面白い小説を見つける3つの方法
わたしのやり方。誰かの参考になれば。
まず「面白い小説」の定義。以下のいずれかの条件を満たせばOKとしようか。
・イッキ読みされる小説 (= page turner というやつね)
・「わたし」の趣味に近い but 「わたし」の知らない小説
方法1:図書館で探すときは、本の「背」に注目する
「趣味は読書」を自慢する人に限って図書館を利用しない。書店の平積みを渉猟するだけで満足する。本当に好きでたまらない人は、図書館を利用せざるを得なくなる。なぜか?
図書館を使わないと、床が抜けるから。あるいは生活できなくなるから。読書は「量」だ。多読せずに「面白い本ない?」と言う資格なし。図書館使えば10冊/週も可能。「読む時間ない」とは言い訳。時間とは創る物。それに値しない本しか知らないからそんなこと言ってる。
書店はどうする? ありゃ「出会い系サイト」と同じで、新たな出会いのために訪れるもの。第一印象がよければ「お持ち帰り」の次第だが、誰も読んでいないその本の実力は推して知るしかない。
そこで図書館。冒頭の方法が効いてくる。「背」がひしゃげている、つまり上から見たとき、背表紙が斜めにゆがんでいるのが「面白い小説」といえる。
つまりこうだ。本を開いている状態だと、「背」は斜めになる。本を閉じると元に戻る(戻ろうとする)。ずーっと開きっぱなしにしていると、クセがついてしまい戻りにくくなる。だから、イッキに読まれた小説ほど、その「背」は斜めになっている。図書館にいったとき、既読の作品で確かめてみるといい。
方法2:「この○○がスゴい!」は「座談会」を狙う
「このミス」信用しすぎ。参考にするのはかまわないし、面白い作品があることは事実だが、このミス第1位だから、面白いという理屈はヘン。一定のインターバルを措いてこそ、淘汰の波に洗われるわけで、安易に飛びつく人は「自分の時間」が賭金になっていることに気づいていない。
毎年恒例の「この○○がスゴい!」は、ナントカ大賞を逃した「出版業界にとっての惜しい本」を救済するための残念賞という仕掛けであることは、わざわざ説明しないとダメ?
じゃぁ役に立たないかというと、そうではない。きっとこのコーナーがあるはずだ→「その年の目玉本をマナ板に載せた座談会形式のレビュー」←こいつが狙い目。メンバーは百戦錬磨の読み手をそろえた丁丁発止、面白くないワケがない。しかし、そこには致命的な制限がある→「今年の本から選ぶ」。どんなに不毛でもそこから選ぶしかない。
では、どこを見るかというと、「ホラーといえば2001年の○○がスゴかったけれど、今年の△△も良いね」なんて発言だ。最終的にレビューアーは今年出た本から選ばなければならないという縛りがある。その中でのささやかな抵抗が「○○といえば…」という枕詞。「○○といえば…なのに、今年はそれに敵う逸品が無かった」という含みがある。さらに「そーそー私もそう思う」なんて合いの手が入ればカンペキ。
「今年のベスト」なんて、評価の妥当性を強調するべく、ポイント制にしたりアンケート形式にしたり、涙ぐましい努力をしているが、ランキングなんてどうでもいい。「○○といえば…」だけを探せばよい。わたしはこれでジム・トンプソン「ポップ1280」に出会えたぞ。パルプ・ノワールといえばコレを推す。
方法3:ネットの情報は「発信」するところに集まる
この blog を訪れるぐらいだから、レビューサイトは毎日巡回されていることと思う。あるいは
松岡正剛の千夜千冊[参照]
エキサイト・ブックス・ニュースな本棚[参照]
2ちゃんねる:【まとめ】屁理屈ぬきで一番おもしろかった小説は?[参照]
あたりはチェック済かもしれない。
また、amazon を利用しているならば、「この本を買った人はこんな本も買っています」や、マイページを参考にしている(ハズだ)。エロ本を除けば、amazon のオススメはだいたい信じてよかろう(ただし、amazon が提案してくる本の評価をちゃんとアップデートしておくこと)。
