第8章:プロジェクト品質マネジメント(その2)
ここでは、プロジェクト品質マネジメントをまとめます。
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keywords
・シックスシグマ
・トータルクオリティマネジメント(TQM)
・品質計画
・フローチャート
・特性要因図
・品質保証
・品質管理
・コントロールチャート(管理図)
・上方管理限界と下方管理限界
・中心線、平均
・7の法則(ルールオブセブン)とアサイナブルコーズ
シックスシグマ
経営指南本で有名なキーワードだけれども、純粋に品質管理の用語。google先生に訊いてみるとそれこそ山のように出てくるけれど、本当に重要なのは次のとおり。
シグマ(記号だとσ)とは標準偏差、すなわちバラツキの度合いのこと。数値が高ければ高いほど、精度が高いことを意味する。例えば、3シグマの精度は99.73%で、1000個の製品のうち、不良品は27個程度混入すると予想される。数値を記憶。
+/-1シグマ 68.26%
+/-2シグマ 95.46%
+/-3シグマ 99.73%
+/-6シグマ 99.99%
6シグマの場合、1000個の製品のうち、不良品は1個と予想される。これはPMP向けの解説であり、ご大層な経営指南本では「6σは99.99966%、すなわち100万回のオペレーションを行っても不具合は3.4回程度の高品質」などと解説されている。NEC総研の「シックスシグマとは」が詳しい
トータルクオリティマネジメント(TQM)
これもたくさん言及されて(本にもなって)いるのに、ちゃんとした定義は見つからないorz …ので、らしく書いてみる。トータルクオリティマネジメントとは、プロジェクトの全てのフェーズを通じ、継続的に品質改善・品質向上を行う活動。TQM(total quality management)、統合的品質管理。建築、医療の現場で見かける。デミングの"Demming’s 14 points"が有名。14のポイント全文を引用する。
- Create consistency of purpose.
- Adopt a win-win philosophy.
- Don’t depend on mass inspection; build quality in.
- Don’t award business based on price; minimize total cost; build long-term relationships of loyalty and trust with a single suppliers.
- Constantly improve the system of production, service, planning, etc.
- Train for skills.
- Provide leadership: help people do a better job.
- Drive out fear and build trust so everyone can do a better job.
- Break down barriers between departments; abolish competition and build a win-win system of cooperation.
- Eliminate slogans, exhortations and zero defect targets; the cause of the bulk of problems lie in the system, and are beyond the power of workers to correct.
- Eliminate quotas, numerical goals and Management by Objectives; substitute leadership.
- Remove barriers that rob people of joy in their work; abolish the annual rating or merit system.
- Educate and improve individuals.
- Involve the entire organization.
どれも重要だが、試験に出る場所を太字化した。ポイントは、
- 品質は計画によって達成される。検査によってではない
- 品質施策をシステム化することにより継続的な向上を目指せ
- 組織間の「バカの壁」を撃ち破り、win-win関係を築け
デミングは、品質コストの85%はマネージャの責任であるとした。品質への最終責任を持つのは、プロジェクトの範囲ではプロジェクトマネージャ、組織全体としてはシニアマネージャである。
一方でクロスビーの"zero defect"(無欠陥)にさりげなく反対を唱えているところが笑える。ここだ→"Eliminate slogans, exhortations and zero defect targets" "zero defect"(無欠陥)とは、最初から完全に正しいやりかたで行えば欠陥はありえないという考え方だが、そうした考え自体ムリというもの。システム(やり方)は人間が造る以上、完璧な人間がいないのと同様に、完璧なやり方はぶっちゃけありえない。
人名が出てきたのでついで。前出の使用適合性(fitness of use)を主張したのはジュラン
品質計画(p.97)
- ベンチマーキング(p.98)とは、プロジェクトのやり方を、他のプロジェクトのやり方と比較し、改善策を考えたりパフォーマンスを測る基準を設けたりすること
