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スゴ本オフ「食とエロ」レポート

 結論「本好きはエロも好き、そして無類の食いしんぼう」

 40名が8時間、オススメ本を持ちよって、マタ~リ熱く語りあう。京都からSkypeで参加したり、著者の人がリアルやtwitterでプレゼンしたり、楽しすぎるスゴ本オフでしたな。毎回毎回、「過去最高のデキ」とボジョレーみたいなことを言っているが、今度も同じこと言う、「食とエロは最高なり」ってね。迫真のtwitterレポートは、スゴ本オフ「食とエロ」の会まとめをどうぞ(ズバピタさん、ありがとうございます)。

 まずは見てくれ、大漁大猟。

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 もう一つの結論は、「食べる女はエロい」。うん知ってた。唇は舌は口腔は、ラビアのトリスのヴァギナの代替だし、潤み呑み上気し吐息つく仕草は、そのまま行為を彷彿させる。食べる様子はいたす様子、これに知らないでいる女性陣がいることに驚く。食事は色事に通じる。

たべるダケ そういうオトコ心を射抜くような本に眼が行く。食べてるシーンがもの凄くえっちい『花のズボラ飯』は、完全にイッちゃってる顔してる。美女の食事風景をひたすら接写する『たべるダケ』は、食べる女フェチのバイブル。食べる共感覚をセックスの前戯になぞらえる村上龍『料理小説集』は、バブリーな香りとともに、食と色の関係を再認識させられる。

 人は、おいしい食事で元気になり、いいセックスでフレッシュになる。オンナの食と性がモチーフの『食べる女』は、あたりまえのことを生々しく伝えてくれる。うどんがスイッチとなりムラっとくる『うどんの女』は、パブロフのうどんやね。吉本ばなな『キッチン』の食事は明らかに性行為の代わりだし、ぐるっとまわって表裏一体となる『東京いい店やれる店』は直裁そのもの。食欲は色欲に一致する。

日本縦断フーゾクの旅 アダルトライターの安田理央さんのプレゼンで、かなり重要な気づきがもらえる。北海道から九州まで、全国の風俗店を体当たり取材したルポ『日本縦断フーゾクの旅』は、半分くらいは食い物の写真になっている。ラーメンと裸の写真が交互に出てくる感じで、要するに、その土地の「うまいもの(食と色)」を食べ歩く旅でもあるのだ。

 エロ雑誌のおかげで「賢者タイム」が訪れた後、お腹が空いてこないか?色欲の次は食欲だ(睡眠欲かもw)。巻末の四コマの代わりに、ネット注文できるB級グルメとか、携帯でケータリングできる番号を載せたらどうだろう?スペース単価あたりの回収率が高そうだぞ。エロマンガやエロサイトは、ひたすらエロスを追求するだけでなく、もう一つの欲望「食」を満たす導線を用意したら、意外にヒットするかも(逆も然り)。上手に隠しているけれど、よしながふみ『きのう何食べた?』は、両方の欲をモチーフにしているし。

HIPS わたしがプレゼンしたのは、「食と色と死」をテーマに選んだもの。食と色から、おしりだらけの写真集『HIPS』を紹介する。ほんのり、むっちり、ぷるんぷるん、味わい深い美尻たちは、かぐわしい果実そのもの。桃やトリモモを想起させ、色欲と食欲の両方を刺激する。食と色、どちらも味わい、嘗め、“食べちゃう”ものだから。

 さらに、色と死。セックスの後の眠りのことを、フランス語で小さな死(petite mort)という。性と死が驚くほど近しいことは、諏訪敦の画集『どうせなにもみえない』で分かる。裸の女が頭骨を舐めている様は、食と色と死が隣接している光景だ。

 そして食と色と死を等価に貫く作品に至る。ケッチャム『ザ・ウーマン』マンディアルグ『城の中のイギリス人』、そしてサド『ジェローム神父』だ。幸か不幸か、“ノーマル”な作品は皆無。「キスは味見」だし、「エロスは黒い神」なのだ。そこでは、カニバルは最高のエロスに位置づけられる。人によると食欲なくしてしまいそうな描写や挿絵が並んでいるが、わたしにとって、これほど食・色・死を伝えてくれるものはない。

