコード読んで「なんでそう書くの?」という疑問を解説で確かめるやり方で読んだ。パターン厨が「GoFにあらずんば…」と本書を攻撃するけれど、あたしにゃこれで充分。

     オブジェクト指向「らしさ」を学んだのは「憂鬱なプログラマのためのオブジェクト指向開発講座」のおかげ。今じゃそれこそ山ほどのOO解説本が出回っているが、当時はこれにかじりついてた(3回くり返して読んだ)。いわゆる「教科書的」でないところがよく、後編のミサイルゲームを用いた解説は非常に面白く読めた。OOの本質は「ミサイルの当たり判定をミサイルそのものに持たせる」あたりで目が開いた。

    ■ソフトウェア開発

  88. スーパーエンジニアへの道(ジェラルド.M.ワインバーグ)
  89. ピープルウェア(トム・デマルコ/ティモシー・リスター)
  90. 人月の神話(フレデリック・フィリップス-ジュニア・ブルックス)
  91. ソフトウェア工学―理論と実践(シャリ・ローレンス・プリーガー)
  92. オブジェクト指向に強くなる(青山幹雄/中谷多哉子)

     ワインバーグ、デマルコ、人月の神話とメジャー級が並ぶ。開発方式、方法論は沢山書籍が出ているけれど、わたしが選んでもやっぱりこれらは外せない。ただ、「ワインバーグ(あるいはデマルコ)ならコレじゃないの?」というツッコミはある。

     「人月の神話」は原書が発行されて20年以上経つが、全く古びない。いや、読むたびに気づかされる点が増えてくるのが面白い。初読ンときは「構造化無用、OO万歳」だったのが、そもそもOOを銀の弾丸と見なす時点で、ジ・エンドだと気づかされる。また、「遅れているプロジェクトへ要員を追加することは、は火に油」とあるが、実践では押し付けられた追加要員をどうやって上手くまわすかを学んだ。古典・名著だからガクセーさんにオススメする人がいるが、むしろ実践で酷い目に遭ってきたPMこそ味読して欲しい一冊。

    ■データベース/ネットワーク

  93. データベース・システムの原理(J・D・ウルマン)
  94. データベース・システム概論(クリスチャン・デート)
  95. トランザクション処理 概念と技法(ジム・グレイ/アンドレアス・ロイター)
  96. コンピュータ・ネットワーク(アンドリュー・S・タネンバウム)
  97. Webの創成 World Wide Webはいかにして生まれどこに向かうのか(ティム・バーナーズ=リー)
  98. TCP/IPによるネットワーク構築(ダグラス・E・コマー)
  99. 詳説イーサネット(チャールズ・E.・スパージェン)
  100. PGP - 暗号メールと電子署名(シムソン・ガーフィンケル)

     これも全滅。「初心者のための~」とか「○○入門」といった本なら読み散らしてきたが、基本に相当するこれらは一切読んでいない。言い換えると、入門から一歩も先へ進んでいないとも。入門だけは沢山カジって、あとは実践投入で鍛える。今から考えるとそら恐ろしい冷や汗モンだな。それでもチームリーダーがスゴいプログラマだったので、こんなわたしでも駒として動けたんじゃないかと。

 名著100冊の紹介はこれにて終了。このリストに「ない」名著が沢山あることは急いで指摘しておかねばならない。なぜなら、このリストを見たら「ソレを名著というなら、コレは?」というツッコミをしてくてウズウズするだろうから。

 例えば、どのジャンルに入るか迷うが、UMLも入るだろ。原典なら、UMLによる統一ソフトウェア開発プロセス(イヴァー ヤコブソン)だけど未読。ファウラー氏の「UMLモデリングのエッセンス」を何度も読んだが、名著100冊に入るか微妙。

 こうしてみると、オブジェクト指向開発の書籍が少ないことが分かる。アジャイルなんてまるでない!「ハッカーと画家」なんて入れたくなるね。あるいは、知識体系をまとめたガイド(SWEBOK)もない。それでも、新しめの書籍は各章最後のコラムで紹介されており、名著100冊と謳いながら100冊+αとなっている。OOの良本はここで拡充できる。

 何を入れ何を外すかは意見の分かれるところ。「今から10年経っても読むべき」基準で考えると、また違ったリストができあがるかもー


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「涼宮ハルヒ=キャッチ22」説

 嫁さんの冷やかな視線を浴びつつアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」を愛でる。一見バラバラの話構成から、「キャッチ22」を思い出す。作り手はこんな古い小説を読んでるはずないだろうし、そもそも全く違うお話なのだが、気になって仕方がない。

 よって仮説「涼宮ハルヒ = キャッチ22」を立ててみる。ハルヒという陥穽にキョンは堕ちつつあるのかッ!? 別な意味で目を離せなくなってきた。

 妄想を深める前に、「キャッチ22」を解説しよう。キャッチは「落とし穴」、22は「軍規第22項」のこと。米空軍爆撃部隊の軍規で、「精神に異常をきたせば兵役を逃れることができる」のこと。しかし、これには暗黙の了解があり、「精神に異常をきたしたことを軍医に出頭して説明しなければならず、それができたら正常だということで申請は認められない」…つまり絶対矛盾。ジレンマ、パラドキシカルな状況を、「CATCH22的」と呼ぶ。

 この「キャッチ22」の下、兵は有無を言わさず死地に赴かされ、価値は完全に逆転する。文書が事実に優先し、正気の者は狂気に追い立てられ、狂気の者は反対に正気の者をキ印呼ばわりする。誰かの頭の中と、実際に起こっていることが混沌としてくる。何が正しく、何が間違っているのか分からなくなる。

 この分裂症気味の状況を、作者はすごいやりかたで書く。このやりかたは誰もマネできない。斬新というか人を喰ったやりかたというか、とにかく類を見ない。未読の方のお楽しみのため、ネタバレは反転でどうぞ。

 目次を見ると、章ごとに人名がずらっと並んでいる。その章の「主役」だ。主役を中心に話が進むが、次章・前章とまったくつながっていない。脈絡も無く事件が発生し、説明無く因果の応酬がある。後の方で発端や原因が出てくるが、これも関連なく淡々と書かれる。全部読めばストーリーがつながるが、話の継ぎ目はバラバラ滅裂、同じエピソードが幾重にも錯綜するシュールさ。初読では間違いなく困惑する(←これこそ作者の狙い)

 つまりこうだ。著者ジョーゼフ・ヘラーは、一連の話を「ふつうに」書いた後、切り刻んでトランプのようにシャッフルしているのだ。読み手はこれに気づくまでに相当苦労する。いったい何がどうなっているのか、何がどうなろうとしているのか、奇矯な行動は、狂人のフリをしているのか、本物のキ印なのか、わけが分からなくなってくる…で、読者は本当の主人公ヨッサリアンと一緒になってこの混沌とした状況を右往左往する、という仕掛け。

