芸者-苦闘の半生涯(増田小夜)
「極東ブログ」の紹介で「芸者-苦闘の半生涯」を読んだ。幼くして芸者に売られ、戦中戦後の混乱期を生き抜いた女性の数奇な半生の話。
自分の生涯で、最も痛かったことを思い出しても、最もひもじかったことを思い出しても、作者が体験した思いを想像することすら不可能でした。それほど苛酷な半生が淡々とした言葉でつづられています。そんな私でも、作者が発する強いメッセージは痛いほどわかりました。ここに、引用します。
このテの話は「あゝ野麦峠」とか「女工哀史 」ぐらいしか知りませんでした。どちらを読んでも暗鬱な気分になるけれど、これはチョト違う。暗い中にも、生きていこうとする勁さを受け取りました。
ふと他界した祖母を思い出す。
幼い私は、「ばあちゃんの若かった頃の話」を喜んで聞いたものだ。そのほとんどが「ご飯を満足に食べられなかった話」だったように記憶している。で、結語はいつも、「だから、食べ物を粗末にしちゃだめよ、バチがあたるから」だった。
食事を除けば苦労はなかったかと思えば、そんな筈ない。若くして良人に先立たれ、女腕一つで呉服屋を切り盛りし、二人の子どもを育て上げ、畑までやっていたくらいだから。並大抵の苦労じゃなかったと想像する。
祖母に限らず、祖母のネットワークの人々にも懐いていた。遊びに行けば必ずお菓子をくれたから(w 今から30年近くも前の話だ。
いわゆる「老人ホーム」に入り浸って、いろいろな話を聞いたのだが、不思議と苦労話がなかった。少なかったのではなく、なかった。大変だった半生を振り返っても、彼/彼女らは「今もいいけれど、あの頃はもっとよかった」と。想い出とは、いいものしか残らないのか?
いやいや、最近の爺婆のかまびすしい不平不満、公共の場でのルールもマナーもなっていないふてぶてしい態度を見ていると、トシヨリも変わったのだなぁ、とつぶやいてみる。
最後に。いい本を紹介していただき、感謝しています。ありがとうございます > finalventさん
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