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第12章:プロジェクト調達マネジメント(その3)

ここでは、プロジェクト調達マネジメントをまとめます。
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keywords
 ・リスクと契約形態
 ・インセンティブ
 ・スコープと契約形態
 ・引合計画
 ・約定・前提条件
 ・当事者関係
 ・引合いしない調達

リスクと契約形態
前述のまとめをもう一度見て欲しい。試験に出やすい設問のひとつに「○○という契約タイプを選んだときに、リスクを負うのは誰か?」という問題がある(解答はマウスドラッグで反転表示)

  1. 実費償還契約を結んだが、コストリスクを負うのは誰か? →発注者。コスト増の分は価格に組み込まれるから
  2. 定額契約を結んだ。コストリスクを負うのは誰か? →受注者。いくらかかろうとも、価格は既に決まっている。赤字分は自費負担となる

インセンティブ
コスト、タイム、品質、スコープ、性能…プロジェクトを完遂するにあたり、目指しているものの優先度は異なる。「ぜんぶ優先」とほざく厨房は何も優先していないのと同じ。インセンティブとは、目指すものについて発奮させる報奨(ごほうび)のこと。インセンティブのおかげで、発注者の優先度の高いものを目指して、受注者は行動を取るようになる。発注者が納期を重視するならば、スケジュールを前倒しできたときの報奨を設けるだろうし、その報奨目指して受注者は、「スケジュールが前倒しできるような体制」を整えるだろう。両者のベクトルをあわせるのがインセンティブなのだ。

練習問題:以下の条件において、コスト削減を目標とし、「コストが見積もりを下回った場合、その20%を受注者へのインセンティブ」とした(80%は発注者へ)。実質報酬と最終価格を求めよ。解答はマウスドラッグ反転で。


見積もりコスト
210
見積もり報酬
25
見積もり価格
235
分配比率
80/20
実質コスト
200

(単位は百万円)

■実質報酬
 見積もりコスト210 - 実質コスト200 = 10
 10 X 0.2 = 2
 見積もり報酬25 + インセンティブ2 = 27
■最終価格
 実質コスト200 + 実質報酬27 = 227(百万円)

スコープと契約形態
前述のまとめをもう一度読んで欲しい。その契約形態を満たすためにスコープは最低限どこまで決まっていないといけないか?は試験にもでるし、リアルでもトラブルの元となっている。


  • 定額契約──スコープはカンペキに定まっている必要がある。発注者は「作業」を購入しているのであり、「作業方法」の如何は既に決まっていること。how 決定済み。"just do it!"
  • 実費償還契約──目標とすものや、必要な最終成果物は分かっているが、それをどのように達成するか "how to do" は分かっていなくても可。したがって個々の作業をいつどうすればよいかを正確に知らなくても契約を結ぶことができる
  • T&M契約──作業範囲が定義されていなくても着手できる。車検などは、「着手して検査することにより、作業範囲が明確化される」といえる

ステップ2:引合計画(p.152)
引合計画とは、一言だと、RFPを作成すること。まず第一に、調達文書をかきあつめるところから始まる。調達文書(入札文書)とは、受注候補者が必要とする情報をまとめたもの。調達文書は以下の形式を取る。


  • RFP(Request for Proposal):要望する価格、仕事の内容とやり方の詳細、担当する人・組織が必要とする資格・経験が記載してある→主に、実費償還契約に用いられる
  • IFB(Invitation for BID):入札案内のこと。必要とする全ての作業が洗い出され、それぞれの作業についてひとつの価格見積もりを要求する→主に、定額契約について用いられる
  • RFQ(Request for Quotation):アイテム毎の価格の見積もりを要求する。時間当たり単金や、人月、人日など→主に、T&M契約について用いられる

調達文書の構成は次の通り。

  • 売り手への情報(背景、入札手続、評価基準、見積もり価格の提示方法)
  • スコープ
  • 前提条件(保証、所有権など)

調達文書をちゃんと作っておくことで得られるメリットとして、「応札者の仕事がスムーズに、ひいては調達そのものがうまくいく」「より妥当な価格見積もりができる」「プロジェクト全体の変更を抑えることができる」がある。いいかえると、プロジェクトがうまくいっていない理由として上記の「逆」が挙げられるのであれば、それは調達に原因があると仮定しても良い。