ザ・ウーマン城の中のイギリス人ジェローム神父

 わたしの変態妄想をヨソに、再読したくなるようなツボに入る本が集まってくる。添い寝屋の元祖ともいえる川端康成『眠れる美女』や、香りを操る奇人を描いたジュースキント『香水』は、最初はエロス、最後は食で締める。長らく課題図書である『世界屠畜紀行』、『聖☆高校生』、そして『正しい恋愛のススメ』はこれを機に、「次読むリスト」の上位に移そう。

 以下、本好き、エロ好き、食いしんぼうが選んだ、「食とエロ」のリストなり。会場やtwitterで紹介されたり言及された本を、適当に並べてみた。

    文学からのアプローチ

  • 『SEX』石田衣良(講談社)
  • 『眠れぬ真珠』石田衣良(講談社)
  • 『眠れる美女』川端康成(新潮文庫)
  • 『わが悲しき娼婦たちの思い出』 G・ガルシア=マルケス(新潮社)
  • 『存在の耐えられない軽さ』ミラン・クンデラ(集英社文庫)
  • 『情事の終わり』グレアム・グリーン(新潮文庫)
  • 『ロマネ・コンティ一九三五年』開高健(文春文庫)
  • 『夏の闇』開高健(新潮文庫)
  • 『食べる話』松田哲夫編(あすなろ書房)
  • 『食べる女』筒井ともみ(新潮文庫)
  • 『物食う女 イメージの文学史』武田百合子監修(北宋社)
  • 『思い出トランプ』向田邦子(新潮文庫)
  • 『父の詫び状』向田邦子(文藝春秋)
  • 『向田邦子の手料理』向田和子(講談社のお料理BOOK)
  • 『テニスボーイの憂鬱』村上龍(集英社文庫)
  • 『料理小説集』村上龍(講談社文庫)
  • 『キッチン』吉本ばなな(角川文庫)
  • 『ベッドタイムアイズ』山田詠美(河出文庫)
  • 『レッスン』五木寛之(新潮文庫)
  • 『白暗淵』古井由吉(講談社)
  • 『美食倶楽部』谷崎潤一郎(ちくま文庫)
  • 『飲食男女』久世光彦(文春文庫)
  • 『美少年』団鬼六(新潮社)
  • 『四畳半色の濡衣』野坂昭如(文春文庫)
  • 『布団』田山花袋(新潮文庫)
  • 『ふがいない僕は空を見た』窪美澄(新潮社)
  • 『どうしようもない恋の唄』草凪優(祥伝社文庫)
  • 『赤い薔薇ソースの伝説』ラウラ・エスキヴェル(世界文化社)
  • 『女たちへのいたみうた 金子光晴詩集』高橋源一郎編(集英社文庫)
  • 『柳生武芸帳』五味康祐(文春文庫)
  • 『剣客商売』池波正太郎(新潮文庫)
  • 『花の下にて春死なむ』北森鴻(講談社文庫)
  • 『桜宵』北森鴻(講談社文庫)
  • 『螢坂』北森鴻(講談社文庫)
  • 『酒仙』南條竹則(新潮文庫)
  • 『あっちゃんあがつく―たべものあいうえお』さいとう しのぶ(フレーベル館)
  • 『日常を袋詰めにして、海に捨てた罪』間武(コシ-ナ文庫)

    食べるマンガ、エロいマンガ

  • 『聖☆高校生』小池田マヤ(ヤングキングコミックス)
  • 『正しい恋愛のススメ』一条ゆかり(集英社)
  • 『きのう何食べた?』よしながふみ(講談社)
  • 『人間仮免中』卯月妙子(イースト・プレス)
  • 『HELLSING』平野耕太(少年画報社)
  • 『高杉さん家のおべんとう』柳原望(メディアファクトリー)
  • 『花のズボラ飯』水沢悦子(秋田書店)
  • 『たべるダケ』高田サンコ(ビッグコミックス)
  • 『うどんの女』えすとえむ(祥伝社)
  • 『空の食欲魔人』川原泉(白泉社)
  • 『ふたりエッチ』克・亜樹(白泉社)
  • 『ケーキを買いに』河内遙(太田出版)
  • 『失恋ショコラティエ』水城 せとな(小学館)
  • 『カリフォルニア物語』吉田秋生(小学館文庫)
  • 『あたしのこと憶えてる?』内田春菊(新潮文庫)
  • 『野武士のグルメ』久住昌之(普遊舎)

