女の言う「あなたは何も分かっていない」の正体
彼女もちの諸君!春だ!別れの季節だ。
女ってぇ奴ぁ年がら年中情緒不安定だといわれるが、長年付き合った彼女が別れ話を切り出してくるのは春と相場が決まっている。振り返ってみ給え、彼女が別れるとか言い出すのは、たいていゴールデンウィーク前だったろ。
これには理由がある。春は学校職場が変わる、生活環境が変わる、心機一転、ついでにオトコも変えておこうという発想だ。五月病の厄落としともいう。例えば、学生時代の彼女が、新社会人になって職場の「オトナのオトコ」を発見して、学生気分の抜けない彼に愛想をつかすなんて話、聞かないか?
で、(途中をはしょって)修羅場。ここでは、ヒートアップしたとき女が言ってくる最終通告「あなたは何も分かっていない」という問いかけについて、その戦略と対策について書く。
「あなたは何も分かっていない」の本当の意味
これを字義どおりに受け取ってはいけない。これは彼女の戦略なのだ。意識/無意識にかかわらず、女の男に対する巧妙な攻撃手段なんだ。それに気づかないまま墓穴を掘る男がなんと多いことか。
このセリフは女→女には使わないことを指摘しておきたい。使っても無駄だからだ(そのことは女性同士なら分かりきっている)。ドラマでも小説でもいい、このセリフは必ず女→男の方向で使われる。そして、陳腐ドラマだと「そんなことない!」と返され、抱きしめられるか暗転。
しかし現実は違う。女がこのセリフを使うとき、男は何と答えても負けなのだ。質問に是と言っても否と答えても、彼女はこう返すだろう。「何も分かっていないから、そんなことが言えるのよ」と。そして「どうしてそんなことが言えるのよ」とたたみかける。是と答えても否と答えても、理由を問われる。そしてその理由の正しさを判断するのは、彼女だ。あなたは自分の答えの正しさを証明できない。たとえ説明したとしても、その説明を吟味するのが彼女なのだから。
つまり、彼女の問いかけにあなたが答えようとした瞬間、あなたは負けるのだ。
なぜ女は「あなたは何も分かっていない」と言うのか
想像してほしい、このセリフにたどり着く前までのウンザリするほどの丁々発止を。彼女の立場からみると、脅しもスカシも通用せず、ロジカルな説得もできないから、そんなセリフを吐いているんだ。
リクツが通らないとき、感情に訴える。最終兵器「涙」の一歩手前だ。つまり、「あなたは何も分かっていない」の裏側に「あなたのことがもう分からない」が潜んでいる。
論理の応酬では勝てない。でもやり込めたい、そのとき彼女はこの戦法を取る。「あなたは何も分かっていない」から始まる、一見論理的に見える質疑応答も、裏を返せばこんなもの。論理的には男の方が上のため、せめて感情では優位に立って譲歩を引き出そう、という思いがそうさせているのだ。
だからこのセリフは「質問」のように受け取ってはいけない。それこそ彼女の思うツボだ。この問いかけには、ちゃんと解法がある。断っておくが「正解」ではない。たとえ正解を告げたとしても、それが「正解」と判断するのが彼女なのだから、常に彼女の分のフリーハンドはあると覚悟しておいたほうがいい。
「あなたは何も分かっていない」への解法
ふたつの解法を紹介する。ひとつめは「質問に質問」。
質問に対し、確認以外の質問を返すのは、愚かでマヌケがすることだ。それが分かっているからマトモな頭の持ち主なら、まずしない。
しかし、承知の上で質問を返す。曰く「なんでそんなことを言うんだ? オレが何をしたというんだ?」 ってね。すると、今度は彼女が何かを返さなきゃならなくなる。彼女は是・否のいずれかを待っているから面食らうだろう。で、譲歩する→「オレは悪くない、というつもりはない。それでもガマンできないことは言ってくれ。お互いさまだろ」。
もうひとつは、「いきなり最終解」。
そもそもムリヤリ通したい事情があって、男をロジカルに説得できないからそんなことを言ってくるわけ。だからこちらは、そんな問いかけなんざ無視して、いきなり「彼女が望む返答」を持ってくるわけだ。「上京して可能性を試したい? どうぞどうぞバイバイ」「別れたい? んじゃそうしようか」ってね。
是否の返答そのものを攻撃しようと待ち構えている彼女にとって、これはびっくりするだろう。いきなり結論をぶち上げられると、とまどいながら「ちょ、ちょっと待ってよ!」と返すしかなくなる。その後に、是なり否なりの返答をすればよい。
ポイントは、さっき述べた結論と、是否の返答がロジカルにつながっていること。「どうして『好きにしな』なんて言ったのかというと… [ここ] …オマエが分かっていない、なんていうからなんだよ」の[ここ]を埋めること。そうすることで、彼女の感情→→→自分の答え(是/否)がつながる。外れた議論が戻ってくる。さらに、彼女の言葉(あなたは分かっていない)を理由に使うことで、彼女は譲歩を勝ち取った気になるだろう。
