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銃は世界を変えてきた『銃の科学』

銃の科学 実弾を撃ったことがある。ベレッタという拳銃だ。発射のたびに伝わってくる炎とインパクトと熱気から、銃を撃つとは要するにコントロールされた爆発なんだと実感した。この体感を、メカニズムと歴史から説明したのが本書になる。

 著者は元自衛官で、銃のエキスパートでもある。自身の経験を織り交ぜながら、銃の起源と歴史を紹介し、さまざまなタイプの銃の構造と目的の違いを明らかにし、弾薬、雷管、薬莢など弾丸の話、弾道学の基礎を説明する。いわば銃の入門書ともいうべき一冊で、同著者による『狙撃の科学』や『重火器の科学』そして『拳銃の科学』など、銃のシリーズにつながっている。

 いちばん興味深く読めたのは、銃の歴史がそのまま戦術の歴史になっているところ。火竜鎗やマドファといった原始的なものは、とにかく敵の方向に弾を飛ばせばいいというもので、狙って命中させられるような代物ではなかったらしい。銃身や撃鉄、弾込めの方式などの改良を重ねるうちに、今の「銃」に近くなっていくのだが、ブレイクスルーは「弾丸」にあることが分かる。

 それは、ミニエー弾というドングリ型の弾丸で、それまでの丸薬みたいなものと異なり、命中精度と射程がいきなり3倍に向上したという。秘密はドングリの底に開いたスカート状のくぼみにある。そこには木栓が刺さっており、発射の際、火薬のガス圧が木栓に伝わり、木栓が弾の底を押し広げることで、弾丸をライフルに密着させる。ガス漏れを防ぐことで、爆発のエネルギーが弾丸に集中し、回転力を上げる仕掛けだ。

 ナポレオンの時代では、太鼓に合わせて行進し、敵の前で密集隊形を組んでいたが、ミニエー弾により、これが一変する。そんなことしてたら格好の的だから。戦列を作って圧倒するのではなく、散開方式が中心になったのは、ミニエー弾による変化だろう。

 また、機関銃の発明が壕を掘っての接近戦を促し(第一次大戦)、その結果、飛距離よりも近接戦闘の使い勝手を優先して突撃銃が生み出される(第二次大戦)など、「必要は発明の母」を正確に実践してきたのが、銃の歴史になる。弓矢の時代では重力加速度や空気抵抗を考えなくてもよかったが、より良い銃を開発するために物理学や弾道学の研究が進んだともいえる。銃は、科学のある面を象徴した存在でもあるのだ。

 本書では、メカニズムを中心に語られているが、銃の技術史が影響を与えた物理学や戦争の歴史、さらには銃の構造から見た文化の違いといった視点も合わせて読むと、さらに面白いかも。

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