第9章:プロジェクト人的資源マネジメント(その3)
ここでは、プロジェクト人的資源マネジメントをまとめます。
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keywords
・リーダーシップスタイル
・対立をマネジメントする
・対立を解消するテクニック
・問題解決の方法
・WAR ROOM
・マクレガーのXY理論
・ハーズバーグの衛生理論
・期待理論
・マズローの欲求階層論
リーダーシップスタイル
プロジェクトマネジメントとは、人員をマネジメントすること。リーダーシップスタイルはマネージャの性質にもよるが、指示的、進行役、コーチング、サポーティング、専制的、コンサル的、コンセンサスといったスタイルがある。
それぞれ良し悪しがあるが、プロジェクトのフェーズにより、より好ましいスタイルがある。例えば計画フェーズでは、何をどうすればよいのかを知っているのはプロジェクトマネージャだけなので、「指示的スタイル」が好ましいし、実行フェーズでは「コーチング」、「進行役」、「サポーティング」な役目を果たすことが望ましい。設問は、「プロジェクトの○○フェーズにおいて、どのスタイルが望ましいか?」という形で問われる。
注意するべきなのは、「コンセンサス」だろう。プロジェクトにとって重要な決定は、チームメンバーによってなされるべきだと考えるマネージャは多い。確かにそうだが常にそうとは限らない。なぜなら、決定に必要な情報の全てをメンバーで共有しているわけではないから。メンバーはそれぞれのタスクをこなしているため、常に最新必要な情報を得ているわけではない。プロジェクトの決定に必要なものとして情報を取捨選択し、ツールにあてはめ、決定する…これこそプロジェクトマネージャの仕事。時にはスピードを要するジャッジもあるだろうし、その度にメンバーを集めてコンセンサスを得るというのはナンセンスだろう。この場合、自分の判断で決定を下すことになる
従ってプロジェクトが左前になったとき、「プロジェクトマネージャが下した判断・決定に問題あり」と即断するのは問題だろう。あなたがメンバーとして参加しているのであれば、決定に必要な情報を得ていない可能性がある。プロジェクトマネージャと同等の情報を得ていれば、やはり同じ判断を下していたかもしれない。
一方で、あなたがプロジェクトマネージャであれば「自分の判断力・先見性の無さ」を責めるのではなく判断に必要な情報が自分に集まるような仕組みを作っていたか/否かを顧みるべきだろう。やってなかったのであれば、正すべきところはそこだから。
対立をマネジメントする
対立・衝突は必ず生じる。スコープ、リソース、品質で、トレードオフの判断が必要となる場合は、プロジェクトをまわしている限り常に起きうる。そうでないならプロマネは要らない。「ごめんで済んだら警察いらない」と同じ。プロジェクトマネージャは先見的に(プロアクティブに)衝突の「芽」を見つけて、それがプロジェクト本体に影響を及ぼさないようにしなければならない。
衝突は、できれば避けたいものなのだが、この対立・衝突こそがプロジェクトを前へ進める「チャンス」であるとPMIイズムは言う。対立に関する考え方を変えてみよう。
【古い考え方】
- 対立は個人的見解の相違とリーダーシップの欠如により生じる
- 対立からは何も生じないため、避けるべきだ
- 対立を解消するためには、衝突しているものを物理的に引き離すか、上司の直接介入が必要だ
【新しい考え方】
- 組織間のやりとりにより、対立・衝突は避けられない。常に対立が生ずるものとして考える
- 対立はプラスとなる場合がある。対立するということは、そこに問題が内在するということ。対立に着目することにより、顕在化する前に問題を発見することができる
- 対立はプラスとなる場合がある。対立を解消することにより、よりうまくプロジェクトがまわることがあるため
- 対立を解消するためには、当事者およびそのマネージャを巻き込んで原因と問題点を洗い出すことが必要だ
プロジェクトには対立は不可避。なぜなら、
- 多数のステークホルダーの要求や意思は、本来まとまって出てくるわけではないから
- プロジェクトマネージャの権限は限定されているから。これがステークホルダー全員の上司並の権限をもつのであれば話が早いが、そーいうのは「社長命令のプロジェクト」なんて呼ばれる…んで、「社運を賭けた」という枕詞がつくと「終了」の二文字がちらついたりする
- 機能部門マネージャからリソースを必要充分に得られるというわけでもないから
対立を回避するためのテクニックは次の通り。非常にあたりまえなのだが実践された試しは…
チームに対し、[ プロジェクトが向いている方向 | プロジェクトの目的、最終成果物は何か? | 決定のためのキー情報はどれか? | 現状で変化しているものは何か? ] の問いかけをする。今どこにいて、どちらへ向かっていて、どちらへ向かうべきで、状況が変わったところは何かが分かれば、対立は解消する
責任分担があいまいなところ、重なっているところを整理する←対立のかなりの原因はこれ。「私のせいじゃない」「言った/言わない」というセリフは非常に大きな声で発言されるが、誰がなにをすればよいのかをハッキリさせれば済むだけ。ポイントは誰が何をすべきだったのかを語らないこと
対立の源はメンバーのパーソナリティや組織の気質によると考えているプロジェクトマネージャは多い。しかし、次の順番で対立が生じているのが現実。言い換えると、対立解消の近道は、次の上位から手をつけろ、ということ。
- スケジュール、納期 : 次工程へのズレ込みは、いつまでになにをやるのかが
ハッキリしていなかったことが原因である場合がほとんど
- プライオリティ : 優先順位をつけないことは、納期、品質、コストの全てに通ずる問題の原因。「すべて最優先」という間違った日本語を聞くときがある。そのバカには肩書がついている場合が多い
