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『独学大全』はこう使う

独学の達人である読書猿が書いた、独学の百科事典。「読書猿って誰?」という人がいたら、[読書猿Classic]を見に行くべし。

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787ページ、1kgは、ほぼ鈍器で、そこらの教養芸人を蹴散らすのにピッタリ。

だが、隅々まで読むのは時間がかかる。独学する人は何らかの「学びたいこと」を抱えており、それにまつわる様々な問題を解決したいが故に本書を手にするのだから、全読している時間が惜しいかもしれぬ。

そんな人のために本書の使い方を紹介するとともに、『独学大全』が、私をどのように変えたか、さらに、どのように使っていくかを書く。

  1. 『独学大全』で最初に読むところ
  2. 『独学大全』でどう変わるか
  3. 『独学大全』をこう使う

1. 『独学大全』で最初に読むところ

もちろん始めから読むのが一番だが、てっとり早く掴みたい、という方のために、p.33~39に「本書の構成と取説」がある。この6ページを読むだけで使い方が分かる……のだが、もっと切実な悩みを抱えている方もいるかもしれぬ。

  • どうやって調べればいいか分からない
  • 読むのが苦手
  • すぐ挫折して続かない
  • なんで学ぶのか分からなくなった
  • 頭が悪い ……等々

そんな具体的な悩みごとは、巻末の「独学困りごと索引」からダイレクトに引ける。

たとえば、私自身、自分の頭の悪さに腹が立つことがある。いくら読んでも分からなくて、もんもんとするか、開き直って飛ばしていたが、技法15「会読」が良いとある。要するに一冊の本をみんなで読むことだ。ゼミの輪読でおなじみだが、頭のいい人に巡り合える可能性は大いにある。

本書ではさらに踏み込んでくる。解釈が割れているところだったり、決着がつかない議論だったりする可能性もあるという。そこで、「分からないのは自分だけではない」ことを知ることが大事なんだという。

大事なのは「分からない」を自分で抱えるのではなく、表明することで外部に出す。極端な話、「みんな」がいなくったっても、一人でも会読できるとまで言う。一人で読んでレジュメを作り、「分からない」をまとめ、ネットに公開する。

誰か分からないけれど、誰かが見ているかもしれない事実が、継続を支えるという。この動機付けは強力で、「同じ書を読む人は遠くにいる」という言葉で伝えてくれる。わたしがブログを書き続ける理由も、まさにこれ。

2. 『独学大全』でどう変わるか

この「外部に出す」ことの重要性は、様々な形を変え紹介される。

たとえば、技法13「コミットメントレター」

今週の学習予定を書き出して、家族や友人に渡す。受け取った人がチェックする必要はないが、それだけで強い動機付けになるという。なんならSNSに公開してもいい。自分との約束は破りやすいが、それを見せることで、社会的な縛めにするするというのだ。

あるいは、技法12「ラーニングログ」

何をどれだけ学ぶかの目標を決め、それに向けてどれだけ進んだかを記録する。ページ数や章・節、学習単元という積み重ねを、手帳やクラウド上に、一覧できる形で記録する。そして、記録を見返すことで、目標と現在位置を把握せよというのだ。

なぜ外部に出すのか? それは、人は弱いからだ。

人間は弱い。すぐ三日坊主になる。「やらない理由」を見つけ出すのが上手い。他の方法に目移りする。おそらく、読書猿さん自身が、自分の意志の弱さを思い知り、それを何とかするために足掻いてきたのだろう(ご自身の生々しい記録が載っている)。

やろうとしていること、やってきたことを外に出す。「自分との約束」を誰かの視線にさらすことで、自分を律する。コミットメントレターとラーニングログは、実践していこう。ブログ+SNS+会読で、外に出すことを意識する。

3. 『独学大全』をこう使う

外に出すことは、「外部足場」というキーワードでも強調される。

ひと一人の頭のリソースは限られている。膨大な文献を取りまわすためには容量が足りない。だから、自分の中だけで完結するのではなく、自分の外側に考えるための足がかりを作る―――それが外部足場だ。

「外部足場」も、数多くの技法が紹介されているが、わたしは、技法28・29の「目次・引用マトリクス」を実践するぞ(宣言)。

目次・引用マトリクスとは、多くの文献・資料から情報を抽出し、整合的に結び合わせるため一覧表だ。具体的な方法は、本書の第10章か、[複数の文献を一望化し横断的読みを実装するコンテンツ・マトリクスという方法]が参考になる。

わたしは今まで、一つのテーマにつき、一つの文献を、一つずつ読んでいく方法だった。ある文献で引用される書名や、何度も目にする著者名は、次に読む一冊とはなりうるが、それもシーケンシャルなものだ。

しかし、文献はスタンドアローンではないという。

一冊の書物は、他の数多くの書物と、参照関係や影響関係を介して結びあわされているという。そうした文献同士を結ぶつながりを突き合わせ、縒り合わせる読書をしろと説く。ただし、それを頭の中だけでやろうとするのは骨なので、文献群を一望化するのだ。これは、実践するだけでなく、外に出す。

わたしが実践したいのは、認知科学の分野だ。人はどのように世界を認識し、それを知として受け継いでいるか。それは一般化(AIで代替)できるのかに興味がある。

では、この分野で外部足場を作るために適切なものは?

これまた沢山の技法やアプローチが紹介されているが、技法25「独学者最強の武器としての教科書」からやってみる。『有斐閣アルマ』シリーズが概要から専門までカバーされているとある(有斐閣アルマの『認知心理学』を買った)。さらに「教科書の使い方」まで懇切丁寧に紹介されているが、そこから「入門書として使う」「書誌として使う」を実践する。

―――こんな感じで、自分の「学びたいこと」を取っ掛かりに、様々な技法をピックアップしていく。効率よく進める技法を探しても良いし、スランプや迷った時に引いても良い。「そもそも何をすればよいか分からない」「何が分からないかが分からない」といったメタな悩みまでカバーしている。

あなたが何かを、学びたい、学ぼうとしているのであれば、具体的に何をすれば良いのか、どうすれば続けられるのかを、指し示してくれる。羅針盤のような一冊。

 

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