第7章:プロジェクトコストマネジメント(その1)
ここでは、プロジェクトコストマネジメントをまとめます。
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keywords
- コストリスク
- コスト見積もりのインプット
- 資源計画
- コストマネジメント計画書
- 類推見積もり
- ボトムアップ見積もり
- 係数モデル見積もり
- コンピューターツールによる見積もり
ここ数年、アーンドバリュー関連で12問、うち計算問題が6問出題されているとのこと。これを吉とみるか凶とみるかはアナタ次第ってやつ。一見「式」がたくさんありそうだけど、ポイントはそんなにない。皆様が昔やった「数学の文章問題」と同じでどの式を使えばよいかに気づけばあとはスラスラ…のはず。
- アーンドバリューは「コストマネジメント」に使う。タイムに使えそうだけど、バリュー(value)は「価値」というよりも「価格」と訳したほうが分かりがよい
- コストの見積もりはWBSをベースに行う
- コストの見積もりはチームメンバー(実際にそのタスクを実行する人)が行う。p.85を見ると建設プロジェクトチームの例と自動車設計チームの例がある
- コスト/タイム/スコープ/リソースマネジメントは、予め見積もり <-> 実績との差異によってなされるべき
- コスト/タイム/スコープ/リソースマネジメントにおいて、そのベースラインの変更は「プロジェクト計画書の変更」に匹敵する。しかるべき手順を踏まない限りおいそれと変更はできない
- 仕事の一段落ごとにプロジェクト計画の見直しを行うこと。「見直し」とは必ずしも変更を伴うものではない
- コスト/タイム/スコープ/リソースマネジメントにおいて問題が発生したときに、是正措置がとられる
コストリスク
プロジェクト調達マネジメントの分野とからめて出題されるのがコストリスク。典型的なのがこれ→「定額契約(fixed price)においてコストリスクを負うのは、売り手と買い手のどちらか?」答えは売り手。そうだよね、まだ作ってないのに値段は決まっちゃっているんだから。
コスト見積もりのインプット(p.87)
7.2.1「コスト見積もりのインプット」は全部押さえておきたい。
- WBS
- 資源に対する要求事項
- 資源レート
- アクティビティ所用期間見積もり
- 見積もり関連刊行物
- 過去の情報
- 勘定科目表
- リスク
PMBOKにはこれだけあるが、さらに
- ネットワーク図 …Σ(仕事一覧表の個々のを見積もり)≠総コスト。各仕事の依存関係を予め知っておく必要あり
- スケジュール …詳細スケジュールではなくオーバービューレベルで可。詳細スケジュールはコスト見積もりの後に作る
- 資源プール記述書 …自社内でまかなえるのか、それとも「外から」もってくるのかにより、コストは変わってくるはず。かなり重要な考えの割にはPMBOKではさらりと流しているだけ
- リスクマネジメント計画 …リスクにどのように対処するのかによっても、コストは変動する
資源計画(p.85)
リソースマネジメントは、コスト/タイム/品質/スコープマネジメントと同等に重要 …なのに、チョト蔑ろにされていないか? 「調達」関連に組み込まれがちなので、「自分の仕事ではない」と考えているプロマネも多いのでは? …かくいう私もそうだし(w
プロジェクトが必要とするリソースのうち、アウトソースするものが調達マネジメント対象となるのだから、「自分の仕事ではない」とする私は乱暴ですな。いずれにせよ、リソースマネジメントを蔑ろにすると、プロジェクト途中で「アレが足りない」「これができる人がいない」なんてハメになる。
資源計画ですることは、
- WBSのレビュー
- もともと使えるリソース(社内リソースやアナタ自身の能力や人脈もリソース)
- 過去の似たプロジェクトの情報参照してどんなリソースをどれぐらい要したか調べる
- 組織の方針を参照して、要員配置のやりかたや、機器資材をレンタル/購入かを判断する
- リソースに対するコスト見積もりとして、専門家の判断を得る
- 個々のタスクについて数量的なリソース見積もりを行う
- いつ、どんなリソースが、どの程度必要なのかを洗い出す
コストマネジメント計画書(p.89)
プロジェクト計画書の一部であることに注意。あたりまえなのだが、よく忘れる。何を忘れるのかというと、先行的にに見積もりと実績の差をチェックし、「差異」が大きくなりそうなら予め手を打っておく対象とみなすことを、私はよく忘れる。見積もったらオシマイと思っているから。コストマネジメントは、他のリソース/タイム/品質/スコープと同様、プロジェクト期間中は常に監視対象とする。
