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驚くほど上達する「みんなで推敲」体験事例の発表会まとめ

「文章の推敲は、自分一人でやるものだ」と思いこんでいないだろうか?

しかし、グループウェアなどのコラボレーションツールを使って「みんなで推敲」すると、文章は、驚くほどよくなる。

「Googleドキュメントを文章推敲プラットフォームとして使う」という、誰でも思いつきそうな、しごく単純なアイデアだが、実際にやってみると、驚くほどの威力があり、新鮮な感動を覚える。これは、集合知を使った文章推敲のイノベーションだ。

この「みんなで推敲」の体験談の発表会が8月30日に開催された。具体的に、どのように「みんなで推敲」が行われ、文章が改良されていくのか、そのプロセスが分かる、たいへん興味深い内容だったので、この記事でまとめる。

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今回発表を行ったのは、ふろむださん主催の[面白文章力クラブ]のメンバーの3人。このクラブは、ライティングの初心者からプロまでが集まって「みんなで推敲」を行う場所だ。

わたし自身、行き詰まったり、誰かの意見が聞きたいとき、お世話になっている。[デオコを使うと女の子の匂いになって脳がバグる記事]が社会現象を起こすほど影響があったので、この記事に対する「みんなで推敲」のプロセスを発表した。いつもは門外不出だが、許可をもらって公開するので、ぜひ参考にしてほしい。

  1. 「デオコ」の記事はどのようにでき上ったのか [プレゼン資料](@Dain_sugohon)
  2. 面白文章力クラブに実際に入ってみてどうだったか? [プレゼン資料](内原さん@kanshinko)
  3. フィードバックをもらうことの効用 [プレゼン資料](永田さん@DataVizLabsPath)

「デオコ」の記事はどのようにでき上ったのか

まず、わたしのプレゼン。デオコの記事について。実際のところ、初稿はもっと長文だったのだが、みんなで推敲していくうちに、バッサリ削ったのである。最初はトピックが2つあった。

 a. なぜ女の子はいい匂いがするのか?
 b. おっさんが女の子の匂いになったら脳がバグる

a.は、女の子の匂いを、なぜ「良い」と価値づけするのかの話だ。進化心理学の立場から、性別や成熟度を判断するために「良い匂い」と価値づけするに至った経緯を説明する。そしてb.は、女の子の匂い物質「ラクトン」を含むボディソープを使ったら、「くたびれたおっさんの身体から、女の子の匂いがする」異様な体験をしたというレポートだ。

ところが、2つの話題の面白さの方向性が違っており、面白さの本質はb.にあるという指摘を貰った。せっかく書いたものを削るのは残念だが、よく考えてみると、たしかにa.が冗長となっており、b.に到達するまでに離脱されるかもしれぬ。

この辺りの経緯は、[生原稿とレビューコメント]を見たほうが早い。同じ原稿に対し、全体的な構成や代案を、チャットしながらレビューする、みんなで推敲のプロセスを見ることができる。

私がよくやる失敗として、「お寿司ラーメン」がある。「お寿司は美味しい。ラーメンも美味しい。だからお寿司とラーメンを一緒に出したら、もっと美味しい」という理屈だ。「何を美味しいと思ってもらうかによって、メニューを組み立てる」という発想がない。ここは戒めたいところ。

面白文章力クラブに実際に入ってみてどうだったか?

次は、内原さんの体験記。文字通り「ぶつかり稽古」のような試行錯誤で文章をモノにしていく過程を紹介する。

最初は、「ドン・キホーテは箱羊の夢を見るか?」というタイトルで、本業の話を書こうとしたところ、問題が多岐にわたりすぎて収拾がつかなくなる。テーマを明確にし、トピックを絞り、掘り下げるというスキルが無いことを痛感したという。

「ふわっとした」書き方をすると、「ふわっとした」コメントが返ってくる。内原さんは、内容を絞り・描写を具体的にすることで「文章の解像度を上げる」のを課題として、ブラッシュアップに取り組む。

クラブで反響が出たのは、「読経しながら号泣した話」の件から。ほぼ毎日、趣味として観音経を読経されているとのことで、ある日、いつも通りに読経しているうちに、小学生時代のこと、亡き祖母のことを思い出し、ふいに「祈るとはどういうことか」が腑に落ちて涙が止まらなくなる、という文章だ。

これに対し、「読者を感情移入させるためのキャラ設定」や「物語の本質に潜む『切実さ』を出す」「いったん読者を予測させた後、裏切れ」といったアドバイスがなされ、どんどん原稿を直していって、最終的には出版される。

本人はスゴロクめかして楽しんでいたみたいだが、傍から見るとドラマチックなり。

フィードバックをもらうことの効用

最後は永田さんのプレゼン。データ分析・データ視覚化のエキスパートで、仕事としてのライティングに役立てているという。

みんなで推敲することによって、自分の原稿がどのように変わっていくのかをbefore・after形式で示してくれる。

わたしがめちゃくちゃ納得したのが、「後知恵バイアスと注意集中バイアス」の件だ。

文章を書く上で、「本文」に入る前の前置きを短くする。言われてみれば当たり前のことだが、前置きを書くのに夢中になって、どんどん長くなっていることに気づかない。

だが、これに気づかないのは「注意集中バイアス」のせいだという。すなわち、自分が注意を向けているものの価値を過大に評価する傾向があり、前置きを書いていると、前置きが重要な気がしてきて、本文そっちのけになってしまう。