 この、時系列で錯綜するエピソードを受け手に組み立てさせることを強いる(あるいは混乱したまま受け止めてもらう)やりかたが、ソックリ。原作読んで「予習」してきた連中ならいざしらず、未読だと、何がなにやら、だろう。古泉一樹が何の脈絡もなく野球大会に出てたり(後に転校生のエピソードが紹介される)、その野球大会での長門有希のホーミングモード呪文が説明なく出てきたり(異界マンションの話は後で出るはず)、孤島での惨劇の事件編だけで後編は「またこんど」になってたり、第0話「朝比奈みくるの冒険」は時系列的にどこ? 「予習」してても戸惑うことおびただしい。未読の方だと、それこそキョンと一緒になって右往左往するはず(←これこそ製作者の狙い)。

 この仮説に基づくと、オチが見えてくる。それは「キャッチ22」そのもの。何かを証明しようとする行為そのものが反証明につながる。

 つまり、小説「キャッチ22」では、狂気を説明できれば兵役を忌避できるが、狂気を説明しようとするなら狂人ではない。一方、「涼宮ハルヒ」では宇宙人・未来人・超能力者であることを証明しようとするならば、その存在ではないことになってしまう、というオチ。ハルヒに対し、3人が自分の存在を明らかにしようとしたことをもって、その存在を否定するような結果になる(ハルヒ曰く「本当の○○人なら自分からバラしたりはしないでしょ」)。

 なんてね。

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東大教官がすすめる100冊

 東大教官が選んだ新入生向けのブックリストとして、新書「東大教官が新入生すすめる本」と、紀伊國屋書店のサイト[参照]がある。全部で1600冊程と膨大なので、まとめた。まとめるだけでは面白くないので、100冊に絞ってランキングした。
東大教師が新入生にすすめる本

■東大教官の観点

 以下の3つの観点から選書している。

    1) 私の読書から――印象に残っている本
    2) これだけは読んでおこう――研究者の立場から
    3) 私がすすめる東京大学出版会の本

 1) は、読書経験の貧富がハッキリ見える。めったな本を勧めるわけにはいかない。ほとんどが厳めしい古典、大御所を占める。ところが、ウケ狙いか、小松左京や村上龍、コミック「棒がいっぽん」などを推す教官がいて面白い。

 2) の意味を拡大解釈する教官多し。何十巻もある「○○全集」を指定してくる人もいる。ゼミ生になったら生き字引代わりにでもしようとするつもりかしらん。オマエも全読してねぇだろ!と無音でツッコむ。

 3) は東大出版会の宣伝とみなしている。「教科書」なんだし、胴元だから許されるんだね。ただし、東大出版会も"The Universe of English"や「知の技法」など、良本を出してることも心に留めてご紹介する。

■100冊の選び方

 新書もサイトも、「ただ並べてあるだけ」なので非常に見づらい。さらに、くりかえしオススメされる本の「重み」が見えないため、以下の基準で編集→ランキングした。


  • 年を越えてオススメされる本は、それぞれ1票としてカウント
  • 複数の教官にオススメされる本は、それぞれ1票としてカウント
  • 全集・分冊は丸めて1冊にした。ただし、全集の中の特定巻を指してある場合は「ソコを読め」というメッセージなので別枠とした
  • 参照元では「文系」「理系」と分けているが、混ぜてある(文理別は血液型占い並に無用)
  • 得票数が2票以下ものが非常に多い。2票以下はわたしの独断で選んだ

──2006.8.28追記──
 「る」さんからコメント欄でご指摘いただき気づく:同書名異著者の書籍は区別してないエラーあり。ありがとうございます>「る」さん。例↓

  2. 量子力学(レフ・ダヴィドヴィッチ・ランダウ)
  7. 解析入門(セルジュ・ラング)

 「量子力学」は朝永先生の方を挙げるべきだし、「解析入門」は杉浦先生版が得票多し。同書名に集まった票が割れるので順位が変わってくる。ランキングはこのままとさせていただき、再集計のときに考慮しなきゃ。
──2006.8.28追記おわり──

 では、東大教官がすすめる本ベスト100のご紹介~

■第1位~第10位

 1. カラマーゾフの兄弟(フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー)
 2. 量子力学(レフ・ダヴィドヴィッチ・ランダウ)
 3. 線型代数入門(斎藤正彦)
 4. The Universe of English/The Expanding Universe of English(東京大学出版会)
 5. オリエンタリズム(エドワード・W.サイード)
 6. プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神(マックス・ヴェーバー)
 7. 解析入門(セルジュ・ラング)
 8. 邪宗門(高橋和巳)
 9. 物と心(大森荘蔵)
 10. ゲーデル、エッシャー、バッハ(ダグラス・R.ホフスタッター)

 「カラ兄」堂堂1位なりイイィィィ さすが最強の小説!
 教科書(東大出版)が混じるが、サイード「オリエンタリズム」とヴェーバー「プロ倫」と大御所を推すところはサスガ学問の最高府ですな。「邪宗門」が入っているのは団塊エリート世代の教科書だからだろう。

【第1位】カラマーゾフの兄弟(ドストエフスキー )
カラマーゾフの兄弟
 流石というかヤッパリというか、「カラ兄」がイチバン東大新入生にオススメされている小説。ハイ、もちろん一冊だけ選べというならば、わたしも「最高の小説」と強く推す。50回読むとウィトゲンシュタインになれるというのはウソかもしれないが、ウィトゲンシュタインは50回精読したのは本当らしい。特に「大審問官」はスゴい。生を生きなおすようなす経験を請けあおう。この blog で「すごい本」を探している方へ→スゴい本は沢山あるけれど、頂点はこれ。徹夜小説、劇薬小説、夢中小説、最高小説、キング・オブ・スゴ本、あらゆる称号のトップはダントツこれ。未読の方は四の五の言わずに読め(命令形)。最強の読書体験を約束する。ただし、非常に強い酒のような小説なので読んでクラクラしないよう気をつけて。

【第4位】The Universe of English(第2版)(東京大学教養学部英語部会)
The Universe of English
 Z会の教材で何篇か読んだ記憶が。駒場連中の「教科書」だから東大生なら見たくもないかもしれないケド、知的好奇心をソソられるネタもあるはず。パトリック・マグラアの「O'Malley and Schwartz」なんて持ってくるのはセンスいい(露悪?)と思うゾ。2006年から第3版を使うらしい。

【第5位】オリエンタリズム(エドワード・サイード)
オリエンタリズム
 大学時代にムリヤリ読まされた記憶が。歴史 = 自らを正当化するためのラベリングの歴史 だと納得させられた。Wikipedia の紹介が分かりよい→「オリエンタル(東洋、東洋的、東洋性)は、西洋によって作られたイメージであり、文学、歴史学、人類学等、広範な文化活動の中に見られる。それはしばしば優越感や傲慢さ、偏見とも結びついているばかりではなく、サイードによれば西洋の帝国主義の基盤ともなったとされる」…イヤイヤ読んだので良い思い出はないので、今度は自分の知的好奇心のために再読しよう。