    変態さんいらっしゃい

  • 『ダイナー』 平山夢明(ポプラ社)
  • 『ザ・ウーマン』ジャック・ケッチャム(扶桑社ミステリ)
  • 『城の中のイギリス人』マンディアルグ(白水社)
  • 『HIPS 球体抄』伴田良輔(P‐Vine BOOKs)
  • 『ジェローム神父』マルキ・ド・サド/澁澤龍彦訳/会田誠絵(平凡社)
  • 『変ゼミ』TARGO(講談社)
  • 『食人族旅行記』マルキ・ド・サド/澁澤龍彦譚(河出文庫)
  • 『たったひとつの、ねがい。』入間人間(メディアワークス文庫)
  • 『メガネっ娘凌辱大戦』松平龍樹(マドンナメイト文庫)
  • 『日本縦断フーゾクの旅』安田理央(二見書房)
  • 『イメクラ』都築響一(アスペクトライトボックス)
  • 『アダルトビデオ革命史』藤木TDC(幻冬舎新書)
  • 『昭和の「性生活報告」アーカイブ』SUNロマン文庫
  • 『性生活報告』サン出版
  • 『女体の品格』末廣圭(徳間文庫)

    食、色、そしてミステリ

  • 『料理人』 ハリー・クレッシング(ハヤカワミステリ)
  • 『香水――ある人殺しの物語』パトリック・ジュースキント(文春文庫)
  • 『パンプルムース氏のおすすめ料理』マイケル・ボンド(創元推理文庫)
  • 『数学的にありえない』アダム・ファウアー(文藝春秋)
  • 『ねじまき少女』パオロ・バチガルピ(ハヤカワ文庫SF)
  • 映画『蘇る金狼』村川透、松田優作、風吹ジュン(Blu-ray)
  • 映画『陽炎座』鈴木清順、松田優作、大楠道代(DVD)
  • 『さらば、愛しき鉤爪』エリック・ガルシア(ヴィレッジブックス)
  • 『キッチン・コンフィデンシャル』アンソニー・ボーデイン(新潮文庫)

    ノンフィクションは、生々しすぎる

  • 『東京いい店やれる店』ホイチョイ・プロダクションズ(小学館)
  • 『新東京いい店やれる店』ホイチョイ・プロダクションズ(小学館)
  • 『三つ星レストランの作り方』石川拓治(小学館)
  • 『調理場という名の戦場』斉須政雄(幻冬舎)
  • 『ヒトはなぜヒトを食べたか』マーヴィン・ハリス(ハヤカワ文庫)
  • 『世界屠畜紀行』内澤旬子(角川文庫)
  • 『面白南極料理人』西村淳(新潮文庫)
  • 『南極料理人』沖田修一監督(DVD)
  • 『ごはんにしよう-映画「南極料理人」のレシピ』飯島奈美(文化出版局)
  • 『地球怪食紀行――「鋼の胃袋」世界を飛ぶ』小泉武夫(知恵の森文庫)
  • 『好「食」一代男』檀太郎(小学館文庫)
  • 『魯山人味道』北大路魯山人(中公文庫)
  • 『食卓の情景』池波正太郎(新潮文庫)
  • 『男の作法』池波正太郎(新潮文庫)
  • 『贋食物誌』吉行淳之介(新潮文庫)
  • 『料理歳時記』辰巳浜子(中公文庫)
  • 『ことばの食卓』武田百合子(筑摩書房)
  • 『わたしの献立日記』沢村貞子(新潮文庫)
  • 『「食」の自叙伝』文藝春秋編(文藝春秋)
  • 『チーズ図鑑』文藝春秋編(文芸春秋)
  • 『おいしさの科学 味を良くする科学』河野友美(旭屋出版)
  • 『今日の料理のヒミツ』後藤繁榮(平凡社)
  • 『問いつめられたパパとママの本』伊丹十三(新潮文庫)
  • 『ワーキングカップル事情』安井かずみ、加藤和彦(新潮文庫)
  • 『ティープリーズ』堀江敏樹(南船北馬舎)
  • 『ブラジルのホモ・ルーデンス サッカー批評原論』今福龍太(月曜社)
  • 『ばらの騎士』リヒャルト・シュトラウス(DVD)
  • 雑誌『ブルータス 688号/美味求真』(マガジンハウス)
  • 雑誌『東京グラフィティ 096号/エロスを感じる名作シネマ&ブック』(グラフィティマガジンズ)

 次回は1月、テーマは「ラノベ」だ。その次は「親子」でいきまする。告知・募集はfacebookのスゴ本オフが早くて速いので、チェックしてくださいませ(ブログはトロいので、記事をアップする頃には募集枠が埋まってしまうのよ)。

