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辛すぎる現実を受け入れるための嘘『知らない映画のサントラを聴く』

知らない映画のサントラを聴く 人生に嘘が必要な理由は、ちゃんとある。ありのまま現実に向かい合ったら、そのシビアさに痺れるから。辛すぎる現実を引き受けるため、自分で自分に嘘をつく。

 彼女の場合は深刻だ。23歳で無職で、未熟なフリも相当きつい。特殊な家庭事情なわけでもなく、大学教育だって受けてきた。責任を負わないよう、一応は役に立つように生きてきたけれど、このままでは許されないことぐらい分かってる。もう親や社会のせいにもできない。だめにししてしまった人生を、自分で背負っていくしかない―――自覚はある。追い立てられる焦燥感の中、夜な夜な"泥棒"を探す。大切な親友からの贈り物を奪った犯人を探すうち、その親友の元カレに出会い、成り行きで同棲するハメになる。

 この辺の筆運びというかテンポがうまい。物語に引きずり込むのが、抜群に上手い(安定の竹宮ゆゆこ節)。とにかく先が気になる。こいつら、どうするの、どうなるの、トントン拍子に読めてしまう。

 そしてズシンと、胸底に響く。彼女が、どんな現実の贖罪として、その嘘を呑みこもうとして吐き出したかを知って。「圧倒的恋愛小説」というキャッチーだが、これ「恋」だったらどんなに救われうるだろうに、と空を仰ぐ(涙がこぼれないように)。残りの人生ぜんぶを罰ゲームにするわけにはゆかぬ。だから彼女は吐き出した嘘を粉々にして、もう一度自分の居場所をつくろうとする。前半の不器用なジタバタ感が、一気に発火し爆発するところが痛快なり。

 この、嘘が壊れるところ、感情がぶちまけられるところ、そして読み手を引っ張ってきたある謎が明かされるところがシンクロする。読み手への効果をよく図ってて、薄々分かっててもグッときてしまう(Amazonレビューだと盛大にネタバレしているのでご注意を)。

 ラノベじゃないことを強調する新潮文庫nexは、「べべべつにラノベじゃないんだからねっ(///)」感が出てて良いレーベルなり。ラノベじゃないなら、キャラノベ(キャラクターノベル)だな。この彼女、錦戸枇杷というのだが、一巻できちんと物語は終わってても、もう一度会いたいと思わせるから。

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