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10代の女の子が読むべき44冊『女子読みのススメ』

女子読みのススメ 女の子の悩みに寄り添うブックガイド。

 女性作家が書いた、女の子を主役にした作品を、「教室」「恋愛」「家族」「大人になること」といったテーマに沿って、女性評論家が紹介。まさに、女性の、女性による、女性のための44冊。

 今を生きる少女が、子どもから大人になる過程で出会う悩みや壁―――それは小説やアニメで物語として美味しくいただいている。だが、多感な10代にとっては、人生を左右するどころか死活問題ですらある。女性の思考回路を理解することが不可能なのに、ましてや女子の情緒を分かるのは無理筋というもの。せめては本書を紐解いて、現代社会で「若い女の子」として生きることをめぐる、痛みや希望、生きづらさに寄り添ってみる。

 スクールカーストを描いた鈴木翔著『教室内カースト』の紹介では、「みんな」を馬鹿にしながらも肥大化する自我を持てあます「私」に着目する。「世間のモノサシ」から離れていることとして価値がある、という現実から浮遊した屈折と、そこから自由になる過程を通じて、教室という空間を「宇宙船」に喩えている。皆が同じ「空気」を吸っていて、そこから出たら、空気はなくなる空間だ。

 そして、豊島ミホ著『底辺女子高生』では、教室という宇宙船から解き放たれた「私」について分析する。自分を「ダメだ」「底辺だ」と決めつけるのは、謙虚なようで、実は自分を「特別な存在」と思う傲慢な自意識の裏返しだという。そして、そこに気づき、ありのままの自分を受け入れられるかどうかが、成熟への肝だという。

 あえて80年代の作品を持ってくるのが面白い。干刈あがた著『黄色い髪』で、「学校へ行かなくなると、どうして家にもいられなくなるのか?」という問いへの答えを引いている。

学校と家が、なぜか同じ場所になっているからです。生きていくことイコール学校へいくこと、という場所です。だから、学校へ行かないことイコール死になってしまうのです。

 不登校は、単に「学校へ行かないこと」だけでなく「この社会からもれおちてしまうこと」を意味し、「学校に行かないと、将来社会に出ることができない」すなわち、不登校が死に結びつく風潮があった。

 ところが、この仕組みは1990年代以降、失われていく。「いい就職をするためには良い学校に行かなければならない」という現実は残る一方、「いい学校に行ったからといって、いい就職ができるとは限らない」という不安定さは、たしかに拡大してきた。

 学校に行かないということは、かつてほど強く否定されなくなり、フリースクールなど民間の居場所が認められる余地が増えたのだが───瀬尾まいこ著『温室デイズ』の主人公は、異を唱える。母親から勧められた「学校よりも自由で、好きにできる場」を、慎重に拒絶する。この「自由」という言葉の裏側にある時代の強迫「やりたいようにやればよい、ただし自己責任で自立せよ」への、直感的な疑念があるというのだ。

 自傷女子必読の書があるらしい。

「あーやばい、もう私なんか生きてる意味がない」が口癖になっている女の子達は。手首に刃を当てる前に、だまされたと思ってご一読を。

ここまで言い切ってオススメしているのは、金原ひとみ『オートフィクション』。「あえて弱者になりきることで、強者の側に回る」という女の子の戦略を描いた作品で、これを読むことは、リストカットする人が自分の血を見るときの、しんとした安心に似ているのかもしれないという。

 「教室」「恋愛」「家族」「大人になること」それぞれのテーマを一貫するポイントは、「相対化」。これしかない、と追い詰めてしまう女の子のために、退路というか別の次元(世界)を見せてくれる44冊は次の通り。

