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何が幸せか人に任せると辛い。「しあわせ」を再考させる本

 好きな本を持ちよって、まったり熱く語り合う読書会、それがスゴ本オフ。今回のテーマは「HAPPY!」、気分がハッピーになる写真集や詩集、「幸福とは何か?」を進化のメカニズムから問うた本、ドーパミンが溢れ出るゲーム、何回見ても笑ってしまう空耳動画など盛りだくさん。

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 皆さんの発表を聞いて感じたのが、「幸せ」という概念は、人それぞれだなぁということ。どんなときに幸せを感じるかは、その人の好みや半生を凝縮したものになる。日本の偉い人が「しあわせはいつも自分の心が決める」と言ってたけど、ほんとそれ。なにが幸せか他人まかせの人生だと辛いもの。

 わたしのお薦め。どんなとき幸せを感じるのか? それは「生きること」に強く結びついているときだ。美味しいものを食べるとき、愛する人と結ばれるとき、あったかいお布団でぐっすり眠るとき、素晴らしい排便が果たされたときだ。つまり、食なり性なり睡眠なり、生きる欲望に結びつく行為こそが「幸せ」になるのだ。

 そこで『バイオハザード7』、歴代最高に怖いバイオで、食われ、斬られ、潰されていくうち、試行錯誤の末に、ようやく次にたどり着いたとき「生き延びた!」と生々しく実感する。ドーパミンがドバドバ溢れていることを体感する。何度も惨たらしく殺されることで、生を実感できる。これは、安全に、しかも何度でも死ねるゲームなり。

 chicaさんお薦めが『村に火をつけ、白痴になれ』で、昨年のベスト本らしい。

 思想そのままに生きることを、本当の意味で実践した伊藤野枝の評伝。全力で全肯定する、ど根性がほとばしる、とにかく元気でハッピーになれる一冊。そして、「ハッピーは誰が決めるのか? 自分だ!」と心の底から断言できる力強さがもらえる。読んだ人の評価が、真っ二つに割れているのも面白い(最高 or 最低の二択)。好きか嫌いかにキレイに分かれるのね。その生き様に背中を押してもらったり元気を貰えたりするのなら嬉しい。

 ササキさんが推してた『プリズン・ブック・クラブ』も興味深い。刑務所で行われる読書会を追ったノンフィクション。

 本を読み、対話を通じ、他者への共感や尊敬、自己の尊厳が回復していくのだという。著者はボランティアで運営に携わり、本によって人が変わっていく様を目の当りにする。その成長が我がことのように嬉しい。『ジェイン・オースティンの読書会』と併せて読みたい。ハッピーな読書体験を共有できそう。

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 幸せとは何かを、まざまざと考えさせるのが、今のアメリカ合衆国。

 よしおかさんお薦めの『ルポ トランプ王国』が生々しい。「まじめに働いていれば、幸せになれる」を信じてラストベルト=工業地帯で働いていた人たちが、製造業の海外移転によりレイオフされている。まじめに働いている俺たちは何なんだ!という怒りに、トランプのメッセージが超刺さる。サブテキストとして『階級断絶社会アメリカ』を挙げていたが、こっちも輪をかけて悲惨なり。

 「幸せとは何か?」との親和性が高い分野がSFだという気付きもあった。

 「幸せを感じる脳内メカニズムが解明された」とか、「テクノロジーでコントロールされた幸せ」という世界を描きやすいからだろうか。onoさんお薦めのイーガン『しあわせの理由』なんてまさにそうで、多幸症の病気に罹った主人公が、病巣を取り除いたことで幸福を感じられなくなる。主人公が幸福かどうかは読み手に委ねられているようだ。パワーズ
『幸福の遺伝子』と絡めたら面白そう。

 ある意味「幸せとは何か?」への究極の回答が「知らないこと」だ。

 ひじょうに示唆的なのが、クラーク『幼年期の終わり』になる。oyajidonさんのプレゼンを聞いててそう思った。貧富の差が無くなり、宗教、人種の違いを理由にした争いは絶え、戦争のない世界になる。人類よりはるかに優れた知性との遭遇によって、新たな道を歩みだす人類の姿は「幸せ」の一つの形に見える。知らぬが仏とは、よく言ったものなり。

 一度この動画を見たならば、後は聴くだけでニコニコしちゃうのが、空耳アワー「ナゲット割って父ちゃん」。その元となってるレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの"Killing in the name"。激しくポリティカルなメッセージが入っている曲なのに、空耳で笑ってしまうw

  • 『happy―しあわせを探すあなたへ』ロコ・ベリッチ(ユナイテッドピープル)
  • 『村に火をつけ、白痴になれ』栗原康(岩波書店)
  • 『メキシコ人はなぜハゲないし、死なないのか』明川哲也(文春文庫)
  • 『沈黙』遠藤周作(新潮文庫)
  • 『プリズン・ブック・クラブ』アン・ウォームズリー(紀伊国屋書店)
  • 『ザ・シーカヤッキング・マニュアル』内田正洋ほか(エイ出版社)
  • 『本にだって雄と雌があります』小田雅久仁(新潮文庫)
  • 『黒蜥蜴』江戸川乱歩(角川ホラー文庫)
  • 『A Dog Named Jimmy: The Social Media Sensation』Rafael Mantesso (洋書)
  • 『冒険歌手 珍・世界最悪の旅』峠 恵子(山と渓谷社)
  • 『本を読むひと 』(Shinchosha CREST BOOKS)
  • 『しあわせの理由』グレッグ・イーガン(ハヤカワ文庫SF)
  • 『ロボット・イン・ザ・ガーデン』デボラ・インストール(小学館文庫)
  • 『鉄塔武蔵野線』銀林みのる(ソフトバンク文庫)
  • 『幼年期の終わり』アーサー・C・クラーク(ハヤカワ文庫)
  • 『ルポ トランプ王国』金成隆一(岩波新書)
  • 『のせてよ!』笠野裕一(福音館書店)
  • 『君の名は』新海誠監督
  • 『野蛮な進化心理学』ダグラス・ケンリック(白揚社)
  • 『バケモノの子』細田守(KADOKAWA)
  • Killing in the name Rage Against the Machine
  • 『バイオハザード7』CAPCOM
  • 『人喰いの大鷲トリコ』Sony Interactive Entertainment
  • 『階級断絶社会アメリカ』チャールズ・マレー(草思社)
  • 『バーナード嬢曰く』施川 ユウキ(一迅社)
  • 『+1cm(プラスイッセンチ)』キム・ウンジュ(文響社)
  • 『ふろしき賛歌』川添 猛(聖母文庫)
  • 『エルメスの道』竹宮 惠子(中公文庫)
  • 『のせてよ!』笠野裕一(福音館)
  • 『ハッピーシュガーライフ』鍵空とみやき(スクウェア・エニックス)
  • 『氷菓』米澤穂信(KADOKAWA)

 togetterまとめはこれ→幸せの定義を人に任せると辛いだけ。バイオハザード7からグレッグ・イーガン、村に火をつけ白痴になれ、ナゲット割って父ちゃんまで、「しあわせ」を再考させられる本やゲーム、音楽もろもろ、スゴ本オフ「Happy」まとめ

 次回は3/12(日)に下北沢&神楽坂でする予定。いつもと違う、ちょっと変則的なやつにするつもり。最新情報はスゴ本オフで。

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