美少女ホラー3冊
冬だからこそホラー。ホラーには美少女がよく似合う。だから3冊まとめて美少女ホラーを読了。少女怪談【;゜Д゜】怖いでも書いたが、少女という存在は見ているこっちが不安になるほど不安定なるもの。だから少女をきっちり描いているだけで、ゾワゾワしてくる。
一冊目は「ずっとお城で暮らしてる」(シャーリイ・ジャクソン)。これは劇薬小説企画でスズキトモユさんに教えていただいた一冊。
由緒ある屋敷で暮らす姉妹の話。叔父さんやいとこも出てくるが、中心は美少女姉妹。姉ちゃんはハタチ超えているから少女というにはアレかもしれないが、2年前の惨劇の後、引きこもりになってしまったので、深窓の美女として脳内補完。
話は妹ビジョンの一人称で語られるので、彼女の状況につい肩を持ってしまう。姉ちゃんとの何気ない会話が乙女ちっくで良い(一方で、どこかしら危うさが見え隠れする)。また、妹の独白がこれまた女の子女の子してて可愛い(が、なんだか不安な気持ちにさせられる)。
読み進めても不安定な気持ちは消えず、むしろ掻き立てられる。そして… 読後感というよりも、読んでる途中、たしかにイヤ~な気分を味わえた。スズキトモユさん、ありがとうございます。
二冊目は「聖女の島」(皆川博子)。これは嫁に「後味の悪い読後感の小説って何かある?」と訊いたら返ってきた一冊。さすが俺嫁、読後感はでんぐり返ったイヤな気分。
設定がナイス。昔は炭田の採掘基地で、今は廃墟化した孤島が舞台。そこに修道会のつくった矯正施設がある。売春、盗み、恐喝の非行を重ね、幼くして性の悦楽を知った少女たちが集められる。
事故で何人か死んだはずなのに全員いる、少女たちの不気味な儀式、食い違う発言、姉の記憶…イヤな仕掛けがたくさんあり、読み手の疑問と不安がどんどんふくらんでくる。悪夢に引き込まれるように先へ先へと進んでいって、ラスト。こいつはまいった。
最後は「巫子」(皆川博子)。ぜんぶ「少女」が主人公の短編集。「聖女の島」と同様、視点の書き分けが手練れ。人称だけでなく、空間的な視座、過去と現在を渡る視線…それが巧妙な伏線になっている。唐突なラストで視線が肉体を追い越す感覚には何度も肌があわ立った。紹介では、
・少女霊媒となった少女たちを待つ残酷な運命(巫子)。
・過去の自分からかかってきた深夜の電話(夜の声)。
・少女と女流画家の世にも奇妙な愛欲地獄(幻獄)
…とあるが、「流刑」がイチオシ。恐いだけでなく、美しく哀しい環。
シャーリイ・ジャクソンといい皆川博子といい、男性作家には絶対書けない少女ばかりなり。だからこわい…。どんどん引き込まれ、ふと気づけば、超えてはならない一線のあちら側にいる自分と目が合うかもしれない。
次は「たたり」いってみよーか。

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コメント
惨劇は6年前ですよ。
投稿: | 2007.02.06 22:14
ななしさん、回答どうも。今度チェックしてみますね
投稿: Dain | 2007.02.07 01:04