第7章:プロジェクトコストマネジメント(その2)
ここでは、プロジェクトコストマネジメントをまとめます。
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・アーンドバリュー
アーンドバリュー(p.123)
おぉ、ここが折り返しの山やねぇ、ちょと感慨深いナリ。…さて、リキ入れて解説します。「読めば分かるように書く。分からないのなら書き手がヘタクソ」を肝に銘じて。
どうしてアーンドバリュー(Earned Value:EV:稼いだ価値)がもてはやされているのかから説明する。進捗度合いを測るときのモノサシとしてよくあるのが次の二つ。
- 予定したスケジュールとのズレ(時間)
- 予定したものとの完成度(スコープ)
ソフト開発なら「予定したバグの出具合(品質)」を付け加えてもいいけれど、「これこれの規模ならこんくらいのバグがでるはず」という考え方自体もうおかしくなってる。
さて、時間とスコープにおける「予定と実績のズレ」は、確かに進捗度合いを知ることができる、それぞれの見方で。しかしそれは、「時間だけ」もしくは「スコープだけ」しか分からない。両者を同時に測ることができない。つまり、「納期には間に合ったけれど、スコープが不十分」や「納期、スコープは満足だが赤字になった」といった事態が起こりうる。全部を見るモノサシがないからだ。
また、こうしたやり方だと以下の質問に答えることができない。
- ズレはわかったが、取り戻すのに余分に資源がいるのか?
- 遅れている(足が出ている)のは分かった。それでも完成させるとなると、いくらになるのか?
- これまで投資したコストに対し、現在どれだけの価値を生み出しているのか?
そこでアーンド・バリュー。万能とも思えないけれど実務にも使える。釘さしておくけれど、モノサシとして良いということ。モノサシがよければ「測定されるもの」が良くなるはずがないので、そこのところをお間違いのなきよう…
以下の用語の意味を押さえる。
PV : Planned Value
計画価値。ある仕事の見積もりコストはいくらか?
EV : Earned Value
アーンド・バリュー。実際に完了したその仕事の価値はどれだけか?
AC : Actual Cost
実コスト。その仕事を完了するのに実際にかかったコストはいくらか?
BAC : Budget at Completion
完成時総予算。全ての仕事に対する予算の総額はどれだけか?
EAC : Estimate at Completion
完成時総コスト見積もり。現時点において、完成したらどれぐらいコストがかかるか見積もると?
ETC : Estimate to Complete
残作業のコスト見積もり。現時点において、完了させるまであとどれぐらい余分にコストがかかるか見積もると?
VAC : Variance at Completion
完成時コスト差異(とでもにそうか)。現時点で計算し、完成したときにはどれぐらいの予算オーバー(アンダー)となっているか?
以下の式を覚える。
コスト差異:Cost Variance(CV)
CV=EV-AC
これまで完了した仕事の価値から、実コストを引いたもの。マイナスなら予算超過。プラスなら予算内。PMBOKでは、金銭と等価にできない「価値」を金銭化して計算する。「半分の赤ん坊は半分のパンより悪い」ということわざがあるが、PMBOKでは半分のパンはパン一つの半分できあがった価値を持つと考える。
スケジュール差異:Schedule Variance(SV)
SV=EV-PV
これまで完了した仕事の価値から、見積もりコストを引いたもの。マイナスならスケジュール遅れ、プラスならスケジュールより先行してる。この式も独特ナリ。生み出した「価値」を見積もりコストと同じ土俵で計算しているため、その「価値」をどうやって計算するんじゃーという疑問ごもっとも。私の場合、リアルでは過去の例を参考に相対値で計算してる。
コスト効率指数:Cost Performance Index(CPI)
CPI=EV/AC
コスト1円あたり生み出した価値。実際に使ったコストでどれだけの「価値」を生み出したか? ここでも考え方はCVやSVと一緒。EVは円(ドル)で計算できる値であることが前提。100%であれば「生み出した価値=投資コスト」だからムダのない投資といえる。100%以上なら、投資コストよりも多くの価値を生み出しているといえる。100%以下なら使ったコストよりも手にした価値が少ない、即ちムダな金をかけているということになる。
スケジュール効率指数:Schedule Performance Index(SPI)
SPI=EV/PV
予定スケジュールと比べて何パーセント遅れ(進み)しているか? EVは「その時点で既にできあがっている価値」であるため、「その時点でできているであろうと見積もったコスト」で割れば、価値から見たスケジュール進み/遅れが分かるという仕組み。つまり、100%であれば「実際=予定」だから遅れなし、100%を超えるなら、超えた分できあがっているといえるし、100%を下回るなら、その分遅れているといえる。
完成時総コスト見積もり:Estimate at Completion(EAC)
EAC=BAC/CPI
現時点で計算し、結局トータルでいくらかかるのか?
