良い育児書、悪い育児書
実は見わける方法がある。「子ども」の部分を「あなた」に置き換えてみるのだ。納得感が得られれば、良い育児書。「えー!?」と思ったなら、悪い育児書。「良い」「悪い」とは、「読んで使える」か否かと定義する。
例えば、感情的になっている子どもにどう接するかについて、次のガイドで確かめてみよう。「子ども」を「あなたの妻(夫)」に置き換えてもOK。
「子は親の鑑」…分かっちゃいるが、(わたし含む)実践できてない人は、育児書というツールで確認してみてはいかが?
さらに、良い育児書と、最高の育児書の違いがある。良い育児書は、読んで実感できる。もっと良い育児書は、読み手が(=親が)感化される。最高の育児書は、読むうちに親の方を育自してしまう。
「マニュアル世代」誹謗上等!育児書は読み漁れい!
実践的親業をする身になって、初めて気が付いた→見習うべき「親」がいない。上の世代に、ロクなオトナがいない。過去の家族モデルにしがみつくつもりは毛頭ない。だからマニュアル(育児書)に手を出す。可視化された knowledge は参考にするが鵜呑みにしない。かつ、読んだら実践→フィードバックする。経験値は読んで身に付ける。
わたし自身、親のありがたみは骨身にしみているが、親業として見習うものは、少ない。「背中を見て育つ」は確かに真実だが、放任の言い訳とも。ときどきわたしは気づくんだ、自分が親から言われたことと同じようなことを、子どもに向かって告げている。
「子育てとは、リアル育成シミュレーションゲーム」っつったら殴られそうだが、現実はそんなもん。ただし、コントローラーは「自分自身」であるところがミソ。育児はまず、自らを育てる「育自」から。ファミ通の攻略本はないけれど、数だけは山ほどある。
「デート中に、"選択肢"が見えたらなぁ」と本気で考える奴はヲタ。けれど、親業やっているときは、選択肢を念頭において行動すべき←行動の根拠を自覚しておく必要があるから。
無数にある「選択肢」のうち、強力なやつを紹介しているのは、これ「子どもの話にどんな返事をしてますか?」。これはかなり良い本。以下ザップするので参考にして欲しい。
いいほめ方と悪いほめ方。ほめる対象は子どもの努力や成果であって、性格や人格ではない。叱り方と同じ。
庭掃除をした子どもに、子どもがいかに一生懸命働いたかとか、庭がとてもきれいになったということについてほめることは良い。しかし、その子に向かって「あなたはいい子ね」というのは、全くの的外れであるどころか、不適切でもある。「いい子」には親の評価が入っているから。
ドラゴン桜効果(?)なのか、最近では「ほめて育てよ」が合言葉。しかし、正しいほめ方をしないと「親のメガネからの姿」を強要することになる。子どもにとって、これは苦痛だろう。やみくもでなく、習慣・行動に的を絞って正しく「誉める」こと。
正しい怒り方。感情を噴出させる方法があり、自覚しながら正しく怒る。子どもに激情をぶつけ、自分がスッキリするために怒るのではない。親にも堪忍袋の緒というのがあることを理解させ、すべきこと/してはいけないことをハッキリと思い知らせるために、怒るのだ。正しく怒るため、次の3つの準備をしておく必要がある。
- 子どもの相手をしていると、どきどき怒りを感じるという事実を受け入れる(わたしたちは聖人ではない)
- 罪の意識や恥を感じることなく、怒る権利を持ち、感じたことを表現する権利がある(怒りは悪徳ではない)。
- ただし、怒りを表現するとき、子どもの人格や性格を攻撃してはならない。怒りはコントロールできる。怒ることを止めるのではなく、正しく「怒る」
実際に怒るとき、正しく怒るためのポイントは次の通り。
- 主語は「わたし」に限定。動揺した気持ちをハッキリ口に出して言う。「私、怒っている」「私、かんかんになっている」と怒りを強めながら表現する。
- 怒っている理由を説明し、こちらの反応や、取りたい行動を淡々と述べる。
- 「靴下やセーターが床一面に散らかっているから、カッとなったの。窓を開けて全部放り投げてやりたい」
- 「あなたが弟を叩いたから怒っている。もうカンカンになっている。あなたが弟を傷つけるのは絶対に許せない」
- 「夕食に呼んだのに、あなたがこないから怒っている。すごく怒っている。美味しい食事を用意したんだから、感謝してもらいたい、無視するのではなく」
- 「靴下やセーターが床一面に散らかっているから、カッとなったの。窓を開けて全部放り投げてやりたい」
正しい怒り方があるように、まちがった怒り方もある。それは、すでに答えが分かっている質問をすること。ウソの上塗りを強要するか、子どもを追い詰めているだけ。最高にまちがった怒り方は「どうして…なの!」。それは質問ではなく、「おまえは…なんだ!」と強烈なメッセージを送っている(決め付けている)。決め付けられた子どもがそいつを改めると思うか? 自分に当てはめてみるといい。
「どうしてオマエはいつもだらしがないんだ?」
→オマエはだらしがない!