コスト見積もり技法は次の4つ。
類推見積もり(p.88)
- トップダウン見積もりともいう
- トップ・ミドルが専門知識・経験でエイヤと見積もる
- 過去の実績や似たプロジェクトが参考になる
- 見積もるスピードは速く、見積もり費用は安く済むが、正確さに欠ける
- 初期段階でよく使われる
- いわゆる、アナログ見積もり
ボトムアップ見積もり(p.88)
- Σ(個々のワークパッケージの見積もり)=見積もり …つまり、それぞれのアクティビティにかかる費用の合計を見積もりとする
- 当然、見積もりに時間かかるし、見積もり費用もかかる
- WBSのそれぞれの箱を見積もり合計なので、WBSをベースとする
- 当然、見積もりの正確さはWBSの粒度や複雑さによる
係数モデル見積もり(p.88)
- かっちょええ言い方しているけれど、ようはライン単価ナンボの見積もり。単価×行数=見積もり
- 当然、ライン単価をいくらにするかによって見積もりは大きく変わる。これが「係数」となる
- 当然、何行のコードになるかは上の類推見積もりやボトムアップ見積もりによって見積もる
- PMBOKでは、精度の高い見積もりにするためには、「定量化できる」「過去の情報がつかえる」「プロジェクト規模の大小に対応できる」ことが前提だという。一方、この方法は、いじれる見積もり(恣意性の高い見積もり)であることも確か
係数モデルでリタ本は次の二つを覚えよという。説明がわかりにくかったのでネットに頼ってみる。
・regression analysis(回帰分析)またはscatter diagram(拡散図)
"regression analysis"のイメージ検索
"scatter diagram"のイメージ検索
これらを見ると、グラフに沢山の点をプロットしていって、その傾向を直線または曲線で示していることが分かる。つまり過去の実績から帰納的に傾向を見出す手法のこと。
・学習曲線
同じことをやればやるほど効率的になる、ということ。網戸の張替えも最初の一つ二つは四苦八苦するかもしれないけれど、やればやるほど慣れて早くできるようになること。
コンピューターツールによる見積もり
上記の見積もり手法は、コンピュータを使って容易にできるよ、ということ。類推見積もりを計算機にやらせるのはかなり抵抗があるけれど、出てきた結果を専門家が査定するのが普通。
進捗報告(p.122)
コストコントロールの有効な手段として、進捗報告が挙げられる。進捗報告はコミュニケーションマネジメントの分野だが、「出来高パーセント(PC:percent conplete)報告」はコストコントロールそのもの。出来高パーセントとはいえ、「こんくらいかな?」レベル。正確なパーセントを出す労力を考えると、以下の精度で充分。
- 50/50:仕掛分、進捗度合い半分
- 20/80:仕掛分、着手して間もない
- 0/100:完了分
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コメント
駆け込みで2000年版PMPを受験することになり、参考にさせていただいてます。すごく助かってます。
さて、
>PMBOKでは「定量化できる」「過去の情報
>がつかえる」「小規模でも大規模でも使える」
>とベタ誉めだけど
ってところですが、PMBOKでは
a)過去の情報が正確で
b)変数が容易に定量化できて
c)プロジェクトの規模に依存しない
のならばかなり使える方法だ、といってるだけです(そりゃそうでしょうが)。別に係数モデル見積がそうだといってるわけではないです。
確かに日本語だけ読むとそう勘違いしてしまいそうな気もしますが・・・。
投稿: ibara | 2005.05.08 16:07
ご指摘のとおりです、ありがとうございます。
PMBOK2000(英)の
They are most likely reliable 【when】
a) the historical information...
b) the parameters used in the model...
c) the model is scalable...
の when以降は前提条件として読むべきですね(日本語版もそう訳してあります)。確かに、係数モデルが上記 a),b),c) だと言っていませんね。わたしの誤読でした、ご指摘ありがとうございます、修正しておきます。
ちなみに、PMBOK3版ではこの箇所はごっそり消えていて、『係数見積りの技法では、モデルの洗練度合いやモデルの基礎となる資源の量とコストデータによって、精度が高くなる』と変わっています。
試験がんばってください(かくいうわたしは受験のメドすら立たずorz)
投稿: Dain | 2005.05.09 00:49