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横浜読書会「男と女」に行ってきた

 おしゃれなカフェで美味しいコーヒーをいただきながら、本について語り合う、それが横浜読書会。ずっと気になっていたが、ようやく参加できたので報告する。

横浜読書会とは

 まず場所がおしゃれ。関内駅から歩いて5分、Archiship Library&Cafe というライブラリとカフェを合体させたようなお店で、明るく静かで涼しい(←重要)ところでしたな。建築事務所の一部をカフェにしており、大量の建築関連の書籍(ほとんどが洋書)は、事務所のライブラリを公開しているとのこと。

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 次に主催者がおしゃれ。KURIさんという方が主催されており、サイト告知から参加者さばき、会場のセッティング、ファシリテーターまで全部一人で回している。めっちゃ元気、めっちゃ笑うボニータなり。朝にやる「朝の読書会」、哲学書を中心にする「考える読書会」、女性オンリーの読書会と、様々な場を取り仕切っている。今回が第59回とのこと。

 そして参加者がおしゃれ。大学生から社会人の比較的若い方が集まってくる。着こなしや語り口ですぐ分かる、場所柄なのか、上品で落ち着いた方ばかり。モヒカン刈上げオッサンのわたしにとって、少々場違いだったかも。

読書会の流れ

 読書会スタート! いきなり「青春の恋バナ」をすることになる。今回のテーマが「男と女」なので、自己紹介がてら過去話をせよというオーダー。まじかよ、浮いた話はおろか、暗黒学生時代だったわたしにとって難問に等しい。冷たい汗を流すわたしをヨソに、皆さんの話が甘酸っぱい! 淡い恋心を抱いていた先輩が卒業する日に「実は好きだった」と打ち明けられたとか、同窓会で実は両想いだったというオチや、別々の人生を歩んでいるけれど、この想いは一生抱えたままだよねという胸キュン話がどんどん出てくる。

 で、わたしの番。仕方がないので、小中高時代からの疑問を追いかけ続け、大人になって秘密を探り当てた「女の子の匂いを再現する」話をする。女子だけで着替えた教室は、なぜあのような匂いがするのか。いわゆる8×4とかハンドクリームといった「後付け」ではなく、「匂い」未満のあの「クる」感覚はどこから来るのかについて語る。進化と適応を駆使しつつ、あれは、夜の闇の中で相手が成熟した女性であることを嗅ぎ分けるための感覚なのだと、微に入り細を穿ちて解説する(詳細はリンク先)。ちなみに今ではAmazonで買える[女子校生のセーラー服の匂い]。凄い時代になったなり。

 おしゃれだった場の変態度が、MAXにまで引き上げられる。

 だが、主催者は動じない。KURIさんご自身も春画の解説本を持ってくるぐらいだから。解剖学的に極めて精緻な(ただしサイズ的には極めて巨大な)局部を眺めつつ、やっぱ読者の「見たい」欲を満足させるために大きく描いたんでしょうねとか、全裸が無くて着衣が多いのは、当時の流行を紹介するファッション誌としての役割もあったんだね、といった話をする。

紹介された本

 紹介される本は、ド定番といったところから、変化球、発想ずらし、本質を別の側面から捉えるといった、とりどりのものになる。

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 面白いな、と思ったのは、「男と女」というヒトの両側面から捉えようとすると、どうしてもステレオタイプなものに陥りがちなところ。ラブストーリーになるか、「男脳・女脳」とか「地図を読めない女・話を聞かない男」といったネタになる。いっぽう、とあるテーマを深く掘った作品を「男と女」という斬り口で見ると、そこには驚くほど多様かつ説得性のあるな男女像が浮かび上がる。

 たとえば、『美人画ボーダレス』は美しい女性をモチーフに絵(美人画)を採りあげ、ひたすらその作品と作者を紹介している。描き手は男である場合もあるし、女の場合もある。面白いのは、「なぜ美女を描くのか」というテーマに対し、男女の応答がキッパリと割れていること。女の場合だと、「理想の女を描きたい」というモチベーションがある一方、男だと「他に描くものなんてある?」ということに。

 あるいは、『リリーのすべて』。世界初の性別適合手術に成功した男と、その妻の話なのだが、実話をもとにしたフィクションだという。性同一障害に悩む夫と、夫を失うのか夫を自由にするのかに悩む妻の両面から描かれ、「性別とは何か」から男と女を突き詰めると、「エゴとは何か」というテーマに行き着く(←ここ重要)。映画が素晴らしく、「観てから読め」とのこと。