【第6位】プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神(マックス・ヴェーバー)
プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神
 これも有名どころですな。一文でまとめると「営利の追求を敵視するピューリタニズムの経済倫理が実は近代資本主義の生誕に大きく貢献したのだという歴史の逆説を究明した画期的な論考」とのこと(amazon紹介)。「プロ倫」の解説はさんざ読まされているので「読んだ気分」になってるが、未読だったりする。

【第8位】邪宗門(高橋和巳)
 戦後世代に衝撃をあたえた(らしい)作品。ありうべき世を求めて権力と相対峙した新興宗教団体の誕生から壊滅に至るまでの歴史を描いた壮大な叙事詩とのこと。実はコレ、高校時代に親にシツコク勧められた作品なのだが、未だ読んでない(←親不孝モノ)。ごめんよ。

【第10位】ゲーデル、エッシャー、バッハ(ダグラス・ホフスタッター)
ゲーデル、エッシャー、バッハ
 オススメ本について、結城浩さんに質問をする機会があって、結城さんの回答が「これまでにもっとも繰り返し読んだ本は『ゲーデル・エッシャー・バッハ』」とのこと[参照]。以来、図書館から借り出しては→挫折の繰り返し…レベル高ッ。reflexive(再帰)を論理と音楽とイメージの3点から攻めていることは分かるけれど、読んでいるというよりも、字面を「見て」いるだけでちっともアタマに沁みこんでこない。ひそかに購入を決心している一冊でもある(いかんせん大著なのだ、ボリュームもお値段も!)。

■第11位~第50位

 11. チベット旅行記(河口慧海)
 12. ホーキング、宇宙を語る(スティーヴン・ウィリアム・ホーキング)
 13. ワンダフル・ライフ(スティーヴン・ジェー・グールド)
 14. 解析概論(高木貞治)
 15. 緊急時の情報処理(池田謙一)
 16. 現代政治の思想と行動(丸山真男)
 17. 根拠よりの挑戦(井上忠)
 18. 視点(宮崎清孝)
 19. 自由からの逃走(エーリッヒ・フロム)
 20. 心の科学は可能か(土屋俊)
 21. 人間を幸福にしない日本というシステム(カレル・ファン・ヴォルフレン)
 22. 世界の名著(中央公論新社)
 23. 想像の共同体(ベネディクト・アンダーソン)
 24. 歎異抄(金子大栄)
 25. 知るということ(渡辺慧)
 26. 中島敦全集(中島敦)
 27. 読むということ(御領謙)
 28. 日常言語の推論(坂原茂)
 29. 認知とパフォーマンス(梅本尭夫)
 30. 夜と霧(ヴィクトル・エミール・フランクル)
 31. 利己的な遺伝子(リチャード・ドーキンス)
 32. 理科系の作文技術(木下是雄)
 33. 理解とは何か(佐伯胖)
 34. コンピュータのパターン認識(長尾真)
 35. ヨーロッパ文明批判序説(工藤庸子)
 36. 「きめ方」の論理(佐伯胖)
 37. 20世紀システム(東京大学社会科学研究所)
 38. サーカスが来た!(亀井俊介)
 39. フィールドワーク(佐藤郁哉)
 40. 仮面の解釈学(坂部恵)
 41. 危機の二十年(エドワード・ハレット・カー)
 42. 貴族の徳、商業の精神(川出良枝)
 43. 吉田秀和全集(吉田秀和)
 44. 魂のライフサイクル(西平直)
 45. 栽培植物と農耕の起源(中尾佐助)
 46. 罪と罰(フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー)
 47. 三四郎(夏目漱石)
 48. 史的システムとしての資本主義(イマニュエル・ウォーラーステイン)
 49. 職業としての政治(マックス・ヴェーバー)
 50. 信頼の構造(山岸俊男)

 文系理系ごちゃまぜなのが良いカンジ。「文系だから」「理系なのに」は枕詞としてよく使われるが、枕詞並に意味が無い。例えばホーキングやグールドは「理系」、丸山真男やヴェーバーは「文系」の本とされるが、読み手はそれを意識して手にするか? 否とよ。面白けりゃ読むだろうし、使えなけりゃ見向きもしないだけ。知的好奇心を自分で矯めてどうする。

 認知論の本(「理解と何か」「知るということ」「認知とパフォーマンス」など)が多くあるが、東大出版会のいわゆる「教科書」。教科書として読むと苦痛だけど、ハマってみたかった分野。tag<あとで読む>を貼っておきたいナリ。

【第12位】ホーキング、宇宙を語る(スティーヴン・ホーキング)
ホーキング、宇宙を語る
 ニュートン物理学→相対性理論までが前半で、後半が量子力学と相対論の統一を通した究極の説明:「なぜ宇宙が生まれ、現代のような形になったのか」。ええ、もちろんミーハーなので出た当時に読んだぞ→さっぱり理解できなかったケド。ただし、功利的な観点からニュートンを評するあたりで科学というものは一つの神話に過ぎないという事実を思い知らされたことはハッキリ覚えている。「説明」ができる間だけ信じられるのが「科学」であり、説明抜きに信じてもらえるのが宗教だったりする。続編はそのうち読むかも「ホーキング、宇宙のすべてを語る」。

【第32位】理科系の作文技術(木下是雄)
理科系の作文技術
 「理科系の」と銘打っているが、文理関係なかろう。調査報告、技術報告、計画申請書など、学生・社会人に関係なく、書かなければならないドキュメントは多い。書く際に最初に考えなければならないことが二つある→「これを読むのは誰で、その人に何を伝えるのか」なり。その上で主題を決め、結論を決め、そいつを支える構成・展開・データを考える。目標を定めた書き方が身につく(とのこと)。実は未読なのだが、この紹介文書いてるうちに読みたくなってきたナリ。100位には入ってないが、「理系の女の生き方ガイド」は何やら痛そうで面白そう(未読)。

■第51位~第74位

 51. 新しい世界史(東京大学出版会)
 52. 神谷美恵子著作集(神谷美恵子)
 53. 図集日本都市史(高橋康夫)
 54. 生命とは何か(エルヴィン・シュレーディンガー)
 55. 戦争と平和(レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ)
 56. 荘子(荘子)
 57. 損害賠償法の理論(平井宜雄)
 58. 大衆教育社会のゆくえ(苅谷剛彦)
 59. 知的複眼思考法(苅谷剛彦)
 60. 徒然草抜書(小松英雄)
 61. 南方熊楠(鶴見和子)
 62. 日本人の英語(マーク・ピーターセン)
 63. 認知科学選書(佐伯胖)
 64. 認知心理学(東京大学出版会)
 65. 脳のなかの幽霊(V.S.ラマチャンドラン)
 66. 悲の器(高橋和巳)
 67. 碧巌録(克勤)
 68. 保全生物学(樋口広芳)
 69. 方法序説(ルネ・デカルト)
 70. 夢みる権利(桑野隆)
 71. 夢判断(ジークムント・フロイト)
 72. 明治憲法体制の確立(坂野潤治)
 73. 論理哲学論考(ルードヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン)
 74. 侏儒の言葉(芥川龍之介)

