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ビル・クリントン著『大統領失踪』が楽しみすぎる(12/5 発売)

 大統領がたった一人でテロリストに立ち向かうエンタメ小説。どんだけ荒唐無稽だよと思いきや、たいへん具体的で、まるで見てきたように書いている。

 それものはず、書いたのはビル・クリントン、第42代アメリカ合衆国大統領なり。正確には、ミステリの大御所ジェイムズ・パタースンとの共著になるが、ホワイトハウスの内部構造や、タフ・ネゴシエーターの丁々発止は、元大統領ならでは。

Presidentismissing

 原著は”The President Is Missing”で、翻訳は 12/5 に出るのだが、「ダイジェスト版」なるものを入手できたので、それで読む(chicaさんありがとうございます)。表紙にはクッキリと「構成の都合上、本書の結末に触れる部分があることをご了承ください」と書いてある。

 じっさい、わずか100ページ足らずの中に、見どころシーンや迫力満点のアクションがてんこ盛りで、いわば映画の予告編のようなもの。唯一違うのは、結末―――合衆国に迫る危機が何かとか、サイバーテロが狙うもの、黒幕は誰で、ラストがどうなるのかが、全部書いてある。

 これ読むにあたり、わたしは2つのことが明らかになればと考えていた。一つ目は、タイトルの「大統領失踪」をどのように実現するのか。二つ目は、そもそも「なぜ」そんなことをする必要性があったのか。

 一つ目はツカミからいきなりだった。世界最高の警護に守られ、一挙手一投足がカメラや視線に曝されている人が、どうやって「失踪」できるのか。このシーンで、ホワイトハウスが物理的に危機に陥ったとき、どうやって大統領を安全に移送するかという方法が明かされているので、セキュリティ的に問題な気がする。だが、これは真実に似せたフェイクなのかもしれぬ。

 二つ目は、残念ながら想像するほかなかった。なぜそんなことをしようとするのか。示唆的に触れられているだけなので、これは逆に発売日が楽しみになってくる。言い換えるなら、本書に書かれていることが可能であれば、大統領を「失踪」させることが可能とも言える。

 そしてこれは、サイバーテロについても同じことが言える。テロリストが「どのように」実現させるかが描かれている。やり方は隠されていないが、大規模にやるにはそれなりのポジションにいる必要がある。言い換えるなら、本書に書かれているポジションにいるなら、わたしでも可能だ。

 これ、藤井太洋『オービタル・クラウド』を思い出す。2020年に起きるスペース・テロを描いたSFなのだが、実際のところ、準備はiPhoneと〇〇〇ケーブルだけで構築できる。「全部で千ドルもかかってないぜ。ポケットマネーで作れるんだ、こういうのは」というセリフが現実的なり。できたものをある場所に置けるかどうかは、ポジションによる。言い換えるなら、しかるべきポジションにいるならば、実行は可能である。

 『大統領失踪』のテロも同様だ。準備に時間がかかるが、ひとたび始めれば、およそ30~60分で、アメリカ合衆国を未曾有の危機に陥れるために、やるべきことが書いてある。ずいぶん昔、そのニュースを耳にしたことがある。かりにそれが「準備」であり、本書のテロが実際に起きたとしても驚かないだろう。

 ダイジェスト版とはいえ、ネタバレを喰らっても読みたくなる。この興奮は、ぜひホンモノ版で味わってほしい。


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