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この「対決」の本がスゴい

 好きな本を持ちよって、まったり熱く語り合うスゴ本オフ。

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『雪風』気になるよね

 いろいろ読書会に顔出しているが、これほど放漫(豊満|飽満)な読書会はない。というのも、始まる前からカンパイして、パーティーが始まっているから(昼のビールは甘い)。にもかかわらず、本そっちのけで飲み会にならないのは、参加される皆様のおかげ。ありがとうございます。

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さらにチーズケーキとチョコケーキ追加

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梨と葡萄、おいしゅうございました

 今回のテーマは「対決(VERSUS)」、神と悪魔、怪獣大決戦といった定番から、主人公が背負う物語そのものとの相克を描いたメタな奴まで、色とりどりの作品が集まってくる。イモータル・ジョーのマネジメント能力、先見性、そして哀しい運命についての熱い語りや、古今東西の物語にある「最強の敵は自分」パターンの意外な例など、大漁祭の読書会でしたな。このエントリでは写真中心にお伝えしよう、少しでも現場の熱が伝われば望外かと。twitter実況は
[男と女、善と悪など王道対決から自分との対決など、あらゆる対決を語ったスゴ本オフ「VS」]からどうぞ。

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「対決」といったらウサギとカメでしょう

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『ちはやふる』と『デビルマン』が並ぶなんて!

 なお、次回のテーマは「HAPPY!」なり。読めばたちまち、ほっこり、幸せ、元気になれる作品か、「幸せとは何か?」を考えさせられるものか、はたまた主人公はハッピーだけど狂気に陥っているダークなやつか、解釈は自由で無数にある。あなたがそこに「HAPPY!」を見る作品を、小説・ルポ・マンガ・論文・映画・ゲーム・音楽、なんでもOK、メディアを限らず、ご紹介くださいませ。時期は(たぶん)10月、詳細は[Facebookスゴ本オフ]をご覧くださいませ。

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レアな「キュンタ」しおり

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「対決」という軸だと、ラインナップに納得がいく

 『ゲド戦記』や『フランケンシュタイン』の紹介を聞きながら腑に落ちたのは「自分との対決」という構造。そもそも「対決」が成立するためには、同じ次元にいる必要がある。価値観の相違や利害の対立が成り立つのは、同じプラットフォームの上でありながら、それでも違いがあるからこそ。絶望的に違う相手とは、そもそも対決自体がありえない。非対称な蹂躙、屠殺、空爆の話になる。

 この、「同じだけど違う」もののうち、最も強敵かつ昔ながらの存在は、「自分自身」になる。かつて自分が生み出した影に追われ、追い、対峙する話。自己を最もよく知る理解者であるからこそ、憎しみもひとしおで、憎悪も超えた同化愛にまで発展しうる。

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人生はつくづく対決なり(ラスボスは自分)

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『シグルイ』と『フランケンシュタイン』と『パタリロ』の妙

 映画やドラマ、フィクションを横断して、いわゆる「エンタメ」分野が多かったのは、対決構図は物語の駆動力(ないし吸引力)にしやすいからだと推察する。逃げる・追う、戦う、競うなど、ストーリーを転がしやすくしてくれる(同時に受け手は、この文法に従って没入しやすくなる)。ただし、あまりにもパターン化されてくると、悪役の「悪」性が薄まってくる。これを回避するため、ヒーローが戦っている相手は、悪役ではなく、なにか別の存在とすり替わる。『バットマン・ダークナイト』や『ブラック・スワン』になると、主人公の行動から「何と対決するのか」を考えさせられるようになるのかも。

 たとえば、『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』のイモータル・ジョーは、映画の文法に従えば悪役だったが、本当に「悪」だったのか? という議論に惹きこまれる。荒廃した文明の中、水耕栽培の農場を維持し、遺すべき存在を「選別」し、軍勢をまとめあげ敵を排除し、自然の猛威に備える。わたしの知る限り、あれだけのリーダーシップを発揮できる力と技と知を備えた人物は、ラオウしかいない。

 と同時に「なぜマックス役にトム・ハーディが抜擢されたのか」のプレゼンが面白い。トム・ハーディが演じた『ウォリアー』、『インセプション』、『ダークナイト・ライジング』などを横断しながら、一つのキャラクター像を浮かび上がらせる。どの役でも彼は闘う存在だったが、その大義は偉大なものではなかった。

 つまり、闘う理由が重要なのではなく、つねに闘うことでしか生きる意味を見いだせない魂を持っている―――だからこそ、「マックス」に起用されたというのだ。そしてあの優顔、もし彼がムキムキマッチョマンだったなら、フィリオサと対決していた、あるいはフィリオサと共に生きる道を選んでいた―――という指摘に納得する。

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黒い山は映画のパンフなんだ

 わたしが紹介した切り口は、「女vs男」。結果は分かりきっているのだが、あえて挑戦してみる。まずは、からかい上手の女の子に翻弄され、手のひらの孫悟空になってる男の子を描いたラブコメ『からかい上手の高木さん』[レビュー]を紹介する。「ジュースの回し飲みで間接キス」とか「体操服を交換する」といった悶絶必至のシチュエーションに、読めば必ずニヤニヤする。照れたら負け、男子は女子に絶対勝てないのだ。もう一つは、別の意味で悶絶必至の『春琴抄』、「恋は盲目」という諺を、「愛は盲目」のレベルで貫いた名著なり。惚れたら負け、男は女に絶対勝てないのだ。

 紹介された作品は下記の通り。あなたの「推し」はあるだろうか?