【第59位】知的複眼思考法(苅谷剛彦)
知的複眼思考法
 ロジカルシンキングが専門語を一切使わず噛んで含めるように書いてある。読むだけで腑に落ちるスゴ本。レビューは[ここ]。これをゼミで実践している学生さんがうらやましすぎるぞ。社会人になって高額のトレーニングを受けたり、実践で時間をかけて培ったりする"エッセンス"をゼミで身に付けられるのだから。このリストも同様のことが言えるが、東大は勉強するには良い環境だとつくづく思う。

【第69位】方法序説(デカルト)
方法序説
 恥ずかしながら未読。部分の和が全体(となるような分解)や、原因と結果の法則について書いてあるんだなーということは薄々知ってはいたけど…小林秀雄「考えるヒント2」の「常識について」によると、「方法序説」なんてお題が堅物らしい。むしろ「方法の話」とでも訳したほうがよいとのこと。何の方法かというと、生きてゆくうえで真実を見つけ出し、判断する方法。デカルトが、当時の学問語であるラテン語を捨てて、平易なフランス語で、しかも匿名で書いたそうな。大切なことは、見つけ出した「真実」や「判断」そのものではなく、そこへ至った方法だという。これは学問の多寡に関係しないし、誰にでもどんなことにでも応用が可能だから。正しく認識するための「原理」や、有効に行動するための「格率」が立てられる。身につけたら一生モノだな。

■第75位~第100位

 75. 知の技法(小林康夫)
 76. 美しきもの見し人は(堀田善衛)
 77. ご冗談でしょう、ファインマンさん(リチャード・フィリップス・ファインマン)
 78. トムは真夜中の庭で(アン・フィリッパ・ピアス)
 79. はてしない物語(ミヒャエル・エンデ)
 80. ぼくを探しに(シェル・シルヴァスタイン)
 81. モモ(ミヒャエル・エンデ)
 82. 完全な真空(スタニスワフ・レム)
 83. 吉里吉里人(井上ひさし)
 84. 君たちはどう生きるか(吉野源三郎)
 85. 朱子学と陽明学(島田虔次)
 86. 春の戴冠(辻邦生)
 87. 新幹線をつくった男島秀雄物語(高橋団吉)
 88. 親鸞(丹羽文雄)
 89. 人間臨終図巻(山田風太郎)
 90. 星の王子さま(アントアーヌ・ド・サン・テグジュペリ)
 91. 蝉しぐれ(藤沢周平)
 92. 大聖堂(ケン・フォレット)
 93. 誰のためのデザイン?(ドナルド・A.ノーマン)
 94. 不滅(ミラン・クンデラ)
 95. 棒がいっぽん(高野文子)
 96. 竜馬がゆく(司馬遼太郎)
 97. ゲド戦記(アーシュラ・K.ル・グイン)
 98. コインロッカー・ベイビーズ(村上龍)
 99. ファウンデーション(アイザク・アシモフ)
100. 論理トレーニング101題(野矢茂樹)

 第75位からは2票ばかりなので、わたしの独断で選本。既読のものは印象深いオススメ本だし、未読のものは強烈に読みたい本ばかり。

【第77位】ご冗談でしょう、ファインマンさん(リチャード・ファインマン)
ご冗談でしょう、ファインマンさん
 「傑作だ→読め」と勧められているが、未読。「ファインマン」と聞けば、もちろん、量子力学でもマンハッタン計画でもノーベル賞でもなく、茶目っ気たっぷりの風貌と共に本書を思い浮かべるが、未読。学生のときに読み逃しておくとずっと(微かに)後悔するハメになる。読んでる人は東大教官が勧めなくても手に取っているハズだが…

【第78位】「トムは真夜中の庭で
トムは真夜中の庭で
 ネットで知って、もう何年も前から気になっている小説。正確にはわたしの知らないスゴい本を読んでる複数の人が絶賛する本。ネタバレしないように関連情報には極力目を伏せている。良い機会だ、ここで挙げたのをきっかけに読んでみよう(ただし、わたしの読むリストはFIFOなので、"いつか読む"にはかわりない)

【第79位】はてしない物語と【第81位】モモ(ミヒャエル・エンデ)
モモはてしない物語
 こいつを大学新入生にオススメする教官も面白い。良い本は2種類ある。一つは、賢くする(あるいは賢くなった気分にする)本。もう一つは豊かにする(あるいは豊かになった気分になる)本。これは後者。しかも気分ではなく本当に豊かになる。どちらもとてもオモシロイので強力にオススメ。そして、ただオモシロイ面白いと興ずるうちに、なんだか薄ら寒い思いで後ろを振り返るはず。だから「小学校高学年から」なんて児童書扱いされてると激しく違うと言いたくなる。これは「オトナ向け」。余談だが、本書のリンクを作る際に知ったのだが、「はてしない物語」は文庫化されているではないかッ!しかも二分冊でッ!!これでは「いま、読み手が手にしている本」と「本の中の主人公が読んでる本」とのシンクロが楽しめないではないかバカモーン!

【第82位】完全な真空(スタニスワフ・レム)
 本書は、実在しない本について書かれた架空の書評集。でも実体は手元にあるじゃないか、と読むと非常に奇妙な感覚に囚われることを請合う。本書でレビューされる「架空の本」「架空の講演」「架空の論文」の一つひとつがまたよく出来てて思わず知らずつりこまれる。非常に実験的な「作品」が多々あり、「とどのつまりは何も無し」と「我は僕(しもべ)ならずや」あたりを読んだときの妙な気持ちは、今でも強く覚えている。書評という形でしか存在しえない「本」ということが面白い。ただ、そんな実在しない本のレビューに没頭しているわたしは誰だ? さらにそいつをオススメするわたしは? などと一度ならずとも思うはず。

【第84位】君たちはどう生きるか(吉野源三郎)
君たちはどう生きるか
 コペル君の話。何度も手にするクセに読みきれていないので、未読。人生をいかに生くべきかというテーマをティーン向けに説く。いつかわが子に渡すために、今わたしが読んでおかないとなぁ… 本書は広島大学総合科学部「大学新入生に薦める101冊」でも強力にオススメされているぞ。