これ、わたしも非常によくやってしまう。

人の仕様である認知バイアスのため、自分で回避するのは難しい。しかし、他人が書いた文章なら問題ない。自分の文章でないから、冷めた目で「前置きが長い」と言える。このフィードバックは有難い。

ライティングの世界で「編集者」という存在が必須なのは、こうしたバイアスから離れた目で、その文章を取り巻く世界を含み、第三者的なコメント・代案が必要だからだろう。

永田さんの原稿は、みんなで推敲され、最終的には新聞寄稿記事や、自分史上最高の「いいね」「スキ」がもらえたnote記事になる。

QAいろいろ

会場からいただいた質問で、「どこまで書くか?」があった。書きたいことについていくらでも出てくるが、何を、どこまで書くべきかという問いだ。

答えは、「全部」だ。構成クソ食らえって感じで、そのテーマで書きたいものをとにかく全部、重複も筋道も関係なく、全部吐き出すつもりで書く(読書猿『アイデア大全』のレヴィ・ストロースのように書きなぐれ)。その上で、推敲する。わたしの場合になるが、書きなぐったものが最終的に記事になるのは、ほぼ1割。

sli.doでいただいた質問で「仕事でミスをして謝罪文を書かなければいけないけれど、それも面白文章クラブでレビューしていい?」について。

答えは、ぜんぜんオッケー。会社名などを伏せればいいし、レビューイーは(投稿した時間帯にもよるけれど)数分~1、2日でフィードバックしてくるから、それほど時間もかからない。

このクラブでは、「みんなで推敲する」対象の文章は問われない。わたしのような書評をはじめ、日常をエッセイ風に描いた記事や、永田さんのようなガチの寄稿記事もあるし、いわゆる小説のプロットやアイデア、物語もOK。ちなみに、わたしのブログで[上手な謝り方]を紹介しているので、ご参考までに。

かなり重要なのが、「YKTのように記事をフィードバックする際に意識している基準はほかにありますか?」という質問だ。

これはまず、「YKT」について説明する必要がある。

YKTとは「読みたい気持ちタンク」の略で、クラブ内の共通用語だ。読みたい気持ちが入っている仮想的なタンクで、面白そうだと感じたら増え、つまらなくなりそうだと感じたら減る。そして、YKTが空になったら、読者は離脱するという仕組みだ。

クラブでは、「つまらない」という代わりに、「この説明が長いのでYKTが減った」と言い、「面白い」という代わりに「このリード文でYKTが増えた」と言う。単に「面白い」「つまらない」ではなく、「どこが」面白い/つまらないかをYKTで説明するのだ。

この「どこが」は超重要。なぜなら、普通の人は「面白い」と思ったら先を読み、「つまらん」と思ったらブラウザを閉じるだけだから。そして、どちらの場合もわざわざ教えてくれるものではないから、「どこが面白い/つまらない」を読者視点で教えてくれるのは、本当にありがたい。

そして、YKT以外にもフィードバックの基準があるか? というのがsli.doの質問だ。この答えは、ふろむださん本人のコメントを引用しよう。

YKT以外では、たとえば「モデル- ビュー構造」、「モデル - 企画 - 原稿 構造」、「ログライン - 企画 - 原稿 構造」、「書き出し - ハロー効果 - 確証バイアス 構造」などを意識してレビューすることが多いです。

これ、さらりとまとめているけれど、めちゃくちゃ圧縮しまくっている。

たとえば「モデル(what/何を書くか)」を自問自答した後、「ビュー(how/どう書くか)」へ落とし込んでいく段階を踏んだプロセスが必要だ。さらに、それぞれのプロセスについて詳細な解説がある。これ以上は、「モデルービュー」ができていない文章の実例を併せて説明しないとピンとこないので割愛する(そのうちふろむださんがまとめてくれることを期待してる)。

まとめと次回

まとめ。めっちゃ楽しいオフ会でした! 参加された皆さま、サポートいただいた方、そして何よりも、クラブ主催者のふろむださん、ありがとうございました! 

次回もやりましょう~ 案として、

  • sli.doで会場からQAを募集するのに加え、ライブ中継して質問をやりとり
  • Googleドキュメントのコメント+チャットレビューを、リアルでやる(同じ文章について、みんなでリアルタイムにレビューするワークショップみたいなやつ)
  • 土曜の半日ぐらいみっちりと、時間をかけてやる(ビール飲みたくなるなぁ)
  • 文章指南本を持ち寄って、みんなで紹介する([スゴ本オフ]みたいw)
  • クラブの中の人限定でやる(ネタバレし放題)

みんなで推敲すると、文章は面白くなる。この「みんなで推敲」のプロセスは、編集をシェアするという、新しい編集のやり方なのかもしれぬ。

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