会話が迷走し、お互い感情的になるとき、最初に立ち戻ろう。
you vs me
ではなく、
problem vs us(you and me)
の構造に持っていく。話の主導権を取ることが目的なのでなく、お互いの望むようにするにはどうしたらよいか? という話に戻すわけだ(彼女の感情も考慮してね)。話は一歩も進んでいないが、最終通牒→破局はここで回避できる。
ロジカルに議論を持っていけば勝負は見えてる。正論でグウの音も出させないようにすることも可能だ。しかし、男はケンカに勝って勝負に負けることにならないよう、見えざる譲歩をしつつ会話を進めなければならない。特にヒートアップしそうなときは、ね。
ばっちゃが言ってた、「正しさ」の最終判断は相手に任せるぐらいのゆとりが要るんだって。
健闘を祈る。
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コメント
>「なんでそんなことを言うんだ? オレが何をしたというんだ?」
これに対しては、
「それが分からないから、あなたは何も分かっていないっていうのよ!」
までパターン化されてるでしょ。
投稿: ぶりげいど | 2006.04.21 09:34
分かってないなぁ~w
投稿: ワロスw | 2006.04.21 11:23
こんにちは。
結婚6年目ですが「あなたが何なのかわからない」と言われます。。
>problem vs us(you and me)
素晴らしい!
ではでは。
投稿: Dora | 2006.04.21 11:44
これは「(わたしが分かって欲しいことを)あなたは何も分かっていない」の略なので、少女漫画ばりの全肯定で解決するしかないと思うです。
投稿: czy | 2006.04.21 14:40
おそらくここでのDainさんの論のポイントは
>problem vs us(you and me)
にある(というか、にしかない)んでしょうね。
ぶりげいどさん、czyさんの仰っている方が、前段の比喩については説得力がある回答だと思います。釣りにはもってこいのキャッチーな比喩ではありますよね。
投稿: nobody | 2006.04.21 17:29
> ぶりげいど さん
そうでーす!で、それが指摘できるということは、そのセリフを受けた(言った)ということですねっ さらにそこから先の問答はどうすればよいかorz(あくまでも"解法"なのです)
> ワロスw さん
うん
> Dora さん
あー、「あなたが何なのかわからない」は、わたしも言われた。結婚してずいぶんたつのにソレは無いんじゃない…と落ち込んだものですが、これも彼女の戦略の一環ということで自分をなぐさめたものです(w
> czy さん
今度使ってみます
> nobody さん
おおっ わたしもよく分からないこのエントリのポイントを指摘いただき、ありがとうございます。ええと、このエントリで言いたかったのは、「あなたは何も分かっていない」を言葉どおり受け取っちゃダメよ、ということで、対策はわたしのネタを元に各自で考えていただけると幸甚かなー、と。
投稿: Dain | 2006.04.21 22:59
「あなたは何も分かっていない」という言葉を吐くときの
前提として感情的に高ぶっている状態がある。
最初の質問に質問で返すに関しては同意できます。
ただ、譲歩にいくまえにワンステップ必要ですね。
それは相手を全て肯定することです。
肯定するにはなぜ「あなたは何も分かっていない」という事を言う理由を聞き出す必要があります。
それが質問返しを行う理由です。
女性の感情を理解し、いってほしい言葉を囁いてあげた後で
譲歩という形を取らなければほぼ確実にループします。
投稿: S | 2006.04.24 02:52
また2つめの最終解についてですが
上と同じように感情的になっていると、それがキッカケになり
人がもつ意地も合わさってキレたまま別れるケースもあります。
よって人によってはかなり危険だと判断します。
僕の対処法は
「あなたは何も分かっていない」
という問いに対して解答を控え、一言だけ「落ち着くまで話す気はない」といいます。
その後は怒号にまみれるでしょうし家出の類をちらつかせるでしょう。
しかし、完全に落ち着くまで無視します。
返答が無い限り、女性は別れることも家出もできません。
そして落ち着いたところに一言
「自分も悪い所があったから怒ったんだろう?悲しませてごめんよ。」といいます。
あとはお互い冷静に話し合えば済むことなのです。
投稿: S | 2006.04.24 02:57