【第90位】星の王子さま(アントアーヌ・ド・サン・テグジュペリ)
 これは「たいせつな人」へオススメする本なりィッ 新入生に軽々しく「読め」などと言えぬ…それぐらい思い入れがある(だろ? あなたも)。名台詞「たいせつなものは目に見えない」の破壊力は、そうだな…「もうゴールしてもいいよね?」級と言っておこう。この本をオススメしたい人が沢山いる、という人生が豊かなんだろうなー、などと思ったり。

【第92位】大聖堂(ケン・フォレット)
大聖堂
 大聖堂 キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
 こいつはスゴいぞ楽しいぞ、その名も超電磁ロボ…じゃなくて「大聖堂」は面白い小説の見本のようなもの。最近読んだ100冊本の中でおもしろさNo.1(たぶん)。中世ヨーロッパが舞台なのだが、時代を超えて人間の欲望が生み出す壮大なドラマと「大聖堂」を見上げることができる。欲望は様々な形を取る。権力欲、支配欲、愛欲、性欲、意欲、我欲、禁欲、強欲、財欲、色欲、食欲、邪欲、情欲、大欲、知識欲、貪欲、肉欲…ありとあらゆる「欲望」を具現化したドラマ。ハラハラドキドキ、ワクワクテカテカしながら読みふけれい。わたしのレビューは[ここ]

【第93位】誰のためのデザイン?(ドナルド・A.ノーマン)
誰のためのデザイン
 ありとあらゆる「ユーザーインタフェース」の基底となる本(コンピュータのGUI に限らない)。モノの持つ属性(色や形)が、そのモノ自身をどう取り扱ったら良いかについてのメッセージをユーザに対して発している、いわゆる affordance の根っこが分かる。「使いやすいとはどういうことか」が肌で分かる。ボタンの配置だとか見出しの色だとか、Webデザインネタが巷に数多にあるけれど、あくまで表層的なもの。もっと根源的な「どうしてそうだと分かるか」についてここまで実例を掘り下げて書いてあるのはめったにない。デザイン本をいくつも漁るよりも、デザイン本とは縁遠いようなコレをしっかりと読み込むほうが近道。ちなみに100位以内に入ってないが、「生きのびるためのデザイン」も推薦されてた。

【第94位】不滅(ミラン・クンデラ)
不滅
 クンデラの最高はコレ。けして「存在の耐えられない軽さ」ではない。魂の不滅、存在の不滅を語るため、時空を超えて小説論、文明批判、省察、伝記などを混ぜこぜにしたクンデラの長い長い独り言のような小説。ポリフォニックな小説といえばドストエフスキーだろうが、クンデラのこれも好きー。わたしのレビューは[ここ](長いゾ)。

【第95位】棒がいっぽん(高野文子)
棒がいっぽん
 「黄色い本」で知り「るきさん」でファンになり、本書は次に読もうと思ってる。なんてことない起伏の少ないマンガなんだけどーーーうーん、なんかこう、毎日の生活の中でクッと背中のツボを押されるような気分にさせられる。手元にあるとつい何度でも読み返してしまう、不思議な魅力を持つ。しかし、コレを新入生に勧める東大教官って…orz

【第96位】竜馬がゆく(司馬遼太郎)
竜馬がゆく
 いろんな意味で思い入れが激しい作品。3回読んだし、また手にするだろう。語り始めると止められなくなるので紹介はするまい。こいつはblogで気を吐くよりも、誰かとリアルで話をしたいですな。この作品を(酒でも入れて)語り合える友がいる人生が、アツい人生なんだろな。未読の方は読め(命令形)、と。読むと「外へ」出たくなる。体がアツくなる、吼えたくなる。若ければ若いほど効果大だゾ。

【第98位】コインロッカー・ベイビーズ(村上龍)

 村上龍のサイコウケッサク。読むとアタマガツンと一撃喰らう。あまりにスゴいので、彼の作品はコレで測ってる。曰く「コインロッカー・ベイビーズ」より面白いか否か」…おかげで彼の作品は一切読んでいない。amazon紹介を引用→「コインロッカーを胎内としてこの世に生まれ出たキクとハシ。罪の子ふたりの心に渦まく愛と憎悪。廃墟と化した東京の上空に、華やかなステージに、そして南海の暗い海底に強烈な破壊のエネルギーがほとばしる」…うーん、こんなんだったっけ? 再読するか。そして毒に中(あた)るか。

【第99位】ファウンデーション(アイザク・アシモフ)
 長門有希さんご推挙の逸品… wikipedia によると、一つのゆるやかなシリーズにまとめられる作品群を総称している(らしい)。「ファウンデーション」「ファウンデーション対帝国」「第二ファウンデーション」「ファウンデーションの彼方へ」「ファウンデーションと地球」「ファウンデーションへの序曲」「ファウンデーションの誕生」とあるとのこと。んで、どれ読みゃいいんだ? 未読だと思っていたが、「鋼鉄都市」は読んだ記憶が… 読書指南役の嫁さんも読んでなさそうだし、ネタバレにならない程度の紹介を探してみよう。

【第100位】論理トレーニング101題(野矢茂樹)
論理トレーニング101題
 宣伝文句 「解説書なんかいくら読んだって論理の力は鍛えられない」に引っ張られた一冊。途中で投げ出しているので未読。amazonの宣伝で手にとる気力が湧いてきたぞ→「ひとり本書に向かって言葉と格闘し、煩悶(はんもん)し、その筋道をたどる作業が論理の力を鍛えてくれるはずだからだ。『頭の回転が速い』とか『知性的』というのは、こうした地道なトレーニングの積み重ねに負うところが大きいのだろう。通勤、通学時の1冊としてもおすすめ」…読もっと。未読本の紹介をしているうちに読みたくなるのは不思議だねー

■もっと知りたい方へ

 東大教官がすすめる本ベスト100はこれにて終了。意外な発見や納得させられる選書が見られ、リスティングは非常に面白かったナリ。この100冊を抽出する前の、1994-2005をまとめたファイルはcsvテキストで[ここ]に置いた。ご利用ご随意に。レコード定義は以下の順。

  書名
  著者名 出版社 出版年
  オススメされた年

 未読既読をチェックするのもいいし、年ごとのオススメ傾向の推移を眺めても楽しいかも。東京大学出版会だけ抜けば教科書以外のオススメリストができあがる。「ソレを推すなら、コレ読んでるのかぁ」なんて意地悪になると大穴本に出会えるかも。「教官」ではなく、「教授」が選んだブックリストであれば、「教養のためのブックガイド」がオススメ。「教養とは」から真っ向勝負して、「教養の罠」を上手く回避した、良いガイドだと思う。そのうちレビューするのでお楽しみに。
教養のためのブックガイド

 東大ブランドをありがたがるつもりは毛頭ないが、このオススメ本のリストといい、ロジカルシンキングのゼミ[参照]といい、やっぱ違う。他の100冊リストと比べてみると面白いかも。

