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本好きあるある『吉野朔実は本が大好き』

 もちろん、好きな本を読むことは楽しい。だが、好きな本について語り合うことは、もっと楽しい。

 読書は孤独な行為かもしれないが、書を語るのはもっとオープンになると嬉しい。オフ会を開くのはそのため。好きな本を持ちよって、ああだこうだと語り合うのは至福のひととき。11月26日に「失恋」をテーマにオフ会をやるので、ご興味のある方は[スゴ本オフ]をどうぞ。

 本を読んでいるときも、「これ、あの人に薦めたらこう読むだろうな」とか、「これとあの本を合わせたら、面白い化学反応になるだろうな」などと妄想をたくましくする。書を措いて友に会おう。面白い本が、もっと面白くなる。

 これは、リアルで知り合ってなくてもいい。作品について楽しく語るエッセイやブログ主と、一方的に友達になればいい。吉野朔実はそんな読み友達の一人で、『少年は荒野をめざす』『ECCENTRICS(エキセントリクス)』を通じ、少女の不完全性について学ばせてもらった。そんな彼女が「本の雑誌」に連載していた読書エッセイコミックが、一冊になった。今までの以下の「吉野朔美劇場」シリーズの単行本にプラスアルファして、オールインワンになった。読み応えあるデ。

  1. お父さんは時代小説が大好き
  2. お母さんは「赤毛のアン」が大好き
  3. 弟の家には本棚がない
  4. 犬は本よりも電信柱が好き
  5. 本を読む兄、読まぬ兄
  6. 神様は本を読まない
  7. 悪魔が本とやってくる
  8. 天使は本棚に住んでいる

 まさに、本好きの、本好きによる、本好きのための一冊で、どこから読んでも楽しい。「出先で読む本が尽きたとき」「上・下巻はまとめて買う派」「誰にとっても面白い本はあるか?」「いちばん人に贈った本」など、あるあると頷きながら読むことになる。

 いちばん頷いたのは、「星の王子さまに関する二、三の秘密」のくだり。読んだ本を手元に置いておこうという執着心は薄いというが、私もそう(物理的な制約もある)。その奇妙な例外が、『星の王子さま』になる。あちこちに分散して3、4冊はあるはず。というのも、人にあげまくるからだ。年齢立場に関係なく、無条件に「読んで」と渡せるもの。

 面白いことに、「読んだことある」という人のたいていは「あんまり…」「イマイチ」という感想だ。わかる。名作だということで押し付けられて(義務的に)読んでも、初読ではピンとこない(はず)。しかし、時を経て再読すると、化けるんだ。自分が変化していることが、確実にわかる。

漫画家になって、実家を出て、ひとりで暮らすようになった20代にも読んでみました。この時初めて凄いと思い、いろんな人が、人にあげたくなったり、大事にしたいと思うのがよく解りました。

私が感動したのはたぶん表現力です。形の無いものや、目には見えないものを説明する能力。毎日毎日漫画を描いていた私が、一番欲しいものでした。

 『星の王子さま』は、読んだその時に「いい本」に思えなくても、再読のときに「いい本」になる稀有な本。それを知っている人が、一人で何冊も買っては贈り、買っては配りしているので、いつまでたってもベストセラーなんだろうね。

 客の趣味や傾向とかのリストつくって、本を紹介する商売のネタが出てくる。「けして私が読みそうにないけれど私が好きそうな本」ありませんか?と問いかけるところがあるが、まさに「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」まんま。

 読書友達には恵まれていたみたいで、互いにお薦めしあったり「これ読め」と送りつけあったりするやりとりが楽しい。そのとき、「いかに相手に興味を持ってもらうか」を工夫する様が、そのままレビューになり、紹介になる。漱石の『こころ』のクライマックスで、ちょっとだけ開いた襖を示し、「サイコミステリー」だと評したり、『その女アレックス』を「証人が出てくるたびに善玉悪玉が入れ替わる裁判モノみたい」と紹介する手腕はさすが。既読作品はもう一度読みたくなるし、未読はやっぱり読みたくなる。これ一冊で積読山がさらに高くなるデ。

 本好きあるある、頷きながら、耽読すべし。

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