Sさん、深い考察をありがとうございます。
恋愛をトラブルにさせないためには、男の(見えざる)譲歩が必要だというのがわたしの主張です。その展開のやり方として、二つの解法を挙げたのです。経験や性格により、もっと多くの解法があるのは当然で、このエントリがそうした考えのきっかけになれたのであれば、とても嬉しく存じます。
で、「全肯定」は結婚してから使ったほうが吉かと。
投稿: Dain | 2006.04.24 22:02
結婚生活も10年を超えたあたりから、喧嘩になる前に”VS US”という会話に成っていくようになりました。これもWinWinの一つの形という事になるのでしょうね。
所詮男と女の喧嘩の理由なんてのは「勝って自分の主張を認めさせ、尊敬と愛情を勝ち取りたい」だけなのですが、相手に勝ったところで尊敬も愛情も得られないんですね。やるべき事は目標と問題の共有!頭の中に彼女とのコミュニケーション計画書が作成できていればベストです。ただしそこには「問題が発生していなくても定期的にねぎらいの言葉をかける、プレゼントを贈る」「普段から敵は外にあることを啓蒙する」などの記述もお忘れなく。
投稿: 鉛のZEP | 2006.04.30 14:10
>> 鉛のZEP さん
正解ッス。このエントリはモテ論に見せかけたマネジメント論、しかも「結婚」という史上最も困難なプロジェクトを対象としているのです。わたし自身も切磋琢磨の身なので、自戒を込めて書いたワケなのです。
投稿: Dain | 2006.05.01 23:38
このエントリ見たときからなんか引っかかって、今頃何が引っかかってたのか言語化出来たので、今さらですいませんがコメントします。
女って、かなりモノが分かってて、仕事場じゃ"problem vs us"を自覚的に実践しているような女でも、愛情面だけではそれをやって欲しくない、そういう存在じゃないかと思うんです。まあ結婚生活は愛情だけじゃないんで、そういった場面では雲を書こうが"problem vs us"しようがいいんですが、タイトルの台詞が出るような状況で問われているのはそうじゃないと思うので。
でないと、男はかなりうまくやってるつもりで、女は不満を溜め続け(何かが決定的に違うような気がするがそれが何かは分からないという心理状態で、そしてそのことに微塵も気付かず自分の手腕に満足し切っている男を軽く軽蔑しながら)、あるとき急に離れていったり、冷え切ったりする結果につながるんじゃないかと思います。
まあ女も色々でしょうから、配偶者がたまたまここで書いたことに当てはまらない人ならそれでよいのですが。一般論としては。
陳腐なドラマと少女漫画と、落ち着くまで放っておく方法は有効だと思います。
投稿: czy | 2006.05.18 23:07
>> czyさん
> タイトルの台詞が出るような状況で問われているのは
> そうじゃないと思うので。
完全同意ッす。
ええと、上手くやっているつもりもないし、上手にあしらえるはずもなし。
そも男と女は分かり合えないもの、それでも一緒に何とかしていかなきゃならないもの、という自覚のもと、日々研鑽しております。
上記のような状況になるとき、お互いマジメに相対し、ココロどうしを擦れあわすのは、するのは非常に骨が折れるもの…そしてワリが合わぬもの(czyさんご自身も体感済みだからこんなコメントを残しているのでは)。
犬も喰わない応酬を積み重ねるうえで見つけた結論→やるべきことは「どうすればこんな状況の"ほんとうの原因"をなんとかできないか」であって、この状況そのものをどうにかしようとするのは無意味、ということです。
そのための "problem vs us" と言えば通じるでしょうか、な?
投稿: Dain | 2006.05.19 01:12
はじめまして。
ランキングから来ました。
面白くて、つい、読んでしまいました。
この台詞、私も、何度か、使ったな~って(笑
投稿: 林檎 | 2008.05.03 09:35
>> 林檎さん
お楽しみいただき、ありがとうございます。
使われた方にこのエントリを読んでいただくと、より生産的になるかもしれませんね。
投稿: Dain | 2008.05.04 06:52
面白い!
つい1週間前に言いました。
「あなたは何もわかってない」って
涙の手前じゃなくて大泣きしたあげく、あまりのトンチンカンな罵倒にあきれ返り、涙引っ込めて言いました!
投稿: ジャリ | 2023.02.13 10:56
>>ジャリさん
コメントありがとうございます!
この記事おおげさに書きましたが、いま読み返すと、「よくある、ありふれた話」に見えますね……
投稿: Dain | 2023.02.16 10:43