  ・千葉大学教員の選んだ100冊[参照]
  ・(広島大学総合科学部が)大学新入生に薦める101冊[参照]


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「知的複眼思考法」はスゴ本

 タイトルは大仰だけど、いわゆるロジカルシンキング指南。ただし、そこらのロジシン本と一緒にするなかれ。「知的複眼思考法」は今まで読み散らしてきたロジシンもので最高に腑に落ちてくるスゴ本なり。知的複眼思考法

 これまでのロジカルシンキング本は、定義と書き方の説明と例の紹介の集積にすぎない。曰く、「今なぜMECEか?」「MECEとは」「MECEの例、書き方」「MECEの実践」でオシマイ。

 だから読んでもソレっぽい書き方はできるけれど、あくまで見た目。ロジカルシンキングから導出される「アウトプット」と同じ書式だけれど、ロジカルシンキングをしていない。

 いっぽう、本書の第3章の「問いの立てかたと展開のしかた」では、MECEとなるための思考方法を説明してくれる。実は、優れたツリーの裏側に何十枚もの「デッサン」がある。書いちゃ捨て、拾っては直しのスクラップ&ビルドが必要なんだが、フツーの指南本はそこを省く。本書には「デッサン」の線が沢山見える。

 スゴいのは、ロジカルシンキングの用語を一切使っていないところ。10年前に書かれたので「ロジカルシンキング」が膾炙していなかったからだろうが、著者が「知的複眼」なんてカッコよく呼んでいる本質は「ロジカルシンキング」そのもの。

 ロジカルシンキングはアウトプットのためだけでない。インプットも批判的に。第1章「創造的読書で思考力を鍛える」は素晴らしい。2chやfjで揉まれると身につく批判的読書法は、ここを読むだけで身につく(あとは実践するだけ)。批判的読書のコツを引用する。これを具体的にどうすればよいかは、本書で確かめてほしい

批判的読書のコツ20


  1. 読んだことのすべてをそのまま信じたりはしない
  2. 意味不明のところには疑問を感じる。意味が通じた場合でも疑問に感じるところを見つける
  3. 何か抜けているとか、欠けているなと思ったところに出会ったら、繰り返し読み直す
  4. 文章を解釈する場合には、文脈によく照らす
  5. 本についての評価を下す前に、それがどんな種類の本なのかをよく考える
  6. 著者が誰に向かって書いているのかを考える
  7. 著者がどうしてそんなことを書こうと思ったのか、その目的が何かを考える
  8. 著者がその目的を十分果たすことができたかどうかを知ろうとする
  9. 書かれている内容自体に自分が影響されたのか、それとも著者の書くスタイル(文体)に強く影響を受けているのかを見分ける
  10. 議論、論争の部分を分析する
  11. 論争が含まれる場合、反対意見が著者によって完全に否定されているのかどうかを知る
  12. 根拠が薄く支持されない意見や主張がないかを見極める
  13. ありそうなこと(可能性)に基づいて論を進めているのか、必ず起きるという保証付きの論拠(必然)に基づいて論を進めているのかを区別する
  14. 矛盾した情報や一貫していないところがないかを見分ける
  15. 当てになりそうもない理屈に基づく議論は割り引いて受け取る
  16. 意見や主張と事実の区別、主観的な記述と客観的な記述との区別をする
  17. 使われているデータをそのまま簡単に信じないようにする
  18. メタファー(たとえ)や、熟語や術語、口語表現、流行語・俗語などの利用のしかたに目をむけ、理解につとめる
  19. 使われていることばの言外の意味について目を配り、著者が本当に言っていることと、言ってはいないが、ある印象を与えていることを区別する
  20. 書いていることがらのうちに暗黙のうちに入り込んでいる前提が何かを知ろうとする

 それでもなお、本を読む上でもっとも大事なポイントが抜けているので、ここで補足する。それはなぜその本を自分が読むのか、読むとどういいことがあるのかを、予め考えてから、読む

 他にもヒントを沢山もらった。パラグラフ毎に本を閉じて、著者の主張を推測する(当然、話が進めばだんだん方向性が見えてくるので、その前に当てる)ゲーム、詰め将棋ならぬ「詰め読書」は良い思考トレーニングだし、疑似相関性を見破るために特定のパラメータを固定して仮説を立てるやり方は、Excelのピボットテーブルを回しているような錯覚に陥った。

 そんなノウハウが噛み砕いて分かりやすく(←これ超重要)書いてある。学生さんを想定しているため、身近な例を多用し、これでもかというぐらい紙数を費やして説明してくれる。まさに「読めば分かる」一冊となっている。

 ただし、理解と定着を優先して書かれているがため、ツールとしてのボリュームは食い足りないかもしれない。もの足りない人は、これを足がかりに「問題解決プロフェッショナル 思考と技術」で深度をかせぐことをオススメする。

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最近読んだツンデレ小説

 ツンデレ小説でオススメいただいた作品をいくつか読了[参照]。良い小説をご紹介いただきわたしは幸せモノだと思う。教えていただいた方に感謝感謝。

ゼロの使い魔」、これは良いツンデレじゃ。ほくほくしながら読ませていただきやした。これは剣と魔法の異世界に召喚された少年の話。彼を使い魔とするルイズが激しくツンデレ、かつ萌える。
ゼロの使い魔
 この美少女、少年を下僕扱い。そもそも「男」と見なしていないので、「脱衣→着替えを手伝わせる」「おパンツを洗わせる」「寝室が同室(ただし少年は床)」なツンが堪能できる。いっぽうで、典型的な「ケガをした少年を徹夜で看病→寝顔を見せる」「アンタは私の使い魔なんだからッ(たぶん顔真っ赤)」なデレを楽しめる。

 読み始め、思わず「さよりなパラレル?」と呟いたけど、楽しい30分だった…とはいえ、オッサンにはツルペタ美少女よりも、もうちょっと色気と汁気が欲しいと手を出したのが次の作品。

 それは「佳人」。石川淳って、なんてエロいんだろうと再確認できた。あ、いやその、エロ描写は最小限なんだけど、なんかこう、読者の想像というか妄想に訴えかける文が抜群に上手い。

 例えばノーブラ少女のブラウス越しに尖って見える乳首を「匕首のようにひらめかせ」なんて描写、本編をロクに覚えていないのにココだけ見てきたかのように覚えてる。ノーブラの乳頭って、ソコに焦点をあわせてくださいというメッセージだと受け取って、渋谷で見かけるたびに遠慮なく観賞させていただいている。最近の流行りなのか、うれしいですな。「焼跡のイエス」からなんだけど引用するね。

