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この「冒険」の本・映像・ゲームがスゴい!

 お薦め本を持ち寄って、まったり熱く語り合うオフ会、それがスゴ本オフ(最新情報は[facebookスゴ本オフ])。参加すると、読みたいリストがどんどん増えて、積読山がさらに高くなる。今回のテーマは「冒険」。時間・空間・非日常を飛び越えて、「これが冒険だ!」という本、映画、音楽、ゲームにマンガにメディアのもろもろが、集まったり集まったり。

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山と旅と空への冒険

ありえない光景、シスパーレ

 度肝を抜かれたのが、ササキさんの紹介。日本を代表するクライマー平出和也が、シスパーレに挑んだ映像だ。端的に言ってありえない光景を見ることができる。一目見れば、「無理!」と叫びだしたくなる場所で、かつては、そこに登った人だけが目の当たりにできた。過酷で美しい世界を、安全で暖かな部屋から眺めることができる。

 冒険とはすなわち「危険を冒す」。何かの目的があって、時間や空間を超えて、危険に満ちた体験の中に身を置くこと。ただ、そこから還ってこなければならない(と思う)。行ったきりの冒険も物語としてはあるが、現実だとあまりにも辛い。

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熱量高い

勇気と無謀の違い『サハラに死す』

 えりさんが紹介してくれた『サハラに死す』(上温湯隆著、ヤマケイ文庫)が重い。昭和の時代、誰もやったことのない、サハラ砂漠の単独横断に挑戦した記録だ。世界最大のこの砂漠は、現地の人々にとって「縦断」するものであって「横断」するものではない(従って「横断」ルートというものはない)。

 ガイドなし、ラクダ1頭のみで旅を始めるが、ラクダは死亡、水は無くなる、食べ物は無くなる……「著者が本人ということは、帰ってこれたんじゃないの?」というツッコミに、「遺された手記を元にした本」とのこと。「冒険とは、可能性への信仰である」と記されており、当時のバックパッカーのバイブルだったというが、「帰ったら大学受験しよう」と書き残しているのが日本人の呪い的だとのこと。

生きていることのレベルを上げる『ビヨンド・リスク』

 危険を冒すとは何かについて知りたいなら、『ビヨンド・リスク』(ニコラス・オコネル、ヤマケイ文庫)を読むと、そのヒントが得られる。伝説のクライマー17人にインタビューした冒険の思想集である。

 生きることは登ることと同様に意味がない。にもかかわらず、なぜ登るのか? 本書には数多くの「答え」があるが、ここでは、一つ、ロイヤル・ロビンスの引用をしたい。

危険があれば冒険の度合いが増す、ということは十分気をつけて行動しなければならないということです。クライミングは注意力や知覚力のレベル、つまり生きていることのレベルを引き上げてくれます。(太字化は私)

 他の人の話も併せて聞くと、共通する考え方が見えてくる。ただ生命を維持するというだけでなく、本気で生きる。生きることに真剣になる(せざるを得なくする)場所が、たまたま岩の上だったということが分かる。生きることそのものが冒険なのだ、というメッセージが伝わってくる。これは読みたい。

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ロバート・パーカーごっそり

未読の人は幸せもの『シャンタラム』

 生きることが冒険なら、ルートポートさんが持ってきた『シャンタラム』、これはわたしもお薦めしたい。絵に描いたような波瀾万丈で、一寸先も見えない状況とドラマティックな展開に、ページを繰る手が止まらなくなる。もし、これを読んでいないという人がいたら、幸せ者だと伝えたい。できるだけ予備知識を排して手にとって欲しい(新潮文庫だから裏表紙にあらすじが書いてあるが、それすら読まずに読んで欲しい)。

冒険の冒険『ヴェルヌの『八十日間世界一周』に挑む4万5千キロを競ったふたりの女性記者』

八十日間世界一周に挑む 冒険の冒険、すなわちメタ冒険できるのがこれ。みかん星人さんとOnoさんのお二人から教わったのだが、面白そう。ヴェルヌの小説『八十日間世界一周』を、リアルで実行する「冒険」と、世界一周をするのが女性記者であるという意味で「冒険」が重なる。というのも、120年前の当時、女性であるというだけで様々な差別や困難が立ちはだかるから。さらに、女性記者は二人おり、それぞれ東回り、西回りで競争するのだ。NHK歴史秘話ヒストリアでも放送されたとのこと[決着!80日間世界一周]

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バサラいいよバサラ!