しかし、実はもっと良い方法がある。もっと良いどころか、ネットが使えるなら最高のやりかたがある。
それは、「情報の発信」なり。レビューを「収集」するのではなく、レビューを「発信」するのだ。情報は、発信する人へ集まってくるという習性をもつ。カネと同じ。あるところに集まってくる。カネと違うところは、「情報があること」は、発信することでしか証明できない、という点。情報残高なんて誰も見てないよ。
そして、発信によって集まってきた情報を元に取捨選択→読んだ結果を「再発信」する。この発信→収集→再発信のサイクルをくり返すことで、洗練されてくる。欲しい情報は能動的でないと取れないしくみになっている。Web2.0になろーが、Google先生がいかに賢かろーが、これは間違いない。
例えば、以下のわたしの「質問」で得られたものはデカい。
はてな:最悪の読後感を味わわせてくれる小説を教えてください[参照]
はてな:徹夜するほど面白かった小説を教えてください[参照]
どちらも膨大な回答を得られてウレシイ。それだけでなく、この話題を取り上げてくれたサイトが沢山ある。そこで得られる「私なら○○を推すんだが…」を捕捉→参考にする。トラックバック先も同様に捕捉。はてなブックマークも忘れずに。ここで得られたリストには、「わたしの趣味を考慮ているが、微妙に違う守備範囲の作品が並んでいる。言い換えると、「それを推すならこれ読んでる?」リストができあがる。
「自分が素晴らしいと評価する作品を面白いと言っている人を探す」…そのためには、先ず自分から「面白い」と言わなきゃ。欲するなら、まず与えよ。これぞ、たったひとつの冴えたやりかた。
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コメント
貫井作品を読まないと決めてるみたいですが、私もそうです。理由も同じで。
でも順番が違って、私は慟哭の前にプリズムを読んでいました。そこを通らずに慟哭で終わりにしてしまうのはすごくもったいないと思います。気持ちは分かるんですが、是非プリズムを読んでみてはいかがでしょうか。薄いですし後悔してもたかが知れてますよ。
投稿: ss | 2006.03.14 12:43
了解ッス! >ss さん
もし貫井作品を読む気分になったなら、「プリズム」を探しますね。
この積ン読ク山が無くなる日があればの話ですが…
投稿: Dain | 2006.03.15 00:05
すごい!私本が好きなんですけど、ちょっと参考になっちゃいましたっ☆そーやって探すんですね!とりあえず流行ってるものを読んでましたけど・・・さっそく図書館行ってきます♪
投稿: ゆうちぇる | 2006.04.15 09:51
ゆうちぇるさん、コメントどうもです。
やっぱりホントの本好きは図書館に向かうと思います。さもないとお財布が...
投稿: Dain | 2006.04.15 23:00
笑えて泣ける小説「グッバイ艶」幻冬舎刊を読みました。著者は放送作家さんの南川泰三さん。著者の自叙伝的な小説、人のいい、やや頼りない女性を知らない若い放送作家さんが、ウイスキー1本でHをさせてくれるという女性「艶さん」という女性と初めての経験をする。それから、哀しくの優しい二人の生活が始まることに。この「グッバイ艶」が縁で、この作品の若いファンクラブが出来た。秋元康さん監督、AKB大島優子ちゃん主演で映画化したら面白いよねとか、居酒屋トークで盛り上がっている。大ヒット映画になること間違いなし!?
投稿: Mさん | 2011.08.22 17:17
>>Mさんさん
おお、全く知りませんでした。教えていただき、ありがとうございます。居酒屋トークネタになるということは、人間ドラマチックですね。まずは図書館でチェックしてみます(かなりの予約待ちの模様です)
投稿: Dain | 2011.08.22 22:07
お前の価値観おしつけんな、読みたきゃ死ぬまでよめ
投稿: あき | 2012.01.21 21:52