若さのみなぎった肉づきの、ほてるほど日に焼けた肌のうぶ毛のうへに、ゆたかにめぐる血の色がにほひ出て、精根をもてあました肢体の、ぐっと反身になったのが、白いシュミーズを透かして乳房を匕首のやうにひらめかせ、おなじ白のスカートのみじかい裾をおもひきり刎ねあげて、こしかけにかけたままあらはな片足を恥らひもなく膝の上に載せた姿勢は、いはば自分で自分の情慾を挑発している格好ではありながら、かうするよりほかに無理のないからだの置き方はないといふようすで

 これを完成された二次元エロスというならば、処女作「佳人」にその萌芽が見える。ツンデレのエロスとして、ね。しかも女がツンデレと思いきや実は男の方だったり、つげ義春「無能の人」を激しく彷彿とさせられたり、寝取られ男の不倫譚になりそうな気配を匂わせつつ突然終わったり。放り出され悶悶とするのは読者なり、というオチ。

 忘れてた、「紫苑物語」読むべ。

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安土往還記

 「大学新入生に薦める101冊」[参照]で知った一冊。辻邦生は初めてなのでとても嬉しい。なぜなら最初に読んだ本書が素晴らしかったから。

 これは尾張の大殿、織田信長を描いた作品。そのままを書くのでなく、彼に出会ったある外国の船員を語り部としている。

 わたしは小説を読む際、話のフレームを意識するようにしている。曰く「どうしてこの形で書いたのか?」と。人称、時制、構成、会話、文末、語彙のそれぞれには絶えず必ずメッセージがあり、考えなしに書いている作家は、たいてい一作で終わる。一般に、未熟、というか青い人であればあるほど一人称を使っているのを目にする。
安土往還記
 本作は、三人称でも神の視点でもなく、船員の「書簡」の形式になっているのが興味深い。冒頭で手紙の出所と訳出の理由が述べられているが、ウッカリ信じるところだった(これは"小説"なんだ)。

 それほど「信長像」は生々しい。目つきや風貌といった写実云々のことを言っているのではない。彼の言動と、それを理解できる人間との共鳴がリアルだということ。人間の価値が見事に見えるのだ。

 信長のスゴさを日本が理解するためには、現代まで待たなければならなかった。しかし、ここに日本の外側からの視座があれば話が違ってくる。彼の共鳴者として(そして語り部として)日本の外側からイタリアの船員という存在を持ち込んだ著者の勝利だねっ。

 でなければ、以下のような話は書けない。

 私は多くの日本人に会ったが、大殿ほど「事が成る」ことをもって至上の善と考えた人物を見たことがない。(中略)私は彼の中に武将を見るのでもない。優れた政治家を見るのでもない。私が彼の中にみるのは、自分の選んだ仕事において、完璧さの極限に達しようとする意志である。私はただこの素晴らしい意志をのみ──この虚空のなかに、ただ疾駆しつつ発光する流星のように、ひたすら虚無をつきぬけようとするこの素晴らしい意志をのみ──私はあえて人間の価値と呼びたい。

 ひたすら虚無をつきぬけ、完璧さの極限に達しようとする意志と、生死のぎりぎりの場にあって「事が成る」ために全力の生の燃焼の前に、妥協や慈愛は一蹴される。狂気のように、理(ことわり)を純粋に求め、自己に課した掟に一貫して忠実であろうとする生き様が書簡断片に輝いている。

 次は徹夜小説でもオススメいただいた、同氏の「春の戴冠」を読むべ。

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さよなら、「選択」

 それこそ高校ンときから読んできた。オヤジの本棚から盗み読みしたのがきっかけで、以後ン十年、愛着もひとしお。だからこそ残念でならないが、もうガマンならん。今号にて購読を打ち切ることに決定。

 理由は以下の一連のヲチの結果。かいつまんで言うと、高級誌「選択」が、子会社の犯罪にケツまくったまま2年間放置プレイ。わたしは激怒を潜り抜けてあきらめの境地に至ったというワケ。


  • [その1] 選択エージェンシーと「監修料」と「告訴」について
  • [その2] 「選択エージェンシー」で検索したら、興味深いことに気づきました
  • [その3] 雑誌「選択」の購読を止めるべきか?(自問自答無限ループ)
  • [その4] おまえなんか、ネコのうんこふめ―――――→ の3秒前
  • [その5] さよなら「選択エージェンシー」?
  • [まとめ] 一、子会社・選択エージェンシーを解散させます。一、尾尻和紀は選択出版専務取締役を引責辞任します

  ※「選択」贈賄事件の顛末はエルネオスの特別手記[参照]が詳しい。

 「三万人のための情報誌」と銘打ったクオリティペーパーの地盤沈下は目を覆うばかり。マスゴミ連中が書けないタブーへ切り込む「サンクチュアリ」シリーズは高く評価してたが、選択エージェンシーこそ「サンクチュアリ(聖域)」視せずにとりあげるべき。ずーーーーーーと信じてきたわたしが愚かだった。

 残念でならないが、仕方ない。

 で、以下の二誌になった。

  Foresight
  FACTA

 Foresightは世界情勢への知見がスゴい。まさに For(ward) Sight と言いたくなる。どれ読んでもシンクタンクのエリートが書いてるなー、としみじみ。本誌は梅田望夫氏の「シリコンバレーからの手紙」が人気だが、blogで追ってるので、それほど期待してない。

 むしろ連載なら「ブックハンティング」「ブックハンティング・クラシックス」を推す。本のレビューだけでなくそこから敷衍される時代の趨勢や書き手の見識が顕れていて、読んでる自分が賢くなった気になる。

 FACTAは、今春始まったばかり。編集長である阿部重夫氏の、google(と愉快な仲間たち)への敵視があまりに強い。強すぎて狭窄を起こしている部分もあるが、公開情報を丹念に集めて重ねて、事実をあぶりだすやりかたは金を出して読むべきだろ。かつての「選択」を彷彿とさせるが、あにはからんや、「選択」の元編集長なので味付けも似てくるというもの。

 目玉は連載「手嶋龍一式 intelligence」だろう。「ウルトラ・ダラー」売れてるみたいだし。あるいはNHKワシントン支局の「てっしー」といえば覚えていらっしゃる方もおられようかと[これとか]。既にNHKから離れているが、記事は的確だと感じた。「選択」で連載されてた「インテリジェンスを一匙」を激しく超える予感。

 ForesightのWebヨイショ2.0マンセーばかり読んでいると辟易させられる。IT屋としてメシを喰らっていると、世間サマの幻想があまりにも楽天的なので思わずダークサイドに目をやってしまう。

 あと、The Economist に手を出しているが、昨日の今日でもう息切れ。モノになったらまた報告しよう。

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千葉大学教員の選んだ100冊

 ソースは「千葉大学教員の選んだ100冊」[参照]より。

 100冊といっても正確には百を超える。見れば分かるが、テキトーにアンケートしたリスト。重軽一緒くたなのも気になるし、そもそも選書の目的が不明確なのがもっと気になる。「新入生に読んで欲しい」という銘なら、テーマをもっと具体化すべきだろうに、選定基準が見当たらないのが痛い。これは編者の責。