公開中の『バジュランギおじさんと、小さな迷子』と『ファーストマン』は劇場で観るべし

 すごい勢いでプッシュされ、そのまま映画館に行きたくなったのがこの2つ。きはらさんお薦めの『バジュランギおじさんと、小さな迷子』は、インドに取り残されてしまった女の子を、偶然であったおじさんがパキスタンまで連れて行くお話。絶対感動するやつやん、と身構えながら観たけどやっぱり感動したとのこと。前中眺さん、みかん星人さん、sngkskさん激推しの『ファーストマン』は、ニール・アームストロングの人生を描いたもの。映像音も凄いとのことで、まず4DXで見て、それからIMAXで観るべしとのこと。2つとも劇場で観たい。本は積めるけど、ロードショーは行かないと!

数メートル移動しただけで人生は変わる「ウェイクフィールド」

 [キリキリソテーにうってつけの日]の中の人のふくろうさんが紹介したのが「ウェイクフィールド」だと知ったとき、「あっ!」と思った。「ウェイクフィールド」という男が、失踪したふりをして、自宅から目と鼻の先にある部屋に潜伏する話。時は流れ、死んだことにされるが、男はその部屋から、寡婦となった妻の生活を眺める。わたしは、ふくろうさんの[このレビュー]に惹かれて「ウェイクフィールド」を読んだが、このプレゼンで再読したくなった(ホーソーン怖いな)。

世界を言葉で更新する『えーえんとくちから』

 オフ会やってて良かったなと思うのが、わたしが知らないスゴ本に出会えること。前中眺さんお薦めの、笹井宏之の短歌集は、全く知らなかった。というか、この詩人の存在すら知らなかった。これ、文字列よりも音読するほうが沁みる。「えーえんとくちから」を声に出して読んでもらったが、意味が分かった瞬間にぞわっとした。口に出した音が意味として伝わる前に、その言葉が捉える世界をアップデートしてしまえるのではないか、とさえ思う(ポチった)。

だよね!『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』

 激しく同意したのが、きはらさんが持ってきたこれ。日本で100万本、世界で1,000万本売れた傑作で、わたしもこのためにSwitch買った。ゼルダシリーズ初のオープンワールドで、どこへ行っても何をするのも自由な世界で、目的を忘れて道草→探検→深みにハマり、ゼルダ姫に注意されること請合う。そうだよな! と思ったのが、「世界のあまりの美しさに、ゲームコントローラーの手を止めて、ずっと見入ることが、何度もあった」。

人生とは冒険だ『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』

 おそろしくそそられるのが、羊飼いの星さんお薦めのこれ。怪しげな表紙、冒頭のどん底感、下ネタ上等の構えなんだけれど、70人との出会いと別れの中で、著者自身が学び、世界が広がり、人生が動き出していく過程は、「冒険」そのものだといえる。ブックガイドとしても面白いとのこと。

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冒険野郎・高野秀行

 紹介された作品は以下の通り。やりたいゲーム、観たい映画、そしてもちろん読みたい本ががしがし溜まる。Amazonのカート、図書館の予約、ToDoリストが積み上がる。本を介して人を知り、人を通じて本に会う、すばらしいひとときでした。ご参加いただいた皆さま、ネット越しにご紹介いただいた方々、ありがとうございました!

山!
『銀嶺の空白地帯に挑む カラコルム・シスパーレ』平出和也 DVD
『ビヨンド・リスク 世界のクライマー17人が語る冒険の思想』ニコラス・オコネル(ヤマケイ文庫)
『栄光の岩壁』新田次郎(新潮文庫)
『アイガー北壁・気象遭難』新田次郎(新潮文庫)
『全ての装備を知恵に置き換えること 』石川直樹(集英社)
『いま生きているという冒険』石川直樹(理論社)

