第12章:プロジェクト調達マネジメント(その1)
ここでは、プロジェクト調達マネジメントをまとめます。
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keywords
・プロジェクト調達マネジメントの定義
・調達マネジメント計画書の定義
・「契約」とは何か
・調達におけるプロジェクトマネージャの役割
・契約部門の集約化/分散化
・調達マネジメントのプロセス
・調達計画
・内外製分析←「買うか作るか」
調達マネジメント統合マネジメントとタイムマネジメントの次ぐらいに難しいという。ポイントは、買い手の視点からの調達であること。買い手のメリットは売り手のデメリットになる場合があるし、その逆もありうる。取り違えると理解してても得点にならないので要注意。
調達マネジメントの一般的なルール
- 契約とは公式な合意である
- 契約書には全ての要求事項が明記されていなければならない
- 契約書に書かれた全ての要求事項は満たされなければならない
- 契約書の変更は公的に記述・管理されなければならない
「USA以外の国でPMPを受験する方へ」という一項がある。PMPの問題文はアメリカ合衆国政府の専門家が書いている場合があるため、どうしてもUSの慣例が「正当なもの」として扱われがちだそうな。その結果、調達契約の分野は、他国の人がPMPを受けるときの落とし穴になってしまう。
間違えないためにも、「両者間の公的かつ最重要なドキュメントは、契約書である」ことと、「調達プロセスは公的なアプローチを経る」ことを押さえておくこと。
プロジェクト調達マネジメントの定義(p.147)
プロジェクト調達マネジメントとは、プロジェクトスコープを達成する目的で、母体組織の外部から物品やサービスを取得すること。
調達マネジメント計画書の定義(p.151)
調達マネジメント計画書とは、調達プロセス(引合計画から契約完了まで)をどのようにマネジメントするかについて記述した文書のこと。
「契約」とは何か
契約とは、両者間で合意されたことを記述したものである。従って、法的な言葉のみならずビジネス用語も含まれていて、支払、報告、スコープといったプロジェクトで求める要求事項が全て記述されている。
ほとんどのプロジェクトマネージャは契約の「スコープ」面にのみ気をとられている。つまり、仕事の範囲だ。確かにスコープも重要だが、契約の一面でしかない。例えばソフトウェア開発の場合を考えてみよう。出来上がったソフトウェアは誰が「所有」するのか? 昔の流用部分や、将来流用するプログラムに対し責任を負うのは誰か? ソースコードの流出に対し権利を主張するのは誰か? オーナーシップはスコープに限らず重要。
契約書とは法的拘束力を持つ。従って、全ての用語、前提条件は現実に合致していなければならない。いかなる変更も両者の合意と公的な手続きでなされなけらばならない。
調達におけるプロジェクトマネージャの役割
プロジェクトマネージャは調達契約の手続きにおいて以下の役割を果たす必要がある
- 契約書の中に、識別されたリスクとその緩和策を組み込む
- プロジェクトにフィットした契約書の仕立て屋となる
- プロジェクトのスケジュールと契約のスケジュールの調整を行う
- 契約交渉の場に一緒に臨む
「プロジェクトマネージャがアサインする前に契約書にサインするなかれ」とRitaは言うが、リアルだとだいぶ違う。
「調達」とは、「契約」を通じ、プロジェクト内の識別されたリスクのいくつかを、プロジェクト外の組織に委託すること。従って、プロジェクトマネージャが選任→リスク分析が終わる→契約の手続きへ…というのが仕事の順番なのだが、現実はこうだ。プロジェクトは、営業が組織の外から契約を勝ち取ってくるところから始まる。あたりまえだ。組織の資源を無目的に割り当てるわけにいかない。プロジェクトマネージャがアサインされるときには、契約書に既にサインがしてある状態となっている。サインした人や営業がちゃんとリスク分析をやっていることは「ぶっちゃけありえない」ので、プロジェクトマネージャはそのサインを背負う形になる。ヌルい前提条件や曖昧なプロジェクトスコープは、そもそもプロジェクトが始まる前からリスクを孕んでいることになる。
契約部門の集約化/分散化
調達・契約部門(部隊というべきか)は以下の形態をとる。
1. 一つのオフィス(部門)にまとめる
2. それぞれのプロジェクトオフィスに部隊を派遣する
契約部門を集約することのメリットは、契約担当者の経験が積み上げられやすいこと、仕事の標準化がやりやすいこと、キャリアパスが明確なことなどがあげられる。
またデメリットは、プロジェクトマネージャが契約部門のスタッフにアクセスしにくいこと、契約部のスタッフは一人でいくつものプロジェクトの面倒を見なければならないことが挙げられる。「調達部」とか「渉外部」といったオフィスがあり、そこに契約関連を集中させるから、おのずとそうなるね。
一方、契約部門を分散化させ、一つのプロジェクトに契約スタッフを派遣するやり方のメリットとして、プロジェクトマネージャは契約スタッフに直接アクセスできたり、契約部のスタッフはより一層、プロジェクトへの忠誠心が出てくることが考えられる。
デメリットとしては、プロジェクトが解散したら帰る家(オフィス)がなくなること、「契約部門」という集約オフィスがないため、ある程度以上出世する術がないこと、効率的でないこと、標準化しにくいことが挙げられる。
調達マネジメントのプロセス(p.147)
調達マネジメントのプロセスは段階を追って進む。追い越しも並行作業もなし。従って試験でも「○○の後に何をするのか?」とか「○○をするためには何ができていないといけないか?」といった設問になる。
ステップ | キーワード | 生産物 |
1.調達計画 | 買う?作る? | 買うか作るかが決まる。契約タイプが決まる、スコープ概要が決まる |
2.引合計画 | RFP作成 | RFPできた |
3.引合 | Q&A | 提案ができた |
4.発注先選定 | 一つを選ぶ | 契約書にサイン |
5.契約管理 | 管理 | 実質的におしまい |
6.契約完了 | 完了 | おしまい |
ステップ1:調達計画(p.149)
調達計画とは、「買うか作るか?」。言い換えると「プロジェクト外の組織から製品なりサービスを調達したほうがよいものは何か?」になる。調達計画ではスコープ定義のプロセスで以下の作業を行う。
内外製分析←「買うか作るか」(p.150)
内外製分析とは、「内製・外製」分析のこと。自分で作るか、外側で作ったものを買ってくるか、を判断する。重要なのは、買ったときの値段だけでなく、維持費・間接費の両方を考慮に入れた上で考えること。車両の購入・レンタルを検討する際、保険費用も考慮に入れることと同じ。
コスト、スケジュール、品質、スコープのそれぞれのリスクを減らすことが目的なら、以下のいずれかの場合にあてはまるのなら、購入したほうが良い。
- 余剰プラントや余剰人員がある
- その資源を持ち続けていたい
- 生産物に対し、著作権・独占権を主張したい
例題だとこんなカンジ。
その汎用機を購入するかレンタルで済ませるかを検討している。日々のレンタル費は12,000円で、購入すると100,000円で運用費は2,000円となる。プロジェクト期間がどれぐらいだと、買ったほうがよいか?
解答はこんなカンジ。
レンタル費と購入(+運用費)が一致する日をdとすると…
12000d = 100000 + 2000d
d = 10
従って10日以上だと買ったほうが安上がりとなる。
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