ヘンタイ小説「溝鼠」
ずばり変態小説。「ヘンタイがでてきて読後感サイアク」との触れ込みで読んだが、勧めてくれた方は団鬼六を読んでないな。「溝鼠」をヘンタイというならば「花と蛇」をどうぞ。ヘンタイ萌えできますぞ。グロを抜いたらフランス書院にすら負ける。ただし、「そういうの」を身構えずに読んだ方はかわいそうかも。肛虐や飲尿が普通にあるし(笑
そのヘンタイを象徴する場面を引用する。鷹場は主人公(ヘンタイ)、八木はその部下(ヘンタイ)。
彼女がトイレに籠っていた時間は約十分。恐らく、大便。八木もそう思ったに違いない。
鷹場は瞼と口を閉じ、ありったけの肺活量を駆使して鼻から空気を吸い込んだ。麻薬犬さながらに嗅覚を研ぎ澄ました。鼻粘膜を刺激する微かな異臭───彼女の排泄物の残り香。
感激で、肌が粟立った。八木との醜いバトルを制した甲斐があった。彼女が便座に座り、眉間にシワを寄せた姿を妄想し、しごきだす───
放課後タテ笛をなめるレベルを凌駕してるが、根はいっしょ。気持ちが分からないでもないと言ったらわたしもヘンタイだなorz
このヘンタイ主人公は、現代版「恨みはらします」=復讐代行を生業としている。復讐とはいっても嫌がらせに毛が生えたようなもので、コロシは無い。そのくせ彼は自分をドブネズミと貶め、悪いことをやるのに一生懸命自分を納得させ、動機付けようとする。いじらしい。悪党になりきれない小悪党といったところか(ちなみに、このテのケッサクは「Mr.クイン」。ヘンタイは無いが、おもろいゾ)
一方、どうにも合点がいかないのがヤクザ屋。歌舞伎町で風俗+ギャンブルで手広くシノいでいるヤクザの親玉がでてくるんだが、ヘンだ。そんな人は、1億2億のカネで動かない。シノギも立派な事業なので運転資金として必要なら分かるが、経営は順調だし。それが眼の色を変えて現金を追っかけまわすのだから、コメディにしか見えない。
また、父と子の確執が周囲を巻き込んで大バトルを繰り広げる構図は「カラマーゾフの兄弟」を思い出してしまったが、これはドストエフスキー御大に極めて失礼なり。「カラマーゾフの兄弟」の方がものすごく面白いぞ。
最後に。ストーリーは単調。騙し騙されドンデン返しを狙っているのは、よーく分かるが、分かりすぎ。展開がミエミエなので、導入部を読んで頭に浮かんだ起伏をなぞるだけ。ドンデンを狙って読むならやめておく方が吉。エロを期待するならフランス書院を、ヘンタイ萌えを望むなら団鬼六を、父子の大バトルを読みたいなら「カラマーゾフの兄弟」を、推す。言い換えると、これらが混ぜこぜになったお話ともいえる。わたしにとっては予定調和をセックス+バイオレンス+ヘンタイで埋めているだけ。
んで、読後感は、「疲れた、このヒトの本はもう結構」
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コメント
はじめまして。トラバさせて頂きました。
御紹介のヘンタイ小説「溝鼠」の引用部分はなかなかそそられます。芥川龍之介の「好色」を連想してしまいました。是非、読んでみようかと思います。
投稿: 下等遊民 | 2005.10.23 14:14
下等遊民 さん、コメント&トラバどうもです。
糞尿譚がお好きなら、「美佐子のOvertime」を激しくオススメします。スカトロもさることながら、強力なSMプレイは読んでるこっちがクラクラしてくるほど。
いま探してみたら、アドレスをちょっと変えていて検索ロボットに引っかかりにくくなっている模様。
がんばって探してくださいね。
投稿: Dain | 2005.10.23 23:38
はてなで最悪な本を探されてるところにたまたまヒットしました。
紹介されてる中で未読のものも多かったのですが、Dainさんのコメントを読んでいて 「溝鼠」は駄目だろなぁと思っていました。
読後の感想が気になってこちらに来させて頂いたんですが、予想の通りで安心しました(笑 ?
私もこの作家さんはもう読みませんorz
最悪本 私も参考にさせていただきます~♪
投稿: pon | 2006.11.04 20:34
>> pon さん
はい、わたしには趣味が合いませんでした── といよりも、むしろスーパー下品を目指すなら○○、露悪趣味のクライムノベルなら△△、と他作品を推したくなるのです。本作は勢いがあってよろしいのですが…
最悪本のトップに燦然と(?)輝いている奴は【読まないで下さい】。読んだことを後悔すること請合います。
投稿: Dain | 2006.11.04 23:01