« 2017年6月4日 - 2017年6月10日 | トップページ | 2017年6月18日 - 2017年6月24日 »

『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』(西原理恵子)は、娘の幸せを願う全ての親に伝えたい

 これは重要な一冊。これを娘に伝えられるかどうかが、娘の幸せを左右することだから。年頃の娘を持つ全ての親に渡したい。

 中身はいつものサイバラ節と、ちと違う。「母」という立場から反抗期の娘に宛てた手紙のような、それまでの半生を振り返って「いろいろあった」とつぶやくようなエッセイなり。さらりと書いてあるくせに、幸せの勘所というか、不幸を避ける考え方のようなものがきっちりとまとめられている。

 過去作を読んできた方には、目新しいものはないかもしれぬ。だがこれは、西原理恵子が伝えてきた「金の話」「男との関係」「幸せへの近づき方」の、いわばエッセンスを凝縮したものになる。一番重要なところを引用する。

大事なのは、自分の幸せを人任せにしないこと。そのためには、ちゃんと自分で稼げるようになること。

 そのために、最低限の学歴は確保する。できれば、資格もとって、スキルアップしておく。結婚するときは、夫に内緒の貯金を持っておく。「今は離婚できない」と「いつでも離婚できる」では人生大ちがいだという。理不尽な暴力(肉体的なものに限らず、言葉や態度も含む)を振るう人は、相手が逃げられない状況になってはじめて本性を現す。

 もちろん、そんな人だと分かっていたら、一緒になったりしない。だが、「そんな人ではない」と思っていても、リストラされたり、アルコールにはまったり、環境が変われば人も変わる。そんな人の具体例がこれまた生々しく、どす黒い。そうなる前に、逃げろという。「逃げる」という選択肢があることを、そうなる前に予め知っておき、それを選べる自由を持てという(それが金であり、金になる手に職なのだ)。

「自分さえ我慢すれば」は間違い。まず自分がちゃんと幸せにならなくってどうする。自分をちゃんと大切にできるって、女の子にとってすごく大事なこと。

 「いい子」になるなという。「優しい子」になるなという。そういう、優しくていい子は、自分の幸せを後回しにして、人に譲ってしまうから。譲られた人は感謝なんてせず、次からは当然になるというのだ。この件は、内田春菊のケーキの喩えを思い出す。

 ある女が手間暇かけて美味しいケーキを焼いた。それを一切れ、気になる男に差し上げたとしよう。男はうまいうまいと食べ、もっと欲しいと言い出す。女は躊躇するのだが、男は「一切れくれたのなら、全部くれても一緒だろう」と腹を立てるというエピソードだ。

 ケーキは肉体関係を指しているのだが、これは「やさしさ」にも通じる。最初の一切れは彼女の好意や優しさかもしれぬ。だが、それを当然視してもっとよこせという男に対し、我慢してつきあう必要はない。

 他にも、「女の一途は幸せの邪魔」「自由ってね、有料なんですよ」「人生は我慢くらべじゃない」など、名言だらけなり。娘の幸せを願う全ての親に、ぜひ読んで欲しい。そして、わたしの娘にも読んで欲しい一冊。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

エッチする直前こそが人生だ『初情事まであと1時間』

 タイトルまんま「初エッチするまであと1時間」のカップルを描いた、シチュエーション恋愛オムニバス。ニヤニヤが止まらないまま進んでいくと、初々しさにほっこりしたり、健気さにほろりときたり、切なさに撃ち抜かれたり。

 あくまでも、エッチするまでの1時間なので、性行為そのものは描いてない。「あと50分」「あと31分」といったカウントダウン的なナレーションが入るが、「スタート!」以降は「ご想像にお任せします」状態となる。だから表紙に「成人向け」マークは入っていないのだが……のだが、これが読むほうにとってはとってもドキドキもの。

 なぜなら理由は2つある。

 一つは、典型的な「やれる」パターンの場合。「両親が旅行の彼女の家に招かれました」など、リビドー全開のシチュエーション。にもかかわらず、二転三転する様がワクワクを加速させる。もう一つは、どう考えても「やれない」パターン。こじらせ処女、腐らせ童貞、生命の危機など、エッチからほど遠い状況で、刻々と進むカウントダウン。そこから持ってくウルトラCがニヨニヨさせる。

 これは倒叙型の亜種だね。ほら、『刑事コロンボ』のような、最初から犯人が分かっていて、探偵がアリバイやトリックを崩すやつ。『初情事まで』は、2人が結ばれること、しかも「あと1時間」で初の一線を越えることが分かっている。そして、「あと1時間」という短い間に、2人の距離が揺れたり離れたり、意外な事実が明るみに出て、あれよあれよとくっついたり。

 似たようなシチュエーションで、『やれたかも委員会』という、これまた傑作がある。が、『やれたかも』はタイトルどおり、結果的にはやれなかったが、あるいは状況やセリフにより「やれたかもしれない」という美しい余地は残されている。聴牌はしてたが和了れなかったのが『やれたかも』なら、『初情事まで』はオープンリーチで自摸られるようなもの。

 「初情事」と「発情時」を掛けているのも面白い。やることは一緒なのに、やるまでが違う。それが、個性であり、文化であり、ドラマであり、思い出となる。「漫画家と編集者」「勇者と魔法使い」「幼なじみで大学生で」が好き。お試し版の第一話が、これまたいい→「初情事まであと1時間:case1」

 エッチする直前こそが人生だ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2017年6月4日 - 2017年6月10日 | トップページ | 2017年6月18日 - 2017年6月24日 »