ひさびさに背筋が凍った「暗い森の少女」
こわい本とはこういうもの。小説読んでて、久しぶりに「こわい」「おそろしい」「もうヤメテ」体験をした。ラストに説明を求める人は、その禍禍しい終わり方に読後感サイアク気分をたっぷりと味わえるだろう。
人よりはグロ・ヘンタイ・血まみれ耐性はあると思っていた。しかし、この正統派ゴシックホラー(救いなし)を読むうちに、何度もゾっとさせられたことは白状しておく。
とはいえ「正統派」なので展開はすぐに見抜ける。今の読者ならほとんど分かるに違いない。ほら、あれだ。80年代に流行ったホラー映画のアレ。伏線を張って「来るぞ来るぞ~」と読者に思わせておいて、やっぱり、
というやつ。いわゆる「お約束」をキチンと守ってくれる。でも13金のようなビックリ箱みたく脅かすだけの小説ではないし、最近の低級な「読者を騙す」叙述系でもないので、ご安心あれ。ストーリーとキャラでじわじわ怖くさせて、バーン!!とくる。
スレっからしになってしまった自分を嘆いてもしかたがない。「お約束」がどう守られているかを確認しながら読むのだが、それでも怖い。「暗い森」へ連れ込まれた子どもたちがどんな運命を辿るのか、分かっていてても、怖い。ニューイングランドの由緒ある屋敷、先祖代々の「呪われた血」、父娘、姉妹、虐待、狂気、消された過去、そして「暗い森」の先にあるもの… ○○モノという設定はまさに古典的。
グロや残虐シーンはあるけどたかが知れてる(これは1978年の作品だぜ!)。グロや残虐だから怖いのではない。人は「分からない」ものに恐怖する。しかも、生きている人間が一番恐ろしい。「分からない」ものへの説明が無いまま、読者は本能的に理解する、「これに違いない」と。そして、それが正しいことを知りつつ、そうならないことを祈るような気持ちで読み進める、真ッ黒なラストに向かって。
そういう、根源的な、恐怖を、煽ってくれる。オススメいただいたddwさんに大感謝!
劇薬小説ランキングを以下のとおりに変更。
1.隣の家の少女(ジャック・ケッチャム)
2.暗い森の少女(ジョン・ソール)
3.ぼくはお城の王様だ(スーザン・ヒル)
4.砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない(桜庭一樹)
5.蝿の王(ウィリアム・ゴールディング)
ランキング1位「隣の家の少女」を超えられない理由を書いておく。「怖くて面白かった」から。ジョン・ソールの他作品を読みたいから。「隣の家…」は読まなければよかったと後悔するいやぁあぁぁぁな本だから。読んだことそれ自体を抹消して、人生のそこだけをなかったことにしたいほどの本だから。
…というワケで、良い子は読んじゃダメだよv
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