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だれかに、なにかを、魅力的に伝える「はじめての編集」

人間ども集まれ わたしは「編集者」だということに気づかされた一冊。

 そして、より良い「編集者」を目指すことは、わたしの人生をより良い作品にしていくことなんだというメッセージが届いた「あなたの人生があなたの最高の編集物なのです」。職業としての編集者(エディター、デザイナー、プランナー)に限らず、「人生を編集したい」、そんな方にオススメ。

 著者は菅付雅信、第一線で活躍する編集者だ。出版からウェブ、広告、展覧会までを手がけ、「編集」というより「企画」「デザイン」「コンサルティング」に近いクロスオーバーな役割をこなす(その仕事っぷり)

 そんな一流人が、編集の原則/本質を惜しみなく開陳する。ブログを書いて、ときどきイベントを企画するわたしにとって、ありがたいエッセンスで満ち溢れている。書く対象やプランを検証する優れた手助けとなった。

 たとえば、「編集とは、『だれかに、なにかを、魅力的に伝える』という目的を持った行為」であり、「企画には目的がある」―――これは、当然すぎて見過ごしがちなのに、迷ってもここへ戻ってこれない場合が多い。企画にはターゲットがあり、受け手・読者・視聴者・消費者がどんな人かによって、題材も表現方法もメディアも変わってゆく。

 料理の"たとえ"は言いえて妙だ、著者は折々で企画を料理になぞらえる。100の食材があれば、料理する100の企画が生まれてくるという(企画に王道なし)。

 ただし(ここが肝心)、素材が強くて良いものであれば、企画はヒネらないほうが良いんだって。最高の神戸牛なら、ハンバーグよりも塩胡椒だけで焼いたほうが美味だし、素材がイマイチなら調理や味付けに手をかける。素材の鮮度で勝負するDIMEと、素材を「提案」として料理するBRUTUSの例に納得させられる。料理人と編集者は「さじ加減」が求められるんだね。

 そして、料理にも、焼く、ゆでる、蒸す、煮る、炙る、揚げるなど、基本的な方法があるように、編集にも基本形となる題材の料理法があり、応用がある。本書で紹介される、「企画はかけ算」「独占・挑発・再提案」といった手法は、ヤング「アイデアのつくり方」に通じる。一時間で読めて、一生役立つスゴ本だ。

 自分の企画に、もっと意識的に取り組むためのヒントも貰った。このブログもそうなのだが、著者はこう言い切る「言葉の編集ですごく大事なポイントは、読者が本文を最初から最後まで読まないだろうということを前提に作る、ということです」。そして、新聞を例に、タイトルや見出しでスキミングされる仕組みを紹介する。

 さらに、「メディアの言葉というのは、まずスキミングされる」という出発点から、挑発としての広告コピーや、フックの名人芸である雑誌のキャッチを次々と示してくれる。読めば「ああ、あれね」と思い出すようなものばかりで、痛勤電車の中吊りはフックを学ぶ最高のテキストなんだと改めて気づかされる。本ばかりでなく、上も見るか。

 そして、本書で出合った最も重要な言葉は、これだ。

   文章は飾れば飾るほど汚れるものだから。
   形容詞は甘く触れてくるが、その分腐るのが早い。

 ついつい文を着飾ってしまうわたしには、キツい戒めとして覚えておこう。

 最後に。本書を一読して、もう一度表紙に戻ると、こう書いてあることに気づく。

   THE
   WAY
   OFE
   DIT

 The Way Of Edit 、「編集道」だと泥臭く感じてしまうが、そうなのかも。軽やかでいながら、意外と素振り百回的なところもあるから。

 人生をプロデュースする、すべての「編集者」にオススメ。


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次のスゴ本オフは4/14(土)、テーマは「女と男」

 オススメ本をもちよって、まったりアツく語り合う、今度のテーマは「女と男」。

 本を介して人と会い、人を介して本と遇う、まさに「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」を地でいくオフ会ですな。読書スキーの交流の場や出会いの場と化して嬉しい。「本が好き」なんて、ネットならともかくリアルで言うのは抵抗あるから。

