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「この世で一番おもしろいマクロ経済学」で見晴し良好

 経済音痴のわたしに最適な一冊。

 そして、素朴な疑問「経済学者はバカなのか」に対する解答が得られた。その答えを言おう、経済学者はバカではない。むしろ利口な方なのに、バカと呼ばれているだけなんだ。

 つまりこうだ。マクロを取り巻く知見が不安定なのは、経済の性質について相反する主張があるから(本書では、経済を「円満な家庭」と見なす派閥と「崩壊家庭」と考える派が対立する)。政府の役割についての意見も違う。政府とは、成長と安定を促す「よい親」と考える人と、「悪い親」だから手出しするなと主張する人が、これまた争う。

 それぞれ信じるイデオローグに固執し、互いが互いをバカ呼ばわりするからややこしくなり、岡目八目、経済学者は何なの? バカなの? という話になるのだ。本書では、それぞれの「宗派」を両論併記で並べているため、一瞬混乱するかもしれない(幾度「どっちやねん!」とツッコミを入れたことか)。

 だが、『そういうもの』なのかもしれない。流行のように入れ替わって、時の政府が採用した派が巨額マネーを動かして、ノーベル賞をせしめる。ノーベル賞をもらう経済学者の主張が、年によってあべこべなのは、経済学自体が揺れている証左なんやね。マクロ経済学のジョークに、こんな秀逸なのがある。

  問題はいつも同じなのに
  答えは数年ごとに変わる

 では、マクロ経済学の問題とは何か? 大目標は2つある、「経済成長を説明すること」、そして「経済崩壊を説明すること」という。本書では、金融政策、政府の役割、自由貿易と比較優位、外国為替や景気循環といった観点から、この目標への道筋をつけてくれる。

 もちろんコミック形式で分かりよさを目指したものだから、ざっくりした説明でしかない。それでも、「地球温暖化を解決するための『市場』の使い方」や、「財政破綻せずに高齢化社会を乗り切る」といった問題への取り組みは見える。

 ただ、それぞれの党派の解決策を併記しているので、「どっちやねん!」とツッコみたくなるかもしれぬ。それでも、どこかの派閥に即した「経済学入門」を読んでしまい、その色に染まってしまうよりは良いかと。経済学という入口に立って、全体を見渡すのにちょうどいい一冊。

 姉妹本として「この世で一番おもしろいミクロ経済学」がある。マクロ経済は数年でガラっと変わるのと違い、ミクロ経済は、100年たっても間違いなく、ほぼ今と同じなんだそうな。ミクロが安定しているのは、注目する基本の話が一緒だから。著者ヨラム・バウマンはこう喝破する。

  昔々
  最適化する個人がおりましたとさ…
  あとは全部数学よ!

 あわせて読むと、いっそう見晴らしが良くなる二冊。

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コメント

要は「時と場合による」にもかかわらず、
特定の条件下で導き出した回答にもかかわらず、
それを絶対視してイデオロギー化するからおかしくなる。

三橋貴明氏や廣宮孝信氏の著書や動画がオススメ。
(ただし廣宮氏は口下手なので、動画より著書がオススメ)

投稿: | 2012.08.27 08:34

>>要は「時と場合による」にもかかわらず、
“要は「時と場合による」のだが”のほうが分かりやすかったですね。

三橋氏は経済や政治に関するブログを毎日更新されてるので、そちらを読むのも面白いですよ。

投稿: | 2012.08.27 08:40

マクロ経済学の話題で三橋を勧めるとか。
まぁ、経済リテラシーが無いんでしょうけど。

投稿: | 2012.08.27 20:14

他人を貶す際は根拠を挙げてくだされば説得力が増すのですが……残念です。
リテラシーは皆で共有してこそ、民主主義の社会では意味があるものではありませんか?
あなたが“経済リテラシー”をお持ちであるとおっしゃるならば、三橋氏の著作のなにがなぜダメなのか、ご指摘できますよね?
また、代わりにお薦めな方・著作がございましたら教えてくださると幸いです。
少なくとも私は、三橋氏は論拠とするデータを公的機関の公開データから得ていることで信頼度と信憑性があり、誰でも検証することが可能な点で良いと思っています。


それと、言及はありませんでしたが廣宮氏についてはいかがでしょう?

投稿: | 2012.08.29 11:19

最近になって経済に興味を持ち始めた方なんですかね?
はっきりいって三橋は入門レベルのマクロ経済学も理解していません。
この記事の話題には相応しくない人間です。

>著作
私は、ここ2年の三橋の経済本は全く読んでいない(立ち読みすらしていない)ので、コメントはできません。
ネットでの発言でしたらいくらか指摘できます。

まともな経済学に触れてみたいのであれば入門書を読んでください。
記事では派閥云々とありますが、マンキューだろうとスティグリッツだろうとクルーグマンだろうと、基本の部分は同じです。経済学の教科書で著者の思想が反映される事はありません。

また、政府やOECDやIMFが公表しているデータを元に経済を分析しても、その結論が正しいとは限りません。
経済学者も同じデータを使っている事をお忘れなく。

廣宮氏も三橋と同じ様なレベルです

投稿: | 2012.08.31 22:30

「TPPへの参加は供給力を増やす。供給力が増えるとデフレギャップが拡大するからデフレが悪化する」
これは以前私がテレビで耳にした三橋の意見です。

間違いです。
TPPに参加しても、その瞬間に潜在GDPが増える訳ではありません。増えるのは将来の供給力ですので、デフレ脱却の役に立ちます。

良く似た意見は10年前にもありました。
構造改革をすると供給力が増えて――後は同じ――というものです。

三橋はこういった事を知らないんでしょうね。


また、チャンネル桜の討論番組で「インフレ税」という言葉を初めて耳にしたらしく、ブログで「なるほど」と言った事がありました。

http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-10733354052.html
>特に、一橋大学の小黒准教授が「インフレは、『インフレ税』という税の一種」と仰ったのは印象深かったです。まさしく「なるほど」という感じでした。

が、インフレ税というのはたいていのマクロ経済学の入門書に載っている初歩の初歩です。
そうとは知らずに“再発見”したことをブログで報告している様は滑稽ですし、そんな人の書いたブログや本を読んでいる人間が何千何万といると考えると、悲しくなります。


三橋はデフレ脱却を主張しているのでリフレ派に分類される事もありますが、真面目にやっている人からすれば一知半解の意見は迷惑以外の何物でもないでしょうね。

http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20120802

投稿: | 2012.09.01 00:00

経済拡大によるインフレではなく、特定機関による恣意的なインフレは、その団体に全国民の購買力が転移するだけです。

政府の国債発行によるバラマキは、バラマキを受けた主体の購買力は増加しますが、それ以外の人は購買力が減るだけです。

近所のスーパーがカルテルを結んで、食料品を10倍にしたと考えればわかりやすいでしょう。東電の電気料金値上げも然り。誰の利益が減って、誰のところに転移してますか?

インフレにしたいなら日銀じゃなくて東電に頼めばいいじゃないですかw

三橋の詐欺ロジックにはヘドが出ますね。

投稿: リバタリアン | 2012.09.16 02:07

最近の三橋が何を言っているかは知りませんが……

>近所のスーパーがカルテルを結んで、食料品を10倍にしたと考えればわかりやすいでしょう。東電の電気料金値上げも然り。誰の利益が減って、誰のところに転移してますか?
>インフレにしたいなら日銀じゃなくて東電に頼めばいいじゃないですかw

これは相対価格の変化であって、インフレではありません。
インフレの定義を勉強して下さい。

投稿: | 2012.09.16 18:59

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