読んではいけない――人生を狂わせる毒書案内
こういう挑発的なお題の典型は週間金曜日の「買ってはいけない」だろう。トンデモ論ながら思わず手にしてしまうインパクトがあった
読んではいけない――「毒書案内」も似たようなものだとタカをくくって一読、期待を裏切ってもらって非常に嬉しい。「スゴ本」の企画「劇薬小説を探せ!」が好きな方なら超オススメ。
「読んではいけない」の真意は、読んだことによって取り返しのつかない事態になること。即ち、不用意にページを開くことによって、知らずに済んだ世界を"知って"しまうこと。あるいは、眠っていた感性が強制的に目覚めさせられ、さらには自分の拠って立つ基盤を切り崩されてしまう…そんな恐れがある本。
もっとも、合う合わないは人それぞれなので、著者の口上どおりの「毒薬」効果があるかは分からない。それでも、少なくともわたしも激しく同意できるものをピックアップしてみる。また、本書に触発されて読む気になった未読リストも挙げておく。毒見役もやってみよう。
追記。このblog、腐女子やオタ中年だけでなく、清純な女子高生やケも生えてない小坊も見てる。耐性ない奴は読むの禁止な。「ジコセキニン」でもやめとけ。
人生を狂わせる「毒薬効果」あり
カラマーゾフの兄弟(ドストエフスキー)
特に「大審問官」がッ
砂の女(安部公房)
読後、「日常」って何なんだろう? と自問し始めたらヤヴァイ
地獄の季節(ランボー)
初めて読んだとき、ページが燃えるようだった
「地上の糧」と双璧を成す
死の棘(島尾敏雄) イタイイタイ本。身に覚えの有る人は特に
芋虫(江戸川乱歩)
「二十面相」でハマり、親の本棚から盗み読んでガクゼンという黄金パターン
来年のわたしの毒書リスト。毒見役は任された!
二十歳のエチュード(原口銃三)
高野悦子「二十歳の原点」と同時読みしてみる
審判(カフカ)
「城」と併せて読もうかと
死霊(埴谷雄高)
ドストエフスキー「悪霊」と並べられるし(w
地下室の手記(ドストエフスキー)
「劇薬小説」でも薦められたし
ツァラトストラ(ニーチェ)
そういや未読だった
千年の愉楽(中上健次)
やべ三部作「岬」「枯木灘」「地の果て 至上の時」も途中だ
われらの時代(大江健三郎)
大江作品は「万延元年のフットボール」がリストトップだが、これを先に読もう
鍵(谷崎潤一郎)
高校のとき薦めてきた女子がいた(メガネ美女)。フラグ立ってたんだ…orz
ロリータ(ナボコフ)
読むの忘れてた。若島正の新訳で読むか
幼女狩り(河野多恵子) 「みいら採り猟奇譚」がリストトップだが、こいつを先に読もう
少なくともわたしには効果なし
人間失格(太宰治)
定番だが毒効果は「トカトントン」の方が上(大マジ)
若きウェルテルの悩み(ゲーテ)
人によるとそうなるかもしれん
不思議の国のアリス(ルイス・キャロル)
日常から超常へ、不条理の日常化を楽しむ
ドグラ・マグラ(夢野久作)
「読むと発狂する」という謳い文句だが、楽しく読めた
(すでに発狂していた?)
マルテの手記(リルケ)
教養本としてありがたく読了
わが闘争(アドルフ・ヒトラー)
「優生学のあたりは興味深く読んだ」なんていったら不謹慎なんだが…
野火(大岡昇平)
読んだ当時は「人肉食」のテーマを読み漁っていたのでインパクト薄め
北回帰線(ヘンリー・ミラー)
「南」と併せても「ふーん」
眼球譚(バタイユ)
「読者に嫌悪を嘔吐を催させる」という謳い文句だが…
家畜人ヤプー(沼正三)
「面白いSF」じゃぁダメ?
「毒書案内」の著者はトーダイ教授でフランス文化の専門家でいらっしゃる故、どうしてもフランスの書に偏りがち。本人も"あとがき"で白状しているのだが、どうせならフランス書院の森山塔あたりを混ぜて欲しかった。バランスを取る意味でも、教授が未読であろう作品をピックアップしてみる。
花と蛇(団鬼六)
さすがに内臓ファックはないけれど、苦痛と糞尿のエロスの極地なり。
やってみたくなる。しかも「上手くいくかも」と思える時点で毒入り
隣の家の少女(ジャック・ケッチャム)
自分の子どもが壊れるまで何をやってもいいかが分かる
「オンリーチャイルド」と併せ読むと効果絶大
ハックルベリ・フィンの冒険(マーク・トウェイン)
なぜか厭世観でいっぱいになる。なぜかは再読して確かめてみる
ヤバい小説は、ぜひとも「どくいり きけん」と明記して欲しい。清純な女子高生や毛も生えていないような子どもがうっかり読まないように。
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コメント
はじめまして。上谷雄高は埴谷雄高の誤記かと。そういえば初めて死霊を読んだ時、ハニヤって読めませんでした・・・。
投稿: illyria | 2005.12.27 23:23
あ、ご指摘ありがとうございます、修正しておきました。
投稿: Dain | 2005.12.27 23:47
挙げられている本をいくつか読みましたが、たしかに人格に対する強烈なネガティブ作用を含む小説ってありますよね。そのときの精神状態によっては読むべきではないものとか。
投稿: BAC | 2006.01.01 01:19
BAC さん、ご指摘のとおりです。ただ、そうした小説は「人を選ぶ」ものです。手にする人は「読んでも耐えられる」と選ばれたのです。そうでない人は一生縁がない(あるいは読んでも気づかないまま)でしょう。その結果が幸か不幸か分かりませんが…
投稿: Dain | 2006.01.02 01:12
この中で読んだのは、人間失格(太宰治)ドグラ・マグラ(夢野久作)
家畜人ヤプー(沼正三)だけですが、私は毒は全然感じませんでした。人間失格は心中したくなるとすぐ一緒に死んでくれる女が都合出来て、モテモテ男の恋愛自慢話として読みました。ドグラ・マグラは妹キャラに萌えました。家畜人ヤプーはSMというよりSFとして楽しめたし…。隣の家の少女(ジャック・ケッチャム)に挑戦してみます。
投稿: goldius | 2007.08.22 09:55
>> goldius さん
「隣の家」には気をつけて。
もう一度。
「隣の家」には、気をつけて。
投稿: Dain | 2007.08.25 21:50
>「面白いSF」じゃぁダメ?
もしかして、SFフラグが立っているものには何でも毒免疫が成立するとか。
Dan the Toxic
投稿: 弾 | 2007.09.06 13:32
>> 弾 さん
> もしかして、SFフラグが立っているものには何でも毒免疫が成立するとか。
それはあるかもしれませんね。「SFなので、なんでもあり」耐性がついてしまっているかも。例えば、ジョルジュ・ランジュラン「蠅」は未読なのですが、「蝿男の恐怖」で読む前から毒素を期待しています。
投稿: Dain | 2007.09.06 22:49
高校のとき『砂の女』を読んで、打ちのめされてグラグラしました。
『マイケルK』を読んだときもそんな感じに。
毒書に手を出してみたくなりました。
投稿: takahiro_s3 | 2007.09.07 07:28
フィクションの内容でそこまで衝撃を受けるのは心が弱くて現実に生きてないからだと思う
投稿: っっk | 2023.09.28 03:04
>>っっkさん
初々しくて懐かしいですその感想。フィクションも現実のうちだし、現実「も」フィクションのうちだと思います。
投稿: Dain | 2023.09.28 15:01