 時間  2012年4月14日(土) 17:00~23:00
 場所  恵比寿
 会費  3000円

 オススメ本ばかりでなく、みんなで食べたい・飲みたい・ご馳走したい料理やらツマミやらお酒やらデザートをもってきて、ワイワイやりますぞ。キッチン設備が充実しているので、食材もってきてその場で料理するのもアリ。手土産買ってきた!という方はレシートを忘れずに(清算します)。

 「女と男」というテーマは、「男性が持ってくるのは女本、女性が持ってくるのは男本」という含み。「女本」とは、「女性をテーマにした本」や、「書き手が女性の本」という意味で、「男本」は「男がテーマ」または「著者が男」になる。

 フィクションでもノンフィクションでもコミックでも、文字でも写真でも音楽でも、紙でも電子でもゲームでも、なんでもござれ。この女本・男本が好きだーという思いのたけを、アツくユルく語ってほしい。

 募集はfacebookで、以下からどうぞ。

 春だからスゴ本オフで「女と男」を語ろう!

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手塚治虫の戦争ポルノ「人間ども集まれ!」

人間ども集まれ

 戦争ポルノ(war porn)なる言葉がある。安全で暖かいところから、ネット越しで、冷酷で残虐な戦場を観覧する。一種の恐いもの見たさで、いかがわしい好奇心を満たしてくれる。無人偵察機が写したり、収容所で隠し撮りされた映像を後ろめたい気分で眺めていると、つくづく戦争はショーなんだと痛感する。

 戦争をショーだと喝破したのは、何もわたしが初めてじゃない。いまどきの人なら、森博嗣or押井守の「スカイ・クロラ」だろうが、残念!積山の中。オッサンなわたしは「銀河鉄道999」のライフル・グレネードのエピソードを思い出す。これは本物の戦争を観光資源としている話だ───なんてつぶやいていたら、当たりを教えてもらう。手塚治虫の「人間ども集まれ!」だ(ありがとうございます、ひできさん)。

 ナンセンス風刺とでもいうべきか。太平洋戦争~ベトナム戦争、冷戦の時代を映し替え、セックスとバイオレンスとギャグてんこ盛りの"問題作"となっている。今だと発禁レベルの、口に出しにくい差別を容赦なく扱っており、嘲笑(わら)うにはちちょっとした度胸が必要だ。

 人と違った精子を持った主人公が、人工授精の実験材料にされ、そこから「製造」される新人類は、男でも女でもなかった───という展開なのだが、丸出しの悪趣味に辟易する。手塚センセ、抑圧されてたのかしらん、それとも、あの三丁目の夕日の時代こそ俗悪リミッターカットされてたのかも。いずれにせよ、今では書くことも読むこともためらわれる作品だ。

 ここでは完全に戦争はショー化される。もちろん、リアルだってそうだ。一糸乱れぬ隊列やトレーラーに積んだ弾道ミサイルのパレードは、国威の"見せびらかし"だ。戦闘機のアクロバットや艦隊の洋上演習は、それだけの戦争能力があることを内外に見せるため。だが本書ではもっと大がかりで、ホンモノの戦争を引き起こすことで、「それだけの戦争能力の担い手を作り出すことができる」ことを見せびらかそうとする。

 口上はこうだ。

あなたがたのお国が戦争をなさる
戦争には人間が必要だ しかも、死んでもいい人間が!

そいういう人間や軍隊を、
私どもの国では格安にお売りしてるんですよ!

規律正しく
忠実で勇敢で
死を恐れない
無性人間!

 米ソ両方が買ったため、ベトナムでは南北に分かれ、冷戦の代理戦争の代理として戦うなんて外道そのものやね。弾よけ扱いされていた黒人は大喜び、なぜなら黒人の弾よけになるから、なんてキツすぎるブラックだ。

 人間の代理戦争を任されるほど「生産」され、地球に広まった無性人間が、次に何をするか───カタストロフの予想どおりなのだが、ラストはちょっと切ない。

 手塚治虫の狂気の極北を眺めつつ、戦争とは「見る」ものなのだと、あらためて知ることができる。「スゴ本オフ@戦争」にて、わたしがプレゼンした一冊なのだが、あまりにキッチュでオススメしにくいかも。

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