« 私へのメッセージ(Dain) | トップページ | ぼくの見た戦争~2003年イラク(高橋邦典) »

飛ぶ夢をしばらく見ない(山田太一)

kanonが厨房へのファンタジーなら、これは厨年男へのファンタジー。どちらも楽しみました。
ょぅι゛ょとか言ってる輩(やから)、まぁ読んでみそ。厨年男の萌えを垣間見ることで客体視できるかもな。

女は年齢を遡って生きるようになった。
最初は老婆、40代→30代→20代→10代、そしてょぅι゛ょと、会うたびに変態を繰り返していく。さながらセト神アレッシーの影を踏んだかのように(スピードはゆっくりだけど)、若返っていく女。何故そうなったのかは分からないし、後説明もなし、ファンタジーだからね。

女との関係は、真剣な戯れから始まった。
ケガで身動き取れないため、カーテン越しに手指でまさぐりあう。
言葉と指の感触だけで達する二人。

どんどん若返っていく女を相手に、濃密な交合を繰り返す主人公。この平凡な中年男の手記という形式で物語は進みます。見た目は少女とはいえ、以前の記憶は全て残っています。つまり、「体は幼いが心や経験は成熟している」というオタな方には非常に都合のよい存在…男は会社を辞め、家庭を捨て、女と共に生きようと、最期まで見届けようとするが…

当時の解説には、「エロス」という言葉を割り当てているけれど、こりゃ「萌え」だよ「萌え」。光った箇所を引用する。若さを表現するのに、こんな的確な方法があったなんて。

 着物からこぼれる白い腕をひるむように私は見た。
 「つまんで」
 いいながら睦子は自分でその腕の皮膚を右手でつまむようにした。
 「さ」
 私がしたようにしてみて、というように左の腕を私の前にさらした。
 「つまめないでしょう」すがるような響きがあった。
 「若いの」若いことを歎くようだった。
 (新潮文庫P.119)
--

このエントリーをはてなブックマークに追加

|

« 私へのメッセージ(Dain) | トップページ | ぼくの見た戦争~2003年イラク(高橋邦典) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 飛ぶ夢をしばらく見ない(山田太一):

« 私へのメッセージ(Dain) | トップページ | ぼくの見た戦争~2003年イラク(高橋邦典) »