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猫町倶楽部の読書会『利己的な遺伝子』

 日本最大の読書会「猫町倶楽部」が楽しかった。

 課題図書を読んできて、グループディスカッションで交流する。2006年に発足し、東京、名古屋、京都で月例会、5000人超の参加者、商業的なランキングと一線を画し、硬めの本を俎上に、本と人・人と本との出会いをプロデュースしてきた。好きな本を持ち寄って、まったり熱く語り合う読書会「スゴ本オフ」とは偉い違う。

 参考になるかなーと思いながら興味半分・視察半分で参加してきたんだが、これがまためっぽう面白い&タメになる。主催の方、運営の方、ボランティアの方、お疲れ様でした、大変勉強になりました。

 さて、行ったところが、六本木のシスコシステムズ。広~いトレーニングルームに100名超が集まって、1グループ8名ぐらいに割り振られる(美男美女ばかりで、うだつの上がらぬオッサンは私一人だったことを報告しておこう)。そして課題本(ドーキンス『利己的な遺伝子』)について150分語り合い、後は希望者で飲み会という寸法。ディスカッションにはただ一つのルールがあり、それは、「人を批判しない」こと(これ重要)。各グループにファシリテーターがついており、ブックトークの方向づけやタイムマネジメントをしてくれる。

 初対面なので、自己紹介→参加のきっかけ→アイスブレイクで一巡する。医療、IT、広告業界、金融と、さまざまな人たちと交流できるのが良い。わざわざ読書会に来ることもあって、みなさん「本好き」「読書好き」ばかり。文学クラスタの人もちらほらおり、ちょっと話しただけで、めちゃくちゃ読み込んでいることが分かる。レベル高けぇ!

利己的な遺伝子 さて、お題の『利己的な遺伝子』。偉い学者が書いた大ベストセラーということで、無批判に信じている人がけっこういて驚く。つまり、「利己的な遺伝子」という存在が生物をコントロールしているという前提で語られる。我々は遺伝子の乗り物であり、私たちの考えや判断すら支配している、という理解だ。それはまさに、ドーキンスがミスリード(misLead)させようとした仮説であり、「分かりやすさ」と引き換えにミスリード(misRead)した罠だ。

 詳しくは[分かりやすさという罠]に書いたが、ドーキンスの主張をまとめると、「生物のあり方や行動様式を説明するとき、遺伝子の自己複製というレベルからだと整合的に理解できるよ」となる。どうしてそんな特徴をもつ生物がいるのかという疑問に対し、「そんな特徴をもっている奴が生き残ったからだ」と説明できる。

 この「そんな特徴を持っている" 奴 "」がクセモノだ。人でないものを人のように扱う”擬人化”により、理解しやすくなる。その代償として、仮説をムリヤリあてはめることで、上手く説明できないハミでる部分が出てくる。社会や歴史、文化や宗教から派生する多様性であり、それは本書では「ミーム」としてまとめられる。「ミーム」の章の取って付けた感は、ディスカッションでもツッコミが入り、信者 v.s. アンチの様相になって話が湧きたつ。

 わたし自身は、アンチ・ドーキンスの役をやったほうが面白かろうと思って、ユクスキュル『生物から見た世界』や、バレット『野性の知能』から絡め手で攻める。[動物を観察する際、ヒトに似た属性の有無を探し、ヒトの基準で動物の行動を評価する擬人化の罠に陥っていないか?] という方向から援護射撃をする。

 そこからの議論がめっぽう面白かったなり。遺伝子を最大化させる戦略の話から、子育ての肉体的・精神的コストから見た男女の差の話になり、「可愛がっていた子が実は血がつながっていなかったことが分かったら?」という議論になり、倫理や規範を度外視したフリーライダーへの淘汰圧の話となり、そこからレイプを是とする人は淘汰圧により無くならないのか? という話へ飛ばす。[レイプは適応なのか?(人はなぜレイプするのか)]という、初めて会った人同士では危険すぎる議論を吹っ掛ける。紆余曲折の末、めっちゃ常識的な結論(適応かどうかは置いといて、全体としてバランスを取ろうとしているんじゃないの?)に落ち着く。

 さらに、遺伝子の生存戦略を囚人のジレンマに置き換ると、『ライアー・ゲーム』で学べるよという貴重な情報を賜る(ありがとうございます! 読みます!)。また、適応(生き延びられるか否か)という観点から、進化と適応のミスマッチである病気の本質(『病気はなぜ、あるのか』)になったり、ある種の病気は必要悪であるという進化医学の最先端『ヒトは病気とともに進化した』に飛んだり、好き放題に拡散していく。

 そうこうしていると、吉川浩満さんご本人が降臨する。すごいよ猫町倶楽部! 先のドーキンスの胡散臭さを吹っ掛けると、打てば響くのが楽しい。短い時間だけれど、濃密なお話を伺うことができた(ありがとうございます!)。特に、ドーキンスの隠喩の指摘が鋭い。「遺伝子は不滅です」というとき、そう発言する/発言を聞く人は、”生きている”のだから、そこに至るまでの遺伝子の生存戦略を経てきて、”生き残っている”のは事実である。一方で、”不滅”という未来永劫、生きているのかと問うならば、それは嘘であるという話になる。さらに「不滅」という極めて宗教色の強いメタファーを駆使するのがドーキンスだよ、と釘を刺してくれるのが嬉しい。

 というわけで、脱線しまくり話飛びまくりの犯人は、わたしです。話かき混ぜすぎてごめんなさい。ドーキンスをボコボコにしてすみません。でも、『利己的な遺伝子』のおかげでこの世界の面白さを知り、あちこち渉猟するようになったのは事実。そして、最初に付けられた題名『生物=生存機械論』なら、きっとこれほど売れなかっただろうし、わたし自身も手にしたかどうかあやしい。

 最後に、このブログの宣伝と、最近のイチオシ『冴えない彼女の育てかた』について全力で語らせていただきました。また参加したいですな。

 冴えカノ読書会もええなぁ……

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