教室という宇宙船

  • 『平成マシンガンズ』三並夏(河出書房新社)
  • 『底辺女子高生』豊島ミホ(幻冬舎文庫)
  • 『檸檬のころ』豊島ミホ(幻冬舎文庫)
  • 『初恋素描帖』豊島ミホ(メディアファクトリー)
  • 『温室デイズ』瀬尾まいこ(角川文庫)
  • 『黄色い髪』干刈あがた(朝日文庫)
  • 『蝶々の纏足・風葬の教室』山田詠美(新潮文庫)
  • 『ともだち刑』雨宮処凜(講談社文庫)
  • 『西の魔女が死んだ』梨木香歩(新潮文庫)
  • 『つきのふね』森絵都(角川文庫)
  • 『ガールズ・ブルー』あさのあつこ(文春文庫)
  • 『蹴りたい背中』綿矢りさ(河出文庫)

恋愛は女の子を救ってくれる……か?

  • 『ガールズ イン ラブ』ジャクリーン・ウィルソン(理論社)
  • 『ナラタージュ』島本理生(角川文庫)
  • 『アッシュベイビー』金原ひとみ(集英社文庫)
  • 『ハイドラ』金原ひとみ(新潮文庫)
  • 『オートフィクション』金原ひとみ(集英社文庫)
  • 『暴力恋愛』雨宮処凜(講談社文庫)
  • 『カツラ美容室別室』山崎ナオコーラ(河出文庫)
  • 『青空チェリー』豊島ミホ(新潮文庫)
  • 『荒野』桜庭一樹(文春文庫)
  • 『君は永遠にそいつらより若い』津村記久子(ちくま文庫)
  • 『依存姫』菜摘ひかる(主婦と生活社)
  • 『ひとり日和』青山七恵(河出文庫)
  • 『ミューズ/コーリング』赤坂真理(河出文庫)
  • 『黄色い目の魚』佐藤多佳子(新潮文庫)

家族について

  • 『まともな家の子供はいない』津村記久子(筑摩書房)
  • 『空中庭園』角田光代(文春文庫)
  • 『祈祷師の娘』中脇初枝(福音館書店)
  • 『きみはいい子』中脇初枝(ポプラ社)
  • 『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』桜庭一樹(角川文庫)
  • 『いつか見た青い空』りさり(新書館)
  • 『幸福な食卓』瀬尾まいこ(講談社文庫)
  • 『前略、離婚を決めました』綾屋紗月(イースト・プレス)

いつか、大人になったら

  • 『スイッチ』さとうさくら(宝島社文庫)
  • 『きりこについて』西加奈子(角川文庫)
  • 『永遠の出口』森絵都(集英社文庫)
  • 『マザーズ』金原ひとみ(新潮社)
  • 『森に眠る魚』角田光代(双葉文庫)
  • 『対岸の彼女』角田光代(文春文庫)
  • 『臨死!!江古田ちゃん』瀧波ユカリ(アフタヌーンKC)
  • 『肩ごしの恋人』唯川恵(集英社文庫)
  • 『格闘する者に○』三浦しをん(新潮文庫)
  • 『すーちゃん』益田ミリ(幻冬舎文庫)


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コメント

タイポだと思いますが、豊島ミホさんのタイトルは
「檸檬のこころ」じゃなくて「檸檬のころ」だと思います。

投稿: fijixfiji | 2013.10.27 11:12

>>fijixfiji さん

ご指摘ありがとうございます。直しました。

投稿: Dain | 2013.10.31 06:56

…自分を「ダメだ」「底辺だ」と決めつけるのは、謙虚なようで、実は自分を「特別な存在」と思う傲慢な自意識の裏返し…

この部分は、オジサンでも身につまされます。

あと、若いっていいな、と思うときがあるけど、思春期の辛さを忘れる程、歳をとったということでしょうか。

投稿: | 2013.10.31 22:48

>>名無しさん@2013.10.31 22:48

「傲慢な自意識」は、どの世代でもどの時代でも、その持ち主を悩ませたものです。なので、あまりクヨクヨしないほうが吉かと。ただ、この女の子の場合は、その現れ方があまりにも直裁で痛々しいので、「物語」になっているのだと思います。

投稿: Dain | 2013.11.02 07:13

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