約定・前提条件
契約に対し陰に陽に影響を与える約定・前提条件となる要素がある。覚える必要はないが、プロジェクトに与える影響は押さえておきたい。以下の通り。


  • 受領証:成果物が受け入れ可能であることは、何を持って証明するのか?
  • エージェント:発注者、受注者の代表者は誰か?
  • 調停方法:発注者、受注者でトラブルが発生したとき、その調停役となる第三者は誰で、どのように調停を行うのか?
  • 譲渡:契約にあたり一方からもう一方へと委譲される「権利・義務」は何か?
  • 権威:誰が何に対し権威をもっているのか? (例:発注者は業務仕様のエキスパート)
  • 保証:債務保証契約が必要か? 保証人をつけるのか?
  • 不履行・デフォルト:義務が果たされなかった場合どうするのか? 受注者の違反は即座に発注者の不履行にならないことに注意。つまり、納品物の一部に不具合があったからといって、即、代金を一切支払わなくてもいい、というわけではない
  • 変更:契約の変更はどの方法、期間で行われることがあるのか
  • 機密性:どの情報を公開してはいけないのか?
  • 天災・災害時の免責:地震、カミナリ、火事の場合はどうする?
  • インセンティブ:発注者の提示する「納期、コスト、品質、性能、リスク」を遵守したときに得られる売り手の利益。incentiveとは発奮材料、励みとなるもの
  • 補償:事故・ケガ時の補償は?
  • 独立した契約主体:発注者は納入者の「雇い人」ではない
  • 監査の権利:プロジェクト実行時、どの主体が何に対して誰の名において監査を行うのか? つまりレビューをするのは誰? 生産物の確認(試験)を行うのは誰?
  • 知的財産:プロジェクトにまつわる特許、商標、著作権、ソースコードは誰が有するのか
  • デフォルト(不履行):予想されうるデフォルト(契約不履行)の場合の対応はどうするか?
  • 副産物:プロジェクト実行の際出てきた副産物をどう扱うのか(誰のものか)?
  • 告知:契約に伴う文書は誰に送付されるのか?
  • 所有権:契約に伴う開発・作業に必要な物資や建造物、設備は誰が所有するのか?
  • 支払い:支払いの時期・方法、支払い拒否の条件は何か?
  • 報告:どの間隔で、どんな情報を、誰から誰に対して報告する必要があるのか?
  • 支払い留保:支払う全額のうち、通常5%か10%は契約完了時に支払う
  • 仕事のスコープ:どの仕事・作業が契約対象となるのか?
  • 終結条件:契約対象の仕事・作業が終わっていないが、仕事を止める条件は?
  • 契約破棄:両者の明白な合意無しには、契約内容の変更、破棄を認められないという記述を追加するか否か?

支払いについて、ありがちなアナ↓
Q.コスト明細に誤りがあったため、全ての支払いを止めた。正しいか?
A.間違い。明細は枝葉の話であり、「全ての」支払いを止めるのは誤り。係争の度合いにより部分的に支払いを拒否する、というのはアリ

当事者関係
契約者同士どこまで関知・関与できるか? 次のような問いが出ることを想定していればよい。

問:A社はB社と契約を結び、プロジェクトAの仕事を委託した。B社はさらに契約を結び、その作業の一部をC社に任せている。いま、A社の社員がC社の作業を止めようと指示を出した。C社はこの指示を受けるべきか否か?

答:否。A社とC社は何の契約的関係がないため。

引合いしない調達
「入札せずに発注先を決める」という選択肢もあり。それは次の場合…


  • 極端なまでにタイトなスケジュール(選んでいるヒマ無い)
  • 売り手が独特な価値をもっている(しかもそれが必要)
  • 売り手がひとつしかない(特殊なプロジェクト)
  • 必要な特許があり、一社が独占している

評価基準(p.153)
評価基準書は調達文書の一部として扱われる。評価基準書により、入札者は発注者が何を必要としているのかを理解しやすくなり、応札するのか、あるいは新たな提案をするのかの判断材料となる。何を評価基準とするかというと…


  • 発注者の要望を理解しているか
  • プロジェクト全体のライフサイクルコストを把握しているか(作りっぱなしでは困る)
  • 技術的能力
  • マネジメント能力
  • 財務能力

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