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『読書狂の冒険は終わらない!』本好きあるある

読書狂の冒険は終わらない 「読書狂」と書いてビブリオマニアと読む。

 『R.O.D』の倉田英之と、『ビブリア古書堂の事件手帖』三上延の対談。ベストセラー作家であり、書痴である二人が、これまで読んできた本についてトコトン語りつくしている。語りがそのまま良いブックガイドに仕上がっており、本好きをこじらせた人にうってつけ。

 序盤はモダンホラー。キング、マキャモン、クーンツと、モダンホラーの洗礼を受けた二人が、選りすぐりを紹介してくれる。新潮文庫からハマり、扶桑社ミステリーで短編を漁り、リチャード・バックマンという宝を見つけて歓喜するというお約束のルートを踏破しているところが楽しい。お薦めが『デッド・ゾーン』なんて(キングにしては)短めなので、良い選択だね。「クーンツは何読んでも同じ」や「“キング絶賛”はアテにならない」など、あるあるネタをぶちまける。

デッド・ゾーン1デッド・ゾーン2

 そして、「“キング絶賛”はアテにならない」例外として、クライヴ・バーカーやジャック・ケッチャムを挙げるのは正しい。バーカー『丘に、町が』や『ジャクリーン・エス』は血の本シリーズの傑作だろう。ケッチャム『隣の家の少女』を読み終えた日は、絶望感のあまり仕事にならなかったというが、激しく同意。"語り手"の少年にうっかり感情移入しようものなら、殴られたかのような衝撃を受けるだろうし、これまでの読書経験で最高の、「次のページをめくるのが怖い」思いをするだろう。

ジャクリーン・エス

 余談だが、ここでケッチャムを誉めるたび、「たいしたことない、もっとすごい残虐あるぜ」と腐す(?)方がいらっしゃる。残酷描写を求めるなら、早見純やY太を味わえばいい。だが、『隣の家の少女』が刺さるのは、虐待の目撃者の立場から動かず(動けず)、ひたすら視ることしかできない少年と、この作品を読む立場から動けぬ"わたし"が重なることを、痛感させられるから。これは、一言でいうなら「読むレイプ」。しかも、(安全である)読む立場を愉しんでいるわたしが、心底厭になる。

隣の家の少女

 ダークでトラウマ系として紹介されているのが、江戸川乱歩と日野日出志。グロく書きすぎて乱歩自身が嫌いになった曰く付きの『闇に蠢く』は未読なので、楽しみなり。カニバリズムがらみから、『蔵六の奇病』の『百貫目』を持ってくるセンスはさすが、と思ったら、同年代の方なのね。エドワード・ゴーリー『おぞましい二人』が食いついてくれそうだ。劇薬小説・トラウマンガは、むしろわたしが紹介したい。[劇薬小説ベスト10と、これから読む劇薬候補]がいいリストになりそうだ。澁澤龍彥も未読っぽいので、背徳の愉しみと目の悦びの5冊『ホラー・ドラコニア少女小説』シリーズをお薦めしたい。

おぞましい二人

 不思議なところもある。お二人方の傾向からすると、(1)ストーリーラインがしっかりしてて、(2)キャラクターが魅力的で、(3)きちんと物語している(実験・文芸的でないという意味)が好みだということが分かる。なのに、『三国志』はスケールが壮大すぎて共感できないという。横山光輝で同じ顔でキャラ区別がつかなくなり、そこへ『蒼天航路』でグチャグチャになったという。明言されていないものの、時代的に吉川三国志を指しているように見えるが、じゅうぶんキャラものかと。講談社文庫に挟んでいる人物紹介表で挫折したクチとみた。

 また、「一目ぼれがAmazonにはない」という指摘にも首をかしげる。確かに、「本に呼ばれる」「本と目が合う」ような瞬間は、書店でよくあること。だが、それはリアル書店ならではであり、Amazonにそれが無いと言われると、そうかな?と思えてくる。おそらく、ネットとの付き合い方が異なるのだろう。「ネットで買うか、近所の書店で買うか」という言い方から、Amazonはタイトル指名で買っているようだ。それもいいが、心に響くコメントを残す「人」を追いかけてゆくと、思わぬ鉱脈に出会えることを、このお二人は知らないのかも。もったいない。本を探すのではなく、人を探すのだ。

 このお二人なら、世代的にも好みとしても口に上って当然という本を選んでみた。いわば、「この作家を絶賛するなら、この人も外せないだろう」というノリだ。抜群に面白く、寝かせてくれない作品ばかり。本書の続編が出るならば、きっと紹介されるだろう。もし読んでいないのなら……うらやましいですな、今からこの徹夜小説にハマるという幸せを堪能できるのだから。

 中島らも『ガダラの豚』
 隆慶一郎『死ぬことと見つけたり』
 半村良『妖星伝』
 アリステア・マクリーン『ナヴァロンの要塞』
 パトリック・ジュースキント『香水』
 フレデリック・フォーサイス『ジャッカルの日』

ガダラの豚死ぬことと見つけたり妖星伝
ナヴァロンの要塞香水ジャッカルの日

 本好き、というより小説好き・物語好きやね。いわゆるノンフィクションは資料としての位置づけなので、その点ご注意を。

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