- 便益・費用分析(p.98)とは、プロジェクトの比較や代替案の比較において、費用と収益のトレードオフを考慮すること
- 実験計画法(p.99)とは、「もし…だったら」の考えにもとづき、品質を向上させるためのバリエーションを実験事例に基づき模索すること。PMBOKでは上級/初級エンジニアのコストと時間の例を挙げているが、少なくともプログラミングについては「上級エンジニア」でしか解決できない課題というのがあるため、単純に「上級=初級のn人分」という図式は成り立たない
- 品質コスト(p.99)とは、要求適合性を満たすために必要な全ての作業のコスト総額のこと。予防コスト、評価コスト、不良コストの3種類ある
フローチャート(p.99,100)
プロセスやシステムにおいて、最初から最後まで、どのように流れ、それぞれの要素がどういった相関関係となっているのかを示した図のこと。品質計画では、潜在的な問題を洗い出したり、品質基準を決めたりするときに使う。品質管理では品質的な問題を解析するときに使う。p.83図8-3のいわゆるフローチャートだけでなく、p.99図8-2魚の骨ダイアグラム(特性要因図)もフローチャートと呼んでいることに注意
特性要因図(p.99)とは、魚の骨ダイアグラム、石川ダイアグラムとも呼ばれるp.99図8-2のこと。結果(最終的に解決するべき問題)に対し、どのような要因が結びついているかを洗い出すのに使う
品質保証
- 実行フェーズにおいて実施される、プロジェクトを測る品質基準が妥当かどうか確認すること
- 品質基準やその測定方法を再評価すること
- 品質監査(p.101)とは、改善に役立つ教訓を明確化すること
品質管理
- 品質基準に合った結果を出しているか確認する
- 合っていない結果が生じたとき、その原因を取り除くための方法を識別する
- 品質管理ツールはいっぱいある→検査、パレート図(後述)、特性要因図(前述)、チェックリスト、統計的サンプリング、コントロールチャート、フローチャート、傾向分析
- パレート図(p.103,105)とは、少数の原因が大多数の問題や欠陥を生むという80対20の法則に基づいている。80%の問題は20%の原因で生じる、という法則。発生頻度順に並べていることが特徴
コントロールチャート(管理図)(p.103-104)
製造物の仕様(サイズ、重さ)が管理範囲内でバラツキがあるかを測る図。例えばパチンコ玉は数多くあれど、よっく見るとそれぞれ微妙に凹凸が異なるはず。デコボコのバラツキはあれど、コントロール域下にあるかどうかは、この図の上方管理限界と下方管理限界のラインの範囲にあるかどうかで知る。
上方管理限界と下方管理限界とは、仕様の上限値と下限値。パチンコ玉の「重さ」でいうと、5.4g~4.5gのこと。これ以上だと「パチンコ玉としては重すぎる」し、これ以下だと「パチンコ玉としては軽すぎる」とみなされる。どれぐらいのバラツキが許されるのかは、どの品質基準を採用するかに拠って異なる(3シグマから6シグマまで)。Upper Control Limits(UCL) と Lower Control Limits(LCL) のこと。
中心線、平均
上方管理限界と下方管理限界の平均値。
仕様限界(Specification Limits)
うまい訳語が見つからない。要は「パチンコ玉」として用を成しえる凸凹の限界値のこと。あまりに凸すぎると釘を通らないだろうし、あまりに凹すぎると転がらないだろうし。通常、仕様限界値は上方も下方も、管理限界の外側にある。こんなカンジ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 仕様限界
────────────────────── 上方管理限界
↑
管理されている範囲============= 平均値
↓
────────────────────── 下方管理限界
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 仕様限界
これを超えたら「パチンコ玉」と呼べない値のこと。
7の法則(ルールオブセブン)とアサイナブルコーズ
作業結果が7回以上、正または負の方向に出るような場合や、7回以上、数値が上昇または下降した場合、何か特定の要因が働いているとし、「問題アリ」と対策調査に乗り出すことをいう。この場合や上下管理限界突破の場合、何らかの原因調査が必要なポイントを見なし、これをアサイナブルコーズという。
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コメント
トレーニングが英語だったので、英語のテキストで勉強しています。品質管理の部分がわかりにくかったのでGoogleで検索したらここにたどり着きました。例などが大変わかりやすく、おかげさまで理解できました。
投稿: △ | 2009.01.18 15:14
>>△さん
良かったですね、その勢いでゼヒ、マスターとなってください
投稿: Dain | 2009.01.18 22:07
こんばんは。PMP合格できました。こちらは日本語の参照でお世話になりました。大変ありがとうございました。
投稿: △ | 2009.02.25 22:42
>>△さん
おめでとーございまーす!
PMBOK4もボチボチ解説してまいりますので、ごひいきに。
https://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2009/02/pmbok4-56ea.html
投稿: Dain | 2009.02.26 01:29