水月と「皆月」
速瀬水月と涼宮遙の間に鳴海孝之という男がいる。何一つ自分で決められず、周囲の状況に流されているだけだ。そのくせ自己正当化は得意で、独白のようなセリフで自分を納得させるクズだ。
コイツが何のイベントも無しに40歳になったら、「皆月」の主人公、諏訪徳雄になるんやろな…
キャラはまんまだけど、お話はぜんせん違う。コツコツ貯めた一千万円持って女房は蒸発。妻も仕事も希望も喪い、人生に躓く。こいつを救うのはヤクザ者の義弟とソープ嬢… という厨年男の救済と再生がテーマ。
花村萬月「二進法の犬」を絶賛してたらコレもいいよ! と勧められて読みました… がなんか薄味。二番煎じの感が否めない~ 「犬」の禍々しさ、凶暴力が無くなっている~ ヘミングウェイ「海流の中の島々」を薄めて「老人と海」になったカンジ。「海」はノーベル賞もらうために抜粋したんちゃうか… ヲッと脱線
ま、それでも逃げた女房は遙、ソープ嬢は水月に重ねて読むと楽しかった!良い一文にもめぐり逢えたし。旅の始まりはボニー&クライド、ラストは「恩讐の彼方に」を思い出してしまった(意識して書いたと思われ)。一番気に入った一文を引用する。
人間の性は、性欲を発散するためでもなく、子孫を残すためのものでもない。性の根元にあるのは、孤独だ。この世界にたった独りでいることに対する不安だ。
ハタチだったときからずいぶん時間がかかったけれど、いまならよく分かる。独りで生まれて、独りで死んでいくんだね。わたしたちは、ごくわずかな時のなかを過ごすだけ。交合のキホンはここにある。
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