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『絶深海のソラリス』がスゴい

絶深海のソラリス 前半ライト、後半ヘビー、ラスト絶望。帯の「絶望率100%」は伊達じゃない。瞬きどころか、呼吸を忘れて読み耽る。ちがうだろそうじゃないだろ、やめろやめてくれと叫びながら、それでも頁は止まらない。わたしの願いを蹂躙し、物語は容赦なく進む。

 ラノベを読むのは、なかった過去やありたい日常を、妄想で塗りつぶすため。だから、指導教官の主人公が、いろいろ問題を抱える訓練生とイチャコラする前半に、ほのぼのする。表紙の女の子は幼なじみで、犬みたいにすりすりしてくる(いい匂いがする)。それとは別に、キャラ紹介で真っ先に出てくる、クロエという女の子が可愛い。ツンデレエリート+隠れマゾで、嗜虐心と悪戯心の両方を快く刺激してくれる。ロリ巨乳、無表情美少女、セクシー先輩を翻弄し翻弄される、典型的なラノベを満喫できる。

 しかし、わたしはまちがっていた。予備知識ゼロ、高い評判だけで読み始めたのが、過ちだった。

 近未来の日本が舞台で、「水使い」という異能バトルなので、魔法科高校の先生みたいなハーレムラノベを想像していた。その期待は、あざといまでの軽妙な会話と、定番の学園モノのフォーマットに則って、正しく加熱されてゆく。

 おかしくなるのは中盤にさしかかってから。いや、口絵の禍々しさとか、表紙の不安感から、なんとなく予想はしていた。「深海パニック」という紹介文に、『Ever17』とか『翠星のガルガンティア』みたいな展開を予測していた―――

ロマン が、裏切られる。そこからは、何度も何度もエグられる。絶望が畳みかけてくる。もう引き返せないところになってハッと気づく。キャラ造形や能力の演出が、徹底的に計算されつくしていることに。なんのために? 絶望率100%を目指すためでしょうが。結果的に書き手の大成功で、口をぱくぱくさせながらあえぎながら読み進む。こんなのありか―――ってね。似たインプレッションを受けた作品は、『ひぐらしのなく頃に』『ダンガンロンパ』(文字反転)、そしてウラジミール・ソローキン『ロマン』を掲げよう。これは、ゆるゆる甘々の前半と緊張感MAXの後半が、のんのん日常と生地獄そのものが、地続きで隣り合わせである妙を楽しむ作品なのかもしれない。ソローキンを出したのは、警告の意味だ(海外文学クラスタなら分かるはず)。

絶深海のソラリス2 そして2巻。続けられるのか!? と恐る恐る手にしたら、これが素晴らしい。ソラリスといえばスタニスワフ・レムだが、あの「海」をこういうふうに昇華しているのか、と驚く。さらに、もう二度と読むまい、と決心した1巻目を猛烈に読ませたくなる仕掛けがあり、半ベソかきながら再読する。文学は、様々な媒体を呑み込んで成熟してきたが、アニメやゲームから、すごい構成をもらえた。文学にとっては破壊かもしれないが、ラノベにとっては創造なのだ。だから、ラノベ読みはソローキンを、ガイブン読みには本書をオススメしたい。

 「面白いか、面白くないか」であったら、面白いと断言する……ただし、悪い意味でね。

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