公共ITシステム受注のカラクリ
随意契約:大手IT企業と行政主管との素敵な癒着の原因。一般に、契約(contract)には最低でも次の事項が書いてあるはず
1. 発注者
2. 受注者
3. スコープ
4. 納期
5. 価格
随意契約とは競争入札方式によらず、任意に選定した業者を相手方とした契約のこと
競争入札にするのであれば、「受注者」を除く全ての情報が明らかにされている。その上で「この仕事を任せる相手を誰にするか?」を決める
1. 発注者
2. 「 」 ←未決定
3. スコープ
4. 納期
5. 価格
一方、随意契約で行うということは、事情はどうあれ「受注者」は予め決まっている。こんなカンジ
1. 発注者
2. 受注者
3. スコープ ?
4. 納期 ?
5. 価格 ?
極端に言えば1.と2.が決まっていれば締結できてしまう、不思議な「契約」となる。本来、仕事を出す立場と請け負う立場は、1~5が明確になってはじめて「契約」という行為ができる。つまり、随意「契約」とは、契約に必要条件を満たしていない「契約」なのだ
この契約ですらない随意契約のおかげで、発注者、受注者の双方にとってスゴいメリットが生じてくる
単年度主義:官公庁の調達は単年度単位。かつてシステム構築はでっかいプロジェクトだった。とうぜん「システム化予算」はスゴい値札がつくことになる。これを単年度で作ることも、その予算を通すこともムリが生じてくるもの。初期投資分を単年度予算に載せることは難しかったんだろう。予算は毎年あまらせないように使いきり、次年度は漸増するように取り計らうのが出世する官僚の条件だし。
これを年毎の随意契約にすることで、一発解消できる。契約期間は1年間だが、年毎に契約更改を繰り返す。どんな高額でも「10年で償却することを想定し…」などともっともらしいリクツをつければ10で割った金額が単年度予算となる。この数を増やせば増やすほど通しやすい予算となるワケ
一方ベンダーの方もありがたい。できてもいないシステムの10年分の保守契約を結んでくれるのと同義だから。仕事の確保が保証されるってのは、本当にありがたいことです。しかも、できあがれば保守費がもらえる…もちろん別会計で
メリットはまだある
システムを導入する該当部門が予算を請求し、議会や財務省から承認されるまでの時間を逆算すると、実際のシステム開発にかけることができる時間はほとんどないに等しい。つまり単年度主義を忠実に守るのであれば、
「計画策定、予算請求→議会承認→発注」これに8~9ヶ月
「システム開発~リリース」これを3ヶ月でヤレ!
ということになる。ぶっちゃけありえない!
タテマエがそうならホンネのところはこうだ。代々その官公庁に食い込んでいて、そこのシステムを作ってきた大手ベンダーが官公庁の代わりに決めた「仕様」に基づいて予め作っておいたパッケージを丸ごと採用するカラクリ。
発注側もありがたい。RFPなんざ書かなくてもベンダー常駐者が何やら調べて書いてくれる。仕様を提示しなくても、(ちょっと思ったのと違うかもしれないが)何か出来合いのものを提供してくれる。自分はサインするだけ。よく「丸投げ」というが、それは投げる前に仕事を受け取っていなければならない。この場合は受け取ってないから丸投げですらない
かくして大手ベンダーと行政主管の思惑は素敵な融合を始めるのだった…
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