 面白いのは、『ソラリス』。いわずとしれたレムの傑作SFなのだが、これを「男と女」に持ってきたセンスが素晴らしい。惑星ソラリスの海の調査に訪れた科学者と、そこで彼が出会う(死んだはずの)女の謎は、「女とは何か」→「存在とは何か」→「記憶とは何か」につながってくる。男が女に対して抱いているものは何か? という斬り口からすると、ミステリの一種としても読めるし、哲学的逸話にもなる。

 わたしが紹介したのは、『なぜ理系に進む女性は少ないのか?』。ぶっちゃけ「男と女って、どちらが愚かでどちらが賢い?」と問うてしまうと、非常にポリティカルコレクトネスに反する。ふわっとした「男脳・女脳」で片付ける俗説ではなく、データとエビデンスに支えられた論文集である。結論からすると、認知能力や得意分野において性差があるのは事実だが、紹介の仕方によっては炎上案件になる→知性の性差という地雷『なぜ理系に進む女性は少ないのか』

 あと、恋は告ったほうが負けという原則と、恋は天才をバカにするせめぎあいが楽しすぎる『かぐや様は告らせたい』を紹介した。「いかにして相手から告らせるか」について凌ぎを削る超高校生級の男女を描いたラブコメだ。サブタイトルが「天才たちの頭脳戦」で最初はそれっぽかったのに、どんどん頭の悪いほうへ話が転がってゆくのが面白すぎる。恋は盲目というが、メタな意味で盲目になっているのがいいね。

 主催者KURIさんが紹介した『老首長の国』は、ずっと気になっていた一冊なのでありがたかった。[ふくろう]さん絶賛なので間違いないことは折り紙付きなのだが、なにゆえ「男と女」のテーマに? ある夫婦と、夫の義母兄弟が一緒に暮らす話だというが、かなり強烈な奴らしい。読めば必ず、「男と女ってなんだろう?」と自問したくなるそうな(愛とか性で割り切れたなら、もっと簡単なのにね……)。これは読む!

 テーマに沿ってお薦めを持ってくる形式は「スゴ本オフ」と同じだけれど、めっちゃおしゃれ! めっちゃ上品なのが「横浜読書会」ですな。紹介されたラインナップは次の通り。

『錦繍』宮本輝(新潮文庫)
『老首長の国』ドリス・レッシング(作品社)
『美人画ボーダレス』芸術新聞社(芸術新聞社)
『人間をお休みしてヤギになってみた結果』トーマス・トウェイツ(新潮文庫)
『女に』谷川俊太郎(集英社)
『リリーのすべて』デイヴィッド・エバーショフ(ハヤカワ文庫NV)
『青い花』志村貴子(F×COMICS)
『女子・結婚・男選び―あるいは“選ばれ男子”』高田里惠子(ちくま新書)
『我が家の問題』奥田英朗(集英社)
『短編工場』集英社文庫編集部(集英社文庫)
『白夜行』東野圭吾(集英社文庫)
『冷静と情熱のあいだ』江國香織(角川文庫)
『賭博と国家と男と女』竹内久美子(文春文庫)
『転身』蜂飼耳(集英社)
『だめんず・うぉ~か~』倉田真由美(扶桑社)
『愛する言葉』岡本太郎(イースト・プレス)
『バイバイ、ブラックバード』伊坂幸太郎(双葉社)
『なぜ理系に進む女性は少ないのか?』ウェンディ・ウィリアムス(西村書店)
『性食考』赤坂憲雄(岩波書店)
『かぐや様は告らせたい』赤坂アカ(集英社)
『ソラリス』スタニスワフ・レム(ハヤカワ)
『愛するということ』エーリヒ・フロム(紀伊國屋書店)

 スゴ本オフでも同様のテーマでやったのだが、そのときの結論がこの2つ(重要)。[スゴ本オフ:女と男]とラインナップを比較するのもまた一興。

“tumblrを見ていると、男の人が女の人を好きな程には女の人は男の人を好きじゃないかもという気がします”
“「男だから成り立つ物語」や「女でしかありえない展開」が、確かにある。つまり、逆は成り立たないことがあるのだ。”

スゴ本オフのお知らせ

 さて、次回のスゴ本オフは9/16(日)、渋谷某所でやります。テーマは「のりもの」だ。クルマや電車、飛行機や宇宙船といった乗り物から、馬やドラゴン、トトロも乗れる。絨毯や湯船ホウキに「乗る」ファンタジーもある。新聞や雑誌を「載りもの」にするのもアリ。ノリノリになれる音楽を持ってきてもいいし、波にのるならサーフボード、流行にのるならトレンドだ。「賭るか反るか」ならバクチになり、スケベな人は「男に乗る」「女に乗る」で艶談に引き込みたい(こんな夜に、オマエに乗れないなんて!)。気になる方は、[スゴ本オフ:のりもの]をチェックや!


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