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庶民がブランドにハマるとこうなる「着倒れ方丈記」

着倒れ方丈記

 服オタたちの、シャレにならない微笑ましさ。

 アイドルオタク、二次オタク、オタクにいろいろあるけれど、この世で一冊、ファッションオタクの服オタさんの生態を活写した写真集。グッチ、エルメス、ガッバーナ、超のつくブランドにハマった「普通の人々」。生活費を切り詰め、食費を削って集めた服、カバン、靴たちが、ワンルームとか、築ン十年のアパートとか、隠しようも無い生活空間に満ち溢れるさまは圧巻だ。

 ブランド名が見出しとなっており、見開き1ページ構成で、右側が部屋いっぱいに広げられた戦果たち。左側がそのブランドにハマったきっかけや想いがアツく語られる。その熱気にアてられたり、ハッとするほど裸の言葉に触れているうちにニヤニヤしてくる。部屋の散らかり具合とかブランド以外の生活雑貨を凝視して、iMac率の高さや"Santa Fe"(宮沢りえ・篠山紀信)に気づく。洗練されているのは服だけで、欲望とカオスにまみれた部屋との"ミスマッチ"具合が、奇妙かつ懐かしい。

  • 家一軒ぶんのジャン・ポール・ゴルチエ
  • 16年ひとすじ親子で着倒れ共倒れのジャンフランコ・フェレ
  • 無職生活4ヶ月目とアレキサンダー・マックィーン
  • 風呂なしアパート清貧生活に50万円のエルメスの鞄
  • 洗濯もクリーニングにも出さないクリストファー・ネメス
  • ちゃんと収納しないと布団が敷けないほど圧倒的なヴェルサーチ
  • 日常生活・社会生活、全面的に、徹底的にゴスロリするためのベイビー・ザ・スターズ・シャイン・ブライト(サンデーロリータファッションは邪道)
 しかし、写りこんでいる皆さん、ホント幸せそうな顔をしていらっしゃる。「消費社会の犠牲者」とレッテルを貼るのは簡単だが、これほどハッピーな犠牲者もなかろう。借金してでも服が欲しいとか、服の収納のために家を買おうとか、突き抜けた次元にいらっしゃる。露出的・覗見趣味が動機でページをめくっていたはずなのに、なにこの開放感、いっそ清清しささえ覚える。まさに、「好きなものは好きだからしょうがない」状態で、かつてわたしもそんな顔をしていた。

 そう、一生かけても読めない量の本を買いこんで並べて広げて悦に入っていた頃を思い出す。本を得ることは知を得ることだと間違えて、稼いだ金をせっせとつぎ込んだなぁ。「背表紙だけでも読書だ」などと背伸びして買った(狩った)記憶が蘇る。

 服の場合、「自分を上げ底してくれる感覚が、すごく嬉しい」とか、「これだけの服だと、着るのにかなりの気合が必要なんですっ」と、直接パワーをもらっているようだ。声優オタ、ガレキオタ、ゲーオタ…つぎこむ先は違えども、"好き"のパワーはみな一緒。

 ファッションエンゲル係数が高めの、ファッションマニアの生き様を、とくご覧あれ。

 これはビブリオバトル@紀伊國屋で出合った一冊。紹介者の花岡猫子さん、感謝しています。

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みんなでブックハンティング@松丸本舗

 ありのまま起こったことを話すと、「あっという間の8時間」だった。

 まずは、みんなの獲物をご紹介。

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飲食男女久世光彦「飲食男女」。食べることは色っぽい。「味わう」や「口に合わない」という言い方は、男と女にも通用する…湯豆腐、苺ジャム、蕎麦、桃、ビスケット、無花果、おでん…食べ物をきっかけに振り返るみだらで切ない記憶の話―――らしい。食べることはエロティック、そりゃきれいな女性におすすめされたら手にする罠。読んでも楽しいし、それぞれのテーマで自分ならどう書くかを考えると、もっと愉しいかも。