「どうしてオマエはいつも間違えてばかりいるんだ?」
→オマエは間違えてばかりいる!
「どうしてオマエは自分で決めたことを守れないんだ?」
→オマエは決めたことが守れない!
「別に」「何も」対策。
「学校はどうだった?」
『別に』
「今日は何をしたの?」
『何も』
…んで、これ以上ツッコもうとすると、『うるさいなぁ、放っておいてよ!』と嫌がられる。上手くいっているか心配な親と、根掘り葉掘り聞かれるのがイヤな子どもとの典型的な会話。
子どもは疲れていたり、学校で起きたイヤなことを忘れようとしたりしている。そこへ畳み掛けるように質問されたら、自分だってイヤでしょ? 職場から帰ってきて、妻(夫)に、「お帰り、仕事はどうだった?」て訊かれたらどう感じるか想像してみて。
この場合、「質問」ではなく「コメント」を伝える。自分が相手(子ども/夫/妻)を理解している「メッセージ」を伝える。例えば、
- 家に帰ってきて嬉しそうだね
- 大変な一日だったみたいだね
- やっぱり家に帰ってくるとホッとするよね
- 学校が終わるのが待ちきれなかったんじゃないの
このとき、子どもがどう反応するかは、自分自身に当てはめて想像してみよう。妻(夫)からそうした「お疲れサマ」というメッセージを受け取ったら、自分ならどう返すだろうか。「別に…」でないことは確かでしょ。
「子どもの話にどんな返事をしてますか?」の対象は、3歳~15歳の子ども。しかし、「子ども」を「わたし」や「妻(夫)」に置き換えると、実は末永く使える共育マニュアルでもある。
以前のエントリ「親になったら読んでおきたい三冊」に加え、本書は四冊目として強力にオススメ。
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コメント
はじめまして。もうすぐパパになる者です。育児書を探しており、こちらにたどり着きました。突然のコメント失礼いたします。
すっきりとした気分で読ませていただきました。
僕が最近読んだ「幸せ子育て」に共通する部分があります。
僕はすばらしいと思いましたが、そちらさまがどういう感想をもたれるのか、ぜひ知りたいところです。
もし、読む機会がありましたら、ご感想をお願いします。
今手元にないので、詳細は確かでないのですが、表紙が黄色で、ごま書房かごまブックスの出版だったと思います。。
ご紹介くださった本を手にとってみます。
ありがとうございます。
投稿: もんきち | 2007.06.23 07:52
>>もんきちさん
コメントありがとうございます
「幸せ子育て」の評判を漁ってみました。入りやすい良い本ですね。
実は、今では子育て本よりも「人育て」になってきているので、杉浦 類美子さんのターゲットからは外れてきています。
今はこんなカンジです↓
子どもに死を教える三冊
https://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2006/04/post_71d1.html
子どもに死を教える4冊目
https://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2006/08/4_fd8c.html
ゲームで子育て
https://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2006/03/post_ee00.html
他にもいくつか埋まっていますが、自分でサルベージできません…
投稿: Dain | 2007.06.23 22:54