■未知との対決:SF・ホラー
『盤上の夜』宮内悠介(東京創元社)
『戦闘妖精雪風<改>』神林長平(ハヤカワ文庫)
『グッドラック 戦闘妖精雪』神林長平(ハヤカワ文庫)
『フラグメント超進化生物の島』ウォーレン・フェイ(早川書房)
『悪魔のハンマー』ニーヴン&パーネル(ハヤカワ文庫)
『ポストマン』デイヴィッド・ブリン(ハヤカワ文庫)
『天冥の標』小川一水(ハヤカワ文庫)
『雀蜂』貴志祐介(角川ホラー文庫)
『フランケンシュタイン』シェリー(光文社古典新訳文庫)
『サマー・ウォーズ』岩井恭平(角川文庫)

■勝負事の定番:ミステリ・エンタメ・ドラマ
『女王陛下のユリシーズ号』アリステア・マクリーン(ハヤカワ文庫)
『ナバロンの要塞』アリステア・マクリーン(ハヤカワ文庫)
『高慢と偏見とゾンビ』セス・グレアム=スミス(二見文庫)
『ファイト・クラブ』チャック・パラニューク(ハヤカワ文庫)
『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』ジョン・ル・カレ(ハヤカワ文庫)
『ケインとアベル』ジェフリー・アーチャー(新潮文庫)
『ラブ・ストーリーを読む老人』ルイス・セプルベダ(新潮社)
『項羽と劉邦』司馬遼太郎(新潮文庫)
『デセプション・ポイント』ダン・ブラウン(角川文庫)
『花物語』西尾維新(講談社)
『図書館戦争』有川浩(角川文庫)
『「ABC」殺人事件』有栖川有栖、恩田陸、加納朋子、貫井徳郎、法月綸太郎(講談社文庫)
『となり町戦争』三崎亜記(集英社文庫)
『ダイナー』平沼夢明(ポプラ社)
『ゲド戦記 影との戦い』アーシュラ・K.ル=グウィン(岩波書店)
『ふたつの島』イエルク・シュタイナー(ほるぷ出版)
『Wonder』R.Jパラシオ著(ほるぷ出版)

■静かに深く対峙する:文学クラスタ
『若冲』澤田瞳子(文藝春秋)
『恋の華・白蓮事件』永畑道子(藤原書店)
『薄桜記』五味康祐(新潮文庫)
『夏の沈黙』ルネ・ナイト(東京創元社)
『本当の戦争の話をしよう』ティム・オブライエン(文春文庫)
『短くて恐ろしいフィルの時代』ジョージ・ソーンダーズ(角川書店)
『春琴抄』谷崎潤一郎(新潮文庫)
『道草』夏目漱石(青空文庫)
『ストーナー』ジョン・ウィリアムズ(作品社)

■ガチのバトル場:コミック
『ちはやふる』末次由紀(講談社)
『からかい上手の高木さん』山本崇一朗(小学館)
『FLIP-FLAP』とよ田みのる(講談社)
『シグルイ』山口貴由(秋田書店)
『月下の棋士』能條純一(小学館)
『パタリロ』魔夜峰央(白泉社)
『超人ロック 光の剣・アウタープラネット』聖悠紀
『超人ロック 炎の虎・魔女の世紀』聖悠紀

■人生とは闘いか:ノンフィクション
『わたしはマララ』マララ・ユスフザイ(学研マーケティング)
『棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えることができたのか』棚橋弘至
『映画の見方がわかる本 「2001年宇宙の旅」から「未知との遭遇」まで』町山智浩(洋泉社)
『ユングのサウンドトラック 菊地成孔の映画と映画音楽の本』菊地成孔(イースト・プレス)
『敗れざる者たち』沢木耕太郎(文春文庫)
『名画の謎 対決篇』中野京子(文藝春秋)
『グーグル、アップルに負けない著作権法』角川歴彦(角川書店)
『西原理恵子の人生画力対決』<2>西原理恵子他(小学館)
『アルピニズムと死』山野井泰史(ヤマケイ新書)
『なぜ君は絶望と闘えたのか』門田隆将(新潮文庫)
『カキフライが無いなら来なかった』せきしろ×又吉直樹(幻冬舎)

■ヴィジュアル化された対決:写真集・展覧会
『キズアト』石内都(日本文教出版)
『tokyo bay blues』石内都(蒼穹社)
『機動戦士ガンダム展 THE ART OF GUNDAM』創通・サンライズ(~9/27@六本木ヒルズ)

■何と対決するかが裏テーマ:映画・海外ドラマ
『進撃の巨人(実写版)』樋口真嗣監督
『ミッション:インポッシブル』ブライアン・デ・パルマ監督
『バットマン・ダークナイト』クリストファー・ノーラン監督
『インセプション』クリストファー・ノーラン監督
『ブラック・スワン』ダーレン・アロノフスキー監督
『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』ジョージ・ミラー監督
『ウォリアー』ギャビン・オコナー監督
『ライトスタッフ』フィリップ・カウフマン監督
『宇宙へ。挑戦者たちの栄光と挫折』リチャード・デイル監督
『マリー・アントワネット』ソフィア・コッポラ監督
『ブロンソン』ニコラス・ウィンディング・レフン監督
『セッション』デミアン・チャゼル監督
『バードマン』アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督
『13ラブ30 サーティンラブサーティ』ゲイリー・ウィニック監督
『ホームランド』ハワード・ゴードン制作
『Don't Stop Believin'』Journey(DVD)
『ゴジラ FINAL WARS』北村龍平監督
『日本の一番長い日』岡本喜八監督


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