死者の書・身毒丸折口信夫「死者の書・身毒丸」。恐ろしい+美しい物語だそうな。物理的に会えないこと=見えない、でもtwitterや電話のやりとりでは実在していると考えている。この「いないのにいる」ことを突き詰めると、死者との交感になる。本の存在は知ってはいたが、未読。これを機に読むべし。

銀河鉄道の夜最終形・初期形の宮沢賢治「銀河鉄道の夜」。カムパネルラが川に入ったことを、ジョバンニがどのタイミングで知るか、初期と最終版では違うそうな。ミステリちっくにオススメしてくれたのはRokiさん。ますむらひろし版があったので確認するつもりで読む。

 あそこは魔窟だから、時間を飛ばされること必至。承知の上で臨んだ松丸本舗なのだが、10時から18時まで、みっちりたっぷり巡ったにもかかわらず、まだ足りない。アクセルベタ踏み、アドレナリン昇りっぱなしになる。

香水 そしてグループハンティング、集団で狩りをすると、スゴ本に当たりやすい。ぜんぜん知らない(でも)当たりの予感がびゅんびゅんしてくる久世光彦「飲食男女」をそっと出すRokiさん、ずっと読まず嫌いしてたマクニール「疫病と世界史」に向けて背中を押してくれるゲンさん、ジュースキント「香水」に太鼓判を押してくれたMotoさんに感謝。知ってる本を検索するアプローチではない、知らない(けどスゴ本)を捜す狩りなのだ。加えて松丸本舗の錬りに錬られた「本の並び」に、何が飛び出してくるか分からない緊張感覚ハンパねぇ。

 わたしの好みは偏っている。もちろん偏ってて良くて、それでも尽きぬ真砂ほどあるのだが、その「好み」をいったんワキに置く。その上で、ブックトークの流れや、メンバーの記憶から掘り起こされる「その一冊」に集中する。とっくにメモを取ることは諦めて、「それが良いならコレは?」の無限連鎖に身を任せる。ミステリ、SF、世界文学と、その時その時の主旋律みたいな軸はあるけれど、基本自由にアレンジしたり加えたり、会話のやりとりから渦がどんどん広がってゆく―――この感覚は、即興に近い。ジャムセッションのような自由と想像と奔放にあふれている。

 会議室でやる Book Talk Cafe 形式のオフは、準備の本の縛りと、しゃべりの自由さのバランスが絶妙だ。しかし、本屋でやるオフは、どう転がっていくか分からないヒヤヒヤ感を孕んでいる。素敵な女性がいるのに劇薬・猥本を持ってきたり、興が乗りすぎてネタバレスレスレ崖っぷちに立っていたりする。「それを読むならコレで!」なんて本を探してウロウロするのもまた楽し。

はてしない物語 たとえばエンデ「はてしない物語」。あれは、あかがね色の表紙で、中を開くと二色刷りになっている、あのハードカバーで読むしかない。欲にボケたのか分冊・文庫版が出ているが、ぶっちゃけありえない。「文庫じゃダメ? 安いし」とAirさんが探し出すのを全力で阻止する。なぜそうなのかは……読めばきっと、膝を打つからってね。Airさんのレポートはスゴ本オフ ハンティングをどうぞ、視点とコメントが秀逸ですぞ。

 次回の課題もある。オギジュンさんが推していた「世界史読書案内」は図書館かAmazonになるだろうし、フラバル「あまりにも騒がしい孤独」は次回買う。思い切れなかった谷崎源氏とベイトソン「精神の生態学」は、買うなら松丸で、と決めている。

 松丸スタッフの方にもお世話になって感謝。ずっと一対一で応対してもらい、わたしの知らないスゴい奴をじゃんじゃん紹介してくれた森山さん、ありがとうございます。正剛センセ直々にオススメいただいた「リリス」を探し出していただいた立岩さん、感謝してます。そして、ハンティングに参加いただいた皆さま、ありがとうございます。次もやりますぞ。