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ボルヘスの世界文学全集『新編 バベルの図書館 第2巻』

バベルの図書館2 巨匠の編んだ世界文学全集。

 どれもメジャー作家なのだが、比較的マイナーな作品が多いのは、テーマが幻想文学だからだろうか。通して読むと、ボルヘスの「趣味」が透け見えて楽しい。

 それは、「嘘は一つ」であること。まるで異なる世界をファンタジックに紡ぎだすのではなく、ロンドン郊外だったり、フランスの戦場といった現実の場所で起きる、ささやかで深くて後を引く奇譚が描かれる。

 なぜ、幻想物語に耽るのかというと、登場人物を通してわたしの生きざまが、速やかに描かれるから。どうしてそんな言動をしたのか?普通の小説だと登場人物と同じくらいの時間(≒枚数)を要する。だが、ただ一つだけ「嘘」が入ることで、一気に彼・彼女が分かりやすくなる。

 さらに、自分ならどうする?きっと考える。「その人」をシミュレートする。荒唐無稽だから考えるだけ無駄という人は、次の意味が分からないだろう。「小説が書かれ、読まれるのは、人生がただ一度きりであることへの抗議である」(via: tumblr 、たぶん北村薫)。自分だったら、やらないだろう……そう断じた後に気づく。これはわたしの○○の寓話であることを。この寓意に至る仕掛けが、現実に刺さった幻想なのだ。

 たとえば、ワイルド『アーサー・サヴィル卿の犯罪』なんて傑作だ。高名な手相師に、「あなたは殺人を犯す」と予言されたサヴィル卿がとった行動は、わたしなら決してしない。ところがサヴィル卿の奮闘を追っていうち、その動機は、毎日わたしを追い詰めている強迫観念そのものであることに気づく。さらにラストのサゲ後に振り返ると、そこまで一行も書かれていないある事実に気づいてゾッとする。「思考は現実化する」のダブルミーニングかつ、片方はブラックバージョンであることが分かる。

 懐かしい嘘(トリック)もある。チェスタトンのブラウン神父シリーズだ。既に別の小説で踏襲され、脚色され、アレンジされたものばかりで、探偵小説のデザインパターンに見える。だが、トリックを埋め込むベースとなる物語が多様かつ深いので、発掘のヨロコビもでてくる。いわゆる探偵モノって文芸というより物語芸だよなと常々思っていたのを、ボルヘスはずばりこう言いあてる。

ポーの発明になる探偵小説というジャンルは、それがあらゆる文学ジャンルのうちで最も人工的なものであり、最も遊びに似たものであるからには、いずれ消滅する時期がやってくると予想される。そもそもチェスタトンは書いていた、小説は顔面の戯れであり、探偵小説は仮面の戯れである―――と。
 仮面である限りパターンに陥るのは免れないわけで、密室トリックだったり替玉・凶器の犯行手芸はいずれ尽きる。亜流コピーで知ってしまうよりも、チェスタトンで初体験を済ませるほうがよいのかも知れぬ。そんな意味で、秀逸なトリックは異性との体感に似ている。要するに、暴かれる/暴く快感なのだ。

ウェルズ
 白壁の緑の扉
 プラットナー先生綺譚
 亡きエルヴシャム氏の物語
 水晶の卵
 魔法屋

ワイルド
 アーサー・サヴィル卿の犯罪
 カンタヴィルの幽霊
 幸せの王子
 ナイチンゲールと薔薇
 わがままな大男

サキ
 無口になったアン夫人
 お話の上手な男
 納戸部屋
 ゲイブリエル‐アーネスト
 トーバモリー
 名画の額ぶち
 非安静療法
 やすらぎの里モーズル・バートン
 ウズラの餌
 あけたままの窓
 スレドニ・ヴァシュター
 邪魔立てするもの

チェスタトン
 三人の黙示録の騎士
 奇妙な足音
 イズレイル・ガウの名誉
 アポロンの眼
 イルシュ博士の決闘

キプリング
 祈願の御堂
 サーヒブの戦争
 塹壕のマドンナ
 アラーの目
 園丁

 ボルヘスが集めたから怪奇幻想、とは必ずしもならない。寓話と諧謔、そして懐かしさに満ちた世界文学全集。第3巻もイギリス編らしいが、先に4巻のフランス編から出るらしい。

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