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スゴ本オフ「音楽」まとめ

 好きな本を持ちよって、まったり熱く語り合うオフ会、それがスゴ本オフ。

 本を通じて人を知り、人を通じて本に会うことで、読みたい本が何倍にも増えていく。ある意味危険な読書会なのだが、本だけでなく映画やゲーム、音楽、演劇、TV番組、展覧会、フェス、イベントまで広がってゆく。わたしの知らない凄いものを教えてもらえる嬉しい場なり。今回は「音楽」がテーマ。いつもより少人数で、いつも以上にのんべんだらりと楽しく語らうひとときでしたな。当日のtweet実況は、「パクリ経済」「つながりの進化生物学」から「さくら学院・歌の考古学」まで:音楽のスゴ本オフを見てほしい。

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 これはエモい! 感動したのが、あまのさんオススメのiOSのアプリ"PlayGround"。びゅーんで、みょにょーんで、シャラッパな気分になれる。一言なら「音にさわる」タンジブル・インタフェースであり、リズムを弄り、メロディを捻り、ハーモニーを玩ぶことが、指先一つでできる。どんな動きでもそれらしいテクノミュージックになり、直感的にエンドレスで遊べる。SEGA「Rez」をやったときのような感動や、もっと昔の、初めてハーモニカに触れたとき、音が出るのが嬉しくてずっと遊んでいた原体験に近い。脳汁あふれる気持ちいいアプリなのだが、Android版はないみたい。

 熱くて濃くて、お金のにおいが一杯するのが、最近のアイドル。やすゆきさんがBABYMETAL、zubapitaさんがさくら学院について熱くロジカルに語ってくれたのだが、これがものすごく面白い&タメになる。出来上がった偶像の歌や踊りやゴシップを「消費する」のが昔のファンなら、今はそうした偶像に至るまでの努力と根性と友情のプロセスを「応援する」産業ができている。特に、さくら学院は、学校を模したアイドルユニットというよりも、むしろアイドルを模した学校の一つのあり方なのかも……と思えてくる。

 「アイドルを売り出すプロセス」そのものを売る構図は、それをゲーム化したアイドルマスターに重なる。応援やグッズを買う行為がそのまま「育成」につながるシステムは、採算が取れるのだろうかと心配するが、今のところ無用らしい。ときメモGirl's Sideやキンプリに倣って、「男の子のアイドル育成ビジネス」を提案するも、難しいらしい。

music これは読みたい! と思ったのが、古川日出男『MUSIC』。音楽がテーマの本ではなく、読むことが音楽になる小説とのこと。読んでみると音楽としか思えない体験が得られる。やたら手数が多いジャズドラマーのような文体で、意味なんて超越した言葉が飛び交うシーンもあり、物語的構図を念頭に先を予測すると、約束事がどんどん外されてスウィングされまくる。それらがビートになり、リズムになってゆくという不思議な小説で、小説というよりも、むしろアトラクションだと思ったほうがいいとのこと。

告白 これ、テンポのいい河内弁にノせられながら読むロックともいえる町田康『告白』を思い出す[レビュー]。じゃかじゃか転がる話を面白がっていくうちに、やめられなくなる。句読点で刻まれたリズムに中毒になり、朦朧としてくる。そして、これがどこに向かっているのかが薄々わかるようになるにつれ、その真っ黒なラストが恐ろしくてたまらないのだが、その正気と狂気の境目がいっさい無いところが限りなく恐ろしい。キ○ガイシミュレーターとはよく言ったものよ。

パクリ経済 わたしが紹介したのは、カル・ラウスティアラ『パクリ経済』の「カバーミュージック」の件。『パクリ経済』は、コピーがイノベーションを起こす事例とメカニズムをまとめた好著なのだが、特に音楽のコピーというテーマが熱い&多くの気づきが得られた。すなわち、音楽のコピー・再生には厳しい制限があるが、一定額を支払えば、自由に原曲を「カバー」できる「強制許諾」という抜け道だ。

 この抜け道は、100年前の巨大企業、「エオリアン」社の暗躍のおかげ。エオリアンは、ロールをセットするだけで、ピアノを自動演奏する「プレイヤーピアノ」の製造販売会社で、当時の音楽業界を支配していた。エオリアンは、ロビー活動を行い、著作権法を変え、あらゆる音楽について「強制許諾」が可能になるようにした。結果、カバーミュージックは音楽文化を豊かにしたことになる。

 100年後の現在、同じ状況が起きようとしている。初音ミクのようなボーカロイドだ。著作権的には「楽器」と同じような位置づけとなるボカロだが、そこに読み込ませる楽曲ファイルはプレイヤーピアノのロールのようなものになるのでは? 仮にこれが認められれば、「ミクの声」である必然性がなくなり、原曲そっくりにミクが歌うのは法的に許されてしまうという状況が生まれる。セカオワのボーカルの「声」がライブラリ化[VOCALOID4 Library Fukase]されているのを見ると、かなり近い将来、「あらゆる音楽はカバーになる」のではないだろうか。

  • Orange Garden Pop/YUI
  • Rattle and Hum / U2
  • kiramekiの雫/さくら学院
  • PlayGround / iOS
  • 『パクリ経済』カル・ラウスティアラ(みすず書房)
  • 『ワンダー』R・J・パラシオ
  • 『今日が人生最後の日だと思って生きなさい』小澤竹俊
  • 『サウンド・オブ・ミュージック』マリア・フォン・トラップ(文溪堂)
  • 『ある小さなスズメの記録』クレア・キップス(文春文庫)
  • 『つながりの進化生物学』岡ノ谷一夫(朝日出版社)
  • 『ミツバ学園中等部 入学案内』ふかわりょう(扶桑社)
  • 『レクイエムの名手』菊地成孔(亜紀書房)
  • 『壁抜け男の謎』有栖川有栖(角川書店)
  • 『純情ババァになりました』加賀まりこ(講談社文庫)
  • 『MUSIC』古川日出男(新潮社)
  • 『音楽』三島由紀夫(新潮文庫)
  • 『本当はこんな歌』町山智浩(アスキーメディアワークス)
  • 『Music Kids Book #2』著者チームキッズトーン(エムオン・エンタテインメント)
  • 『機関車トーマス』
  • 『音楽嗜好症』オリヴァー・サックス(早川書房)

 次回のテーマは、「こわいもの」。もちろん、ホラー・怪談ものを紹介してもいいけれど、人によって怖いものは様々かと。たとえば、「上司が怖い」「結婚が怖い」「月曜日が怖い」「蓮コラが怖い」「高いところが怖い」などがあるだろう。そうした、「あなたの怖い」にまつわる作品があるだろうか? 幽霊からまんじゅう怖いまで、いろいろな「怖い」を持ちよってみよう。

 紹介するものは、本や映画、音楽、ゲームなんでもありだけど、そこから「この一行/一節/ワンシーンにぞくっとした」一文を紙に書いて張り出してもらうので、腕によりをかけて選んでおいてほしい。

 最新情報は[facebookスゴ本オフ]に上がるので、チェックしてね。

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