次回の本屋オフの課題というか、メモ

  • twitterでつぶやきながら巡るべし。ハンターは「やってるのかしらん?」と不安にさせないためと、タイムライン上のハンターの協力を仰ぐため。今回は周るのとおしゃべりに夢中になってしまったが、タイムラインのレスポンスも侮りがたし(スゴ本オフ@ジュンク堂)
  • 先達がいると心強い。いわゆる本の案内役。松丸本舗はBook Shop Editorという水先案内がいて、とてもゼータクに周遊できる。他の書店で望むのはキツいので、ハンターが「買って出る」ことになりそう
  • 写真やメモは、普通の書店ではご法度。いわゆるデジタル万引きやね。これは松丸本舗が特殊だからと思ったほうがいい。「黙認」してくれる大型書店は知っているけれど、大勢でガヤガヤ写真撮ったりはダメだな(他のお客の手前もある)
  • ブログやtwitterを通じて、ネットに飛び散ったハンターたちを、リアル書店に連れ戻しているのが本屋オフやビブリオバトル。書店公認のグループハンティング(の時間)や、展示即売会的な出張書店、はたまた「本店の売れ筋ランキング vs Amazonのトップ10」といったコーナーなど、ネットとリアルを撹拌しよう

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この「ゆん」大好き! 「佐藤くんと田中さん」

佐藤くんと田中さん
 目ェキラッキラさせながら断言、この「ゆん」はエエで。

 語れるほど読んでるワケではないが、「LOVELESS」のようなベトつき感や「妖精事件」みたいな絶望がない。サラっとヒヤっと非日常へ(でも萌えはあるよ、燃えじゃないよ!)。ぞっこん「ゆん」な嫁さん曰く、「ゆんらしからぬ、でもゆんなラブコメ」禅問答かよ…

 「転校生の佐藤くんが吸血鬼だと見破った田中さん」というプロットから膨らむお話が好きだ(予想調和な展開で)。怜悧なインテリ吸血君と、猪突猛進不思議ちゃんのお馬鹿な掛け合いが好きだ(シリアスとギャグの落差で)。メガネ+スレンダー(小柄)+秀才と一部女子の秘孔を直撃する佐藤くんの激しい独白が好きだ(東京大学物語マイルドみたいで)。「吸血鬼は手が冷たい」ことを確かめるためいきなり腕をからめて手をぎゅっと握る(反則!)田中さんが好きだ。「アンタの全てを知りたい」と普通ならゼッタイ顔真っ赤にしてもいえないようなことを、マジメ全力目と目を合わせて言い切る田中さんが好きだ。

 何度も読んで、掛け合いの「間」にニヤニヤしている。ラノベで見かける設定を上手ぁくネームに広げている。ふつうなら、ラノベ→コミカライズ→アニメで消費されてく物語世界を、「ゆん」ならではの語りで支える。

 この「ゆん」っぽさって何だろう。

 「あたしって、アンタの全てを知りたい女なの」という宣言は、コードでもなんでもなく、愛の告白だ。でも言ってる田中さんは吸血鬼への好奇心100%の動機。もちろん(賢い)佐藤くんはそんなことは100も承知、でも、コトバそのものに捕まってしまって赤らんでしまう、その恥らいにきゅーんとなるのだ。対話の勢いが「あなたを知りたい」→「あなたになりたい」→「あなたとひとつになりたい」と十六歳のように会話を膨らませてしまう。最後のセリフを言ってしまって初めて自分がどんだけ恥ずかしい告白をしていたかに気づいて田中さん照れまくる……とまれ妄想!

 そう、この照れ照れした気分にさせてくれるのが、「ゆん」の好きなとこだな。一字まちがえると、デレデレしてしまうが、寸止めで濁点を回避している、それが「ゆん」。

 無理に風呂敷を広げて収拾つかなくなるのでなく、最後まで描いてくれたらそれだけでありがたい。でもラストは、田中さんの密やかな願いをかなえてあげない寸止めになると照れ照れ妄想している。

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