劇薬注意!「獣舎のスキャット」
やっほう!みんな聞いてくれ!「獣舎のスキャット」は読後感サイアクだったぞ。だからうっかり読まないように気をつけてね、特に女性は。
この短編が収録されている「悦楽園」(皆川博子)は粒ぞろい。「退廃 + 刹那」の全共闘の時代なので、若い読者はとまどうかもしれないけれど、通底する コンセプトは一緒「人間こそが恐ろしい」。それは"血"だったり"業"だったり、あるいは過去のおぞましい記憶だったり。
それを緻密に書くんだなぁ、肝心のトコを上手に省いて。例えば、おぞましい記憶が一気に明らかにされる場面がある。それまで心理描写ばかりだったのが一転して、まるで白色光をあてたかのように事物をクッキリと書き尽くす(血潮は書かない)。それまで主人公にぴったりと寄り添った視線に、こちらも思わず引き込まれていたのが、いきなり「過去の現場」に立たされる。これは、怖い。
さらに、「性」がお話のキードライバーであるにもかかわらず、登場する「母」「妻」「妹」「姉」から女「性」が剥ぎ取られ、記号にしか見えない。おんなおんなしてないオンナが性交しても萌えも燃えもしない。これは書き手と私の性差からか? 肉と心が喜ぶためにつながろうとするオスと、つながることに他の理由を探そうとするメスとの。だからこそ、「獣舎のスキャット」のラストでサイアク気分を味わいながら激しく興奮、おっきおっきした。
(*´Д`)ハァハァ
グロは皆無。血糊や臓物の代わりに人の心のグロさを存分に味わえる。収録作の一つ「疫病船」は口の中がムズムズする一方で、人の厭らしさが滲み出るダブルのエグさ。また、「水底の祭り」の屍蝋のエピソードは、それこそフラッシュバックのように私の記憶が呼び起こされた。それは母が言ってたセリフ→「この小説は読むな」、と。
もう読んじゃったわぁん、水底をぐるぐる回る白い女体が脳に焼き付いて離れないよぉ。
ランキングを以下の通り変更。オススメいただいた mhkさん、t さん、ありがとうございます。こんな胸クソ悪くなるような小説を教えていただいて。
1.隣の家の少女(ジャック・ケッチャム)
2.獣舎のスキャット(皆川博子)
3.暗い森の少女(ジョン・ソール)
選外
・ぼくはお城の王様だ(スーザン・ヒル)
・砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない(桜庭一樹)
・蝿の王(ウィリアム・ゴールディング)
しかし、1位は変わらない …ってか、「同一作家の他作品もOK」だとケッチャムが独占しちゃう。だから良い子の皆さん、ケッチャムだけは読んじゃダメだよ。
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