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この「食」の本がスゴいらしい

 わたしの仮説は、どうやら正しい→「本好きは食いしん坊」

 というのも、前回の記事「この『食』の本がスゴい!」のリアクションで、これでもかというぐらいスゴい「食の本」が続々と集まってきたから。twitter や blog 、はてなブックマークコメントなどで、知らなかったスゴ本に出会えたのは嬉しい。みなさん、「食べることなら一口噛ませろ」というノリで教えてくれる。

 だいたい、旨いものが好きな人というのはフットワークが軽くって、美味・珍味を求めて腕を磨いてアンテナを高くするイメージ。人さまにふるまう時はそれこそ東奔西走する(ほら「ご馳走」って駆けずり回って食材を集めるあのまんま)。もちろん、常連だけのヒミツの店もあるし、門外不出の味もある。だが、食の基本はオープン。食べた人が好みと趣味を言い合えば良い。イソターネットを飛び交う情報は、「受信者が判断する」に似ているね。

 五感が受け取った快感は、「こんな旨い料理があるよ」と伝えたくなる。その場で一緒に「おいしい」を囲めないなら、時間や場所を越えて伝えたくなる。そのとき、「おいしい」レシピやレポートや物語は、「本」という形をとる。

 「本」というメディアは紙と文字でできている。味も匂いも食感も、見た目もシズルも腹心地も伝えられない。なのに、なんとか伝えようとする。レシピや写真で再現させようとする。「何をどう食べるか」に歴史や文化を見いだそうとする。食べられない毒物を教えようとする。時間と場所を越えて(電源無しで)伝達できる最高のメディアなのだから、そのコンテンツは生きることに直結する=「食」がふさわしい。グーテンベルクの最初の本は聖書だったが、革命前の最初の本はレシピや食材を紹介するクックガイドじゃないかと。


 ひょっとすると、間違っていたのかもしれない。スゴ本オフのテーマの一つとして「食」を据えたものの、実は逆で、「食」を広げ・深めるために「本」が発明された―――そんな妄想がたくましく育つほど、魅力的な「食」本が集まった。次のわたしのターゲットとしていくつかご紹介。

BRUTUS まず、とっかかりがBRUTUSの「美味求真」特集(2010/7/1号)。食にまつわるエピソードと「本」を直結させた記事とのこと。さすが享楽主義を標榜するだけあって、食べる快楽に貪欲で嬉しい。「食と作家」つながりは「作家の食卓」「作家の酒」「作家のおやつ」(いずれもコロナ・ブックス編集部)で作家を遡及できるが、明治~昭和の文豪級になる。BRUTUSが、間口を広げた「食と本」つながりのガイドになればありがたい。mats3003さん、オススメありがとうございます。伊丹十三「女たちよ」は、"あわせて読みたい"ですな。

魚をさばく 次は、やっぱり作るほう。スゴ本オフでのケースケさんや大木さんの包丁さばきを見ていると、できるようになりたい。ケースケさんのオススメは、生田與克「築地魚河岸直伝魚をさばく」だって。これはスゴい本なのに、生臭くなるまで使い込んだので人前に出せなくなったという曰くつきの逸品だそうな。見よう見まねレベルなので、これで腕に叩き込む。

 でも、この「料理ができる」ってなんだ?わたし自身、独り暮らしが長かったので、食べたいものを作ることはできるが、少し違う。今までは、食材をレシピどおりに調理・調味することを「料理」とし、そのレパートリーを増やすことが「料理ができる」と考えてた。

料理の四面体 だが、レシピ本などなくてもおいしい料理をホイホイ作ってしまう人がいる。これは膨大なレシピが叩き込まれているというよりも、原理原則のようなものを身につけていて、それをアレンジしているのではないか、と見る。大木さんがカジキマグロをソテーするとき、酢をベースにしたソースに絡めていたが、「味が単調になるから、酢がアクセントになる」なんだって。これは、嫁さんが鳥の酢煮込みしたときに言ってたことと同じ。知ってる人は(その分量も含め)常識かもしれないが、ここが「料理ができる人」とわたしの違いらしい。

 mats3003さんオススメの、玉村豊男「料理の四面体」は、この基本原則を四面体でモデリングしてくれるらしい。原理が分かれば、後は食材の分だけ、気分の分だけ無限にレパートリーが広がる。料理ができる"あちらがわ"へ行くべし。