- リソース : 機能部門マネージャとプロジェクトマネージャの齟齬の原因はコレ
- 技術的見解のな相違 : 「技術的にできる/できない」論を始めとし、プログラマに多い。どんなにアツくなってても「何をすべきか」という問いでたいていは落ち着くから不思議
- 手続き上の問題 : 厨房に多し。いわゆる「ドキュメントの書式に不備がある」と鬼首獲ったかのようにのたまう
対立を解消するテクニック
対立・衝突はその当事者で解決することが最も望ましい。プロジェクトマネージャは、対立する当事者や、対立している案件に対し自己の権威(権力)の及ぶ範囲内で解決に努めること。難しいようなら、予めシニアマネージャや機能部門マネージャのサポートを依頼しておくと良い。プロジェクト内での対立は、プロジェクトマネージャの責任において解消しなければならない。これには例外があって、法律や倫理上の問題がある場合にはこの限りではない。
このテの問題は「○○という状況下でどの行動をとるべきか?」というシチュエーション的な設問形式でくる。このとき念頭におきたいのは「この状況下において誰が最も影響力を行使できるか?」あるいは「顧客の利益になる最もよい解決方法は誰が握っているのか」という自問。迷ったらお試しあれ
- 真っ向から取り組む : その問題そのものをを解決する。「茜を愛している。でも遙には俺の子が宿っている。だから、茜と一緒に遙の子を育てます」
- 妥協する[ベストチョイス] : 対立する両者の折り合える点を探す。「遙と一緒になる…でも茜ちゃん、これでずっと"お兄ちゃん"でいられるんだよ」
- 先送りする : 問題は悪化する可能性大だが、とりあえず「避けた」ことにはなる。「バイトで疲れてるんだ、その話はあとにしてくれないか、水月」
- とりつくろう : 違うところよりも同じ部分に目を向ける。「遙との過去は凍りついたままであって、終わったわけではない。一方、水月との現在は今日までの日々の積み重ねがある。でも、どちらもオレを好きなのなら、みんなで一緒に暮らすってのはどうかな?」(そのうち刺されるかもな、孝之)
- ごり押し[ワーストチョイス] : 業務命令、服務命令により無理矢理押さえ込むやりかた。「誰のせいだって、何のせいだって、結局全部、今をやるだけさ」(by大空寺)
問題解決の方法
「スライムがあらわれた!どうする?」と同じシチュエーション的な設問でくる。選択肢を選ぶ前に「状況の問題は読めば分かるが、真の問題(問い)は何か?」を念頭におくこと。
- 問題の原因を特定する。問題の症状/状況と取り違えぬように←ワタシが一番良くやるエラー
- 問題を分析する
- 解決案を策定する
- 決定を実行に移す
- 実行した解決策をチェックし、決定が問題を解決したことになったか判定する
一番重要なのは1.これは異論あるまい。…んが、二番目に重要なのは5. 「えっ」と思うかもしれないが、やったことが上手くいったかをチェックしていないということは、もう一度同じ原因で同じ間違いを犯すことになる
WAR ROOM(作戦会議室とでも訳すのか?)
戦略室? うまい訳が見当たらない。計画を策定し、実行し、チェックし、次の行動へ移す場所は一箇所にかたまっていることが望ましいということ。チームとしての一体感を養成するだの何だの言う人がいるが、顔つき合わせて話したほうが、話が早いというだけだと思うが。たいていは会議室奥をホワイトボードで囲うとできあがる。カップめんがあると勇気百倍(w
マクレガーのXY理論
人間を2つの視点で見る。X理論では人間を本来、主体性のない怠け者であるとするが、Y理論では、人間を自発的に努力するものであると考える。結局どっちやねんとツッコミ入れたくなるが、人とはそーいうもの。X(ペケ)な風に見るか、Y(eah!)と見るかは、それこそ人それぞれでしょうな
ハーズバーグの衛生理論
衛生要因といわれる給与、職場環境などよりも、仕事そのものに達成感、やりがい、自己実現が感じられることがやる気を増加させる動機となっている。真理ですな。給料も重要だけど、自分で満足のいく成果を残すために生産性の高い仕事をするんだよな→名言「生産性が高まるから満足するのであって、その逆ではない」を参照せよ
期待理論
やればやっただけ結果に結びつく仕事に、一番力が入ること。やっても結果に結びつかない、あるいは自分の努力よりもまわりの努力をも必要とする場合、あんまりがんばらないという理屈。ここでいう「結果」は「お金」に読み替えても可
マズローの欲求階層論
人間の欲求は5段階のピラミッドのようになっていて,底辺から始まり上へ上へ上りたがる。一つ目の欲求が満たされると次の段階の欲求へ…といった感じ。人間の欲求の段階はこの階層をさかのぼるという
自己実現の欲求
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自我の欲求(尊敬への欲求)
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親和の欲求(社会的欲求)
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安全の欲求
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生理的欲求
- 生理的欲求と安全の欲求は、人間が生きる上での衣食住等の根源的な欲求
- 親和の欲求とは、他人と関りたい、他者と同じようにしたいなどの集団帰属の欲求
- 自我の欲求とは、自分が集団から価値ある存在と認められ、尊敬されることを求める認知欲求のこと
- 自己実現の欲求とは、自分の能力や可能性を発揮し、創造的活動や自己の成長を図りたいと思う欲求のこと
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