 学生さんはこの100冊を追うのではなく、「なぜこの本を紹介しているのだろう?」という目でリンク先を読むと吉、教官の良し悪しが見えてくるかも。

 google で、書名と著者名で検索かけたヒット数の多い順に並べてある。ヒット数でソートするなんて、乱暴かもしれないが、うまい方法が見当たらない。もちろんヒット数多い=良書と限らないが、少なくともネット上のバロメーターは数値化される。未読本の影響度を「見える化」するのに、googleヒット数はなかなか良い指標となると思うのだが…

 わたしの既読率は10% 程度…orz 読んでねぇな。名著と誉れ高い「ご冗談でしょう、ファインマンさん」はぜひ読みたい。千葉大学に限らず、この本を誉める人は皆スゴい人ばかりだから。また、山形浩生氏ベタホメ[参照]の"The Economist"は、立ち読みだけで逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ…と今号を買ったのだが、まるで歯が立ちませんな > 英語。

  1.The Economist
  2.老子
  3.論語
  4.史記(司馬遷)
  5.デザイン(小池新二)
  6.プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神(M.ウェーバー)
  7.若き数学者のアメリカ(藤原正彦)
  8.ジャン・クリストフ(ロマン・ローラン)
  9.赤と黒(スタンダール)
  10.ご冗談でしょう、ファインマンさん(ファインマン)
  11.福翁自伝(福沢諭吉)
  12.風土(和辻哲郎)
  13.菊と刀(ルース・ベネディクト)
  14.もの食う人びと(辺見庸)
  15.ゾウの時間ネズミの時間(本川達雄)
  16.隠された十字架(梅原猛)
  17.流れる星は生きている(藤原てい)
  18.24人のビリー・ミリガン(ダニエル・キイス)
  19.恐怖の権力(ジュリア・クリステヴァ)
  20.人間の絆(サマセット・モーム)
  21.知の技法(小林康夫)
  22.サル学の現在(立花隆)
  23.科学者とは何か(村上陽一郎)
  24.小説の経験(大江健三郎)
  25.アメリカ50州を読む地図(浅井信雄)
  26.細胞の世界を旅する(ChristiandeDuve)
  27.身体教育を哲学する(佐藤臣彦)
  28.スミルノフ高等数学教程(スミルノフ)
  29.心に残るとっておきの話(潮文社編集部)
  30.戦争の記憶(イアン・ブルマ)
  31.文明が衰亡するとき(高坂正尭)
  32.人間の由来(河合雅雄)
  33.隷属への道(F.A.ハイエク)
  34.自然界における左と右(マーティン・ガードナー)
  35.ペシャワールにて(中村哲)
  36.時間の発見(コリン・ウィルソン)
  37.白い航跡(吉村昭)
  38.ホット・ゾーン(リチャード・プレストン)
  39.遠き落日(渡辺淳一)
  40.全体主義の時代経験(藤田省三)
  41.国定忠治の時代(高橋敏)
  42.平静の心(日野原重明)
  43.人間を幸福にしない日本というシステム(カレル・ヴァン・ウォルフレン)
  44.形の発見(内田義彦)
  45.物理学はいかに創られたか(アインシュタイン)
  46.寺田寅彦随筆集(小宮豊隆)
  47.資本主義・社会主義・民主主義(J.A.シュンペーター)
  48.科学・倫理・政治(A.セント・ジェルジ)
  49.大江戸神仙伝(石川英輔)
  50.パリ随想(湯浅年子)
  51.自由論(J.S.ミル)
  52.教師修業十年(向山洋一)
  53.モノづくり解体新書
  54.プルトニウム人体実験(アルバカーキー・トリビューン)
  55.アメニティ・デザイン(進士五十八)
  56.個人空間の誕生(イーフー・トゥアン)
  57.哲学の変貌(ガーダマー)
  58.ルールと秩序(F.A.ハイエク)
  59.神秘の生命物質-ポリアミン(五十嵐一衛)
  60.ベルグソン全集4・創造的進化(アンリ・ベルグソン)
  61.生活文化論への招待(寺田浩司)
  62.晩年に想う(アインシュタイン)
  63.ふたつの鏡(吉永良正)
  64.日本人は「日本的」か(杉本良夫)
  65.葬式ごっこ(豊田充)
  66.「従軍慰安婦」問題と性暴力(鈴木裕子)
  67.ホール・ランゲージ(桑原隆)
  68.緑と環境のはなし(「緑と環境のはなし」編集委員会)
  69.常温核融合の真実(J.R.ホイジンガ)
  70.ジェンダーと科学(エヴリン・フォックス・ケラー)
  71.インダストリアルデザイン(森典彦)
  72.地球への求愛(ルネ・デュボス)
  73.わが数学者アーベル(C.A.ビエルクネス)
  74.わかり方の根源(佐伯胖)
  75.生命にとって糖とは何か(大西正健)
  76.不思議の国の相対性理論(ルイス・キャロル・イプシュタイン)
  77.数学-その形式と機能(S.マックレーン)
  78.医学史と数学史の対話(川喜田愛郎)
  79.組ひもの数理(河野俊丈)
  80.ナイロンの発見(井本稔)
  81.生物から見た世界(ヤーコプ・フォン・ユクスキュル)
  82.天皇のページェント(T.フジタニ)
  83.印旛沼・手賀沼:水環境への提言(山田安彦他)
  84.菌と人と自然と(寺川博典)
  85.苺畑よ永遠に:前“安保世代”の甘ずっぱい青春(加藤幸子)
  86.タバコやめますか 人間やめますか(広島県医師会)
  87.二十世紀モード(能澤慧子)
  88.実験以前のこと(小野小三郎)
  89.ノーマル チャイルド(R.S.イリングワース)
  90.楽園の涙(ノーマン・カタコフ)
  91.大学生が書いた現代日本社会論(河西宏祐)
  92.ボク学校きらいだもん(筒井やよひ)
  93.メタセコイア(斉藤清明)
  94.楽しむということ(M.チクセントミハイ)
  95.イギリス憲政論(W.バジョット)
  96.随想:ハイトマルスベル(本間正義)
  97.第二の産業分水嶺(M.J.ピオリ)
  98.ガウディの設計態度(松倉保夫)
  99.ヒポクラテスの午睡(児玉昌彦)
 100.南極越冬記(西掘栄三郎)
 101.セレンディピティー(R.M.Roberts)
 102.アメリカの数学者たち(D.アルバース)
 103.科学的発見の論理(K.ポッパー)
 104.ビーグル号航海記(チャールス・ダービン)
 105.常温核融合スキャンダル(ガリー・トーブク)
 106.ライナス ポーリング(アンソニー・セラフィニ)
 107.生理学の夜明け(P.Astrup)

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