旅!
『サハラに死す』上温湯隆(ヤマケイ文庫)
『旅と冒険の人類史大図鑑』サイモン・アダムズ(河出書房新社)
『ヴェルヌの『八十日間世界一周』に挑む4万5千キロを競ったふたりの女性記者』マシュー・グッドマン(柏書房)
『謎の独立国家ソマリランド』高野秀行(集英社文庫)
『辺境メシ』高野秀行(文藝春秋)
『冒険投資家ジム・ロジャーズ世界大発見』ジム・ロジャーズ(日経ビジネス文庫)
『冒険者たち ガンバと15ひきの仲間』 斉藤惇夫(岩波少年文庫)
『ガリバー旅行記』スウィフト(岩波書店)
『バジュランギおじさんと、小さな迷子』(インド映画)

空!
『アポロとソユーズ 米ソ宇宙飛行士が明かした開発レースの真実』デイヴィッド・スコット/アレクセイ・レオーノフ(ソニーマガジンズ)
『ロケット・ボーイズ』ホーマー・ヒッカム・ジュニア(草思社)
『まんがサイエンスⅡ ロケットの作り方おしえます』あさりよしとお(Gakken)
『夏のロケット』川端裕人(文春文庫)
『夜間飛行』サン・テグジュペリ(新潮文庫)

物語!
『シャンタラム』グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ(新潮文庫)
『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』(任天堂)
『はてしない物語』(岩波書店)
『BASARA』田村由美(小学館)
『ヘテロゲニア リンギスティコ』瀬野反人(KADOKAWA)
『ラベルのない缶詰をめぐる冒険』アレックス・シアラー(竹書房)
『魔術師』W・サマセット・モーム(新潮社)
『人外魔境』小栗虫太郎(角川文庫)
『ねずみとくじら』ウィリアム・スタイグ (評論社の児童図書館・絵本の部屋)
『ドングリドングラ』コマヤスカン(くもん出版)
『セミオーシス』スー・バーク(ハヤカワ文庫)
『ぼくのロボット大旅行』 松岡達英 (福音館の科学シリーズ)
『COMIC恐竜物語』(ポプラ社)
『ヘルマンヘッセン全集13 』ヘルマンヘッセン(臨川書店)

冒険とは経験だ!
『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』花田 菜々子(河出書房新社)
『神話の力』ジョーゼフ・キャンベル&ビル・モイヤーズ(ハヤカワノンフィクション文庫)
『物語の法則 』クリストファーボグラー、ディビッドマッケナ(アスキーメディアワークス)
『レンタルチャイルド』石井光太(新潮社)
『あたしを溺れさせて。そして溺れ死ぬあたしを見ていて』菊地成孔(東京キララ社)
『謝罪本』WACK(フリーペーパー)
『初秋』ロバート・B・パーカー(早川書房)
『レガイア伝説、というプレイステーションRPGのCM』
『BEFORE THEY PASS AWAY』(パイインターナショナル)
『ハードウェアハッカー ~新しいモノをつくる破壊と創造の冒険』(技術評論社)
『自己犠牲とは何か 哲学的考察』田村均(名古屋大学出版社)
『トマス・アクイナス 理性と神秘』山本芳久(岩波新書)
『会計が動かす世界の歴史』ルートポート(KADOKAWA)
『眼の冒険』松田行正(紀伊國屋書店)
『センス・オブ・ワンダー』レイチェル・カーソン(新潮社)
『若き友よ。』五木寛之(幻冬舎)
『「エンタメ」の夜明け ディズニーランドが日本に来た!』馬場康夫(講談社)
『バザーリア講義録 自由こそ治療だ』フランコ・バザーリア(岩波書店)

言葉と文学の冒険
『えーえんとくちから』笹井宏之(パルコ)
『れもんよむもん』はるな檸檬(新潮社)
『百人一首という感情』最果タヒ(リトルモア)
『アメリカン・マスターピース古典篇』柴田元幸翻訳(スイッチ・パブリッシング)
『夜になる前に』レイナルド・アレナス(国書刊行会文学の冒険シリーズ)
『エバ・ルーナのお話』イザベル・アジェンデ(国書刊行会文学の冒険シリーズ)
『鞄図書館』芳崎せいむ(東京創元社)
『図書館の神様』妹尾まいこ(ちくま文庫)

 次回のスゴ本オフのテーマは「桜散る、ダークネス」だ。サクラチル、ブラック、ネガティブ、復讐、後悔、殺意、闇など、暗くて黒いやつにしよう(4月かな……)。

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ガンバと文学の冒険

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