この本がスゴい!2005
「考える技術・書く技術」がダントツになる。数年前に読んだことがあるが、今年は2度繰り返し読んだ。ふりかえれば、自分のライティングスキルが決定的に向上したきっかけはこの本だったことに、いまさらながら気付く。
このblogの文もアレだが、昔書いたドキュメントはもっと悲惨。モレヌケ、考え抜いていない、分かりにくい、恥ずかしい。業界に疎いからではなく、スキルがないからそういう文章しか書けない。これは、お局さんになっても同じ。なまじ詳しい分、より情けなや。
それが読んだだけで変わる。本書が素晴らしいのは、最初に理屈がきちんと説明され、それが「考える技術」「書く技術」「問題解決の技術」に一本スジが通っているところ。「明快な文章を書くということは、明快な論理構成をすることにほかならない」という原則は、どこを開いても書いてある。たくさんのハウツーよりも、一つの原則をマスターすべし。
そして、ただ読むだけでなく、自分でも書いて→修正する。本書の原則はラブレターから条文まで応用できる。引き込ませるリード文、説得のためのロジック、論理立てて説明する方法、フレームワークの応用 …素振り重要。これでもビジネスマンの端くれなので、来年はこれで毎日素振りしようという目標を立ててみる。
■いちばん、怖かった
「暗い森の少女」が今年の一番。恐さバロメータの典型は「おしっこちびりそうなほど」だろう。比喩ではなく、これでおしっこちびった。猫と○○を強要するシーンなんざ目を背けたね、小説なのに。幼女蹂躙モノだがケッチャム「隣の家の少女」ではない。
この本は「隣の家の少女」を超える小説はないか? という企画「劇薬小説を探せ」で教えていただいた一冊。結果からいえば、「隣の…」を超える劇薬ではなかったが、純粋恐怖なら凌駕している作品なり。
近親相姦、拉致監禁、先祖代々に伝わる呪い、忌まわしい記憶、暗い森、娘そっくりな肖像画などなど、イヤ~な気分にさせられる要素満載。イヤ~は気分だけでは終わらない。エグエグしてるところもある。わざと(?)説明されてないところもある。読者にお任せシーンなのだが、想像したくない。自分の想像を止めるのに苦労する。
恐ろしい展開にどうすることもできないわたし。くるぞくるぞーと盛り上げて、バーン!!とくる。これほどラスト(=もう読まなくてもいい瞬間)を夜明けのごとく待ち望んだ本も珍しい。でもそのラストは…
ちなみに、劇薬小説ただいまのランキング(よい子は読んじゃダメよ)
1.隣の家の少女(ジャック・ケッチャム)
2.獣舎のスキャット(皆川博子)
3.暗い森の少女(ジョン・ソール)
「めくるめく」という言葉は、実体験にのみ使える形容だと思ってた。初めて女を知った夜とか、真夏の激晴れの鳥海山頂とか。文字や映像を媒介した経験で「めくるめく思い」なんてないものだと思ってた。感覚としては一度きりで、別の体験で代替可能できるはずもなく、だからこそまぶしい経験を「めくるめく」と呼ぶものだと思ってた。
そいつをあっさり覆されたのが、「魔女」なり。書き手のイマジネーションに酔える。読んでてクラクラしてくる。いっさいの予備知識を廃して、読むべし。とても人間が描いたとは思えない傑作が「デビルマン」なら、「魔女」は精霊がニンゲンのフリをして描いた傑作なり。もちろん「魔女」と「デビルマン」の間にはたくさんの作品があるはず。コレハ!というのがあれば教えて欲しい。
■最エロ本
文句なく「となりのお姉さん」(リンク先エロ画像注意!ってか良い子はきちゃダメー)。よりぬき玉置勉強とでも言えばいいのか。エロ度MAXな作品をセレクトしており、とってもお買い得。足りないお姉さんやツンデレ妹×女装弟や、これでもかというエロシーンが堪能できる。線がエロい、表情がエロい、消しが甘い。昨今のニンゲン離れした巨乳や解剖図的な絵とは一線を画し、紙の上でここまでイヤらしさを追求しているのがスゴい。
リビドーとかパッションって、形而上のものだとばかり思い込んでいたが、このマンガにちゃんと描いてある。
余談だが、玉置勉強といえば「東京赤ずきん」が凄まじく面白かった。しかし、ょぅι゙ょ やフリークスはエロスコープ外なので選外。極悪鬼畜非道すぎでオススメしない。
■最プリキュア本
「なかよし」ですな!三十路のオッサンじゃ買えないよこの表紙。最近じゃコンビニでも手に入るんだが、やっぱり恥ずかしい。手に取るまでに勇気百倍、レジに持っていくのに海王拳千倍、さりげなく「日経アソシエ」で隠すように出したり(←あきらかに変)。「みんなの勇気をちょっとずつオラに分けておくれ」と心の中でつぶやきながら。初めてGOROを買ったときよりも恥ずかしかった。
買うときもエロ本並みのクオリティだが、保管はさらに慎重を要する。ひみつの格納庫の最深部に厳重に擬装して、女房子供が寝静まってからこれと併せてコッソリと楽しむ。誤解を招かぬように断っておくが、ヘンなことはしないぞ。にこにこしながら見てるだけ。こんなん嫁にバレたらと想像するだけで鬱死。バーチャル浮気(になるのか?)が背徳の気分に輪をかける。
いや、こないだバレたんだけどね
'`,、'`,、'`,、'`,、(つ▽`) '`,、'`,、'`,、'`,、
あのまなざしは、一生忘れない。
どう見ても蔑まれてます。
本当にありがとうございました。
やはりツンデレですな!「ツンデレを嫁にするとどうなるか?」で嫁がリアルツンデレであることを証明したわけだが、まったくもって嬉しくない。むしろ「言及されたセリフ」を裏読み・深読みし、常にデレ解釈できるのが真のツンデレラーであるという結論に達した。