 今度は料理をもっと俯瞰する本について。「食の500年史」「ヌードルの文化史」を楽しく読ませてもらったが、もっと歴史に肩まで浸かって取り組みたい。ならばtaronの日記でオススメされているマッシモ・モンタナーリ「食の歴史」がガッツりいけそうだ。あと、面白いことは知っているものの、ずっと手を出さなかった村井吉敬「エビと日本人」は、これを機に箸をつける(これとエビフライを合わせるのは面白い)。

 視点を逆転させたのもある。ケースケさんに指摘されてハッとしてのだが、岩明均「寄生獣」だ。食は食でも、「食べられる」ほうから見ると、これまたスゴいのが浮かんでくる。yuripop絶賛のダニエル T.マックス「眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎」はこれを機に手を出そう。さらにカニバルつながりで、フェリペ・フェルナンデス・アルメスト「食べる人類誌」にも行ってみる。

 リアルと本の融合点としての「食」、いくらでもどれだけでも読める作れる食べられる。味の素の「食の文化ライブラリー」に通って宝さがししよう。

 以下、twitter、blog、はてなブックマークで教わった食のスゴ本たち。オススメいただき、感謝します。

pollyannaさん
 「大きな森の小さな家」ローラ・インガルス・ワイルダー
 「農場の少年」ローラ・インガルス・ワイルダー

T-3donさん
 「闘魂レシピ」アントニオ猪木
 「江戸の料理史」原田 信男

mats3003さん
 「料理の四面体」玉村豊男
 「スマイルフード」鈴木 るみこ
 「京都人だけが食べている」入江 敦彦
 「BRUTUS (ブルータス) 2010年 7/1号」
 「建築とマカロニ」TOTO出版
 「女たちよ」伊丹十三

ITAL_さん
 「定番・朝めし自慢」出井 邦子
 「旬の食材」講談社

keloinwellさん
 「キッチン」よしもとばなな
 「ムーンライトシャドウ」よしもとばなな

tetzlさん
 小泉武夫の作品

ケースケさん
この「食」の本がスゴい!スゴ本オフにお邪魔してきました。

やすゆきさん
「スゴ本オフ「食」の会は美味くて楽しくてヤバかったです。」

taronの日記
 「エビと日本人」村井吉敬
 「エビと日本人2」村井吉敬
 「世界の酒」坂口謹一郎
 「パンの文化史」舟田詠子
 「中世ヨーロッパ食の生活史」ブリュノ・ロリウー
 「雑穀のきた道」阪本寧男
 「ハタケと日本人:もう一つの農耕文化」木村茂光
 「甘さと権力:砂糖が語る近代史」シドニー・W・ミンツ
 「茶の世界史」角山栄
 「聞き書き築地で働く男たち」小山田和明
 「ヨーロッパの食文化」マッシモ・モンタナーリ
 「食の歴史」マッシモ・モンタナーリ

uporekeさん
 「亡命ロシア料理」P・ワイリ
 「やっぱり美味しいものが好き」ジェフリー・スタインガーテン

sakura_123さん
 「美味礼賛」ブリア・サヴァラン
 「美食の文化史」ジャン・フランソワ・ルヴェル

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コメント

ビジネスジャンプの「ダシマスター」も実践的な知識が含まれていてよかったです。

(食の本の紹介数は本好きの食いしん坊度を表しはするけれど、本好きが他よりも食いしん坊であるという根拠にはならないような気がします)

投稿: 柊 | 2011.10.20 17:41

>>柊さん

「ダシマスター」…!初めて知りました。そしてAmazon紹介を見て二度びっくり!ダシだけでお話が作れるんですね(しかも6巻も)。すげぇ、一話だけでも読みたくなりました。

 > 本好きが他よりも食いしん坊である
 > という根拠にはならないような気が

あはは、確かに冷静になって考えるとその通りですね。でも、「食」に関する本が、わたしの想像をはるかに超えて多量深淵にあるのは事実なので、楽しいです。遊びます。

投稿: Dain | 2011.10.20 21:45

「亡命ロシア料理」はいい本ですね。分量が書いてないのが残念ですが。私もお勧めします。

ちょうど今読んでる本からおすすめ
「世界の食文化」シリーズ 農山漁村文化協会
文化人類学などの学者のヒトが、現地行って食べてきた食べモノについて、文化的背景の説明とあわせて紹介しているシリーズ物です。

投稿: kartis56 | 2011.11.06 21:21

>>kartis56さん

「世界の食文化」シリーズ、すごいですね!文字通り世界を「食べる」から理解するシリーズなのですね。これは読みます、腰据えて。
教えていただき、ありがとうございます。

投稿: Dain | 2011.11.07 06:45

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