CPIとは、つまりどれだけの効率で予算を使っているかを示す値。だから、BAC(総予算)をCPIで割ればどれだけ総コストがかかるか分かる。ただし、CPIを算出した時点での話。プロジェクトが進むにつれて、投資に対する生み出し効率が下がれば、当然ムダ金を使うようになるし、効率が上がればより少ないコストでできあがる。あくまでも「その時点」での話。
残作業のコスト見積もり:Estimate to Complete(ETC)
ETC=EAC-AC
あとどれぐらいコストがかかるのか? 結局トータルでいくらかかるのかを計算した後、実際にかかったコストを引いたら、あとどれぐらいコストがかかるのかが計出できる。これも「その時点」での話。
完成時コスト差異:Variance at Completion(VAC)
VAC=BAC-EAC
どれぐらい予算超過するのか? トータルの予算から「現時点での」トータルのコスト見積もりを引けば、どれぐらい超過するかが計出できる。
ポインツ
(EVがでてくる公式は)いつも最初にEVから始まる
CV=EV-AC
SV=EV-PV
CPI=EV/AC
SPI=EV/PV
とゆージュモンのような公式も、EVに着目すると、この法則が浮かび上がる。EVを使った計算は、EVをどうこうする、と覚えておくとよいかも。
「○○差異」は、EVから何かをマイナスする
「○○指数/インデックス」は、EVを何かで割る
んで、
コストに関するものならAC(実コスト)を使う
スケジュールに関するものならPV(計画価値)を使う
よくあるのは、計算した結果、コストやスケジュールががマイナスなのかプラスなのか、予算/時間効率が良いのか悪いのかが設問にでてくる。
マイナスが悪く、プラスが良い、と考える
1以下(0.8など)なら悪く、1以上なら良い、と考える
EVを実際に「使う」とき、どのように使われるかを紹介する。ここではEVを是正措置に使う例。
【水瀬】「これまで6ヶ月を費やして、5,000万円のプロジェクトを進めてきました。現時点ではCPIは1.2で、SPIは0.89です」
【相沢】「それはつまり、これは1円のコストに対し1.2円価値を生み出していて…」
【月宮】「でもスケジュール的には決めた分の89%しか進捗していないんだねっ」
【水瀬】「正解。コスト的には上手くいっているんだけど、スケジュールは遅れているわね」
【相沢】「コストパフォーマンスがいいんなら、新しいPCを購入したらいいんじゃないかな?」
【月宮】「えーでも進み具合が悪いんだから、このままだと納期に間に合わなくなるよ。パソコン買っても作業が進むわけじゃないし」
【相沢】「じゃぁどうすればいいんだよ」
【月宮】「えっとね、えーっと… 新しいプログラマさんに入ってもらったらどうかな? そうすればコーディングも進んで遅れを取り戻せると思うよ」
【相沢】「そう上手くいくかなぁ」
【月宮】「大丈夫だよ、祐一君が指導してあげれば… ねっいいでしょっ 秋子さん?」
【水瀬】「了承」
【相沢】「うぐぅ… って、そうはいっても途中から人を入れるなんて、効率が悪くなるんじゃないか?」
【水瀬】「その分、優秀なプログラマを探します。コスト的には上手くいっているんだから、金に糸目はつけませんよ」
【相沢】「うぐぅ」
【月宮】「って、ボクのマネしないでよー」
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