年金の過払いについて(あるいは社保庁のシステムについて)
3/31朝日新聞「年金の払いすぎ なぜ」を読んで、「システム構築/統合」の立場で考えたことをまとめる。取材側の記事のため、この件はチョト寝かしておく。後に社会保険庁(以下社保庁)側の見解を浚ってみるつもり。
社保庁から「亡くなった兄に年金を払い過ぎたので、189万円返してほしい」と通知がきたそうな。役所の理由は、
(゚Д゚)ハァ?
どうしてこんなことが起こったのか? 記事では「社会保険事務局所の手続きミス」と言っているが、つまりこう計算したらしい…
対象の被保険者は生前、JR(国鉄)→地方公務員→会社員というキャリアを経ていて、それぞれの期間で、
- JR(当時は国鉄)共済
- 地方公務員共済
- 厚生年金
に加入していた…が、年金支給の計算時に以下のミスをしたという。
(誤) (1+2) +(1+3)
(正) 1+2+3
(゚Д゚)ハァ?
ミスの背景については、記事を引用する。
そのため、社保庁は「JR共済は厚生年金に統合された」という思い込みから、JR共済加入期間も合わせて厚生年金を計算してしまったそうな。
一つめ。公務員共済情報を管理するシステムと厚生年金情報を管理するシステム、のインタフェースで誤りが混入してたことがわかる。両者を横通しするとき、アカウントをユニークにする仕組みが無かったものと思われ。地方公務員共済では「加入期間確認通知書」を発行し、それを社保庁に提出してたらしいが、社保庁側でつき合わせをするところでモレが発生したと想像する。洗い出しをし、こうした例が頻出しているようなら「突合せをする業務手順そのもの」が間違っているか、まれな例なら、職員の単純ミスとカタをつけることができる。
二つめ。厚生年金システムにおいて、加入期間の計算をするとき、加入開始時と終了時しかチェックしていないのがよく分かる。ま、システムからすれば「空白期間」があるとするならば、それを入力してもらわなければ把握しようがない。クロールしようにも、一つめで述べたように、システム的に突き合わせする仕組みがなさそう(人的?)なので、お手上げなことがよく分かる。
三つめ。おそらく移行ミス? と考えられるのが、「JR共済70万人分のデータ移行」でしょうな。解約したのであればその情報は残っているだろうし、それが厚生年金システムに反映されていれば、誤りは無かったはずだ。解約情報を入力し忘れた、というのはマレだろうと勝手に判断して、「70万人データ」――厚生年金システムをつなぐとき、アカウントをユニークにする仕組みが、やっぱり無かったのだろうなーと推察する。んで、人力(またはそれに近いやりかた)で突き合わせを行ったんじゃないかと。
…などとつらつらと考えていると、基礎年金番号制度をごり押しする理由もわからないではない、ただしシステムという見方でね。作るほうの立場だけでいえば楽になるだろうし、ね。
さて、こうした「ミス」が、どれぐらいまれなのかは、AERAの記事が詳しい。頻度は以下の通り。
( ゜∀゜)ァハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \
もう笑うしかないよね
おまけ。これから年金を「受け取る」世代がグンと増えるだろうから、オレオレ詐欺よりもこっちが流行りそうだね→「年金過払い額返還請求書兼警告書」詐欺に注意!島根県警と佐賀県警のお知らせ。
オチはAERAからのネタが面白い。以下引用(引用元は上記のAERA発マネーと同じ)。
「国のミスではないか」
と返還を拒む人も出てこよう。それに対する社保庁のマル秘回答例はこう用意されている
【過払いがあればお返ししていただく必要があります】
「未払い分に利子をつけろ」
と言われたら、
【国の関係法上、利子を付す規定はございません】
ミスの釈明も、いかにもお役所的
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