いかに嫁に罵倒されようとも、「そ・れ・は、アナタのことが気になるから、てへっ(///)」と脳内変換できるスキルは非常に重要。夫婦和合の奥義といってもよい。
ではこのスキル、どうすれば向上させることができるか? わたしも修行中の身だが良いテクストを見つけた。それは「涼宮ハルヒの憂鬱」からはじまるシリーズなり。涼宮といえば遙か茜しか思いつかない了見のわたしに、新たな「涼宮」が、しかも強烈なツンデレキャラとして立ち上がっている。
「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」。入学早々、ぶっ飛んだ挨拶をかましてくれた涼宮ハルヒ。そんなSF小説じゃあるまいし…と誰でも思うよな。俺も思ったよ。だけどハルヒは心の底から真剣だったんだ。それに気づいたときには俺の日常は、もうすでに超常になっていた
ストーリー紹介はこれで必要十分。フロシキを広げすぎて収拾がつかなくなるあやうさは「サトラレ」みたいで面白い。お題は「ハルヒの奇妙な冒険」の方がピッタリだと思うが、「涼宮ハルヒの○○」で一貫している。アニメ化が取りざたされているが、間違いなくツンデレキャラとして描かれるだろう。
え? 茜はともかくハルヒは「デレ」がないからツンデレじゃないって? 当然じゃん、ハルヒのツン言動を脳内変換できるようになるための訓練なの。そんな、ライターお仕着せの「ツンデレというキャラ」を消費するようなメディアばかり漁ってちゃ、もったいないよ。言葉はツンなのに、ときおり見せる(1巻につき1回ぐらいの)デレしぐさに萌エロ!夫婦の明るい未来のためにも、ぜひ。
「箱」。自分が「変わった」ことが実感できた。おそらくコーチングを受けると同じ breakthrough が得られるのだろうが、1冊の本でこんなんなるとはビックリ。
レビューはここにある。このエントリでは、その反響について書く。レビューが後押しし、復刊ドットコムで交渉予定に格上げされたり、「読みました!」というお便りをもらったり、ポジティブな反響がたくさんあった… んが、一方で、「読んだけど、たいしたことないじゃん?」という反応もある。
どうやら本質にお気づきになってないようなので、ネタバレ承知であえて書く。未読の方もツッコめるように、「箱」というコトバを使わずに書く。
- 自分にウソをついている人は、自分のウソに気付くことができない
- 自分についているウソは、周囲との軋轢という形で表面化する。特に近親者や配偶者など、近しい人への不満や批判といった形をとる
- 周囲との軋轢・不満・批判にはそれぞれ因果関係があるが、それは症状にすぎない。従ってそれぞれの症状に個別にあたっても解決にならない
この辺までがドイツの病院の話で、以下が breakthrough ポイント
- 周囲との軋轢・不満・批判の原因がどんなに相手にあろうとも、それを「軋轢・不満・批判」だと判断しているのは自分であることに気付く
- そのためには、いったん自分という観察者を取り除いた現実を眺める
最後の二つはニワトリタマゴで、どちらが先か後かは限定できない。「自分がいない現実」から見ることで、問題なんて最初からなかったものと見なせるのか。あるいは、問題であると判断しているのは自分だと気付くことで、判断しない目で現実を見ることができるのか、その気付きは人それぞれだろう。
もちろん、「判断しない自分」「評価しない自分」なんて人間である限り、どだいムリな話なのだが、それでも、やってみる。ここで、「努力してやってみる」のではないことに注意。そこは「気付く」ところ。わたしの場合、幸いにも自分で気付くことができたが、気付かない人はずっと気付かないまま。あまりにアタリマエすぎてスルーしちゃっているなら、「自分の近親者・配偶者・友人・同僚」を例にしてみるといいかも。「ワタシはそうじゃない!」とココロの片隅で叫んでいる自分に気付くかも。
そしてラスト。たとえわずかな間でも、「自分がいない現実」から眺めることができたなら、次のことができるはずだ。
- いまいる現実をよくするために、自分ができることは何だろうか? という質問を自分に投げかける
あたりまえじゃん、というツッコミ結構。わたし自身、そのアタリマエが分かっていて、できていなかった。だけど今は大丈夫、その方法を身につけているから。たとえ自己欺瞞からの症状に出会っても、やり直しかたを知っているから。
以上、今年読んだスゴ本でしたッ! オススメしていただいた方、レビューしていただいた方に大感謝。あなたのおかげで、わたしはこんなにスゴい本に出会えたのです。
来年も、あなたの読んでるスゴい本を見つけられますように。
昨年のやつ→「この本がスゴい!2004」
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コメント
はじましてm(_ _)m kokonと申します。
Dainさんのレビューを読んで、「魔女」を読んでみようと思うのですが、
日記で紹介されているのは「2巻」のようですが、
「1巻」から読んだほうが良いのでしょうか?
よろしければ返信お願い致します。
投稿: kokon | 2007.09.20 01:28
>> kokon さん
書影が気に入っている(&amazonで表示される)のが2巻なので、2巻を挙げています。読みきりですが、もちろん1巻からオススメです。
投稿: Dain | 2007.09.21 01:28
>>Dainさん
ご返信ありがとうございます。
さっそく手に入れたいと思います(・∀・)wktk
投稿: kokon | 2007.09.21 01:40